【完結】混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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オリ血の力注意。


no answer from the Intention

 ――時は少し遡る。

 

『ナナさんの感応波の上昇を確認。 一定時間、アラガミの攻撃の目標がナナさんへと移行します』

 

 ともすれば冷徹とも捉えられるフランのオペレートが耳に響く。 今まで乱雑に毒粉を振りまき、体当たりをしていたザイゴートの攻撃がナナへと集中し始めた。

 それをハルオミがスラッシュレイドで、ヒロが空中攻撃で屠っていく。

 

 時折突っ込んでくるガルムの鼻っ柱にナナがハンマーを叩き込み、隙があればハルオミがチャージクラッシュを……という戦法だ。

 

 メインの火力が2人、ヒロは遊撃として戦場を縦横無尽に駆け回る。

 

 どこか神薙ユウを彷彿とさせる姿でありながら――こちらの方が、より獣染みていた。

 

「……」

 

 ヒロはザイゴートを屠る度に立ち止まり、手を開いては閉じを繰りかえす。

 感覚を確かめているかのように。

 

 それを隙と見てザイゴートやガルムが突っ込んで来れば、即座にステップとアドバンスドキャンセルで背後を取って斬撃を入れる。 ヒロにとって、死角等という物は存在しない。

 

 また、それはハルオミも同じなようで、つい先ほど目覚めたブラッドアーツの感触を確かめるかのようにソレ――スラッシュレイド――を連発する。

 伴ってハルオミの血の力である『守秘(しゅひ)』が発動し、それをブラッド全員に付与するというのが一連の流れになりつつある。

 

 『血の力 守秘』。 その能力は『周辺のオラクル細胞と感応現象を通じて共鳴し耐久性能をあげる』というもの。 これにより、ブラッドアーツ発動時に出撃メンバーの防御性能が大きく増大する。

 

 奇しくもギルバート・マクレインの『鼓吹(こすい)』と対になるような力であり、それは全体の生存力を飛躍的に高める。

 

 ハルオミの求めた、守ることができるチカラだ。

 

 発現自体は、遥か過去――サマエルとの邂逅時。

 腕をサマエルの口に突っ込み、その上からチャージクラッシュで叩き割るという行為をした時に、発現した。

 

 だが、真実『血の力』として発現したのは、神威ヒロと出会ってからだ。

 ギルバートの話も、ケイトの話も、何もかも話して――不思議と話したいと思わせられて――それでも、受け入れる事も拒絶する事もせずに、「で、お前は誰なワケ?」と聞いてきたヒロ。 復讐のために生きていると、それ以外に支える物が無いんだと話しても、「でもお前はここにいるじゃん」とあっぴろげに言った彼女に、目覚めさせられたのだ。

 

 己は、真壁ハルオミ。

 己は、ここでブラッドとして、生きている。

 

 原動力が復讐であることは悪い事じゃない。

 過去を捨て去って歩き出さなければいけないということはない。

 

 停滞していても座り込んでいても、真壁ハルオミ(おれ)真壁ハルオミ(おれ)だ。

 

 全てが終わってから歩き出したっていい。

 納得しないまま、理解しないまま歩き出しても意味はないのだから。

 

 それを自覚をした時に、彼の『血の力』は覚醒したのだ。

 『守秘』。 『大切な人を守り、強い意思を秘める事』。 

 

 

「ハハッ」

 

「ふひぃ~。 ハル先輩何か楽しい事あったの~?」

 

「いやぁ……こんな気分は久しぶりだと思ってな」

 

「ふーん? おぉっと~これで~終わりー!」

 

 2人の間に入ってきたガルムに特大の一撃を叩き込むナナ。

 

 ガルムは、地に沈んだ。

 

 

『……オラクル反応消失しました。 早い。 帰還してください』

 

 

「ふぁふ……ったく、折角出てきたってのによー。 こんなんじゃ消化不良起こすぜ」

 

「うんー。 結構弱いねー」

 

「若者は元気だねぇ……」

 

 矢張りクレイドルの面々を彷彿とさせるやり取りだ。

 ここにロミオが居れば「朝飯前だよね」とか、ジュリウスならば「まるでピクニックだな」、とか言ったのだろう。

 

 それを誰も口に出すことはせず、3人はキャンプに帰った。

 

 

 

 

 

 

『第2フェイズはウコンバサラ、サリエル。 各1体』

 

 ハルオミとナナはウコンバサラへと向かい、ヒロはサリエルの相手をする。

 特筆すべき点は無く、終わった。

 矢張りどこかクレイドルの面影が重なる。

 

『第3フェイズ クアドリガ ヴァジュラ の討伐です』

 

 先のウコンバサラといい、このクアドリガといい、破砕系の2人にとって――ヒロとナナはショットガンなので更に――はとても楽な相手だ。

 フライアに居た頃ならまだし、極東に来てからヴァジュラもただの猫という認識が出始めているブラッドの面々。

 ほぼ無傷で勝利を収めた。

 

 もっとも、キャンプでの通信により、クレイドル側が既に第6フェイズまで終わらせている事を知り、己たちはまだまだであることを再確認するのだが。

 

 

 

 

 

『交戦許可が降りました』

 

 さて、本命たるマルドゥーク戦である。

 (死んではいないが)ロミオとジュリウスの仇であるマルドゥーク。

 

 左目に傷のある個体。 間違いなく、奴だ。

 

「グゥゥゥァァァァアアルルルルルルルル!!」

 

 咆哮。

 威嚇であろうそれは、しかし仇討ちに燃えるブラッドには届かない。

 

 マルドゥークに感応能力を使われると、雑魚が群がってきて面倒だ。

 だから、速攻で片を付ける。

 

 そう決めていたブラッドに、そんな隙を見せたらどうなるか。

 

 答えは簡単だ。

 

 3方向から同時に叩き込まれる、破砕、破砕、切断。

 

 ガントレットが一気に結合崩壊を起こした。

 

 更に、ヒロはブラッドアーツを発動させる。

 発動させたブラッドアーツは、『スワローライズⅣ』。

 青い光と共に斬撃がマルドゥークの後足を切裂いた。

 

 ダウンするマルドゥーク。

 

 それを見越していたかのように、ハルオミがチャージクラッシュを、ジャンプしていたナナはガイアプレッシャーを頭へと叩き込んだ。

 

 結合崩壊を起こすマルドゥークの頭。

 

 更にダウンを誘発し、神威ヒロの通常斬撃とアドバンスドキャンセルの数珠繋ぎな攻撃が後足を完全に結合崩壊へと導いた。

 

 ――脆い。

 

 3人の心境は一致し――。

 

 完全に同タイミングで放たれた渾身の一撃によって、仇であるマルドゥークは地に沈む事になった。

 




まぁ簡単に言うとリンサポの被ダメカットです。 カット率は脅威の40%。

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