人間不信になった俺は魔法使いに出会いました(打ち切り) 作:”アイゼロ”
7話突入。
オリキャラの詳細がはっきりするのん。それしか言う事アリマセン。
それではご覧ください。
日を改めて、再びウェルサクスという街にやってきた。この前はいざこざがあって、全然観光できなかったからな。
ちなみにクレアは魔法研究の仕事があり、外出しているため1人で来ている。道はもう覚えているから問題ない。さて、どこから回ろうか。
「おーい!」
え?また話しかけられたよ・・・。
「よう!」
と思ったら、先日のいざこざの相手である、キリヤ=バルハードと後ろの3人が、俺に駆け寄ってきた。
「な、なんだ?」
「いや、見かけたから、話しかけたんだ」
「あ、そう。それじゃあ」
「ちょ、待てよ。一緒にどこか行こうぜ!」
キムタクかお前は・・。
「いや、何でだよ・・・」
「いいだろ、せっかく会ったんだから。・・そういや自己紹介がまだだったな。改めて、キリヤ=バルハードだ。火系統を使う。よろしくな、八幡。キリヤって呼んでくれ」
「私は、シズク=アネシア。よろしくね、八幡。私は水系統だよ」
「リア=エルグレントだよ、よろしく!風系統なんだ」
「・・・ジーク=カーデイス。光系統」
いきなり下の名前で呼ぶのかよ・・・。このリア充ども。それに、皆系統バラバラなんだな・・。
前回言った通り、キリヤは赤いツンツンと癖のある髪で、ツリ目なイケメンだ。魔法はそれなりにできている。何でわかるのかと言ったら、俺自身が喰らったからだ。
シズクと名乗った女子は、青い髪のセミロングをした、美少女だ。身長は中学1年生の平均に見えるが、胸部は高校生にも勝るほど成長している。これ言っていいのかわからないけど、汐留さんより大きい。
リアは、この中で身長が一番小さく、緑髪のショートだ。こいつも顔は整っていて、美人というよりは、可愛いロリッ子って感じだ。
ジークは、この中で一番身長が高く、黄色い髪の耳が隠れる長さのショートだ。こいつは、ずっと喋っていなかった。普段から無口なのかな?物静かな佇まいをしている。
「そうか。そんじゃあな」
「待て待て、この街を観光しに来たんだろ?だったら、色々教えてやるから、一緒に行こうぜ!」
「行こう行こう!」
「え、あ、ちょっ・・・」
キリヤに手を掴まれ、リアに背中を押され、無理矢理同行を迫られてしまった。
◆
まずは、皆がよく行くという店を紹介された。
「ここの料理、すげぇ美味いんだぜ!やるよ」
その料理とは、よく見かける食べ歩き用の、一品ものだった。見た目はコロッケに見えるが、衣がきつね色ではなく、少し黒い。皆がその料理を頬張っている中、キリヤが俺に差し出してきた。
「悪いな。もらっちまって」
「いいっていいって。ほら、食ってみろよ」
恐る恐る、俺はこのコロッケもどきを口に入れた。
「美味い・・・」
その瞬間、口の中が旨みの汁で満たされた。食材が正体不明なため、あまり詳しくは知らないが、この食感は肉と、何か野菜だろうか?シャキシャキとして、この肉とも相性がいい。そして、この揚げ衣。何故黒いのかは分からないけど、これにもしっかり味がついていて、とても癖になる。手が止まらない。
「だろ?これ学生に人気なんだよ」
「どう?気に入った?」
アネシアが俺の顔を覗き込むように、聞いてきた。
「ああ、また食いたいくらいだ」
「じゃあ、またみんなで行こっか」
あれ?なにこのまた皆で集まろうみたいな感じ・・・。俺ってもしかして、流されてる?
「次はここだ」
続いてやってきたところは、魔道具とやらが売っている、そこそこ大きい店だ。都会であるここは、品ぞろえもいいらしい。
俺が住んでいる異空間住宅や、異空間ポーチもここで買えるらしい。
そんな俺は、並んでいる飾り物の宝石に、目を光らせていた。どれもこれも綺麗な輝きを放っている。
「宝石がそんなに珍しいの?」
突然横に現れた、エルグレントに話しかけられた。
「ああ、地球じゃこういうものは滅多にお目にかかれないからな」
「へぇ、あっちにもいっぱいあるから行こう!」
「お、おいちょっと!」
そのまま手を引っ張られて、店内を走りまわされた俺であった。
「ラストはここだな」
あの後も色々なところを回り、そろそろ日没になるころ、キリヤ達にとある森に招かれた。
「こんなとこで何すんだ?もしかして、集団リンチ?やべ、逃げなきゃ」
「おいおい待て待て、誰もそんなこと言ってないだろう」
え?違うの?集団で1人を人気のない場所に連れて行く理由なんて、集団リンチ以外あったんだな・・・。
「・・・じゃあ、何すんだ?」
「魔法を使うんだよ」
キリヤはそう言って、手からファイアボールを出現させた。それに続いて、皆それぞれ魔力玉を出した。
「私たちは、よくここで魔法の練習をしてるの」
「ほら、八幡も出したらどうだ?」
「ん、分かった」
キリヤにそう言われた俺は、シャドーボールを3つ出現させた。・・・、うん、あのね、気付いたら無意識に複数出現されるようになったんだよ・・・。それなのに、コントロールできるのは未だに1つだから。
「へぇ、凄いな。一度に3つ出せるなんて」
「」コクコク
皆が俺の魔力玉をまじまじと見ている。ジークは相変わらずの無口だ。
「俺は出せても、コントロールできるのは1つだけだ。それを言うなら、キリヤの方がすごいだろ。あの魔力玉、ほとんど炎化してたし、アレ喰らった時、すっげぇ熱かったからな。それに複数出すなんて、皆もできるんじゃないか?」
「そうだけど、俺らは2つしか出せねぇんだよな。すげぇな、地球人って」
「でも、アネシアやエルグレントにジークも、レベルは高いんじゃないか?」
実際、アネシアのウォーターボールは、水化こそしてないが、わずかに水しぶきを見せている。エルグレントのウィンドボールは、風を帯びているし、ジークのシャインボールは周りに光の粒子をまき散らしている。
「まぁ、中学1年からしたらいい方なんだけどね・・・。それと、八幡。私の事はシズクでいいよ」
「私もリアって呼んでよ!他人行儀っぽくてなんかヤダ!」
「そうか。・・・・それで、結局何するんだ?」
「ああ、せっかく宇宙人と友達になったんだ。皆で魔法の練習でもしようぜ」
・・・は?友達?誰と?・・あと、宇宙人って呼ぶな。言われると、色々複雑な気分になるから。
「おい、友達ってなんだ?別に求めてないんだが・・・」
「ん?いや、俺らが八幡と友達になりたかったからなんだが・・・」
「なんだよそれ?あれか?事情を知って、可哀想と気遣ってるのか?それなら、やめてくれ。そういうのは大っ嫌いなんだよ」
俺のこの言葉に、3人はムッとする一方、キリヤは何故か溜息をついていた。
「お前、めんどくさい奴だなぁ。俺達が友達になりたいと思ってるんだ。それでいいじゃねぇか」
「なんだと・・。意味が分からない。俺と友達になりたい奴なんているはずねぇだろ」
「確かに、八幡の過去を知ったら、俺らを信用できないのはわかってる。けど、いるはずねぇって決めつけるのは良くないぞ。・・・・これだけは言っとくぜ。俺らは、友達を裏切らない」
「ッ・・・分からねぇ。なんなんだよお前。本当に意味が分からない」
キリヤの言っていることがあまり理解できないまま、俺はトボトボと、クレアの家に向かって、歩いていった。この時、俺はわずかに手を震わせていた。
◆
まだ時間があったため、気分転換に地球に戻ってきた。ゲートはクレアに頼んで、出してもらった。仕事中に申し訳ない・・・。
しばらく周辺を歩いていると、見覚えのある人とすれ違い、その人に話しかけられた。
「あれ?比企谷君」
「汐留さん・・・」
「春でいいよ。・・何かあったの?」
どうやら、今の心情が顔に出ていたらしく、春さんは心配そうな顔をして、聞いてきた。
「春さんは、友達ってどう思いますか?」
「え?・・・う~ん、友達か。どうなんだろう、人それぞれだと思うけど。私だったら、いた方が楽しく思えるかな」
「楽しく、ですか?」
「うん、やっぱり人と楽しみを共有とかしたいじゃない?一緒に笑ったりとか、遊んだり」
「もし、裏切られたらどうするんですか?」
「その時はその時だね。きっぱり忘れて、新しい出会いでも見つけようとするかな」
新しい出会い・・・か・・。
「強いんですね、春さんは」
「そんなことないって。実際あったら、傷つくし、ちょっと悟りを開くかもしれないよ?」
「ふっ、なんですかそれ・・。ありがとうございます。答えてくれて」
「何かの役に立てたなら、いいよ。ま、頑張れ、少年!」ポン!
春さんは少し力強く声を大きくし、俺の肩を叩いた。これには昔を思い出して傷心中だった俺も勇気づけられた。
◆
「八幡、どうしたの?」
家に帰り、ソファに座った途端、仕事から帰っていたクレアに、顔を覗き込まれた。
クレアの表情はは、俺を心配している色が見て取れた。
「いや、色々あってな」
「・・・もしかして、先日の子たち?」
図星を突かれ、少し肩をピクつかせてしまった。それをクレアは見逃さなかった。
「あの子たちと何かあったの?」
「あー・・。いや、これは俺自身で解決する問題だ。クレアにばっか頼ってはいられないし」
「そっか、分かった。でも言いたいことがあったら、言ってね」
クレアにそう優しい笑顔で言われて俺は短く、うんと返事をした。今日はもう寝るとしよう、ちょっと疲れたし。
『俺が友達になってやろうか?・・ヘヘ』
『残念嘘でしたー!誰がお前となんか友達になるかよ!』
『お前みたいなやつと一緒にいられるかよ!』
『あはは、キモーイ!』
『『『あっははははははは』』』
「っ、チッ、嫌な事思い出したぜ・・・」
キリヤ達と関わって克服しようかどうか、と頭の片隅に入れた途端にこれだ。全く、俺も気にしすぎだ。儚過ぎたことだというのに・・・。
「大丈夫?八幡」
「ん?・・クレア?どうしたんだ?」
「いや、酷くうなされてたから、様子を見ようと」
「そうか。いや、悪夢を見てただけだ」
「・・・そっか」ナデナデ
クレアはこちらに近づき、何故か知らんが頭を撫でてきた。
「八幡、ちょっと震えてたよ」
それを聞いた俺は自分の手を見ると、わずかにプルプルと振動していた。俺は震えを押さえようと、無理矢理拳を強く握る。
「もう大丈夫だ。それとクレア、俺もう中学生なんだから、頭を撫でるのは・・・」
「えー、いいじゃん♪」
「ったく・・・」
なんか、今までは姉のようだったけど、こういうときだけ母性が発揮されてるのかな。
いつの間にか眠ってたらしく、朝起きたら隣でクレアが寝息をたてていた。俺の頭を撫でた後、眠ってしまったのだろう。
「いたっ・・・」
取り敢えず、デコピンで起こし、俺は朝食を作るため、キッチンへ向かった。
「うぅ~、酷い、デコピンで起こすなんて・・・」
「だったら寝落ちしないで、ちゃんと自分の部屋で寝なさい」
「はぁ~い、今日もどこかに行くの?」
「そうだな。サジカルの行った事ないところに行ってみる」
「1人で平気?」
「クレアじゃないから大丈夫だ。道はちゃんと覚えるし」
「ちょっと!どういう意味!?」
実は、クレアは結構な方向音痴だ。地球に来たばっかの時は、何度迎えに言った事か。ああ、懐かしきかな、奔走劇。
◆
サジカルのシンボルであり、中心でもある大きい噴水から、西に向かっていく。風景は変わらないけど、未知の場所に行くのは、なんだか気分が高揚してくる。
しばらく歩いていくと、高い場所に丘のようなものがあった。人も結構いるから、おそらくスポットとして人気なのだろう。
昇ってみようと思った俺は、少しずつ上に上がっていく。
「・・・いいな、ここ」
風を遮る建物がない分、体全体を覆う感じに風に煽られる、この涼しさと夏の暑さが心地いい。
ふと、俺は昨日の事を思い出す。
俺は何をこんなに悩んでいるのだろう。
人なんて碌でもない奴らばかりだ。友達なんて、変に上っ面な態度で、相手の機嫌を損ねないようにとか、表情を窺ったりとか、ハブられないように口を合わせて乗ったりとか、そんな下らなく、醜いものでしかない。そして、浮いている者を徹底的に排除しようと、変なところで全力を出し、趣味の悪い快楽に浸る最悪なものだ。
でも、あの時キリヤが口にした言葉
『俺らが八幡と友達になりたかったからなんだが・・・』
『俺らは友達を絶対に裏切らない』
この言葉が脳裏によぎる。
当然、信じられるわけがない。会って間もなさすぎる奴を、どう信用すればいいのだ。クレアの時は、まだ俺は子供だったし、身も心もボロボロで、あの温もりが心地よかったから、すぐに信頼できた。
けれど、俺はキリヤ達を切り捨てられずにいる。
理由はわかっている。あいつらは俺の過去を知り、自ら友達になろうと近寄り、街の紹介やら色々教えてくれた。俺も、こいつらなら信用してもいいんじゃないかと、思ったのだ。
でも、その度に小学校時代の出来事が、フラッシュバックされる。だから俺の心は、全て疑心暗鬼に変わってしまう。
怖いのだ。もう、あんな思いはしたくないと、自分にブレーキをかけ、相手から近寄ってくれたのに、俺は逃げ出してしまった。そういう自分が嫌で嫌で仕方がない、と矛盾した思いが苦悩を増やす。
「帰るか」
まだ昼過ぎだが、しばらく横になりたいため、帰路に就こうとした。
「よっ」
突如、目の前に現れたのは、俺の苦悩の原因であるキリヤだ。後ろにはシズクやリア、ジークもいる。お前ら、いつも一緒にいるのか?仲がいいんだな。
「なんだ?」
ていうか、何で俺の居場所知ってるんだよ。こええよ。
「昨日な、あれから皆で考えてな。人間不信なお前と、どう向き合おうか考えてたんだ」
そんなこと考えてたのかよ・・。それなんか意味あるの?
「昨日の事があって、八幡は俺らを避けようとするはずだって結論が出たんだよな」
「・・・そうだな。それが分かったんなら、もう俺とは」
「なら、俺らが勝手に近づいて関わっていく」
「・・・・・・は?」
キリヤの発言に理解が追いつかないまま、俺は開いた口がふさがらない。
「お前の事情とかぶっちゃけどうでもいいんだよ!俺らは勝手にお前を友達にする!さぁ、どこか行こうぜ!」
「えー、いや、ちょっ」
「異論反論は無しだ。ジーク」
いつの間にか後ろに潜んでいたジークが、俺の背中を無理矢理押してきた。
「さぁ、行くよ!」
続いて、シズクが俺の手を引っ張り出した。
「わ、分かった。ついていくからいったん離れろ!」
もちろん俺の意見は無視され、そのままいろいろな場所を巡った。
◆
「じゃあなー」
「またね」
「ばいばーい!」
「」手を振る
「はぁ。ったく、何なんだよ、どこまで俺を悩ませれば気が済むんだ」
けど、気が付かないうちに、俺の口角は少し上がっていた。あいつらといて、楽しいと感じたのだろう。
いずれ、真剣に向き合わなきゃいけなさそうだな・・・。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
三柴沙耶をどうしようか悩んでます。
また次回。