人間不信になった俺は魔法使いに出会いました(打ち切り) 作:”アイゼロ”
多分このシリーズは20話から25話には終わると思う。
それではご覧ください。
どうも、キリヤ・バルハードだ。八幡との楽しい夏休みが終わり、現在学校で数学の授業を受けている。周りの奴は結構問題に苦戦している様子だが、自分で言うものなんだけど俺は成績がいいのだ。
「それではこの問題を、アネシア」
シズクが名指しされた。この問題も結構難しいが、シズクなら問題ないだろう。なにせ、俺とシズクはあることをしているため、普通に答えられる。俺もこれわかるし。
しかし、何故かシズクは答えようとせず、ボーっと上の空状態だ。あいつは最近あの状態になることが多い。原因は、おそらくリアもジークも勘付いているだろう。
「アネシア!」
無視された教師は怒気を含んだ大声で再度、シズクを呼んだ。
「え?は、はい!」
「この問題の答えは?」
「はい、”―――――――”です」
教師の呼びかけに気づいたシズクは、焦りながらも答えた。正解したため周りは少し驚いている。
◆
放課後になり、他の奴らは颯爽と帰っていった。俺達は、用事がない限り、集まって下校する。リアとジークは席を立ち、集合しようとしたが、シズクだけ座ったまま、またボーっとしているため、シズクの周りに集まることにした。
「おーい、シズク」
「・・・・え?あ、リア」
「どうした?またボーっとして」
「さすがに、心配」
ほら、滅多に喋らないジークも喋るほど心配している。それくらいシズクがおかしいのだ。
するとリアが、ははーんと何かに気づいた様子でニヤつき、シズクの頬を突つき始めた。リアにはシズクの気持ちが分かっているのか。さすが女子同士だ。
「どうせ、八幡の事考えてたんでしょ?全く・・・」
「ち、違うから!」
リアが嫌な笑みを浮かべながら質問すると、急に慌てて否定に入るシズク。・・・・・あー、成程。やっと分かった。リアとかにいつもどんくさっ!って言われてる俺でも理解できた。
シズク、八幡の事気になってんだな。
頭の中で結論が出たと同時に、ジークが全く同じことを耳打ちしてきた。だからさー、分かってたよ?俺そこまで重症じゃないのに・・・。
「とにかく!八幡の事なんて別に「俺がどうかしたか」って、八幡!」
ここでまさかの八幡登場。いつの間に入ってきたのか・・・。ここの学校は関係者以外は入れないんだぞ。恐ろしい隠者だ。
「よっ」
「なんだよその挨拶・・・。ていうか、全然気づかなかったぞ」
「うん。床は石造りなのに足音すら聞こえなかったよ。凄いね八幡」
「え?何それ?遠回しに俺の影が薄いって言ってるの?酷くない?・・・あと、俺について何か話してなかったか。・・・・もしかして」
「陰口とか言うつもりだろ?んな事するか。冗談が過ぎるぞ」
根っから俺らの事信頼してるくせに、この卑屈さは全然変わっていない。
「八幡こそどうしてここに?」
「暇だから来た。それより、なんかシズク顔赤くね?」
「き、気のせいだよ。いきなり来たからビックリしただけ」
シズク、正直な奴だから隠すのは下手なんだ。そして八幡は俺よりも重症だった。まぁ、人の好意だけは鈍感なんだな。昔の事もあったし。
・・・・あ、そろそろ行かねぇと。
「シズクもう行こうぜ」
「あ、もうそんな時間か。・・・じゃあね皆」
俺達はこれから八幡に内緒である場所に行き、あることを学ぶ。何で内緒なのかは卒業したときに分かる。
「なぁ、あいつらって付き合ってるのか?最近やけに一緒にいるし」
俺がそう聞くと、リア、ジーク共に深いため息をついて、気付けって訴えているような目線を送られた。
それにしても、キリヤもシズクも帰っちまったか。暇つぶしに遊びに来たが、どうしようか。
「ジークとリアはこの後予定あるのか?」
「あ、私はお父さんの手伝いしなくちゃいけないから・・・」
「僕も、帰らなきゃ」
2人も予定があるようだから、ここで別れた。
・・・・・俺何しに来たんだ?
◆
特にすることもないため、クレアの家に戻った。するとクレアも
「今日は用事があるから。1人で修行、頑張ってね」
仕事がない日でも用事があるなんて働き者だな。そのおかげで俺は生きていけてるんだけどね。働ける年になったら絶対恩を返す。
修行といっても、今日は修行する気は無かったから、どう暇をつぶそうか考え中だ。
・・・・・・・・・
考えた結果、地球に戻ってきた。特にこれといって地球でもやることは無いんだけどな。ただの散歩をしようと思う。最近は魔法を使い過ぎて、色々と地球の日常と離れていたから、気分転換だ。魔法には依存しないよう心がける。
「あ、八幡君」
散歩中、偶然遭遇したのは、地球人で唯一信頼している、春さんだ。いつの間にか下の名前で呼び合うようになっていた。
「どうも。これから図書館ですか?」
「そうなの。受験生は大変なんだよ」
あの時の新人バイトとは違い、今ではすっかり高校3年生の春さん。センター試験に向けて勉強中だ。
けど、身長は俺の方が高くなっている。見上げていた春さんが、今では見下ろすようになった。
「ところで、暇かな?」
「はい。今日はずっと気ままに歩く予定でした」
なんなら歩いて幕張行く勢いまである。
「じゃあさ、これから図書館に付き合って欲しいんだ。いいかな?」
「いいですよ」
「それじゃあ、レッツゴー♪」
◆
「あの、邪魔にならないんですか?」
「そんなことないよ。1人だと寂しいし」
「友達とか連れてくればよかったじゃないですか」
「・・・とにかく、ここにいて」
あ、地雷踏んだかも。いないことは無いんだろうけど、色々あって1人なのか。これ以上詮索はしないでおこう。深読みする癖は治らないな。
春さんと対面で、俺は読書に励む。図書館は何でも揃っているから大好きだ。そんな俺は、神話系の分厚い本を読んでいる。こういうのにも信憑性があると思い、前から手を出しているのだ。中でもクトゥルフ神話は非常に興味深い。容姿がとんでもなく異形だ。
「八幡君、ここ分かるかな?」
「いや、高3の問題を中3に聞かないでくださいよ・・・」
「だって八幡君。国語得意だし」
「そうですが・・・・・。あ、ここは、この文章がヒントになってます」
「解けてんじゃん・・・。しかも上手い具合に答えを言わずに・・・」
恨めしそうにつぶやき、落胆する春さん。
「いや、たまたまですよ。この問題が簡単だっただけです」
「私はそれに苦戦したんだけどなぁ・・・」
め、めんどくさ。そんな露骨に溜息しないでくださいよ。なんか悪い事したみたいじゃないですか。
「これから国語は八幡君にちょっと教えてもらうね♪」
「おい、それでいいのか受験生・・・」
◆
「ん?キリヤ達、何してんだ?」
家に帰ると、クレアとキリヤとシズクがテーブルを囲って何かをしていた。そして近づこうとしたら、シズクに目を塞がれて、クレアとキリヤは急いで何か隠しているような物音が聴こえた。
「おーい、何してんだ?」
「何でもないよ!八幡が気にすることないから!」
そんな焦りが混じった声で言われても説得力ないんだけど。みんなして俺に何か隠してるのか?
シズクが手を離すと、テーブルはきれいさっぱりに片付いていた。きっと俺に知られたら困るようなことをしてるのかもしれない。俺のパーソナルナンバーが消えてるとか。そして誰もいなくなるのか?
・・・・・・・・。
◆
「あいつら最近冷たすぎる・・・」
「あはは・・・」
「・・・」
翌日、俺はリアとジークを呼び出して、共に飯を食べている。本題は最近のキリヤ達についてだ。
「まぁ、人にはそれぞれ秘密があるから・・・」
「」ウンウン
「確かにそうだけどよ。それでもあんなに露骨に俺に隠し事をしてたら、そりゃ気になっちまうよ」
「まぁまぁ、ほら、飲みなよ」
ここでも愚痴をこぼす人に対して、飲み物を薦める風習があるのか。お酒はまだ飲める年齢ではない。けど、ここのドリンク、日本だと酒だって思われるかもしれない。黄色い液体に泡。もうまんまビールだ。
「大体、シズクは何で俺と会話するとき、顔赤くしながらチラチラ視線を動かすの?そんなに俺を見るのが嫌なのか?」
((いつまで付き合わされるんだろう・・・。大体、キリヤ達隠すの下手過ぎるでしょ。その日になったら、秘密を打ち明けると同時に謝りなよ))
心の中で、届くはずのないキリヤ達への説教をしながら、目の前で八幡がヤケ飲みしている姿を見る。彼が弱みを見せることが非常に珍しく、その姿をマジマジとリアとジークは観察した。
自分たちも、キリヤ達と同じことをしたいと思っている。だが、それぞれ家の事情でそれは不可能なのだ。
そう、キリヤとシズクが、日本の高校へ行くために、日本語を必死に勉強中だという事を、八幡はまだ知らない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
もう2、3話で高校生編に突入する予定です。
また次回。