人間不信になった俺は魔法使いに出会いました(打ち切り)   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

えー、長らくお待たせしました。最新話です。

もう2話くらいで高校編突入すると思います。ていうか早く進みたいけど、まだ中学でやり残してることがあるから・・・。気長に待ってね♪

それではご覧ください。



12話:ウィンドキャット

「あ、エイト君。ちょっといいかしら?」

「はい?」

 

季節は冬の12月となり、厚着が好ましくなったこの寒さ。学校の放課後に、常に着用している黒いコートを羽織り、街を散歩していたら、横から話しかけられた。その正体は、装飾関連の商売をしている、店主だ。ここにはよく来ていて、店主とも良い交流関係をもっている。実際俺が耳につけているピアス(穴はあけていない)もここで買ったものだ。似合わないとか言うんじゃねぇぞ。

 

エイト=ヒキガルトという名前を作って約2年くらい?。未だにこの呼ばれ方は慣れない。そりゃそうだ。キリヤ達は普通に本名を言うんだもの。俺をエイトと呼ぶのは、行きつけの店の人だけだ。

 

「ちょっとお願いがあるんだけど、頼まれてくれるかしら?」

「いいですよ。なんですか?」

「これを鍛冶屋のおじさんに渡してほしいのよ」

 

そう言って俺に見せたのは、赤色の宝石。鍛冶屋のおじさんって言ったら、この辺りだとガイルさんしかいない。あそこにはソフィーラに訪れた当初から行った事のある場所だ。

 

依頼を快く引き受け、宝石を受け取った。ガイルさんは果たしてこれをどう活用するのだろうか。折角だし、これを渡した後見学させてもらおうかな。

 

「かあ!」

 

宝石を眺めながら歩いていると、頭の上に乗っていた八咫烏のクロウが反応した。あ、言い忘れていたが、肩じゃ幅が狭かったため、頭に移動させた。

 

そう言えば烏だからな。キラキラしたものには目がないのか。

 

しばらく宝石をクロウと見ながら歩いていたら、突然手から宝石が消えた。いや、何者かに奪われた。

 

前方に目を向けると、宝石を咥えた、ウィンドキャットが走って逃げて行った。ウィンドキャットというのは、猫の容姿をしていて、とてつもなく速い生物だ。このまま逃げられたら一巻の終わり。

 

「逃がすかぁー!」

 

追いかける。ただただ、無我夢中に追いかける。あいつに追いつくには、とにかく全神経をあいつに集中して走らなければ、追いつけないのだ。

 

「クロウ、お前も行ってくれ」

 

子供から少し大きくなったペットのクロウに空から追跡を指示し、走り出す。

 

・・・・・・・・・・

 

見失った。

 

追いかけ始めてわずか数分。姿形、陰なども見えない。絶体絶命。〈デテクション〉を使ったが、離れているため、反応なしだ。・・・マズいな。渡すものを盗られるなんて。

 

リアに頼んで〈クイック・レッグ〉を施してもらうか。そうしたら追いつける。あ、でも猫を見つけなければ意味がない。・・・よし、クロウに場所を特定してもらって、見つけたらリアに連絡をして〈クイック・レッグ〉をやってもらおう。

 

 

1時間後、クロウから見つけたとの報告があった。なんか、一緒に過ごしているうちに何を言っているのかが大体わかってきた。これがペットと飼い主の絆なんだな、と感心した。

 

ウィンドキャットは風を好む。故に高い場所にいることが多いのだ。木の上とか。

 

リアに連絡を取るため、ビーコンを起動させた

 

『もしもーし。どったの?八幡』

『あー、ちょっと野暮用でな。俺に〈クイック・レッグ〉やってくれ』

『へ?どうして?』

『んー、簡単に言えばウィンドキャットを捕まえなくちゃいけない』

『ありゃー、それはそれは大変だ・・・。じゃあかけるねー。ほいっ!』

 

リアが画面越しに魔法を唱えると、俺の足が一気に軽くなり、どこまでも走り抜けそうな感覚に陥った。

 

連絡手段でもあるビーコンは、人に対する付与魔法なら、ビーコン越しでも使うことができる。

 

『サンキューな、リア』

『はいよー。それじゃあ』

 

 

 

 

クロウに案内をしてもらい、やってきたのは、まだここに来て間もない時に訪れた、観光スポットの高い丘だ。そして、キリヤ達と再会した場所でもあり、結構思い入れがある。

 

きょろきょろと辺りを見回すと・・・・・・いたぞぉ、くっそあいつ、なに人から盗った宝石を首にかけてやがんだ。いや、マジでどうやったのそれ?ウィンドキャット器用過ぎる。

 

そいつは俺達に気づいたようで、また物凄いスピードで俺達から離れていく。今度は逃がすかぁ!I am the FLASH!!!

 

 

どうも、シズク=アネシアです。ただいま暇を持て余しています。

 

皆用事があるっていうし、折角の休みなのにもったいない。八幡誘おうかと思ってクレアさんの家に行ったけど、出掛けてるっていうし、残念。あーあ、八幡と一緒にいたかったなぁ。地球について一杯話したかった。

 

もしかして、また森の中なのかな?八幡魔法馬鹿だし。今じゃかなりの実力者になっちゃってんだよね。

 

「ん?なんだろう?」

 

しばらく歩いていると、ぎりぎり肉眼で確認できるほどの遠い距離に、小さい何かが勢いよくこちらを走っている。だけど、その何かのスピードがとんでもないため、すぐに確認できた。

 

ウィンドキャットだ。中には目にも止まらない速さを出す奴もいる。しかし、街中で全速力のウィンドキャットは珍しい。

 

「きゃ!」

 

そのウィンドキャットは私のすぐ横切り、その勢いで大風が発生した。我ながら、らしくない悲鳴をあげてしまって、少し恥ずかしい。しかも髪乱れちゃったし、こんなの八幡に見せられないよ・・・。

 

「どこいきやがったーーー!」

「かあ!かあー!」

「・・え?」

 

噂をすればやんとやら。片思いの相手である八幡が、あの速さに負けず劣らずのスピードでこちらに向かっている。あれ〈クイック・レッグ〉だよね?どうしたんだろう。それに何か焦って探してるみたいだけど・・・。

 

「どうしたの?八幡」

「え?おお、シズクか。髪乱れてるぞ」

「っ!は、八幡!大丈夫!これくらい。それより、急いでるんじゃないの!」

 

八幡は私を見るや否や、先程ウィンドキャットによって乱れた髪を手櫛で直し始めた。顔が赤くなってないか心配でたまらない。八幡は控えめなくせにこういうときだけ無意識にやるから、つい不意打ちをくらってしまう。嬉しいけど。今日一番の幸福だけど。

 

「なぁ、この辺りでウィンドキャット見なかったか?」

「あ・・・・。それなら、さっき見たよ。あそこ曲がってった。どうして?」

「鍛冶屋に渡す宝石盗まれたんだよ・・・。あそこを右だな」

「私も見かけたら連絡するよ」

「うし、サンキュー」

 

あ、行っちゃった。もうちょっと話したかったけど、仕方ないか。

 

「ん?あれ?これって・・・・」

 

足もとに何か落ちてあったから、拾い上げてそれを確認する。赤色の綺麗な宝石だ。思わず見惚れてしまう程に。

 

・・・これ、八幡が言ってたやつ・・・。

 

 

「はぁ、はぁ、やっと捕まえたぞこの野郎・・・」

「にゃー!」

「もう離さねぇからな!返してもらうぞ!・・・ってあれ?」

 

可笑しいぞ。こいつの首にあるはずの宝石がない。体中隅から隅まで触ったが、調べても出てこない。誰かに渡すものだから余計に焦ってくる。

 

少し冷静になり、考えてみた。あの速さで走ってたらいくら固定された物でも外れてしまう。つまり・・・

 

「お前落としやがったなぁ!」

「にゃー!」

「うるせえ!この野郎!!」

「かあ!」

 

首根っこを掴んで柄にもなく大声で怒りをぶつけた。盗んだ挙句にそれを落とすとは、器の大きい俺でも怒るぞ。この後、来た道を戻りながら、隅から隅まで目を通すと考えると、とてつもない虚無感が俺を満たす。

 

だが、人見渡すもの以上、探さなければいけない。トボトボと歩き、クロウに空から探してもらうよう指示しようとしたところ、突然ビーコンに連絡が入った。シズクだ。

 

「どうした?」

『今宝石探してるでしょ?』

「何故それを・・・。もしかして、後つけてんのか?ストーカーか?」

『ばっかじゃないの!そんなことしてない!』

「じょ、冗談だよ。大声出すな」

『八幡が変な事言うからでしょ。それで、宝石なんだけど、私が持ってるから』

「マジか」

『多分、私を横切った時落としたんだと思う。よかったね~、私が拾って』

「ああ、助かった。サンキューな。今からそっち行くわ」

 

 

シズクと合流し、例のブツをもらった俺は、鍛冶屋に行くため、シズクを別れようとしたが、何故かシズクもついていくことになった。折角拾ってくれたわけだから、何も文句はない。なんだったら、何か礼をしたいくらいだ。

 

「ガイルさーん」

「おう!なんだエイト?・・お?彼女連れか?」

「か、彼女!?・・彼女・・・」

「いや違いますよ。シズク顔赤くして怒ってんじゃないっすか」

「・・・・・」

「はぁ、それで、何か用か?」

 

何故俺に向かって溜息をした・・・。え、何その目。そのお前何もわかってねぇなぁって訴えてるような目は・・・。ガイルさんみたいなごつい人がそういう目すると、怖いからやめてほしいわ。

 

「これ、届けに来たんです」

「お?俺が頼んだ宝石だな。何でエイトが?」

「頼まれたんすよ。お姉さんに」

「そうだったのか。わざわざ悪いな。ほれ、お礼だ」

 

二カッと口角をあげて、渡してきたものは、女性ものの髪留め。水色の宝石が埋め込まれている。俺男なんだけど・・・。もしかして女装趣味って思われてる?そんな素振り一回もしていないのに。ガイルさんのせいで自分の行動顧みなきゃいけなくなっちまったじゃねぇか。

 

「ちょうどいい。シズク、あげる」

「え?いいの?」

「これ、俺が付けても何もなんねえだろ。シズクなら似合いそうだし」

「そ、そっか。ありがとう・・・」

 

水色の髪に水色の宝石ってどうかと思っていたが、結構いい感じになっている。元がいいから、違和感がなく寧ろ綺麗だ。

 

「どうかな?」

「いいんじゃないか?」

「あ、ありがとう・・・。あ、この後2人で」

「おーい!」

 

シズクが何か言いかけたらしいが、向こうから聞こえてくる大声がそれを遮った。そちらの方を向くと、手を振りながら、爽やかな眩しい笑顔を向けているキリヤだ。眩しい奴だな・・・。その後ろにはリアとジークもいる。またこの5人が集まった。

 

「何してんだ?・・・ってシズク?なんか俺の事すげぇ睨んでねぇか?」

「何でもない!」

「そういやシズク。さっき何言いかけたんだ?」

「そ、それは、また今度言う!」

「もう!キリヤのバカ!」

「ええ!何で・・・・・。あー、そうか。悪いことしたな」

「ハァ・・・」

 

なんだなんだ?この状況。俺の目の前で何故か意思疎通できているような感じだぞ。リアは急にキリヤ罵倒するし、ジークは相変わらずの溜息だし。俺だけ状況に追いつけず、どことなく寂しく感じてしまった。

 

随分と弱くなったものだ。魔法だけが強くなっていくぞこれ。だけど、別にどうでもいい。

 

「おーし、じゃあ気ぃ取り直して、飯行こう!」

「八幡ウィンドキャット追いかけたせいでお腹空いてるでしょ。行こう!」

「はいよ」

 

互いに意思疎通できなくても、こんな楽しい時間が過ごせるなら、どうでもいいからな。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

このシリーズの八幡のヒロインは、なんとシズク・アネシアです!・・・・・さすがにもう分かってるよね。

また次回。

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