【完結】混迷を呼ぶ者 作:飯妃旅立
戦闘スタイルを決める。
まず、自己分析から始めよう。
アバドンの短所とはなにか。
第一に、攻撃力の無さだろう。
ゴッドイーター達に攻撃をせず、ただ屠られるだけの存在。
中のコア目当てじゃなければ見逃すゴッドイーターも多いだろう。
ただ、ゲームのアバドンの説明を見ると、神機使い達に危害を及ぼしたという事例は今のところ報告されていないと書かれているだけだ。一般人には危害を加えているのかもしれないし、戦っていないだけで攻撃力が全くないというわけではないのかもしれない。
第二にその図体の小ささだ。
オウガテイルやドレッドパイクよりもさらに小さい。全長で言えば人間よりも小さいだろう。大きく膨らんでいるので、体積はわからないが。
故に、ウロヴォロスなどの様な広範囲攻撃に向かない。
では逆に、アバドンの長所とはなんだろうか。
俺が真っ先に思い浮かぶのは、その速度および制動力だ。
アバドンの第一印象が『すばやい、すばしっこい』である神機使いは多いだろう。
ただ、速度だけならアバドンに並び、且つ高い攻撃力を有するアラガミは沢山いる。
着目すべきはその制動力だ。
初速0の状態から最高速度に至るまでのラグは無いし、急停止、急な方向転換をするのも無理なく行えている。一切の反動無しに、だ。
次に、レーダーやユーバーセンスといったスキルを以てしてもマップにアイコンとして表示されないという点だ。
先程述べた様に、アバドンの体躯は小さい。だが、それは他のアラガミと比べた際にのみだ。ゲームが俯瞰視点であるから解り辛いのだが、人間と比べればアバドンはそれなりに大きい。
だというのにアバドンはマップに表示されない。何故なのか。
そもそもあのマップはどのようにしてアラガミを判別しているのかという所を考えてみよう。
ゲームをやったことが或る物ならわかると思うのだが、その判別はだいぶ大雑把だ。
小型か中型か大型か感応種か。それくらいしか判別していない。
オペレーターも「中型種が接近」とか「大型種が接近」とかしか言わない。
これからわかること。
それは、あのマップはオラクル細胞しか判別してないという事だ。その証拠に、偏食因子を投与されている神機使い達の居場所はわかる。
神機使いとアラガミを区別する方法は、偏食因子そのものの違いだろう。
P53やP66、P73偏食因子のみが『味方』として区別されるのである。
話を戻そう。
これらのことから、アバドンがマップに表示されない理由は、アバドンを構成している物がオラクル細胞でない、または観測できないオラクル細胞であるという事が伺える。
ゲームの設定上、オラクル細胞でないアラガミはいない。よって、前者はありえない。
だから可能性としては後者、人類が未だ観測する事の敵わないオラクル細胞であるという可能性だ。
発見したばかりのはずのレトロオラクル細胞を持つキュウビでさえ観測する事が出来たマップに観測されないオラクル細胞。
それは、混じりっ気無いレトロオラクル細胞の逆、混ざり合いの果てのオラクル細胞なのではないかと俺は推測する。
フェンリルの観測技術がアバドンに追いついていないから、マップに映らないということだ。
さらにこの考察を裏付けるように、アバドンを捕食するとAチケットというコアが手に入る。
このAチケット、なんと
混ざり合いの果てであるが故に、総てのアラガミに対応したコア。
何物でもないレトロオラクル細胞の対極。
俺はこれを、カオスオラクル細胞と名付ける事にした。変化の果てのオラクル細胞だ。
この考察の果てに、俺はあるものを思い浮かべた。
俺がアバドンになる前の世界の、某死神漫画。その主人公。
開放による持てる力をその小さな刀身に凝縮する事で、高速・長時間での戦闘を可能としたソレと。
総てのオラクル細胞をこの小さな身に凝縮する事で、高速及び制動力を得たアバドン。
――似ている。
先ほど述べた短所が長所になった。
俺の戦闘スタイルは決まった。
ドレッドパイクの鈍重な体当たりや、オウガテイルの飛び掛かりだけでも神機使いは死ぬのだ。
高速で飛び回る、意思のある小型の弾丸。
それは一般人には勿論――神機使いにも脅威となるだろう。
「キィ……」
さぁ、赤い雨は止んだ。
行こうか。
アバドンはベリたんだったんだよ!!(集中線)
後の自分の考察との食い違い修正(エボルブ→カオス)20160709