人間不信になった俺は魔法使いに出会いました(打ち切り)   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

多分このシリーズは20話から25話には終わると思う。

それではご覧ください。


11話:隠し事

どうも、キリヤ・バルハードだ。八幡との楽しい夏休みが終わり、現在学校で数学の授業を受けている。周りの奴は結構問題に苦戦している様子だが、自分で言うものなんだけど俺は成績がいいのだ。

 

「それではこの問題を、アネシア」

 

シズクが名指しされた。この問題も結構難しいが、シズクなら問題ないだろう。なにせ、俺とシズクはあることをしているため、普通に答えられる。俺もこれわかるし。

 

しかし、何故かシズクは答えようとせず、ボーっと上の空状態だ。あいつは最近あの状態になることが多い。原因は、おそらくリアもジークも勘付いているだろう。

 

「アネシア!」

 

無視された教師は怒気を含んだ大声で再度、シズクを呼んだ。

 

「え?は、はい!」

 

「この問題の答えは?」

 

「はい、”―――――――”です」

 

教師の呼びかけに気づいたシズクは、焦りながらも答えた。正解したため周りは少し驚いている。

 

 

放課後になり、他の奴らは颯爽と帰っていった。俺達は、用事がない限り、集まって下校する。リアとジークは席を立ち、集合しようとしたが、シズクだけ座ったまま、またボーっとしているため、シズクの周りに集まることにした。

 

「おーい、シズク」

 

「・・・・え?あ、リア」

 

「どうした?またボーっとして」

 

「さすがに、心配」

 

ほら、滅多に喋らないジークも喋るほど心配している。それくらいシズクがおかしいのだ。

 

するとリアが、ははーんと何かに気づいた様子でニヤつき、シズクの頬を突つき始めた。リアにはシズクの気持ちが分かっているのか。さすが女子同士だ。

 

「どうせ、八幡の事考えてたんでしょ?全く・・・」

 

「ち、違うから!」

 

リアが嫌な笑みを浮かべながら質問すると、急に慌てて否定に入るシズク。・・・・・あー、成程。やっと分かった。リアとかにいつもどんくさっ!って言われてる俺でも理解できた。

 

シズク、八幡の事気になってんだな。

 

頭の中で結論が出たと同時に、ジークが全く同じことを耳打ちしてきた。だからさー、分かってたよ?俺そこまで重症じゃないのに・・・。

 

「とにかく!八幡の事なんて別に「俺がどうかしたか」って、八幡!」

 

ここでまさかの八幡登場。いつの間に入ってきたのか・・・。ここの学校は関係者以外は入れないんだぞ。恐ろしい隠者だ。

 

「よっ」

 

「なんだよその挨拶・・・。ていうか、全然気づかなかったぞ」

 

「うん。床は石造りなのに足音すら聞こえなかったよ。凄いね八幡」

 

「え?何それ?遠回しに俺の影が薄いって言ってるの?酷くない?・・・あと、俺について何か話してなかったか。・・・・もしかして」

 

「陰口とか言うつもりだろ?んな事するか。冗談が過ぎるぞ」

 

根っから俺らの事信頼してるくせに、この卑屈さは全然変わっていない。

 

「八幡こそどうしてここに?」

 

「暇だから来た。それより、なんかシズク顔赤くね?」

 

「き、気のせいだよ。いきなり来たからビックリしただけ」

 

シズク、正直な奴だから隠すのは下手なんだ。そして八幡は俺よりも重症だった。まぁ、人の好意だけは鈍感なんだな。昔の事もあったし。

 

・・・・あ、そろそろ行かねぇと。

 

「シズクもう行こうぜ」

 

「あ、もうそんな時間か。・・・じゃあね皆」

 

俺達はこれから八幡に内緒である場所に行き、あることを学ぶ。何で内緒なのかは卒業したときに分かる。

 

 

 

 

「なぁ、あいつらって付き合ってるのか?最近やけに一緒にいるし」

 

俺がそう聞くと、リア、ジーク共に深いため息をついて、気付けって訴えているような目線を送られた。

 

それにしても、キリヤもシズクも帰っちまったか。暇つぶしに遊びに来たが、どうしようか。

 

「ジークとリアはこの後予定あるのか?」

 

「あ、私はお父さんの手伝いしなくちゃいけないから・・・」

 

「僕も、帰らなきゃ」

 

2人も予定があるようだから、ここで別れた。

 

・・・・・俺何しに来たんだ?

 

 

特にすることもないため、クレアの家に戻った。するとクレアも

 

「今日は用事があるから。1人で修行、頑張ってね」

 

仕事がない日でも用事があるなんて働き者だな。そのおかげで俺は生きていけてるんだけどね。働ける年になったら絶対恩を返す。

 

修行といっても、今日は修行する気は無かったから、どう暇をつぶそうか考え中だ。

 

・・・・・・・・・

 

 

考えた結果、地球に戻ってきた。特にこれといって地球でもやることは無いんだけどな。ただの散歩をしようと思う。最近は魔法を使い過ぎて、色々と地球の日常と離れていたから、気分転換だ。魔法には依存しないよう心がける。

 

「あ、八幡君」

 

散歩中、偶然遭遇したのは、地球人で唯一信頼している、春さんだ。いつの間にか下の名前で呼び合うようになっていた。

 

「どうも。これから図書館ですか?」

 

「そうなの。受験生は大変なんだよ」

 

あの時の新人バイトとは違い、今ではすっかり高校3年生の春さん。センター試験に向けて勉強中だ。

 

けど、身長は俺の方が高くなっている。見上げていた春さんが、今では見下ろすようになった。

 

「ところで、暇かな?」

 

「はい。今日はずっと気ままに歩く予定でした」

 

なんなら歩いて幕張行く勢いまである。

 

「じゃあさ、これから図書館に付き合って欲しいんだ。いいかな?」

 

「いいですよ」

 

「それじゃあ、レッツゴー♪」

 

 

「あの、邪魔にならないんですか?」

 

「そんなことないよ。1人だと寂しいし」

 

「友達とか連れてくればよかったじゃないですか」

 

「・・・とにかく、ここにいて」

 

あ、地雷踏んだかも。いないことは無いんだろうけど、色々あって1人なのか。これ以上詮索はしないでおこう。深読みする癖は治らないな。

 

春さんと対面で、俺は読書に励む。図書館は何でも揃っているから大好きだ。そんな俺は、神話系の分厚い本を読んでいる。こういうのにも信憑性があると思い、前から手を出しているのだ。中でもクトゥルフ神話は非常に興味深い。容姿がとんでもなく異形だ。

 

「八幡君、ここ分かるかな?」

 

「いや、高3の問題を中3に聞かないでくださいよ・・・」

 

「だって八幡君。国語得意だし」

 

「そうですが・・・・・。あ、ここは、この文章がヒントになってます」

 

「解けてんじゃん・・・。しかも上手い具合に答えを言わずに・・・」

 

恨めしそうにつぶやき、落胆する春さん。

 

「いや、たまたまですよ。この問題が簡単だっただけです」

 

「私はそれに苦戦したんだけどなぁ・・・」

 

め、めんどくさ。そんな露骨に溜息しないでくださいよ。なんか悪い事したみたいじゃないですか。

 

「これから国語は八幡君にちょっと教えてもらうね♪」

 

「おい、それでいいのか受験生・・・」

 

 

「ん?キリヤ達、何してんだ?」

 

家に帰ると、クレアとキリヤとシズクがテーブルを囲って何かをしていた。そして近づこうとしたら、シズクに目を塞がれて、クレアとキリヤは急いで何か隠しているような物音が聴こえた。

 

「おーい、何してんだ?」

 

「何でもないよ!八幡が気にすることないから!」

 

そんな焦りが混じった声で言われても説得力ないんだけど。みんなして俺に何か隠してるのか?

 

シズクが手を離すと、テーブルはきれいさっぱりに片付いていた。きっと俺に知られたら困るようなことをしてるのかもしれない。俺のパーソナルナンバーが消えてるとか。そして誰もいなくなるのか?

 

・・・・・・・・。

 

 

「あいつら最近冷たすぎる・・・」

 

「あはは・・・」

 

「・・・」

 

翌日、俺はリアとジークを呼び出して、共に飯を食べている。本題は最近のキリヤ達についてだ。

 

「まぁ、人にはそれぞれ秘密があるから・・・」

 

「」ウンウン

 

「確かにそうだけどよ。それでもあんなに露骨に俺に隠し事をしてたら、そりゃ気になっちまうよ」

 

「まぁまぁ、ほら、飲みなよ」

 

ここでも愚痴をこぼす人に対して、飲み物を薦める風習があるのか。お酒はまだ飲める年齢ではない。けど、ここのドリンク、日本だと酒だって思われるかもしれない。黄色い液体に泡。もうまんまビールだ。

 

「大体、シズクは何で俺と会話するとき、顔赤くしながらチラチラ視線を動かすの?そんなに俺を見るのが嫌なのか?」

 

((いつまで付き合わされるんだろう・・・。大体、キリヤ達隠すの下手過ぎるでしょ。その日になったら、秘密を打ち明けると同時に謝りなよ))

 

 

 

心の中で、届くはずのないキリヤ達への説教をしながら、目の前で八幡がヤケ飲みしている姿を見る。彼が弱みを見せることが非常に珍しく、その姿をマジマジとリアとジークは観察した。

 

自分たちも、キリヤ達と同じことをしたいと思っている。だが、それぞれ家の事情でそれは不可能なのだ。

 

そう、キリヤとシズクが、日本の高校へ行くために、日本語を必死に勉強中だという事を、八幡はまだ知らない。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

もう2、3話で高校生編に突入する予定です。

また次回。

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