【完結】混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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オリキャラ!


恩赦の塔

 あれからふよふよと各地を回って分かったことは3つ。

 

 1つ目は、この世界が無印ではないということ。

 神薙ユウではない、名前の解らないショート使いが見せた挙動。ライジングエッジだ。

 無印の頃には無かったソレを使えるということは、少なくともバーストか、最悪リザレクションか。リザレクションだと面倒だ。あのプレデターフォームの数々は厄介なものが多いから。

 

 2つ目は、俺が最初に目覚めた場所が贖罪の街ではないということ。

 ふよふよ浮いていたら贖罪の街を見つけたから間違いない。あの大穴、ディアウス・ピターがドヤ顔で出現する大穴が目印だろう。

 俺の目覚めた場所はもっと遠い。あの赤い雨や赤乱雲だって人類には確認されていないのだ。もっと人里離れた場所なのだと思う。帰り方はわからん。

 

 3つ目。

 それは、俺が普通のアバドンと違うということ。

 ゲームでは1つのフィールドに1匹しか現れなかったアバドンだが、ふよふよしていたら普通に見かけた。赤黒い色合いの体躯に、「ピキィ……ピキィ……」と漏れ出る音。何をするわけでもなく浮いていたソイツは、駆けるようにやってきた神機使いに屠られた。

 その時の挙動がどうにも遅い。俺の最高速度の半分も出せていない気がする。

 それと、赤い雨に濡れたせいなのかはわからないが、鉄塔の森の水に映った俺の体色は本来のアバドンよりも確実に赤かった。それはもう、どこぞの彗星くらいに。

 

 リザレクションでアモルという白いアバドンが出ていたが、それと似たようなものなのだろうか。

 個人的にはアバドン神速種と呼ばれたい。ハンニバル神速種と単騎でぶつかった時の絶望感は、今の俺の中では憧れに近い感情になっていた。

 

 

 さて、今俺がどこにいるのか。

 目の前にあるのは灰色の巨大な竜巻。それを円状に囲むような地形。

 そう、嘆きの平原である。ジーナ・ディキンソンである。

 

 何故ここにきたかと言えば、ストーリー上必ず神薙ユウがここに来るから――ではない。

 神薙ユウならとっくにコクーンメイデンを倒して去って行った。

 

 俺の目的は、神薙ユウではない神機使いだ。防衛班にすら名前のあがらない神機使い。所謂モブ。

 果たして、俺は本当に神機使いを屠ることができるのか。それを試すためだ。

 あとリンクエイドがどういう仕様になっているのかも見てみたい。

 

 

 遠目だが、ゴッドイーター達は開始位置にいるのが見て取れる。

 中年のおっさんが2人。バスターシールドとアサルトタワーシールド。当たり前だが旧型。しかしあなどるなかれ、極東人は化け物だ。

 一瞬の油断がそのまま致死となるだろう。

 

 作戦としては、まずどちらか……バスターだな。1人を倒す。それから一度離脱し、リンクエイドが行われるかを観察する。その後は臨機応変に、だ。

 

「キィ……」

 

 近づいて音を漏らす。制御こそできないが、段々どういう動作をしたら音が漏れるのかわかってきた。

 体を揺らせばいいのだ。ゲームでも、アバドンが立ち止ってキョロキョロしている時や地面から出現した時にこの音が出ていた。一瞬加速して停止。これで音が出る。

 

「ん? アバドンか? ユウジ、こっちだ」

 

「オウガテイル4匹だけだからってあんま寄り道すんなよー?」

 

 そうだ、こちらへ来い。ようこそ実験台(ゴッドイーター)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これは……最近報告に合った、赤いアバドンです! お二人とも、気を付けてください!』

 

 あるぇ? 神機使いのインカムから聞こえるオペレーター(多分竹田ヒバリ)のアバドン(おれ)の説明が違う。既に情報が回っているというのか。珍しく観測班が仕事をした? いや、ソーマ・シックザールと神薙ユウか。ソーマ・シックザールはともかく、既に神薙ユウが発言に信頼を得ていることに驚きである。やはりバグか。

 

 しかし他人のインカムから漏れ出る音を聞き取れるって、聴覚がいいってレベルじゃない気がする。

 

「あぁ? 赤いアバドンだとなんかあるのか?」

 

「レアなんじゃね? ま、どうせアバドンだろ? サクッとコアもらおうぜ」

 

 これは俺が舐められているのか、極東人故の余裕の表れか。

 多分前者だな。見た目は赤いだけのアバドンだし。

 

「キィ……」

 

 油断が命取りになるのは、そちらも同じだというのに。

 

 アサルトが瞬きする瞬間を狙ってバスターの方に突進する。狙いは鳩尾、できれば左胸。

 

「な、消え――!?」

 

「ぐぁっ!?」

 

 ヒット。すぐさま後方へ離脱。神機使いは身体能力が上がっていると設定されていたから、胸板等も硬い物だと思っていたのだがそこまででもない。バスターの方を見れば、膝こそはまだ着いていないものの苦しそうに胸を押さえている。心臓震盪でも起きたか?

 

「このヤロッ!」

 

 わざわざ声を出してアサルトがこちらに玉を撃つ。光弾、色は赤。まぁアバドンには物理非物理属性問わず一律で効くのだが。 

 銃口の向きとこちらの場所が微妙にズレているにも関わらず、光弾はこちらに向かってきた。ホーミングか。バレットエディットされていない市販弾だな。なら――。

 

「キィ……」

 

 光弾が向かってくる方向から右方向に30度ずれて移動する。光弾は曲がりきれずに明後日の方向へ飛んで行った。そのままアサルトの横を通り過ぎ、更に鋭角に方向転換。アサルトの背後、蹲っているバスターに再度体当たりする。狙いは背中だ。リンクエイドが見たいのであって、今殺してしまうのは実験にならない。

 

「避けられ――ッ!? どこ行きやがった!」

 

「グ……ガッ……」

 

 バスターが前のめりに倒れる。それを見届けて最速で離脱。いけたかな?

 OK、バスターは倒れたまま動かない。アサルトがバスターに駆けよるのが見える。

 

 しかし、アバドンの体当たり2撃で倒れるとは……バスターが体力を下げるようなスキルを付けていたのか、はたまたアバドンの攻撃力が高いのか……。心臓震盪が起きてくれたのかもしれない。ここは要検証だろう。

 

 さぁ、リンクエイドしたまえ。

 

「リョウスケ……リョウスケ、返事しろリョウスケェ!」

 

 あり?

 

『ユウジさん! 救護班が向かっています! それまでリョウスケさんを護ってください!』

 

「リョウスケ……待ってろ、仇は獲ってやるからな……今は寝てろ……ッ!」

 

 リンクエイド……しないの?

 これはリンクエイドが存在しないパターンか!?

 竹田ヒバリが救護班と言っているのが聞こえたから蘇生術はあるのかもしれないが……。

 これは人類攻略の難易度が大分落ちたな。

 

「ングッ……うおおおおお!」

 

 アサルトが何やら錠剤を飲んだと思ったら、全身を白い光が包んだ。あれはバースト?

 ――強制解放剤か!

 

「喰らええええええ!」

 

 アサルトから異様な量のレーザーが撃ちだされる。全部ホーミング。旧型ならOアンプルも沢山持っているだろうが、それには限りがあるだろう。それを待つのも策としてはありだが、援軍が着かねない。神薙ユウやソーマ・シックザールが来たら面倒だ。

 だから、このレーザーの雨を潜り抜ける。

 

 基本的にこのレーザーは自機狙いだ。だからその場で左右に体を揺らしていれば避ける事が出来る。しかし、レーザーはそのホーミング性能によってブレが生じる。撃っているアサルトですら予期しない攻撃となり得るわけだな。

 

 ではどうすればいいか。

 全部見て避ければいい。

 

 簡単な事だ。

 神薙ユウやソーマ・シックザールと並ぶ人類種のバグであり、体の70%程が同族である雨宮リンドウも、こんなレーザー目じゃないほどの量のキュウビレーザーを避け、切り払っていたではないか。

 100%アラガミである俺ができないはずがない。

 

 アサルトのOP量で連続でホーミングレーザーを撃つと、最大値までOPを上げていてもせいぜい10~11発。撃ち続けている間はOアンプルを飲めないのでこれが最高だろう。

 トリガーハッピーを付けているかはわからないが。

 

「キィ……」

 

 前へ進む。気が急いているのか、銃口が少し上を向いている。先程は横方向にホーミングしたが、今回は縦方向へのホーミングも入っている。使い分けているのか全方向ホーミングなのか。頭悪そうだし後者じゃないかと思うんだが。全方向ホーミングなら7~8発か?

 バーストによる回復量まで計算できない。

 

 1発目。上から縦方向のホーミングにより矢のような軌道で襲い来る。一瞬速度を緩め、瞬時加速。レーザーは空を切り俺の後方に着弾した。

 2、3発目は連続で撃ちだされた左右両方向のホーミングレーザー。腐っても極東人か、ただ撃ち続けているだけではないらしい。どちらかを避けようと思えばどちらかに当たるな……。なら――下だ。

 2発目を1発目と同じ緩急を使って避ける。その際に頭側を下げ、3発目の下を潜るようにしてやりすごした。

 

「グァ!?」

 

 ……ん? 

 なんか当たったな……。

 

 いつのまにか目の前にアサルトが。

 あぁ、避ける事ばかり考えていて距離を考えていなかった。

 そうだよな。あんな速度で進み続けたら狭い嘆きの平原なんて簡単に横断できちゃうもんな。

 

「この……ッ! これでも喰らえ!」

 

 ん、黒い玉……? 

 

 スタングレネードか!

 

 それが地面にたたきつけられる前に、アサルトに向かって突進する。

 狙いは――スタングレネードを持っている手!

 

「なぁ……!?」

 

 アバドンの代名詞ともいえる大きな口でスタングレネードを奪う。更に方向転換。次のスタングレネードを出される前に、アサルトの腹部へ体当たりをした。

 

 パァァァ! と俺の口から漏れ出る光。口の中で爆発した!?

 

「んなのありかよ……ッ!」

 

 俺もゲームでやられたら確実にPSPをぶん投げる自信がある。でも残念。害虫に慈悲はない。

 スタングレネードを出すために片手になっている事が大きな隙となったな。宙を泳ぐアサルトの右手を余所に、腹部へ再度体当たり。

 

 倒れるアサルト。

 

 やはりさっきのバスターが2撃で倒れたのは心臓震盪(クリティカル)だったようだ。

 

『ユウジさん! しっかりしてください! ユウジさん! 救護班、誰か、早く!』

 

 バスターとアサルトの2人から聞こえる竹田ヒバリの声が、しっかり瀕死状態になってくれていることを知らせてくれた。

 ふよふよと近づく。これ、どうすれば殺せるんだ? 救護班とやらが間に合ったら生き返るのか? それなんてバイオハザード?

 

 んー、リンクエイドが出来ない事も見れたし、もう用済みなんだよな……。頭を潰せば死ぬってオウガテイルが証明してたから、頭に体当たりすればいいかな?

 助走は……いいか。最大速度になるまでにタイムラグはないし。

 

「キィ……」

 

 んじゃ、さよなら最初の犠牲者(はじめのいっぽ)――。

 




屋良リョウスケ オリキャラ。40歳中年おっさんバスター防衛班ですらない。
葉書ユウジ   オリキャラ。40歳中年おっさんアサルト防衛班ですらない。

屋良+葉書=ヤラレター





プリティヴィ・マータが通り過ぎて行ったな?


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