俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。 作:nowson
総武高対海浜高校の練習試合
インハイ代表校である海浜が勝つと思われた試合、1セット目はその予想に反して
総武高が先取。
(予想以上に上手くいったな)
八幡は0の数字に戻される得点板を見つめながら汗を袖で拭う。
選手層、経験、明らかに各上の相手に対し互角以上の戦い。
選手たち個々の活躍も大きかったが、1セット目の功労者は八幡だった。
3年ぶりの本格的な試合、相手は海浜、普通であれば自分のプレーだけでも精一杯な上にポジションは司令塔であるセッター。
敵味方問わずコートを把握し、現状、今後の展開、さらには相手からの見え方、選択肢のリスクリターン、それらを踏まえ瞬間に選択肢を絞りプレー。
ただコート外から何となくボールを追ってプレーを見ている観客には派手にスパイクを決めた七沢達が印象に残るだろうが、コート外から見ていた経験者含む数人は八幡のプレーに舌を巻いていた。
(やられたな……)
そんな中の一人、海浜の監督が八幡をチラリと見る。
(中学の試合を見た時にも思ったが技術だけじゃなく試合運びが上手い)
ルールというスポーツにおいて付きまとう制約、大抵のプレーヤーはそのルールに対して
“守る”という解釈をするが八幡の場合それを“使う”という言葉が当てはまる。
サーブを打つ時のルーティンで8秒ギリギリに間を作り相手のペースを乱す、審判と駆け引きをし手札を増やす。
(手札の切り方も上手かった)
ここは抑えなければいけない場面、ここを切れば相手に流れが行かない場面、コートの外から感じる事を、まるでコート外にいる分ってるかのような選択。
(もちろん総武高のメンバーの個の力が高いからこそだろうが)
(ウチのチームがアタッカーとセッターが“連携”し多彩な攻撃をするチームとすると、総武高は高い個の力を比企谷が“繋ぐ”チームという事か)
海浜の監督はもう一度八幡を見る。
(周りに比べ弾んだ息に汗、ブランクがあるのは本当なのだろうな)
(正直、総武高がここまでとは思っていなかった……それぞれがウチ以上のストロングポイントを持ち、それを上手く使ってくる)
1セット目を振り返り、総武高のプレーを思い出す。
(だが、奴らに無くウチにあるもの)
総武高から山北の方に目線を向ける。
(ウチには“保険”がいる)
無言を貫いていた海浜の監督が口を開く。
「お前ら、この中でセット取られると思ったやつはいるか?」
その言葉に海浜のメンバーは各々が複雑な顔をする。
「……いないよなぁ、俺もそう思ってた。だがセットを取られた」
(てか、キャプテンの忠告聞かなかった監督のせいじゃ?)
流石にそんな事言えないけど、小菅は心の中でツッコむ。
「もしこれが本番なら取り返しのつかない事になっていた。それは分かるな?」
ハイ!
「あいつらは強いが穴も大きい、付け入るスキはたっぷりある。だから、うちのバレーをしろ!そうすれば勝てる!」
ハイ!!
1セット目を見て彼が分かった事。
確かに総武高校は強い、恐らく個の力やフィジカルにおいてはウチをも凌ぐ、だが足りない物が多すぎる。
(ここが保険の使いどころ、そして手を打たなければいけないタイミングだ)
2セット目に入り、仕掛ける場面はここしかない、そう踏んだ海浜の監督が下した決断。
「2セット目はローテを回す、そして攻撃は基本、山北にトスを集めろ、前衛だけじゃない後衛でもトスを回せ、連携は2割以下で構わん」
ハイ!
―総武高側―
それぞれがスクイズボトルで水分補給をしながら、話し合いをしている。
「2セット目どうする?ミーティング通りで行く?」
七沢は軽く口を潤すように水分を入れ軽く飲み干すと、汗を拭きながら口を開く。
「ミーティング通りでいいだろ、現状それしか手がないだろうし」
「まあ俺らがブレイク稼ぐなら今の形が理想だしな」
2年の二人が続けて口を開く。
「……」
(1セット目は、いい形でセットを取れたな)
八幡の頭にはすでに2セット目の展開が浮かんでいた。
2セット目は海浜からのサーブ、前衛は八幡、稲村、飯山の3人、1セット目に見せたブロードの動揺、セットを先取した事を踏まえ八幡、稲村、飯山と続くサーブで畳みかけ、立て直すスキを与えずブレイクを稼ぐ。
確かに現状はそれしかない、けど何か引っかかる。
セットを取ったという事は追う側から負われる側になった事を意味する。
そんな状態の海浜が何もせず向かってくるとは思えない、八幡は一抹の不安を抱いた。
―体育館ギャラリー―
「海浜はローテを回してきたな」
コートの中でスターティングにつくメンバーをみてOB1が呟く。
「ああ、いつもなら山北を前衛に長く置くためのローテをするんだけどな」
「山北からのサーブでブレイクポイント稼ぐつもりか?」
インハイ予選で戦った時はそのローテでしか来なかった、なのに今回は自分たちのセオリーを外している。OB2とOB3が不安げにコートを見る。
「そうだといいが」
「なんだ清川?」
不安げな言葉をつぶやいた彼に恩名が反応する。
「あの監督が動いたんだ、何かやってくるかもな」
インハイ予選での試合、1セット目こそ総武高がとったものの2セット目、山北に総武高が対応できている、そう判断した海浜の監督がすぐさま策に出たのを思い出す。
「どういうことだ……あっ!」
総武高校 0 ― 1 海浜高校
山北のジャンプサーブが決まり、サービスエースをとられてしまう。
「前衛に稲村と飯山、後衛には宗と温水がいて守備も良い。稲村と飯山に宗のバックアタック、連携に個の力で攻撃力も高く守備も良い……ウチの一番強いローテがここだ。海浜はそこに山北を当ててきた」
「このターンを潰す気か?」
「いや、単純に俺たちの力が強いって見せたいんじゃないか?むしろ弱いローテに当てた方がブレイク稼げるだろ」
「確かにな、でもさ……比企谷だっけ?あいつから始まる稲村、飯山、この三連続のサーブは強力だ。それに対して山北は後衛になる、海浜にとって不利じゃないか?」
OB達がそれぞれに口を開く。
「それでも海浜にはやる意味があるんだろ、あの監督が何もしないわけがない」
ローテを回してきたことには意味がある、清川はコートをジッと見つめた。
「サーブカットは俺と温水の少数精鋭で行く、長谷はカバーに専念してくれ、もしかしたらDパスになるかもしんない」
攻守の軸になっている七沢が指示を飛ばす。
「はい!」
「分かりました」
サーブカット二人体制が意味する事、レシーブの強い二人が広範囲を守る。
(先輩たちがいたチームと今は違うんだ!やれることをやって、試せることは何でも試す)
最悪、CかDパスでもいい、高く上げさえ出来ればウチには優秀なセッターがいる、仲間を信じレシーバーの二人は腰を落とし構える。
(稲村の変態打ちの勢いが効いてる状態で2セットをと思ったんだが、まさか山北先輩をぶつけてくるとはな)
やられた、そう心の中で呟きながら八幡はサインを味方に向ける
メンタルが試合に及ぼす影響、それを考え2セット目に入った時、9割方八幡の理想としていた展開だった。
稲村のスパイクで流れに勢いが出て、次のスタートも同じローテから。
相手ブロッカーは否応無しにレフトにいる稲村に目が向く、そうなると飯山の速攻、さらには後衛にいる七沢のパイプも交え海浜のブロックを翻弄し、相手を再び飲ませ、ペースを乱せる事がやりやすくなる。
そう思い描いていた構図は一瞬で崩れたのだ。
「……」
八幡は海浜側のベンチをチラッと見る。
(やっぱ監督いるといないは違う、ちゃんと見てやがる)
この差は想像以上に大きい、苦しい戦いになる。
そう感じ取ったのだろう、深く深呼吸しプレーへと頭を切り替えた。
「あっ!」
広い範囲をカバーしている為か、温水はギリギリで飛びつくもボールを弾いてしまう。
「くそっ!」
ピィィィィ!!
総武高校 0 ― 2 海浜高校
「総武高校には大きく三つの弱点がある」
海浜の監督が呟く。
「弱点?彼らにですか?」
その言葉が意外だったのかマネージャーが疑問を投げかける。
「そのうち分かる、ローテを回したのはそのためだ」
(総武高校の弱点、一つ目……それは守備。それにより出てくる二つ目の弱点、選手層)
先ほどのサーブレシーブなどが正に良い例だった。
いくら個が強くても全体ではどうか?せめてリベロがいればもっとプレーが繋がる。
(そしてこの二つが浮き彫りになった時、三つ目の弱点が毒のように効いてきて4つ目の弱点を自覚することになる)
こっちの思い通りになった、海浜の監督はコートを見つめ軽く笑みを浮かべた。
(ここは流石に切らないとマズい)
八幡がメンバーに見えるようにサインを向ける。
山北が先ほどと変わらないコース、変わらない強さでジャンプサーブを打つ!
(いつまでもやらせるか!)
打点の位置から、離れるボール。強さ向き、打音、さっきと同じのが来る!そう予測した温水が素早く回り込み正面で捉え綺麗なAパスを八幡に返す。
(うそぉぉぉん!?)
無表情だけど動揺する海浜の監督。
(ナイスだ温水!)
八幡はパスに合わせジャンプ。
稲村はライトへブロード、飯山はセンター、さらにバックセンターに七沢が構える。
(どれで来る?総武高はどれで?)
1セット目のブロードが頭に残っていた海浜のブロッカーがライトに二枚つく。
「馬鹿!囮だ!!」
この状態で比企谷が素直にライトに上げるわけがない、山北が声を荒げる。
「えっ?なっ!!」
八幡が下した選択、それはライトへのトスでもセンターでもバックセンターでもない。
ツーアタック
アタッカーに完全に意識が向き、稲村が向かうライト、飯山と七沢が構えるセンターにつられ空いたレフトへのフェイントのツーアタックを決める。
意表を突かれた海浜は反応すら出来ず、自コートにボールが落ちるのをただ見つめるしか出来なかった。
ピィィィィ!!
総武高校 1 ― 2 海浜高校
「……な、なんだと」
海浜のブロッカーがあっけにとられた顔で呟く。
「ここで決めんのかよてめぇ!」
「痛い痛い痛い!」
飯山はガハハと笑いながら八幡の背中(ローテーターカフ付近)をバシバシ叩いている。
(背中に目でもついてんのかな、この人?)
視界外のブロッカーが見えていたように無人の場所に落とした八幡の視野に温水が舌を巻く。
「……たく」
(海浜に行きかけた流れは何とか切った。そして、これで今ある手札は見せた。あとはプレイに集中するだけだ)
叩かれた場所をさすりながら、ため息を吐いた。
「流石お兄ちゃん、上手い!」
「えっ?今のそんなに凄いの」
小町の言葉に結衣がパァァと笑顔になる。
「ガハマちゃん、凄いんじゃなくて上手いんだよ」
陽乃がツッコミを入れる。
「今のプレーはただ、相手の頭にない手札を出して点を取っただけじゃない、切れかけた流れを戻し、まだイケる!こっちにそう思わせる、流れを呼ぶプレーだ」
「ああ、そんでああいうプレーは相手の士気を下げて味方の士気を上げる。凄いっしょヒキタニ君」
「すごいなあいつら」
「ああ、俺たちはあんな連携できなかったからな」
OB達も今のプレーに唸っている。
「もしインハイ予選の時、比企谷がウチにいて俺がリベロで飯山と稲村を使えてたら―――」
「言うな、俺たちの高校バレーはあそこで終わり、後はあいつらに託した。それが全てだ」
自分自身にも言い聞かせるように清川は恩名の言葉にかぶせ言う。
「清川……」
(ここからだぞ、頑張れよ皆!)
「比企谷先輩ナイサー」
ネットの下から転がって来たボールを長谷が掴み、八幡へ放る。
「……」
八幡はジッとコートを見つめ、ボールを持ったまま軽く深呼吸をする。
海浜の選手たちは動揺を隠せてないのか、目線が定まらず、どこか集中できてない様子。
(ツーの動揺がまだ残ってる、あの手で行くか)
サーブ開始の笛が鳴る、八幡はいつものルーティンに入らず笛の音から間髪入れず軽くジャンプ。
狙う先はジャンフロでコーナーでも無く、後衛の間でも無い。
ネットギリギリに落ちるサーブ。
今まで8秒ギリギリでじらしてきたのが、今度は動揺が残ってる所へ間髪入れないサーブ。
海浜へ容赦なく畳みかける。
(マジかよ!)
ギリギリで反応したセッターが何とか滑る込み拾うがオーバーで取れない低いパス。
「カバー!」
すぐにカバーを呼び、周りから邪魔にならないようその場から離れる。
「山北!」
俺が打つ!そう判断し後方に下がり助走をつけてきた山北がセンターバックからのバックアタックを打つ。
3枚ブロックだがそれをギリギリ躱し後衛の八幡へ
「なっ!?」
昔よりはるかに強くなった山北のスパイクに押され、八幡はDパスを上げてしまう。
「オーライ!」
すぐに温水がカバーに入る。
「レフト!」
ここはウイングスパイカーの稲村に繋ぐ、レフトへ稲村の好みのトス、ネット近めの高めへ丁寧なオープンを上げる。
「クソッ!」
打つコースを防がれた三枚ブロックにシャットアウトされ総武高側のコートにボールが落ちる。
ピィィィィ!!
総武高校 1 ― 3 海浜高校
「ふぅ……」
(今のは危なかったが狙い通りに行った)
海浜の監督がチームの売りでもある連携を使わずローテを回し、山北中心の攻めに変えさせた理由。
1セット目の最後のプレーで海浜に走った動揺、総武高の流れを完全に断ち切る事、セットの最初にあえて相手の強いローテに当てて動揺を誘う事。
そして何より
総武高の狙いである、八幡、稲村、飯山3人のサーブでのブレイク、その対策を立てる事。
3人のサーブはジャンルは違うものの、どれも強烈で崩される率は大いに高い。
海浜のように連携がウリのチームにとって重要になってくるのがレシーブ。
セッターへ綺麗にボールが返るからこそ多彩な攻撃に繋がりリズムが生まれる。
だが総武高のサーブで崩されたら?海浜はリズムに乗れないまま総武高に流れを再び持っていかれるかもしれない。
心身とも、まだ未成熟な高校生同士の戦い、劣勢を立て直す術をまだ確立できていない。
そのままセットを獲られてストレートで負ける可能性も出てくる。
(それだけは防がねばならん)
そこで海浜の監督は、山北にトスを集めさせた。
監督に保険と位置づけられる山北の役割、連携が使えない時に決める事の出来るプレーヤー、オープンで勝負ができる選手。
サーブで崩されてもボールが上がれば、高いトス一つあれば攻撃に繋がる。
初めから山北を使う事が頭にあった選手たちはCパス、Dパスが上がっても動揺することなく山北に繋ぐ。
強力なサーブにも対応できる。
チームが苦しい時、頼りにされる保険、絶対的なエースという存在。
そして海浜の監督の采配は的中することとなる。
総武高校 3 ― 6 海浜高校
八幡、稲村、飯山と続くサーブでブレイクを取れずローテが流れ、逆にブレイクを取られてしまう。
流れが切れかかる。
それが表れるのはコートでも、ベンチでもなく……観客。
応援してるからこそ、落ち込む、ため息が出る、つい愚痴が出てしまう。
「ああ~、だんだん離されてるよ」
「仕方ねぇよ、相手めちゃ強いとこなんだから」
「てかさ、なんでセッターはあのデカい2番に何でトス集めないんだ?1セット目とかスゲェ強烈なスパイク打ってたじゃん、あれじゃ勝てねぇよ」
何となく試合を観戦に来ていた一年生が適当な事をほざく。
「……(イラッ)」×数人
ある者は親しい者を馬鹿にされた、ある者は素人が知ったかぶりしてんじゃねぇと感じた、その言葉を聞いた数人が不快感をしめす。
そんなうちの一人、雪乃が笑顔で怒りながら近づこうとした時だった。
「知ったかぶりしてんじゃねぇよ、バレーは強いスパイク打つ競技じゃねぇんだ」
「え?」
声を掛けたのはOBである恩名、バレーのことは無過ごせない
「飯山のやつ、スパイクは高さとパワーで打ち下ろしてばかりでだから目立つけど、それしかできねぇんだよ。フェイントやればバレバレだし、コースも全然狙えないから足長いスパイク打つとアウトばかり、打ち下ろしてばかりだから、ワンタッチ狙いでブロックされたら簡単に拾われるし、バレたら囮にもならなくなっちまうんだよ」
元チームメイトでセッターだった彼がその苦悩を語りだす。
「……えと、あの」
「恩名、何も知らない後輩に絡むな!ごめんな、こいつも一応セッターだったからその辺りうるさくてさ」
突然3年に絡まれ萎縮している1年生に清川がフォローを入れる。
「い、いえ、こちらこそすんません」
「ただ、あいつらは1,2年でだけで、しかも助っ人入れてギリギリの人数で格上相手に戦ってるんだ、だから応援してやってくれると嬉しい」
「は、はい!!(イイ人だ~!)」
恩名と比べ相対的に清川がイイ人に見えたのだろう、大人な態度の清川をみて大きく返事をする。
「ところで助っ人て誰です?」
「貴方がさっき馬鹿にしたあの男よ」
「えっ!?」
(こ、この人は雪ノ下先輩!!)
「あ、あの人、バレー部じゃないんすか?」
「彼はウチの部員よ、一応ね。だから馬鹿にしないで貰えるかしら不愉快だわ」
「す、すんませんでした」
てっきりバレー部だと思ってた。素直に謝る一年生。
「あれ?荻野先生」
その近くにいた荻野に気付いた清川が声を掛ける。
「お、おう(どうしよう、気まずい)」
「来てたんですか?」
「まあ一応……」
両者とも絶妙に微妙な気まずい空気が流れる。
(この人は確かバレー部の……という事は)
『練習試合の相手、海浜だってさ……』
『……は?何考えてるの!?無茶だろ!!』
『海浜ってそんなに強いの?』
『強いも何も全国常連校、そして今年のインハイの代表校、3年もそのまま残ってるし千葉で一番強いチームだよ』
『何でまたそんなチームと?』
『うちに練習試合の申し込み来たみたいで、顧問が勝手に引き受けたんだ』
雪乃の脳裏に浮かぶ七沢が奉仕部に飛び込んで来た時のやり取り。
(随分分かりやすいのね)
雪乃は軽くため息をつくと気まずい空気の中へズイズイと入って行く。
「もしかして海浜と勝手に練習試合組んだこと気にしてるのでしょうか?」
確信に迫る言葉をズバッと言い放つ。
「!!」ギクッ
何故それを!?思わぬ言葉に固まってしまう荻野。
「もしそうなら、余計な心配しない方が良いと思いますが」
「えっ?」
「彼ら、ちゃんと海浜に勝ちますので」
雪乃はそう言うとコートをジッと見つめる。
「な、何を言ってるんだ雪ノ下」
「私、暴言も失言も吐くけど、虚言だけは吐かないので」
荻野に目線を戻し力強い目で見つめ
「だから、勝ちます」
確信している、そう態度で示すように強く自信をもって、自分の言葉で伝え向きを変えると元居た場所へともどる。
((か、カッコイィィィィ~~!!!))
綺麗どころがやると絵になる、そのカッコ良さに清川と恩名が震える。
(私にここまで言わせたのだから勝ちなさい……比企谷君!)
雪乃はコートにいる八幡を笑みを浮かべ見つめ、心の中で八幡に檄を飛ばした。
「……」
「どうしたのだね陽乃」
「何でもないよ静ちゃん」
「そうかね(鉄仮面が一瞬取れてたぞ)」
妹の様子を、陽乃はどこか嬉しそうに見ていた。
次回の更新は未定です。