俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。 作:nowson
今回の話はミーティング→練習→休憩までの流れです
所々マニアックな部分がありますがご了承ください。
ちなみに今回は女キャラ出ませんがご了承ください。
チームスポーツにおいて重要なミーティング、バレーボールというスポーツにおいてチームプレイは必要不可欠なのは言うまでもなく、八幡が助っ人として参加しているバレー部でも放課後の部活前、体育館で輪になりながらミーティングが行われていた。
内容は昼休みに八幡たち二年生が話し合っていた事、その説明を一年生にしていた。
「以上がローテとスタメンについてだけど何か質問ある?」
七沢が一年に目を向ける。
「一ついいですか?」
温水が手を上げる。
「はいどうぞ温水クン」
「このスタメンだと自分と比企谷先輩が対角組んでるんですが……」
「何?俺と対角組むの嫌なの?そりゃ昔は『え~こいつと組むのヤダ』とか言われたりしたが、バレーの対角でそれ言われたら流石に落ち込むよ」
過去のトラウマを思い出しながら八幡が言う。
「卑屈すぎんだろ比企谷……」
稲村がすかさずツッコミを入れ。
「筋肉をつければその卑屈も直るさ。」
飯山が八幡をフォロー?をする。
「話が脱線しそうだから戻すね、つまりセッター対角の自分はチームにどういう役割求められてるか知りたいって事だろう?」
七沢は脱線しかけた会話を元に戻し温水の質問の意図をかみ砕き、温水はそれに「ハイ」と答え大きくうなずく。
「じゃあ比企谷、説明よろしく!」
「俺かよ!?」
ここで俺に振るか?とリアクションをとる。
「発案者が説明する方が良いでしょ」
「お前なら意図理解してるだろうが……」
「分かんないからよろしく!」
テヘッと舌を出しながらとぼけたフリをする。
これが戸塚なら可愛いが180センチの男がやっても、はっきり言って可愛くない。
「はぁ……」
八幡は頭を抑えため息をつき、一呼吸おいて温水の方を向く。
「俺と対角を組むことで温水に求められる事、それは昨日の試合と同じ事だ。七沢、三年が引退してからスパイク練習してた時トス上げてたの温水だろ?」
「ああ、そんで温水のスパイク練習は俺が上げてた」
「やはりな……」
(3年が引退した時点で部員は5人、新入部員が入ったとしても元セッターが来る可能性は低い、セッターはある意味エースより替えがきかないポジション、かと言って七沢にセッターをやらせるのは火力とレシーブの二つが下がる、そつなくこなす稲村も同じ理由で使えない、ミドルブロッカーの二人に至ってはトスがそこまで上手くない、消去法で温水になるのは当然か)
「温水、お前に求めているのは二段目のトスだ」
八幡が彼に求める事、自分が一本目をカットした場合のトスを上げるプレイヤーである事。
これを明確にしなければ試合での展開が大きく変わる
サーブやスパイクで相手を崩しチャンスボールで返球される際、相手はセッターを狙う場合が多い、それによりブロード(移動攻撃)や速攻(クイック)といったコンビネーションの攻撃を封じ、攻撃を淡泊にさせリズムを崩させる
八幡がカットさせられた時に代わりにトスを上げるプレイヤーは、このチームにおいて彼以上の適任者はいない。
「自分がトスですか……」
温水は少しうなだれる。
「もしかしてイヤか?」
「イヤじゃないですが自信ないです」
温水の脳裏に浮かぶのは、昨日の八幡のセッターとしてのプレイ。
瞬時にボールの落下点に向かう予測、捕る時の姿勢、そしてトスの速さ、トスワーク、明らかに自分とは格が違う。
いくらトスとレシーブに光るものがあっても彼はバレーを初めて1年に満たない選手、八幡の代わりにトスを上げる、その自信が持てなかった。
(1年生、初心者、初めての試合、経験がないから自信を持てないのか)
「トスは最悪、オープンでもいい」
八幡が温水を真っ直ぐ見る。
「でも、それじゃあ……」
相手にスパイクを読まれてしまう、そう口に出そうとした瞬間。
「このチームのアタッカーは優秀だ、お前はそれを信じてそいつの打ちやすいトスを上げる事を意識すればいい」
温水はその言葉にハッとなり周りを見る。
「というか、お前はウイングスパイカーだ、ちゃんと打つ方でも活躍してもらうからそっちの心配をしろ」
八幡はチームメイト達を見ていた温水の頭をワシャワシャとかき乱し優しい目を向け、年下にのみに発動させるお兄ちゃんスキルを使う。
「比企谷先輩……ありがとうございます」
彼はお兄ちゃんなでなで攻撃を受け少し恥ずかしそうに、だけど嬉しそうな態度でお礼を言った。
―某学習塾―
(何か、お義兄さんが別の弟を作ってる気がする……)ブルッ
八幡を慕う大志はエスパーのごとく直感を働かせていた。
―再びバレー部―
「じゃあ、今後の練習はスキルを強めにした後、コンビネーションやって3対3、練習終わったらフィジカルで締めでいいね?」
ミーティングの話し合いが一通り終わり、七沢がチームメイト達に問いかけ、各々が同意の言葉を発する。
「よし!じゃあ練習入るからアップ開始!!!」
その言葉に皆がバラけ順番に声を上げカウントしながら柔軟からウォームアップをこなす。
(ちゃんとしたコーチや監督がいないチームは柔軟やアップを適当にやるの場合があるが、こいつら皆真面目にやってるな……)
八幡は初めてだから周り見ながらやってますモードを装い、部員それぞれの動きを確認する。
(柔軟やアップの動きの一つ一つ集中して行っている)
練習において極めて重要な要素である集中、普段何気なく行うアップを、流してただ行うか、その動作の意味を理解し意識して行うかどうか。
同じ動作でもその積み重ねの差は大きく変わる。
例えば、両手でボールを持ってスローイングでパスをする際に今日の肩の可動域はどんな感じか?動作の流れでどこかに違和感がないか?常に考え意識する。
ただやみくもにボールを投げると違い、自分の体で起きている現象の確認、動かすための動作確認などを自発的に行うことによる自身のチェック。
たかが数分の間だがその積み重ねは長い目で見ると大きな差となって表れる。
(よほど部員のやる気あるのか、指導者役が上手かったのか)
多分両方だろうな、と結論づけながら八幡自身もその鈍った体の動きを確かめながら久しぶりとなる本格的なバレーの練習に集中する。
―数十分後―
ウォームアップやパスが終わり、次の練習へと移る。
「それじゃスパイク!!」
それぞれがスパイク練習の持ち場につく。
八幡はセッターポジションに入り、3人がスパイクを打つべくアタックラインに並ぶ、残りの二人は1人がブロック、一人がレシーブに入りブロックとカットの練習をする。
アタッカー役がそれぞれ5球打ったらローテーションで周り3週したら終了の流れ。
「ライト平行!!」
「レフトオープン!!」
(Aクイックよろしく)パパッ
アタッカーは八幡に上げてほしいトスをサインで知らせたりトスを呼んだりして、自分の練習したいスパイクを打ち、ブロッカーはそれについていきながらブロック。
レシーバーもトスやブロック、アタッカーの目線などを意識しながらレシーブ。
次に温水がセッターポジションに入り、レシーブが苦手な飯山と長谷が練習の為レシーバーに入り、七沢と稲村がブロッカーになり八幡がスパイク練習。
「レフト、オープンで頼む」
八幡は助走をつけ両手を後ろに大きく振り、沈み込むようにネットに近づく、沈み込んだ脚で地面を蹴るように上げ、その勢いをさらに加速させるべく後ろに伸ばした手を振り子のように前へ、そして上に持っていきボールの落下点と自分の最高打点が合う最高のタイミングで跳び体をしならせる。
七沢と稲村もそのトスを見てブロックを跳ぶ。
(アンテナと手の間はボール1個あるかないか、ブロッカー同士の間も隙が無い、流石と言いたい……が!!)
ミートする瞬間人差し指を巻き込むように手を捻る、ストレートの振りぬきのハズがクロスの振りに変わり、インナー寄りの打球になり飯山に向かう。
「クッソ!!」バンッ!
何とかカットしたものの一回でコートに返してしまう
「ナイストス」
「ナイキーです」
八幡と温水は互いに褒め合う。
「さすが比企谷」
「お前スパイクもイケんのかよ」
ブロックを躱された二人がそれぞれに声をかける
「お前らもウイングスパイカーならこれくらい出来るだろ」
にやりと笑い挑発的な笑みを浮かべる
「言うね~、俺ならもっと鋭くインナー決めるし」
「俺はストレートの振りでクロスも打てるし」
それぞれがその言葉に触発される。
(あの振りどうやったのかな……)
温水は先ほどの八幡を真似た手の振りをするが、いまいちしっくりきていない様子。
「次!レフト平行!!」
八幡は考え込んでる温水に声をかける。
「ハイ!!」
温水はスパイクの事は一旦置き、トスを上げる事へ集中した。
―休憩時間―
「ドイツ♪ドイツ♪ドイツドイツ♪ジャーマン♪」
何やら肉々しい兄貴な歌を口ずさみながら、大きめのジャグに何やら粉末を入れている飯山。
「お前、何作ってんの?」
八幡はあえて超兄貴の歌をスルーしつつ、ニコニコしながら粉を入れてる飯山に声をかける。
「スポーツドリンクを作ってるのさ。」
「ポカリとかアクエリの粉無くない?」
見た所彼が入れているのは、タッパーに入った物を測りで計測し入れている。
「うちの部は、飯山が自作スポーツドリンク作ってんだ。」
稲村が説明役に入る。
「えっ?」
何それ大丈夫なの?というか作れるの?味は?色々な事が頭に浮かぶ。
「スポドリの粉買うくらいなら、高スペックな自作ドリンク作った方がいい、基本的に電解質の塩、うちでは岩塩入れる、そんで急速にカーボ補給するためのブドウ糖、持続してカーボ入れる用にマルトデキストリン、酸味付け&血行促進にクエン酸、チューハイ用のシロップ香り付けに入れるだけで出来る。」
「へえ」
(さすが筋肉マニア、と言ったところか)
「後はカタボリック(筋肉分解)を防ぐためのBCAAを入れて溶かして完成、本当はクレアチンも入れたいけど予算が……」
※BCAAとは
必須アミノ酸のロイシン、バリン、イソロイシンを2:1:1の割合で配合したもの。
これを運動前、または運動中摂取することにより、運動中による栄養の枯渇状態の際、このBCAAを先に使う為、筋肉の分解を防ぎパフォーマンスの向上、疲労の軽減に役立ちます。
。
市販のスポーツドリンクだと、ア○エリに少量、アミノバ○ュー、ウ゛○ームに一定量含まれてますがそれらを使うと割高の為、私はBCAAの粉末をネットで大量に買い、それをビルダー飲み(粉末をお口にダイレクトアタック)でごっくんします、クレアチンに関しては機会があればいずれ。
「な、なるほど(よくわからん)」
マニアックになってきた展開についていけない八幡。
「その顔分かって無いだろ……。要は、味以外安く高スペックなスポーツドリンクが手に入るって事、一応飲みやすくしてるけどクエン酸かなり入るから慣れないと酸っぱい、そして市販品と比べて甘くないから我慢してくれ」
そう言いながら飯山はジャグの蓋を締め立ち上がり。
「ウォォォォォ!!!!!!!」
大量に入ってるであろうジャグをフリフリシェイクしだす。
「何やってんのお前!?」
ジャグを振る奴なんて初めて見た八幡は驚愕の声を上げる。
「シェイクしてるんだよ!上腕二頭筋と三角筋、尺側手根屈筋を意識しながら腹直筋で踏ん張り、広背筋も使いつつ反動も使いリズミカルに振るのがコツだ!!」
「そういう事聞いてるわけじゃないから!!」
―そして―
「よし、完成だ!!」ハアハア
休憩中にも関わらず汗をだらだらさせながらジャグの口にコップを置き、ドリンクを注ぐ。
「さあ、俺の飯山汁飲みやがれ!!」ハアハア
露だくの飯山が八幡にコップをズズィィと差し出す。
「何かビジュアルと言葉的にイヤだ!!!」
美少女が手渡す危険なクスハ汁とは正反対の見た目に拒否反応が起き、後ずさる。
「嫌なら無理矢理飲ますぞ!!」ハアハア
そんな八幡ににじり寄る飯山、なかなか危険な絵面である。
「わ、わかったからその状態でにじり寄るな!!」
仕方なしに手渡しで受取り、それを恐る恐る口に運ぶ。
(酸っぱいが、飲めないほどじゃない……それに運動中でも飲みやすい濃さだ、香りも悪くない)
その作った本人の見た目に反し、以外に爽やかな味に驚く八幡。
「悪くないな……」
意外な飲みやすさに思わず言葉が漏れる
「だろう!!」
アツぐるしい笑顔とグーのジェスチャーを向ける飯山。
(((((あ、アツぐるしい!!!)))))
爽やかなドリンクと熱い笑顔を味わうバレー部だった。
次回の更新は未定ですがなるべく早く投稿できるように頑張ります。