俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。 作:nowson
※本編にあまり関係ないため閑話にしました。
マックス缶コーヒー
通称マッカン
言わずと知れた「甘すぎるコーヒー」という言葉が似合う千葉発祥の缶コーヒー。
かつて甘いコーヒーとして人気を二分したカネボウのベルミーコーヒー無き今、その地位を不動の物としている。
このマックスコーヒーという飲み物は実に興味深く面白い。
外観は黄色い缶の色に茶色の文字、こるれぞマッカン!!という独特なデザインだ。
缶のサイズは業界用語でM缶(250ml)であり、缶コーヒーの多数がS缶(190ml)という規格が多い中、M缶というのは非常にお得感がありその独特な味わいの他に、コスパの面でも非常にそそられる。
※ちなみに350mlはA缶、500mlはJ缶と呼ぶ。
このマックス缶コーヒーを実際に飲んでみるとどうだろう?
マッカンを手に取る、小さすぎず大きすぎず手に馴染むM缶……素晴らしい。
右手に持ったマックス缶コーヒー、プルタブを顔の方に向ける、ここでプルタブを開けるその前に注目してほしいものがある。
人は手に持って物を見る時手はどういった姿勢になっているかお分かりだろうか?
ちょうど手のひらの部分と顔が対面する、これを念頭に置いてマッカンを持って欲しい。
何と!プルタブを顔の方に向けて持った場合、原材料名や栄養成分表示がちょうど手のひらの部分で見れるようになっているのだ。
さらに缶を良く見てみると下部分にやや控えめなサイズながらも目につくような赤い枠で「軽く振り、少し待ってから、あけてください」
洗練されたデザインの中で出しゃばる事無く、それでいて気付いていただけるよう、考えつくされた注意書き、お客様に少しでもおいしく飲んでいいただきたい心使い、日本のまごごろである「お・も・て・な・し」をかんじることができる……感動した!!!
テレビのサプリメントのCMで大画面の片隅で小さく“※個人の感想であり、効果には個人差があります”とか書いてる奴らも見習って頂きたい。
でもそれでは左利きの人は無視で生まれながらにしてマイノリティ、つまり少数派をないがいろにしている!!と思うだろう。
今度は左手に持ち同じようにしてみてほしい。
するとどうだろう、洗練された黄色と茶色のコントラストでこれでもかと言わんばかりに。
MAX COFFEE
限りある缶の面積の中で左利きの方にもせめて目で楽しんでいただく為の配慮、人の和を尊ぶその心使いに甘さと共に人の心を包み込む暖かさを感じる。
目で楽しんだ後はいよいよ味わう時だ。
プルタブに指を掛けプシュッと小気味いい音を鳴らし飲み口をあける。
個の考えにもよるだろうが私個人の意見を言わせて頂くと、珈琲は焙煎30日 挽いて3日 淹れて30分
というのが珈琲を美味しくいただく3原則だと思っている。
缶コーヒーというのは淹れて一番おいしい状態をそのまま保存していると言っても良い。
したがってあけた時点が一番薫りが立ち旨い、特にコーヒーは数十種類にもなる香りの成分の集合体でありその薫りによって味わいに深みや広がりを持つ、つまり薫りを味わう事無くして珈琲を味わうことができないのだ。
ワインの香りを楽しんでから飲むように、珈琲もまずは口をつける前に薫りを楽しんで欲しい。
以上の点を踏まえて、開けたてのマックス缶コーヒーの薫りを嗅ぐ。
豆自体はマンデリンのような重厚さやブルーマウンテンの完成度のような上質さはないものの、今まで飲んだ缶コーヒーのような、いつも通りのホッとする安心感
そしてそれらをやさしく包み込む練乳の優しい香りに思わず頬が綻ぶ。
いよいよ飲む番だ。
口に含んだ瞬間口に広がる強烈な甘味、だがその後に続くコーヒーの薫りは一般的なコーヒー牛乳とは違いはっきりとした味わい、まさにコーヒーの名に恥じることのない出来栄えだ。
恐らく、このマッカンを楽しむ人間は、ただ甘さを楽しむ為に飲んでいるのではない。
甘いだけならコーヒー牛乳でもいい、それどころかコーヒー牛乳の方がコスパにも優れる。
それでもマッカンを飲む理由……。
それは甘さの質だろう。
まずは栄養成分表示に注目していただきたい。
缶のラベルにはこう表示されている。
100gあたりの表示に対し。
エネルギー48kcal、タンパク質0.6g、脂質0.7g、炭水化物9.8g、ナトリウム32mg
これを見た人は。
炭水化物多すぎだろ!
どんだけ砂糖入ってんだよ!
こう思うだろう、しかしこれは大きな間違いである。
一般的に清涼飲料水は嗜好性を高めるため、かなりの量の糖分を有している。
角砂糖1個5gと仮定した場合、マッカンは100gあたり2個1本250mlに対しておよそ5個入ってる計算になる。
では他の清涼飲料水に含まれる糖分はどうか?マッカンの250mlにして計算する。
ファンタオレンジ 100g当たり3個 250ml当たり7.5個
コカ・コーラ 100g当たり2.8個 250ml当たり7個
オロナミンC 120ml 10個 250ml当たり20個
TBCグレープフルーツ 240ml当たり7個
ジョージア・エメラルド 190ml 3個 250ml 4個
大まかな計算だがこうなる。
見てお分かりだろうが「甘すぎる!ごくごく飲めない」と言われるマッカンは他の清涼飲料水と比べ糖分自体は決して多くない、それどころか同じジョージアと比べても1個しか違わない。
だが、実際に飲み比べるとその差は1個以上に感じる。
では、何故そこまで甘さを感じることができるのか?
マッカンの原材料名を見ていただきたい。原材料名は多く含まれている順番に表示される。
清涼飲料水など大抵最初に果糖ブドウ糖液などくるはず
マッカンの場合はどうだろうか?
原材料名
加糖練乳、砂糖、コーヒー、香料、カラメル色素、乳化剤、カゼインNa、安定剤
一番最初にくる加糖練乳、これこそがマッカン最大の特徴なのだ。
加糖練乳とは牛乳を濃縮した液体に砂糖などの糖分を加え作られたもの、一般的にイチゴなどにかけて食べるが、マッカンは牛乳やクリームの代わりにそれを入れているのだ。
つまり商品製造過程の際。片やコーヒー原液にミルクや牛乳、片やコーヒー原液に練乳。
前者はミルクで薄まるが後者はそこまで薄くならず、それでいて練乳の加糖の恩恵を受けることができる、マッカンの最大の特徴はこの練乳なのだ。
これによりコーヒーと甘味、どちらも薄まる事無くマッカンは純度の高い甘さを感じることができるコーヒーとなる。
つまりコーヒーと甘味それぞれの“本物”を味わうことができる日本が世界に誇れる素晴らしい飲み物なのである。
そんなマッカンを愛する一人の男が千葉県総武高校にいた。
いつもの自動販売機、同じリズムで小銭を入れ、同じボタンを押す。
それが総武高校における彼の日課であり、楽しみであり、癒しだった。
右手に財布を持っているためか左手にマッカンを持つ、プルタブを顔側に寄せふと目に入るMAX COFFEE のロゴ。
世間や青春が彼に欺瞞に満ちた世界をくれるなら、マッカンは彼に本物をくれる存在なのだろう。
そのロゴを見つめる目に、いつもの欺瞞が反映した瞳ではなく、本物を前に喜びを感じる年相応の少年の目。
プシュッ
プルタブを開け香りを楽しみ、それから一口。
いつもの香り、いつもの甘味がのどを過ぎるまで、数秒だが彼に癒しを与え余韻と共に後味を残し消えていく……。
「やっぱ疲れてる時はこれだな」
体育で疲れた体にグリコーゲンが染みていく。
千葉に生まれてよかった……
千葉で育ってよかった……
千葉だからこそマックス缶コーヒーに出会えたから。
千葉とマッカンへの感謝と共に彼、比企谷八幡は今日もマッカンを飲み干す。
国語あまり得意ではないので感想、並び誤字訂正非常に助かります。
次の更新は早ければ今週、遅くても来週中には投稿したいと思います。