俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。   作:nowson

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※今回の話は原作と展開が異なる&やや腐っております。


自問自答

食事を終わらせ、のんびりコーヒーを飲む八幡と小町、そこには今朝までの気まずさは無く、口数は少ないものの、穏やかな空気が流れている。

 

(言いたい事、今なら言えるかもな……)

小町に半分八つ当たりのようにあたってしまって以来、何度もメールをしようとスマホの画面を開いたり、朝起きる度に今日は謝ろう、今度こそと思うのだが踏み出せなかった。

 

 

 

「なあ、小町」

「何?」

兄が言おうとしてる事、それはきっと自分と同じ……

 

 

 

 

八幡は軽く深呼吸し……

 

 

 

 

「「ごめんなさい」」

 

 

 

八幡の謝罪の言葉、小町はワザとそれにかぶせるように同じ言葉を伝える

 

 

 

「「……」」

 

 

 

「「……ップ」」

やられた、してやった、やっと言えた。色々な感情がごちゃ混ぜに、だけどそれがおかしくて嬉しくて、二人は笑顔でしばらく笑いあった。

 

 

 

 

 

―そして―

 

 

「お兄ちゃんに聞きたいことがあります」

真面目な口調になり、八幡へ向き直す。

 

「なんだ?」

八幡も真面目な顔になり小町と向き合う。

 

「雪乃さん結衣さんと何あったの?」

 

「それは……」

八幡は言い淀む。

 

「あと……もしかしてだけど、バレーまた始めた?」

兄の不可解な行動、その行動に対する小町の答えは一つしかなかった。

 

「話すと長くなるがいいか?」

「……いいよ、教えて」

小町は腰掛ていたソファーを座り直すように中腰になり八幡の横に触れるように座り直し、コーヒーを片手に八幡の話に耳を傾けた。

 

 

 

―十数分後―

 

 

「なるほど……お兄ちゃんらしいね」

小町は八幡から修学旅行の、それからの奉仕部、バレー部の事を聞き思った事を口に出す。

 

「俺らしい?」

「うん、器用で不器用でクズで優しい」

「それ褒めてんの?それともけなしてるの?」

まるで対局にあるような単語の羅列に八幡のツッコミが入る。

 

「両方だよ」

そう言うと小町は八幡の肩にもたれ掛かるように頭を乗せる。

 

「ずっと一緒にいる小町なら受け入れられるよ」

 

「それでも嫌だ、悲しい、辛い感情は間違いなく出るよ……聞くだけで胸が痛いのに目の前で見たらもっとだと思う」

自分にとって近しい存在、その人が自分から傷つきに行く姿なんて見たくない。

 

「……そうか」

「……そうだよ」

二人の間にしばしの静寂が流れる。

 

 

「ねえお兄ちゃん」

「ん?」

 

「バレーの試合、応援行っていい?」

「おう、特別に許可してやろう」

「うわ、偉そうだよこのごみいちゃん」

小町はそう呟きながらも、どこか嬉しそうに口元を緩め、目を閉じた。

 

 

 

 

 

―翌朝―

※朝チュンではありません

 

「朝か……」

朝日を浴び目を覚ました八幡はまだ鳴ってない目覚まし時計を持ち時間を確認する。

 

「5時30分」

疲労により遅くても10時には寝てしまう為か、二日連続で普段の彼には考えられない時間に目が覚める。

 

「……起きるか」

いつものように反動と腹筋を使い勢いよく起き……

「いだぁぁ!!」

上がれなかった。

 

 

「うう……」

昨日のトレーニングによる筋肉痛により体のあちらこちらが悲鳴を上げ、ベッドから出ることもままならず、八幡は悲鳴を上げる。

 

(何この痛み?現役の時でもこんな事なかったぞ……)

原因は昨日のフィジカルトレーニング、ウエイトトレーニングや心肺系、神経系のトレーニングの強烈な負荷による筋肉痛。

その筋肉痛は昨日の朝の比ではない、腹直筋は踏ん張るたびに形容しがたい痛みで悲鳴を上げ、立ち上がると大腿四頭筋や下腿三頭筋は歩くだけでミシミシと軋み、ハムストリング、そして大殿筋と内転筋、大腿二頭筋という普段ではあまり体験することのないインナーマッスルも歩くだけで痛む。

 

(そ~っと起きよう)

体をうつ伏せに反転させ四つん這いになり起き上がり痛みをこらえながら着替えをするべく寝間着を脱ぐ。

下半身や腹筋だけでなく、三角筋(肩)や僧帽筋なんかも地味に痛い。

 

 

「これ、今日は部活できるのか?動くのやっとなんだけど……」

 

 

 

プルルルル

早朝五時にも関わらず突如なるスマホ。

 

「チッ!材木座かよ……時間考えろよ」

八幡はそう言いながらも携帯を手に取り通話ボタンを押す。

 

「何だよ材木座、こんな朝早く」

 

「八幡よ、お主大変な事になっておるぞ!!」

 

「大変な事?」

 

「言葉じゃ説明しにくい、とにかく裏サイトの掲示板を見るのだ!」

 

「何なんだよ一体……」

スマホを持って通話している為、PCを起動させインターネットに接続し裏サイトのページを開き

 

「……ちょっ、待てよ!!」

八幡は思わずお決まりのセリフを吐く、そこに書かれていた内容は……

 

 

 

 

男子バレー部にイケメンが現れた件(126)

 

バレー部の動向を妄想するスレpart2(260)

 

本命は!?“はや×はち”“とつ×はち”“なな×はち”それとも……part3(194)

 

 

 

 

とりあえず、腐臭のするスレを無視し“男子バレー部にイケメンが現れた件”を開く八幡。

 

 

「この写真、俺じゃないか!」

 

「やはりバレー部に現れたイケメンはお主だったか」

 

「なんでこんなことになってんだよ」

 

「嫌なら我と変われ!この似非イケメンめ!!」

 

「嫌だけど、お前とだけは変わりたくない」

 

「ちょ!それひどくない!?」

 

「……時に八幡よ」

 

「なんだ?」

 

「お主“そっちのけ”があるわけではないよな?」ドキドキ

 

「気色悪いこと言うなボケ!!」プツッ

八幡は即座に通話を遮断し電源を落とす。

 

 

「にしても……どうすればいいのコレ?」

アップロードされてる自分の写真や腐った話題を眺めながらしばし茫然自失する八幡。

 

「ん?」

そんな掲示板の中にあった一つのスレッドに目が止まる。

 

 

生徒会選挙動向スレ

 

 

(そういえばあいつらの方はどうなった?)

バレー部の依頼はこのまま練習を続け、練習試合が終われば無事成功だが生徒会選挙はそうもいかない。

 

(正直、依頼の難易度だけで見ればバレー部より数倍上だ)

その事が頭に浮かんだ八幡は何気なくそのスレをクリック。

 

 

 

J組の雪ノ下さん生徒会長に立候補するらしいよ

 

マジで?

 

昨日職員室で立候補を伝えに行ったの見た人いたって

 

じゃあもう確定じゃん

 

 

 

「……雪ノ下が立候補?」

 

(どういう事だ?なんでだよ?)

無意識に出てしまう嫌悪感、拒否反応が出てしまう。

 

(確かに生徒会長候補を選抜する上でこれ以上にない人材だ……でもこれじゃ文化祭の時と修学旅行での事と変わらないだろ!)

文化祭で自分から責務を背負い込んだ雪乃は倒れ、自己犠牲により解消へと導いた八幡は自分、そして周りの心に傷を負った。

 

「そのやり方は否定したんじゃないのか?雪ノ下……」

そう呟く言葉は部屋の中でむなしく響くだけだった。

 

 

 

 

 

―昼休み―

 

「比企谷!一緒に飯食おうぜぇ!!」

チャイムが鳴ると同時に席を立ちいつもの場所へ八幡に七沢が瞬時に近寄り声をかける。

 

「えぇ……俺一人で飯食いたいんだけど」

今日はなんだか黄昏ながら、いつもの場所でご飯を食べたい気分、その為露骨に嫌な顔をする八幡。その顔をみて七沢は八幡が一人で飯を食いたいんだなと察する。

 

「もしかして比企谷は一人で飯食べたいの?」

 

「まあな」コクン

 

「そうか……だけどお前を一人にはさせないぞ!俺と語り合おう(バレーについて)比企谷!!」

七沢は八幡の肩に手を回しナチュラルに問題発言をかます、その姿を見た教室の某グループの誰かさんから悲鳴が上がる。

 

「お前!ただでさえ色々噂されてんのに!!」

 

「噂?」

 

「ああ、実は……」

裏サイトの件について八幡が口を開こうとした時だった。

 

 

「ねえ、ななはち君」ハアハア

二人の背後に感じる何やら危険なオーラ。

 

「「!!」」ゾクッ

二人は危険を察知し恐る恐る振り向く。

 

「お願いがあるんだけど」ニタァ

鼻血を出しながら近づく海老名姫菜の姿。

 

「「ヒィ!!」」ガタガタ

 

「な、何の用かな?海老名さん」

怯えながらもなんとか七沢が返答する。

 

 

「私をバレー部のマネージャーにして!!」

その言葉に突如静まる教室内。

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

「な、なんだってー!!!???」×複数

クラス内に木霊する絶叫。

 

 

「えっ、いいの?」

葉山がいる総武高校ではサッカー部にマネージャーが行くパターンが多く、マネージャーがいない部もかなりある、当然バレー部にもマネージャーがいない。

そんな中、マネージャーを志望する女の子が現れた、しかもトップカーストグループでルックスもかなりの美少女、七沢は思わず聞き返す。

 

「そ、そんな!!」

そのやり取りに困惑する戸部、意中の女の子が自分の属さない部活のマネージャーになろうとしていて、しかもそこには恋のライバルがいるという状況で彼の心中は穏やかではない。

 

(ど、どうすんべ!?)

戸部は何かいい方法はないか模索し。

 

 

(そうだ!こっちも対抗して腐ればいいべ!!)←錯乱中

 

「隼人君!!俺たちも親密にベタベタするっしょ!!」

「お、落ち着くんだ翔!!」

「こっちもキマシタワー!!!」

 

 

(何このカオス?)×複数

 

 

「おい七沢!」

葉山グループに目が行ってるうちに八幡が周りに聞こえないように声をかける。

 

「なんだ比企谷」

「この話は断っとけ」

「なんで?」

せっかくのマネージャーを断る、不思議に思った七沢が聞き返す。

 

「お前は、自分が腐った目で見られながらバレーしたいのか?仮にマネージャーになったら鼻血噴水の嵐でまともに部活出来ないぞ……」

「確かに!」

想像するに易しいその状況、その言葉に七沢はハッする。

 

 

「ごめん海老名さん、せっかくだけど今は部員も足りないし、マネージャー募集してないんだ」

 

「ホッ……」×数人

その言葉に一部の人間がほっと胸をなでおろす。

 

「そうかー、なら仕方ないね……でも色々期待してるからね!ななはち君」

 

「そのおぞましい呼び方やめろよ……」

なんとも騒がしい昼休み、疲労が増した八幡だった。

 

 

 

 

 

―放課後―

 

「比企谷!部活行こうぜ!」

「ああ」

 

「すこし良いかね比企谷」

バレー部に行こうとする二人に声をかける静。

 

「何すか?」

「ここじゃなんだ、ちょっと来てくれないか」

静は少し伏し目がちに言葉を発する。

 

「……分かりました」

「じゃあ俺先に行ってるな」

「おう」

七沢は軽く手を上げ部室へと歩き出す。

 

 

「すまないな」

「いえ、べつに」

軽くやり取りをし二人も歩き出した。

 

 

 

 

 

―生徒指導室―

 

「バレー部はどうだね?」

 

「このまま行けば問題なく練習試合を迎える事が出来ると思いますよ、部員一人ひとりが真剣に向かい合って目標を持って取り組んでる、足りないのは経験だけです」

 

「ほう」

 

(普段やる気のない君がそこまでハッキリ言うとはな)

その姿に静は嬉しさを覚える。

 

「うまくやってるようだな」

「まあ、そこそこ」

「それにしても君がまさか元バレー部だったとはな、そんな事きみの履歴に書いてなかったから分からなかったよ」

「まあ、別に大した事なかったんで」

「……そうかね」

他愛もない会話をしながら静は普段自分が飲んでるMコーヒーを八幡に手渡す。

 

「ども」

マッ缶と同じように軽く振り、プルタブに指をかけ口を開け薫りを嗅ぎ、ゴクリと一口……マッ缶程ではないにしろ、コーヒーとしてはかなり甘い部類のそれは八幡にとって十分飲めるものだ。

 

「あまり時間を取らせるのもよろしくないから本題に入ろう」

静は八幡に向かい合うように座る。

 

 

「奉仕部の依頼の事だから、君にも耳に入れておくべきだと思ってな」

静は八幡に渡したコーヒーを手に取り口にし、軽く目を閉じる。

 

(奉仕部の依頼の事、俺をわざわざ呼び出す理由……一つしかないな)

 

「雪ノ下が生徒会長に立候補した」

「やっぱりですか」

案の定か、と心構え出来ていた八幡は態度に表すことなく返答する。

 

「知っていたのかね?」

「色々噂になってますよ」

「そうかね……」

 

 

「由比ヶ浜にはこの事を?」

「私の口から言ってはいないな」

「そうですか」

雪乃が生徒会会長に立候補したという事は取り下げることが出来ない、奉仕部に、八幡と雪乃に対して思うところがある結衣がこの事を知ったらどうなるか?八幡は試案する。

 

「比企谷、君はどうする?」

「今の自分は別々に依頼を受けてる状況ですので何も」

その言葉に、静はやれやれと言った様子で笑みを浮かべ

 

「言い方が悪かったな、君はどうしたい?」

「俺は……」

(俺は何がしたい?この状況をどうしたいんだ……)

自分の事、奉仕部の事、バレー部の事、今の状況、自分の出来る事ではなく自分がしたい事、それは何なのか?八幡は目を閉じ自問自答する。

 

「俺は……」

答えを必死に探そうとする八幡、静はそれを優しい目で見つめる。

 

「答えが出ないか?」

静は立ち上がり、八幡の元へ近づくと、彼の頭を優しくなでながら言う。

 

「……」

八幡は無言で頷く。

 

「なら、いっぱい考えろ」

それが若さの特権だと小さい声でつぶやく。

 

「何かあったらここに来たまえ、話し相手くらいにはなれる」

「……はい」

八幡はコーヒーを一気に飲み干し静に返答し席を立つ。

 

 

「依頼行ってくるので失礼します」

「ああ」

八幡はそのままドアの前に立ちドアノブに手をかけ

 

 

「比企谷!」

「はい?」

「頑張れよ」

「……うす」

静に頭を下げ部屋を後にした。

 

 




例のごとく次回の更新は早くて来週、遅くて再来週になります。

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