【完結】混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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ちょっと急ぎ足な感じがしないでもない。




世に平定を為す者

 

「僕達……僕とサカキ博士、リッカちゃんはずっとある物を探していたんだ。

 それは、アラガミ化したであろうリンドウさんの足跡」

 

 人差し指を立てて仲間に話し始める神薙ユウ。目を瞑り。その様はさながら推理ショーをするどこかの探偵のようだった。

 

「ミッション時の予想外(アクシデント)にこそ弱い極東の観測班だけど、ミッション前にアラガミを発見するということは偵察班にも負けないくらいの実績がある事は、みんなも解っていると思う」

 

「その観測班が、ここまで日数が経っても何も見つけられていないというのは異常なんだよ。ゴッドイーターがアラガミ化したんだ、異常な固体が現れるはずなのに、何の報告もない。これはつまり、リンドウさんが観測班を避けているか、何者かがリンドウさんを観測班から遠ざけているということ」

 

「ヘリや輸送機で行動している観測班を撒き続けるのは食欲に突き動かされるだけのアラガミには無理だよ。

 意思或る者で、且つ余程の感知範囲を持っていなきゃね」

 

『でも、リンドウ君に意識があっても観測班を避ける理由が無いんだ。君たちには酷だろうけど、リンドウ君なら完全にアラガミ化したら覚悟を決めるだろうからね』

 

「だから、アラガミと行動を共にできる何かが……感知範囲が広く、意思を持ち、観測班を避け続ける理由のある何かがリンドウさんと共にいるはずなんだ」

 

 そこで一旦言葉を切るユウ。

 ? を浮かべる仲間たちの中で、ただ1人……ソーマだけが、大きく目を見開いた。

 

「まさか……、あの時の?」

 

「うん、あの少女……真白の肌を持つ少女が一番怪しいよね。そしてその横にいた黒いハンニバルが――リンドウさんだ」

 

「なっ――!?」

 

『あの時、黒い羽根を持ち帰ってもらっただろう? あれとリンドウ君のDNAパターンが見事に一致したよ』

 

「さらにあの少女は赤いアバドン……サマエルも従えていた。感知範囲と機動力はこのアラガミによるものだろうね。

あの少女が人間なのかアラガミなのかはまだわからないけど……僕とサカキ博士は、あの少女がシックザール支部長の言う『特異点』なんだと踏んでるよ」

 

 多少の勘違い(・・・・・・)を残して、一度も接触せずに神薙ユウとサカキは真実に辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 限界だ。

 何がかと聞かれれば、雨宮リンドウを押さえつけておくのが、だ。

 

 どうやって察知しているのか、最近はどの場所に居てもエイジスの方向を向いてはそちらへと歩を進めたがる。

 今までは海という絶対的な壁があったから行くに行けなかったようだが、今は海面を走ってでも行く勢いである。本当に走れそうだから怖い。

 

 呼応するようにシオも身体を青白く光らせる頻度が上がっている。

 

 もしかして、俺の思っているより事態は速く進んでいる……?

 

 ノヴァの母体が完成しているというのなら、シオを踏みとどまらせておく必要はない。

 神薙ユウ達の準備が終わる前に終末捕食を起こせるのなら願ったり叶ったりだ。

雨宮リンドウは……あぁ、そうだ。いいのがいるじゃないか。

ノヴァの母体を造ってくれたことには感謝しているが、それを制御しようなどと烏滸がましい事を考えているヨハネス・フォン・シックザールにぶつければいい。

 

 

 

 

 

よし、思ったが吉日だ。

 

シオを咥える。

 

「アァ……? エイジスへ……イクンダナァ……?」

 

 何故わかるんですかね……。

 まぁ面倒が無くて良い。

 

 雨宮リンドウは前傾姿勢……ハンニバル神速種がダッシュする時と同じ格好になった。

 え、マジで走れるの?

 

「サキニ……イクゾ……!」

 

 ドンッ! と。

 

 愚者の空母が傾いた。

 凄まじい脚力で蹴ったのであろう、今まで雨宮リンドウがいた場所は軽いクレーターになっている。

 海を見れば本当に海面を走る黒き竜人の姿が。

 

「キィ……」

 

「リンドウ……サマエル……イコウ……」

 

 やれやれ、俺の前を走るとはいい度胸じゃないか、雨宮リンドウ。

 最速は俺だというのに。

 

「キィ……」

 

 シオがひしゃげない程度の最速で持って雨宮リンドウに追いつく。

 

 高くまで白い水飛沫を上げて走る雨宮リンドウ、それにシオが当たらない程度に高度を保って泳ぐように飛行する俺、ぶら下がるシオ。

 

 

 もうゴッドイーター達の目を気にしなくてもいい。直線で――手加減しているものの――全力を出すというのは中々に心地よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『て、偵察班から入電です! 現在建設中のエイジス島へ向かって、アラガミの反応が2つ! 超高速で接近中! 調査班より入電! 愚者の空母周辺で異常な揺れを観測! ま、まだ!? 気象観測班から入電です! え? なに……これ……』

 

 インカムからではなく、アナグラ全体に響き渡る竹田ヒバリの声。

 立て続けに入電があった故の焦りは最初の2つで、最後は呆然としたような声だ。

 

「話している場合じゃないみたいだね……サクヤさん、アリサ。すぐに向かうから先に突っ込んだりしちゃだめだよ?」

 

『えぇ……待っているわ、リーダー』

 

『今度は、一緒に』

 

 そう言って2人との通信が切れる。

 

『超高速というと……サマエルというアラガミだろうね。あれはレーダーに捉える事がまだ出来ていないから、2つの反応というのはリンドウ君と、(くだん)の少女だろう。ユウ君、覚悟は出来ているか……なんて、聞くまでもないかな?』

 

「ふふ、僕だって躊躇(ためら)いはしますよ……。

 でも、目の前にしたら絶対に迷いません。本能に従って――どうにかします(・・・・・・)

 

『本当に規格外で……頼もしい奴だ。不甲斐ない弟の事を頼んだぞ、神薙ユウ』

 

『対ハンニバル用の装備がリンドウさん……黒いハンニバルに効くかはわからないから、みんな油断しないでね!』

 

『こちらの事は私達でなんとかするよ。だからゴッドイーター諸君。君たちは、君たちのすべきことをしてくれたまえ』

 

 サカキとリッカ、ツバキとの通信が切れる。

 

 ユウは改めてソーマとコウタに振り返った。

 

「さて、こういう状況だけど……2人はどうする?」

 

「ふん……どうするも何も……親父の、身内の始末は俺が付ける……それが息子の務めってもんだろ……」

 

「俺は……俺は、本当は、本当は怖い。ノヴァとか、リンドウさんとか、支部長が怖いんじゃなくて……母さんと妹を失うのが、本当に怖いんだ。

 だから――だから、戦うよ。守るために、支部長とも、終末捕食とも!」

 

 2人の意思を確認したユウは、にこりと笑う。

 

「それじゃあ行こうか。エイジス島へ……サマエル(あいつ)に負けっぱなしは嫌だしね」

 

 

 こうして、総ての意思は決戦の地、エイジスへと集う――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『気象観測班より入電……。各地にて、多量のアバドンが出現中……?』

 




疑問点矛盾点とかあったらどんどん指摘してくださいね!

無理矢理理屈こねくり回して設定付け足すか本文をどうにかこうにか変えますので!!

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