【完結】混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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ちょっと遅れたのはslitherのせい。


Need to confima

『クレイドルの皆さんのサポートは、私が担当します。 あはは、昔に戻ったみたいで……ううん、いけない、しっかりしないと。

 交戦許可が下りました。 作戦を開始してください。 皆さんの背中、しっかり見てますからね!』

 

 通信機から聞こえるヒバリちゃんの声。 

 これが聞こえるということは、ルシフィルはまだ来ていないという事だ。 感応波を出していないだけの可能性もあるが。

 

 ルシフィルの動きに対応するために、武装はショートスナイパーバックラーから変えていない。 マルドゥークの居る場所に近づきすぎなければ、十分に戦える。

 

「ソーマとキグルミ君は左手前と左奥にいる荷電性シユウの相手をお願い。 スタン対策はできてるよね?」

 

「……あぁ。 十分にある」

 

「……!」

 

 

 コクリ、と頷いている辺り、キグルミも大丈夫なのだろう。 まぁ、己の性格や行動を網羅しているというのなら、準備を怠ることなど有り得ないのだが。

 

「リンドウさんと僕はディアウス・ピターを集中攻撃して屠りましょう。 ……リンドウさん? あぁ……()()()()()()()()?」

 

「ん、あぁいや……とりあえずは見えねぇな。 大丈夫だ、いけるぞ」

 

 

 右目の仮面を外していたリンドウさん。 オラクル細胞が見えるというその目は、クレイドルの活動にもかなり役立たせてもらっている。 ちなみにあの仮面や篭手も己とサカキ博士、リッカちゃんによる遊びごk……技術の詰め合わせだ。 未だ使う機会が無いようで、リンドウさんはそれに気が付いていないようだけど。

 

「感応種がでたら発煙弾を撃ちあげるから、キグルミ君が来るまで回避に徹してね。 それじゃあ、散!」

 

 言葉と共に作戦開始地点を蹴って降りる。 ディアウス・ピターの位置は侵入予測地点の通りで間違いないだろう。 リンドウさんがそっちを見ていたし。

 いつも通りアドバンスドキャンセルとステップを駆使して最速で向かう。 なんでもショットガンを使うことで、もっと早く動けるらしいのだが射程距離が短いのはダメだ。 ルシフィル(やつ)は基本的に空中にいるのだから。

 

 

 白い毛先の黒い尻尾が見えてくる。 相も変わらず無防備な尻尾だ。 細いし、柔い。それでいて結合崩壊を起こさないというのは理解し難いが、アラガミに物理法則などを求めても何にもならない。 

 

「シッ!」

 

 ショートソード――新兵の頃からずっと使っている『ナイフ 醒』――で以て、高速の斬撃を入れる。 サマエルを捉えた斬撃には及ばない。 あれは、落下速度やアリサによるバースト、そして気分の昂揚によって繰り出すことができた一撃だ。

 あぁ、あの昂揚感をもう一度味わいたい。

 

 斬られた事でこちらに気付き、振り向こうとするディアウス・ピターの顔面をライジングエッジで斬り上げ、空中を蹴って離脱。

 

 威嚇をしている間にスタミナを回復する。 全種と言っていい程のアラガミがこの威嚇という行動をするのだが、何の意味があるのだろうか。 他のアラガミを牽制するような意味も持っていないし、神機使いが怯むとでも思っているならば甘いと言わざるを得ない。

 まぁ、それで離脱や攻撃の隙を生んでくれているので、ありがたい限りなのだが。

 

「相変わらず速いなぁお前さん」

 

 威嚇後に前足を振り下ろしたディアウス・ピターを、オラクルの衝撃波が貫く。 インパルスエッジ。 リンドウさんが追い付いたみたいだ。 

 

 何か思うところがあるのか、ディアウス・ピターとプリティヴィ・マータ、ハンニバルを相手取った時のリンドウさんは一層容赦がなくなる。 他のアラガミであれば「おーう元気だなー」とか、「威勢がいいなぁ」とか前口上を述べてから戦いに入るのだが、この3種が相手だと問答無用で攻撃を入れる。

 

 今の攻撃でマントが結合崩壊を起こしている辺り、とんでもない量のオラクルを込めたのだろう。 オラクル量って固定じゃなかったかなー僕ロングブレード使わないからなー。

 

『ディアウス・ピターのマントと前足の結合崩壊を確認。 アラガミ、活性化します!』

 

 あれ、リンドウさんを観察している間に前足を壊してしまったようだ。 残るは顔面だけ。 ヒバリちゃんがソーマやキグルミのバイタルの心配をしないあたり、余裕なのだろう。 第1フェイズはそろそろ終わりそうだね。

 

『オラクル反応の消失を確認。 ……荷電性シユウ、2体とも沈黙しました。 流石、速いですね……』

 

 え?

 あれ、そんなに弱かったのか。

 

 クレイドルの方で難易度の高い任務を受け続けていたせいか、どうにも加減がわからなくなっているみたいだ。 リンドウさんも呆けた表情だ。 

 

『一度キャンプに戻ってください。 簡易的なメンテナンスの後、第2フェイズの作戦を開始します』

 

「リンドウさん、怪我とかは……まぁ無いですよね」

 

「おう。 お前さんは聞くまでもねぇか。 お、ソーマ達も無傷だな」

 

「あぁ……問題ない」

 

「……!」

 

 じゃあ、戻ろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第2フェイズはウロヴォロス堕天種と、群生しているコクーンメイデンになります』

『速い……というか、今ユウさんウロヴォロスに乗ってませんでしたか?』

『第3フェイズはデミルウゴスとラーヴァナです。 ラーヴァナの毒に気を付けてください。 ヴェノム耐性は……準備万端ですか。 流石です』

『アラガミの沈黙を確認。 回収素材は……全部回収が終わってますね』

『第4フェイズはウコンバサラとグボロ・グボロ堕天種2体ですね。 どちらも破砕と切断が効きますよ!』

『アラガミが逃走しました! アラガミのホールドを確認! って、え? あ……今照準定めましたか? あ、オラクル反応の消失を確認しました』

『第5フェイズはハンニバルと……ってリンドウさん! 先行し過ぎで……頭と逆鱗の結合崩壊を確認!? 交戦外のヤクシャ・ラージャが戦闘音を探知! 交戦ポイントに向かいました! ヤクシャ・ラージャの頭部の結合崩壊を確認! キグルミさん、ソーマさん! 2人のフォローに回ってください!』

『ハンニバル、ヤクシャ・ラージャ共に反応消失……グボロ・グボロは……え、あ、反応消失しました。 ソーマさん……あなたもこちら側だと思ってたのに……』

『第6フェイズは強毒性サリエルとアイテール、ツクヨミの3体です。 特筆すべき点は……状態異常に気を付けてください?』

『アラガミが封神状態になりました! ……キグルミさん、気を落とさないでくださいね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、問題の第7フェイズだ。

 未だ通信は出来ており、ブラッドの方も第3フェイズまで終わらせたと聞いている。

 つまり、どちらもが最終決戦である。

 

「さて、キグルミ君。 今回の作戦は君の攻撃にかかってる。 回復とかは全力でフォローするから、とりあえずスパルタカスを封神にすることに専念してほしい」

 

「……!」

 

 うん。 いけそうだね。

 

『交戦許可が下りました。 目標は、ハンニバル神属感応種であるスパルタカスと、集められた小型アラガミです。 マルドゥークの微弱な感応波により、小型アラガミは半永久的に集まってくると考えてください。 また、スパルタカスは周囲のアラガミのオラクルを吸収してパワーアップします。 危険であれば、スタングレネードで中止させてください』

 

 

 ヒロちゃんがこの場にいないので、ブラッドアーツの発現自体望めるかわからない。 一応同じ戦場にいるという事と、サカキ博士が僕やリンドウさん、ソーマに無駄な期待をしてる事が相俟って感応種との戦いとなっているが、その辺は未知数だ。

 

 

 

 スタングレネードの数は1人8個、計32個。 封神状態にして攻撃、封神状態にして攻撃を繰り返す中でどれほど使うかはわからないが、足りない事はないと願いたい。

 

 

 

『スパルタカスの侵入予測時間まで想定30秒! 準備してください!』

 

 さて、感応種。 ルシフィルの前菜になってもらうよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 避ける。

 避ける、避ける避ける避ける――ッ!

 

 本当に神機が動かないね。

 フォローはする、とは言ったものの、これじゃあ小型アラガミすら倒せないかな?

 

「ウォォォオオオオオ!」

 

 お?

 リンドウさんが素手で……あぁ、アラガミ化したほうの腕でザイゴートを……。 なるほど、あの腕はまんまアラガミだから感応波の影響化でも使えるのか。 ふぅん?

 

 

「ソーマ! 神機は動く!?」

 

「無理だ……。 だが、身体能力は大丈夫だな……」

 

「じゃあダメージは期待しないで、キグルミ君とリンドウさんのフォローをお願いするよ! キグルミ君が封神を付与させたら両腕貰うよ!」

 

「おう……」

 

 

 リンドウさん、微妙にエイジス島の時の声に戻ってるけど大丈夫だよね。 スパルタカスはハンニバル神属感応種……あっ。

 

『スパルタカスが封神状態になりました! 今ですよ、皆さん!』

 

 ベストタイミングだよキグルミ君! 

 

 息を吹き返した神機で以て、()()()()()()()()()()()ライジングエッジを繰りだす。 破壊部位は両腕と両脚だけど、やっぱりハンニバル種は頭を叩かないとね。

 

「シッ!」

 

「ウォオオラアアア!」

 

 丁度真上から殴ってきたリンドウさんと頭を挟み撃ちにする。 あれ、なんでまだリンドウさん素手なの?

 

「リンドウさん! 神機使えますよ!」

 

『リンドウさん!? 偏食場パルスが……zzz……しています! リンドウさんを止めてください!』

 

 

 暴走……してる? サクヤさん連れてこないと……!

 

 馬鹿な事言ってないで、スタングレネードを地面にたたきつける。 

 

「ウォォォオオ!? ……あん?」

 

「正気に戻りました? リンドウさん! いくらハンニバル種だからって、暴走しないでください!」

 

「……? お、おう。 なんだ……今の感覚」

 

「無駄話してないで……倒すぞ……」

 

「……!」

 

 スタングレネードで怯んだスパルタカスの両腕に集中攻撃を入れる。 

 

『結合……壊を確認! zzzガミ、弱ってます! 一気に行きましょう!』

 

「終わらせるよ!」

 

「終わりだ……」

 

「そろそろ沈んどいてくれよ」

 

「……!」

 

 

「グォォォォォオオオオ!!」

 

 

 ライジングエッジ*2、インパルスエッジ、チャージクラッシュがスパルタカスに集中する。

 意外と楽しかったよ。

 

 

 

 

 

『アラガ………た! でも、先程から通信が…………zzzzzん!? 皆さん!? 応答…………ッ!! え、嘘……何、この範囲――』

 

 ブチ、という音と共に通信が切れた。

 




次話はブラッド視点

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