人間不信になった俺は魔法使いに出会いました(打ち切り) 作:”アイゼロ”
3話突入。
後、名前無い方が読みやすいとのことだったので、入れないようにしました。
それではご覧ください。
3話:スーパーのヒーロー
中学校入学式当日。校長の長い話、在校生代表の歓迎の言葉、教師紹介等の面倒なことも終わり、1年B組の教室に、俺はひっそりと座っている。周りはグループ形成のため、いろんな人に駆け回り、声をかけている。よくそんな面倒なことができるものだ。
俺が通っていた小学校よりも結構遠い、クレアの家から歩いて30分の中学校。さすが、ほとんど見覚えのない人物だ。良きかな良きかな・・。
そんな俺は今、イヤホンを耳に装着し、本を読んでいる。こうすることで自分の世界を創りだし、誰も話をかけられない状況にする。
クレアに魔法を教えてもらうことになった日から、俺は毎日修行をしている。おかげで入学前には、魔力玉を作り出せるようになった。米粒サイズだけど・・。うん、しょぼいね。
早く〈ディセイブ〉を使えるようになりたい。誰にも見られず、平穏に生活を送りたい。聞いたところ、あれって結構難しいらしい。
「比企谷八幡です」
嫌いな自己紹介も質素に終わらせ、何の特徴もない男と認識させた。
午前中で学校は終わり、家路へ就く。
◆
「ただいま」
「おかえり。どう?中学校は」
「同じ小学校だった奴もほとんどいないし、何事もなく過ごせるとは思う」
「そっか。もし、何かあったら言ってね。私が成敗してあげるから」
うわぁ、かつてここまで頼もしい人はこの世にいたのだろうか。心強いな。あまり守られるのも、男としては複雑だけど。
「なるべく、そうならないようにするよ」
◆
今日も今日とて魔力の練習だ。毎日魔法の練習なんて、地球上で俺だけなんだろうなぁ、と優越感に浸っていながら、胡坐をかき、手に力を込め、集中する。
う~ん・・相も変わらず、小さいな。もうこれ4日間続いてるぞ。もしかして、これが限界なの?なにそれ超悲しい。
「うお!」
なんてネガティブ思考になっていたら、米粒サイズだった魔力玉が、突然野球ボールのサイズになった。
その時、俺の頭にある1つの仮説が生まれた。もしかしてと思い、もう一度ネガティブ思考になってみる。
すると、野球ボールサイズだった魔力玉が少しだけ、また大きくなった。
「凄いじゃない!八幡」
俺の修行を一部始終見ていたクレアが、驚いたように声をあげて、寄ってきた。
「魔法ってね、感情によって影響されることもあるの」
やっぱりな。俺の立てた仮説はほぼ正しかった。『負の感情』だ。俺の魔力の源は・・。もっとカッコいいのが良かったんだけどなぁ。
けど、まだこの大きさが限界だな。今はもうこれ以上大きくならないと、体で感じる。
取り敢えず、今日はここまでにしとこう。
「今日は何が食べたい?」
「ん~、そうね。・・・ハンバーグがいいわ」
実は、中学に上がる前に、料理は俺が担当することになった。クレアはソフィーラで仕事があるし。魔法の研究をしているのだってさ。自分で作った魔法もあるらしい。すごいよな!そんな人の指導受けてる俺って相当恵まれてるんじゃない?
そして、クレアは日本の料理に感動したらしく、今ではすっかり日本食に舌が肥えてしまった。
ちなみに俺の料理の腕前はクレア曰く、『店に出てもいい』というレベルまで上がった。
じゃあ、材料を買いに行ってきま~す。
◆
近くのスーパーにやってきた。ここは品ぞろえもいいし、夕方になると半額になる。おかげで、おばさんとの奪い合いに参加せざるを得ない。それはもはや戦場だ。
挽肉に卵、玉ねぎ等を入れ、もう一品のおかずを思索中。・・・お、レタスが安い。サラダでいいだろう。トマトは入れない。ボクアレキライ。
スーパーのレジは真ん中がベテランだという情報を知っている俺は、真っ先にそこをとり、おばさんの後ろに並んだ。
会計を済ませ、外に出ようとした瞬間、店内に怒鳴り声が響いた。
「またミスをして!ちょっとは学習しないか!!」
「す、すみません・・・」
今の怒鳴り声の正体は、おそらく店長であろう男の人と、そしてもう片方は店長に叱責を受けている、女性だ。バイトの人かな?若いし。
「いつになったらまともに覚えるんだお前は!!」
うっわ。最悪だ、見ろよ周りを。静まってんじゃねぇかよ。バイトの人も涙目だし。とにかくやめさせよう。ほっとくと、虫が悪い。
「あの、周りの人に迷惑ですから、そんな大声出しちゃいけませんよ」
「なんですか?俺は今、仕事中です。邪魔はしないでください」
いやあんた店長だろ。いくら何でもその態度はないんじゃないか?
「周りを見てくださいよ。迷惑がかかってるんですよ」
俺にそう言われた店長は、その言葉に応じて辺りを見回す。客の視線は見事に、店長に降り注いでいた。
「ちっ、そもそも、そいつがミスをするからいけないんだ!!仕事も中々覚えられていない!」
店長は周りにも、俺にも怒鳴りながら、バイトの女性を指さした。
「だからって怒鳴るのはどうかと思いますよ。それに、名札を見る限り、彼女は研修中ですよね。しっかりサポートするのが上の務めじゃないんすか?そんな怒鳴ってちゃ、やる気も失せてしまいます」
「うるさい!店のやり方に、客が口出しをするんじゃない!」
は~、これはもうどうにもなんねぇや。店長がこんなんじゃ。
「ゴホン!」
店長が怒鳴る中、その後ろに1人のスーツを着た男性が現れた。
「これはどういうことかね?」
「しゃ、社長!こ、これはその、ですね」
なんと社長であったか。いや~、よかった。店長がこれだから、どう事態を収拾すればいいのかわかんないところだったけど、助かった。
「何事かと思って、来てみたら・・ハァ。私と一緒に来てもらおうか」
「くっ!・・お前のせいで!」
怒りのあまり、店長が俺の顔面目掛けて殴りかかってきた。何で俺なんだよ・・。そんで俺のトラウマ蘇らせないでくれよ。何度もそんな目に合ってんだから。
それ故に、こういう対処法は知っている。
その拳が当たる直前、手をはじき、受け流した。そしてそのまま倒れこむ店長。
なんとも情けない姿だ。むしろ店員が恥ずかしい思いをするぞ。
「さあ、はやくいくぞ!・・皆さま大変お騒がせして申し訳ありません。よろしければ、これからもスーパー〇〇をご贔屓に。・・君も、ありがとう。見たところ中学生に見えるが、すごい子だ」
「そんな大層な事してませんよ。放っておけなかっただけです」
「随分と謙虚だな。何度も言うが本当にありがとう。何かお礼をしなければな」
「いりませんよ。それに、お宅のスーパーをよく利用させてもらってますから」
「そうか。君がそう言うなら、無理強いはしない。私はお暇するよ」
そう言って社長は、店長を連れて、この場を去った。
パチパチパチパチパチ
その瞬間、店内が拍手の音で満たされた。いいぞ!、よく言った!という名声までもが俺に向けられていた。
うわぁ、目立っちまった・・。明日からはきっとここに来るたび、俺はヒーロー扱いされるんだろうなぁ。さすがに自意識過剰だな。
「あ、あの、ありがとうございました!」
叱責を受けていたバイトの女性が、深く頭を下げて、お礼を言ってきた。ふむ、よく顔を見ると美人さんだ。まだ童顔な辺り、高校生だろう。
「別にいいですよ。あのまま帰るなんて俺にはできなかっただけです。バイト、頑張ってください。それでは」
「あ、待って。せめてこれだけでも」
彼女はそう言って、一枚のメモを渡してきた。そこには、数字と記号が羅列されている。連絡先かな?
「ではこれで。本当にありがとうございました。また来てくださいね」
彼女は最後にそう言い残し、バックヤードに入っていった。
俺、携帯持ってないんだけど・・・。
「へぇ、そんなことがね・・・ふむふむ」
スーパーで起きた出来事を話すと、クレアはハンバーグを頬張りながら、感心したように頷く。
「やるじゃない八幡。家族としても誇らしいわ!」
何だろうな、クレアに褒められると、素直に嬉しい。それは置いといて、このメモどうしようか?捨てるなんて人の厚意を踏みにじるなんてことできないし。
「せっかくだから、これを機会に携帯買おうか」
「え、いいの?」
「遠慮しなくていいよ。私も地球専用の携帯が欲しかったし」
「え?地球専用?」
「これだよ。ソフィーラではこういうやつを連絡手段にしてるんだ」
クレアが出してきたのは、厚さ1cmの長方形の機械だ。見た目はただのスマホにしか見えないが・・。
「こうやって使うのよ」
横にあるボタンを押すと機械が光だし、モニターが目の前に映った。あれだ、スクリーンのようなやつ。
「これはビーコンって言って、このモニターから、ビデオ通話とかできるの。他にも、検索機能やマップ、様々な用途があるわ」
「へぇ、凄いな・・」
後日、スマホを買いに行き、取り敢えず店員さんとクレアのだけでも登録をしといた。
しばらく時が過ぎた休日の11時頃、昼食と夕食の材料を買いにきた。
先日のいざこざの影響も特になく、今日も店に人だかりができている。
「こんにちは」
野菜の目利きをしていたら、あの時のバイトの女性に挨拶をされた。
「こんにちは」
俺も挨拶を返す。
「こないだはどうもね。・・そういえば、名前言ってなかったね。
「はぁ、比企谷八幡です」
名乗るつもりなかったんだが、名乗られてしまった以上返さなければいけない。
「それでは」
「あ、待って。さっき入荷したばっかの野菜があるから持ってって。新鮮だよ」
「本当ですか!ありがとうございます」
ラッキー♪
その日、初めて良好な顔見知りができました。
◆
入学してから2ヶ月、行事の一つである遠足も何事も無く終わらせ、現在は6月。
だいぶ俺も魔法を使えるようになった。魔力玉はバスケットボール並に作り出せ、初歩的な魔法も使えるようになった。
〈ディセイブ〉〈リビテーション〉〈デテクション〉。これくらいかな。ちなみに〈デテクション〉というのは、探知魔法だ。使えて損はないらしい。
今日も少し練習をしている。今回は魔力玉2つ同時に出すことを目標として頑張っている。
やっぱ難しいな・・。2つ出そうとすると、1つの玉が2つに分裂しちゃって小さくなっちまう。
そしてそれを見守るクレア。
「(思ったよりも成長速度が速い。八幡ってめんどくさがりだけど、努力家だからね。なんだか楽しみになってきたわ)」
「ほっ、ほっ」
よし、もう慣れてきたな。意外とコツを掴むのが容易になってきた。俺って実はすごいんじゃないか?
「(元々頭もよくて理解力もあって、呑み込みも早いな、と思っていたけど、予想以上にできてきちゃってる・・・)」ポカーン
「ん?どうしたクレア?そんな顔して」
クレアの今の顔は、目が点になっていて、ポカーンと口を開けている、失礼だけど間抜け面だった。
「いや、八幡。平然と魔力玉分裂させてるけど、それ結構難しいのよ」
「え、そうなのか?俺的には2つ同時に出したいんだが・・。まぁ、これがすごいなら続ける価値はあるな」
「(何で地球人が?じゃなくて地球人だからこそなんだろうな。ここには魔法なんて存在しない。故に魔法関連の創造力はソフィーラの人よりも長けているんだと思う。どっちにしろ、八幡はすごい魔法使いになりそうね)」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
もらった感想は、前書きか後書きで答えようと思います。
また次回。