【完結】混迷を呼ぶ者 作:飯妃旅立
作風に合わないんで消してましたが、書いちゃった文がかわいそうだなって思って上げました。
番外編 あったかもしれない風景
幕間
「え、お子さんですか?」
ノヴァの一件から7か月。
長期治療を行っていた雨宮リンドウも1か月前には退院し、唯一の肉親である雨宮ツバキに頭をはたかれながらも、漸く極東に彼は帰ってきた。
1か月後には橘サクヤとの結婚を控えるというのに、リハビリがてらと称して任務へと誘われた神薙ユウ。
いつも通り、ヤクシャ・ラージャを4体ほど手軽に倒した辺りでリンドウからとあるお願いを受けていた。
「あぁ。その……だな。二卵性双生児で男女1人ずつ、生まれんだ。それでよ……男の子の方の名付け親……お前さんになってほしいんだよ」
リンドウも手早くコンゴウ堕天を倒し、ポリポリと頬を掻きながらどこか恥ずかしそうに言う。
「それは……おめでとうございます。でも、いいんですか? 僕が名付け親で」
その戦績を省みなければ、ユウは入隊してからまだ8か月ほどの新兵だ。階級は中尉だが。そんな新人が、ベテラン2人の子供の名付け親となるのは中々あることではない。
「お前以外には考えられないからよ……。女の子の方は、決めてあるんだが……」
昼間ではあるが、どこかの空を見て話すリンドウ。
意識の朦朧とする中、ずっと護りつづけていたあの元気で、よく食べる女の子。
「どうだ、無理にとは言わないが……」
「あぁ、いえ。もう決めました……というか、決まってますよ」
そう言って目線を少し下――リンドウの手に或る神機を見遣る。あの戦いで、雨宮リンドウの神機は一度
それを楠リッカ含め技術班が一生懸命直し、復元したものがコレだ。
もう声が聞こえる事も、姿を見せる事もないけれど。
「決まってる? そりゃあ……あぁ、そうか……」
ガチャ、と神機を天に翳す。
陽光を遮るその大きな刀身に、共に戦ってきた傷は無い。
「相棒……お前、名があったんだな……なんて名前だったんだ?」
神機は答えない。
だから、代わりに神を薙ぐ者がその名を紡ぐ。彼を持ち主の元まで導いたその名を。
「レン、っていうらしいですよ……。リンドウさん思いの、良い子でした」
その1か月後。
雨宮リンドウと橘サクヤは入籍する。2人とも今はまだ戦役を退いていないものの、周囲からは「もう休め」だの「俺に稼がせろ」だの「早く赤ちゃんを見たいです」だのといった祝福の言葉が毎日のように降り注いでいるという。
「リンドウ……赤ちゃんの名前、決まった?」
「あぁ……男の子が、レン。女の子が――――シオだ」
幕間2
「いいえ、お姉さま……私はやっと気づいたの……私は『ひとり』じゃないって……」
声が聞こえる。
語りかけてくる声が。
新しい命を。
新しい世界を。
新しい……特異点を。
「王のために用意した『晩餐』は……お気に召さなかったようだけれど……」
布石は打った。
駒は揃えた。
王の動きだけが……わからないけれど。
「あぁ……お姉さま……? もっと、『お人形』をお借りしますわ……」
内なる神が。
星の意思が。
混迷の王が。
「最後の晩餐まで……あと、少し」
『意思の力』
『人類が乗り越えるべき試練』
『適者生存』
『新たな秩序』
「のこさず……ぜんぶたべなきゃ……」
――アラガミとひとつになった少女が、動き始める。
IF続編『シオとサマエル、あとリンドウ』完結済みです!(宣伝メイン)