俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。   作:nowson

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オリキャラが出ます、苦手な方はご注意を。




※オリキャラ
七沢 宗
中学からバレーをしているバレー部キャプテン
バレー得意以外のスペックは平均値

その為葉山がいる2年F組ではそこまで目立たない


やはり比企谷八幡の活躍は目立たない

バレーボール

日本の体育においては協調性を養うスポーツとして扱われ、体育や球技大会などで体験した人も多いはず。

総武高校の体育においてもそれは例外ではなく、体育館では今まさにバレーが行われていた。

 

「ドンマイ!ドンマイ!次で決めよう。」

協調性という言葉が大好きそうな少年葉山隼人の声が体育館に響く。

 

「おう!」

「まかせろ隼人君!」

葉山を掛け声にチームが答える。

 

 

ミスした時は励まし、成功した時は褒める、チームの輪を何よりも尊ぶ彼らしいチームのまとめ方。

チームの皆も憧れの葉山君に声をかけられた為か「(葉山君に褒められた)」「(葉山君がフォローしてくれた)」と気持ちに張りが出てチームが一丸となっていた。

 

 

「皆の力を一つにするぞ!!!」

「オウ!!!」

かなりくさいセリフなのだが、葉山がやる為か絵になり、皆も自然とそれに乗る。

 

 

 

 

 

 

 

……対する相手チーム

 

 

 

 

 

「ナイスサーブだ戸塚!」

そんな相手に目も触れず協調性という言葉などどうでもよさげな比企谷八幡が戸塚にのみ声をかける。

 

「えへへ」

試合で動いた為か、または八幡に褒められた為か頬を赤らめ照れる戸塚。

 

比企谷チーム(((((と、とつかわいい!!)))))

 

 

「てめぇら!戸塚の為にも絶対勝つぞ!!」

 

「おう!!」

八幡の檄に威勢よく返答するチーム、普段なら「何でヒキタニの言う事なんか聞かなきゃならないんだよ?」となる所だが。戸塚のオートスキル“天使の微笑み”によりこちらもある意味チーム一丸となっていた。

 

 

 

「チーム戸塚!ファイ!!!」

「「「「「オーッ!!!!」」」」」

円陣を組み気合いを入れる、もはやある意味ドルオタである(チーム名変わってるし)。

 

「あ、あはは……」

戸塚は自分のチームメイト達を苦笑いで見るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

現在の点数は

葉山チーム21-23戸塚(比企谷)チーム

 

 

葉山チーム圧勝の予想が大半だったのに対して試合は大接戦、それどころか八幡のチームが押していた。

 

 

団体競技において個の力以外に重要になってくるのはチーム一人ひとりの平均値、周りが一定の水準に達していないと個の力の効果は当然低くなる。

 

 

バスケ界で、某ゴリラなキャプテンも仲間に恵まれず埋もれていたが、最終年でようやく最高の仲間とともに素質が開花したのは有名な話。

 

野球で例えると、いくら良いピッチャーがいたとしてもそれをとれるレベルのキャッチャーがいなければ力は発揮できない、バレーボールも同じでいくら優秀なレシーバーがいてもトスを上げる人がうまくなければスパイクの打点がズレまともに打てず決定率が落ちる。

 

 

葉山チームの場合、葉山隼人がその持って生まれたフィジカル(身体能力)と運動神経によりアタッカーとしての能力はあるものの、周りがスパイクに繋がなくては意味もない、打ちにくいトスに対し中途半端なスパイクになるのがオチだ。

 

またチーム内の空気は「葉山に繋げれば」「それでも葉山なら何とかしてくれる」という一種の信仰とも言える状態だった、勝つためにではなく葉山のためにプレイしている印象だ。

 

その為、無理にカット、トス、スパイクの形に持っていこうとするため不用意なミスも多い。

 

 

 

対して八幡は試合に入る前に作戦を立てていた。

 

普段の彼なら怠い、負けてもいいから適当に流そう、だっただろうが今回は戸塚と一緒、負けられなかった。

(というかチーム決めもそうだが好きな子に良いところを見せようとする男子のアレな心理状態の為、八幡の頭からは負けという選択肢が消えていた)

 

 

「俺から出す作戦はトスやレシーブで綺麗にとろうとするな、だ」

 

「えっ?綺麗にとっちゃダメなの?」

戸塚から疑問の声が上がる

 

「もちろん綺麗にとることは悪い事じゃない、が経験者でもない限りそう上手くはいかない。さっきパス練習した時もそんなにラリーがつづかなかっただろ?」

 

「それはそうだけど、レシーブとかちゃんと取らないと試合にならないべ?」

 

「別に取るなって言ってるわけじゃない、ボールを高く上げる、後ろに逸らさない、最悪1回で相手コートに返ってもいい、それだけだ」

 

「それじゃあ相手のチャンスになるだろ」

モブからも当然反対の声が上がる

 

「そりゃ相手が6人とも葉山や七沢みたいな奴だったらチャンスだろうが、今回は葉山以外どんぐりだ…こっちがちゃんとコートに返してればそのうち相手が勝手に自滅する」

 

「でも、ほんとにうまくいくのか?」

クラスにおいて信頼のない八幡の言うことだけあって当然のようにモブは半信半疑になる

 

 

 

 

「……あの」

戸塚はモブ達に声をかける

 

 

「僕は八幡の作戦に従うよ」

 

「……えっ?」

 

「じゃあ俺もヒキタニ君に従うべ」

 

「ええ!?」

普段から八幡と仲良くしてる戸塚ならともかく、戸部が言った事にモブから驚愕の声が上がる。

 

「……まあ、二人が言うなら従うよ」

仮にも戸部はカースト上位、葉山の腰ぎんちゃくでも何気に発言力はある。

 

「よろしくたのむ」

 

 

そんなやり取りがあったが、いざ試合が始まるとこの作戦が功を奏した。

 

確かに葉山のプレーには目を見張るものがあった。

サーブはアンダーではなくフローター、レシーブやトスも素人とは思えないレベルでこなし、適当に上がったトスも何とか繋げ相手コートに返す。事実、チーム得点のほとんどは葉山だ。

 

だが、打ち返されたボールも八幡のチームはミスを最小限に抑えなんとか拾うことができていた。捕るのが難しい位置にとんだボールはカットが無理だとしても、自分のとれる範囲にきたボールは不恰好ながら上げていた。また、後ろに逸らさないように高く上げることで前に飛ばなくても他のメンバーがカバーすることができチームプレイとしても機能した。

 

経験者が集う部活動の試合と違い、球技大会や体育の試合では極端な場合を除き、緩やかな放物線のアンダーサーブでもサービスエース(サーブで決め点数を取る事)が決まることが多い。つまり自チームにとってチャンスボールのはずがピンチになるパターンが多いのだ。

 

ミスをカバーしあう八幡のチームに対して葉山のチームは彼のワンマン、葉山の力を生かすことができない分、八幡のチームが上だった。

 

何より八幡が得意の観察眼でコート全体を見渡しチームを上手に動かし、相手から返ったボールに対し誰が捕るか即座に指示をだし、常にカバーすることを頭に入れながらのプレー。相手コートに返す際、相手の嫌がりそうな場所、レシーブだと地味に取りずらい回転を加えて返す。

 

いわゆる司令塔として、根暗な黒子役としてコートを支配していた。

 

 

 

 

 

 

ピィィィー

審判の笛が鳴り試合再開。

 

 

先ほどサービスエースを決めた戸塚のサーブからスタートだ。

 

「えい!」

テニス仕込みの綺麗なフォームから繰り出されるフローターサーブ。ボールにしっかりとミートしたサーブは、戸塚の華奢な見た目と違い力の乗った力強い低い弾道を描き、かなりの速さで相手コートに向かう。

 

正直、素人相手には魔球みたいなものだ。

これが普通の素人なら正しい打点でレシーブすることができず後ろや横に逸らすだろう……が前衛の葉山が持ち前の運動神経で反応しジャンプし後衛に行くはずだったサーブを無理矢理オーバーハンドで止める。

 

 

「大岡!頼む」

 

「任せろ!」

指示を受けた大岡が葉山に向けてトスを上げる。

 

綺麗な放物線が葉山のいるライト方向、アタッカーが最も打ちやすい絶好のオープンが上がってしまう。

 

「もらった!!」

ライトの位置から3段の助走をつけて葉山が跳ぶ。

 

 

「行かせないっしょ!隼人君!」

「うおーーーーー!!」

「ッアーーーーー!!」

ボールは葉山が来ると予測していた3人が一斉にブロック。

 

 

 

 

(もらった!)ニヤッ

 

 

 

バスッ!

 

 

 

振り抜いたと思われるスパイクの音ではない打音が静かに鳴り、ボールがふんわりとブロックの手を避けて相手のコートに向かう。

 

 

「うまい!」

バレー部の為審判をやらされている七沢がつぶやく。

 

 

「あっ!!」

咄嗟の事でレフトの後衛にいた戸塚やモブは反応できない。

 

 

ブロックに入った3人が着地してからでは当然間に合わない。

 

 

コート場にいた全員が虚を突かれた……。

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

 

ザーッ!!

筋肉番付のショットガンタッチのごとく低い位置から飛び込む一つの影。

 

 

 

 

 

パスッ!!

 

 

あーーーっと!!小指が触れているー!!!

 

 

 

 

……じゃなく手でしっかりと受け、ボールは再びコートに舞う。

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ比企谷がそこにいる!!!???」

珍しく葉山が声を荒げる。

 

 

 

 

 

「おおおおおおおお!!!!!!!!」

 

 

「ヒキタニすげー!!!!!」

 

 

 

 

体育ではめったに見ることの出来ないプレーに見ていた生徒から歓声が上がる。

 

 

 

 

 

 

「戸塚!頼む!!!」

 

 

「うん!!!」

八幡がなんとか上げた低いボールを戸塚は高く上げる。

 

「戸部!!!」

 

「おうよ!!!」

 

 

ミスがないよう丁寧に相手コートにボールを飛ばす、葉山チームのモブは先ほどのプレイで取り乱しているのか後ろにそらし、カバーに入ったモブもフォローできない方向に飛ばしてしまう。

 

 

ピィィィー

七沢の笛(笛は厚木先生のを使用)が鳴り八幡チームに点が入る。

 

 

葉山チーム21-24比企谷チーム

 

比企谷チームのマッチポイント。

 

 

 

 

「すげぇよヒキタニ君!!」

 

「いや、戸塚がうまくカバーしてくれたおかげだ」

 

「そ、そんなことないよ」

 

「てか、もしかすると俺たち葉山君達に勝てるんじゃないか?」

 

「ああ!あと1点だし」

 

「油断すんな、連続で点取られてデュースにもつれたら勢いで持ってかれるかもしれない」

 

「うっ……」

 

「もう八幡!士気下げること言っちゃだめだよ」

 

「…まあ、要は油断しなきゃ勝てるってことだ、これで決めるぞ!」

 

「おう!!」

 

 

 

 

(まずいな……)

葉山の顔から笑みが消える。

戸塚のサーブをカットし22-23に持ち込みサーブ権はこっちに。ローテーションで自分が後衛に行くものの、サーブを打つのは自分。

強めのサーブやドライブサーブで八幡以外を狙えば同点どころか逆転、さらにはマッチポイントを制し自分のチームの勝利。これが彼の描いていた終盤のシナリオだった。

 

ところが先ほどの八幡のプレーに阻止され、サーブ権は未だ相手でサーブが得意な戸塚。

 

幸いまだピンポイントで狙える技術ではないものの、前衛である自分のところに来る可能性は低い。

 

 

(だが、勝負はまだ終わってない、最後まであきらめない!!)

 

 

「みんな!!最後まであきらめるな!!!」

葉山が檄を飛ばしチームを盛り上げる。

 

 

 

「おう!!!」

 

 

 

ピィィィー

 

 

 

(頼む、俺に来い)

 

 

 

 

「えいっ!!」   

 

 

バシッ!!

 

 

低い弾道のサーブがネットにかかる……。

 

 

 

ネットに弾かれたボールは再び宙を舞い。

 

 

 

「入れ!!!」

「入るな!!!」

 

ダン

 

ダンダンダン……。

 

 

ボールの行方は葉山チームにとっては無情の、比企谷チームにとっては勝利を迎えるものとなった。

 

 

ピィィィィ!!

七沢の笛が試合終了を告げる。

 

 

 

 

「おいおいおい!ヒキタニのチームが勝っちまったぞ!」

 

 

「葉山君が負けた!!!」

 

 

 

ざわ……  ざわ……

 

 

体育館が騒然となる。

 

 

 

「マジかよ!まさか隼人君に勝てるなんて」

普段から部活を含め葉山と一緒にいる戸部だが、内心は自分を葉山の下に無意識においていた。

そんな彼にとって葉山に勝つ機会は初めてであり喜びと戸惑いが混ざった今までにない高揚感が押し寄せる。

 

 

「おい!おい!おい!俺たちマジで勝ったよ!」

 

「やったね!八幡!!」

 

「おう!戸塚のおかげだ!!」

 

 

皆で勝利を喜ぶ。

 

葉山がヒキタニに負けた。

影響力の強い彼に勝った事でこの事実はまたたくまに広がる。

 

 

……はずだったが

 

 

「勝った比企谷チームはそのまま残れ、葉山チームは七沢チームと交代だ。」

葉山チームと七沢チームが入れ替わる。

 

 

「バレー上手いんだなヒキタニ」

 

「いや、そんなことねえよ」

 

「油断したら負けそうだから本気で行くね(笑)」

 

「イヤ!こんなボッチに対して大人げないだろバレー部!」

 

「負けたら、俺のバレー部としてのなけなしのプライドが無くなるからな」

 

 

 

結果

 

比企谷チーム19-25七沢チーム

 

善戦はしたものの、比企谷チームが敗れた。

いくらチームプレイをしたところで、バレー部が本気でサーブすれば素人がカットできるはずがない。

 

鋭い回転や球速の速い無回転、ネットすれすれのサーブ等を駆使、更に用心を重ね八幡を見事に狙わず相手コートに落とす。

それだけで14点

 

しかも七沢はアタッカーとしてではなくリベロ(レシーブやトス、カットの専門家)やセッターのような役割に徹し味方のミスも拾いまくるため中々崩れない。

 

何とかじわじわ点差を縮めた所で再び七沢にサーブ権が移りジエンド。

 

 

そこには先ほどの試合にあった歓声はなく。

 

 

(七沢、大人げなさすぎだろ……)

という空気しかなかった。

 

 

続く葉山チームに対しても同じ試合運びにより。

 

七沢チーム25-14葉山チーム

 

その結果

 

 

「葉山がヒキタニに負けた」という噂より「葉山がバレー部にバレーで負けた」という話が広がり、何それ?当たり前じゃんな状態になり、比企谷は活躍しても報われない知る人ぞ知る伝説が更新されたという……。




本当は八幡に無双させようかと思ったのですが、書いてる途中で、こんなの八幡じゃない!!
となってしまい、かといって葉山が無双するのもしゃくだったのでオリキャラの性格変えて無双させてしまいました?

オリキャラ苦手な方ごめんなさい。


次の更新は未定ですが、奉仕部との絡みを入れようと思います。



文才かなり低いですが何とかよろしくです。

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