水も滴る触手精霊、始めました。   作:ジョン・ドウズ

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主人公は色無誠。でも、本編を大きく壊すつもりはありません。何故なら、デート・ア・ライブの主人公は五河士道だから。

さあ、俺達のデートを始めよう!


プロローグ
Date.1「精霊、始めました」


「あーあ、俺ん家跡形も無いなぁ」

 

悲報:俺のアパート全壊。

 

俺は瓦礫の前で立ち尽くしている。

 

「どうしよっかなぁ………」

 

おい、今日は新学期初日だぞ、笑えよ。来禅高校に初登校してる間に、借りてた家が吹っ飛んだ。キャッシュカードとか通帳とか判子もね。後は財布の中の金しかない。

 

それもこれも、空間震という奴のせいだ。言わば空間の揺れ。地震の上位互換みたいなもの。三十年前のユーラシア大空災なんて、国を三つ跨いだ大規模な災害だった。何人も死んだ。国が作れる程の被害額だった。今でも犠牲者の追悼式典が毎年行われている。

 

さて。今回はそんな規模では無かったらしいが。

 

一人暮らしの俺こと、色無誠(いろなし・まこと)さんには、死亡フラグが立ちました!

 

ヤッター、人生ヤバイ!

 

天宮市(こんなとこ)に引っ越して来るんじゃ無かったよ!涙が出るね!あーあ、都立の学校行きたいとか考えなきゃ良かった!ついてねぇ、最高にだ!

 

前住んでた所は、空間震にギリギリ遭ったことがないという奇跡に近いとこだった。避難訓練は受けたが、その後の危機管理意識が足りなかった。俺、空間震の被害を生で見るのは初なんだ。後の祭り開催中。

 

参ったなあ。確かに住居とかは復興して貰えるのかも知れないが、流石に通帳とか小物は無理だ。

 

何せ、かつて空間震でカードを失ったと装って銀行で詐欺したってニュースがあったからなぁ。空間震詐欺以来、銀行やお役所は、その辺のガードは固いんだよ。

 

仕方無い。ひとまず何処かに身を寄せよう。何処にだ。親戚居ないしなぁ。友達の家に厄介になるのもなぁ………引っ越してきたばかりだから居ないしなぁ。

 

よし。

 

「学校行こう」

 

あそこなら事情を話せば何とかなる。

瓦礫の山にサヨナラバイバイ。俺は旅に出る(学校まで)。

 

「ん?」

 

道端の小石を蹴りながら通学路をしばらく歩いていると、町の残骸の中のあるものに目が止まった。

 

拳より小さい、水晶のような何か。ガラス質のようにも見える。どっちなのかは俺にはさっぱりだけど、取り敢えず何か綺麗。貰っていきたい。発想が火事場泥棒。ま、流石に良くないのは知ってる。

 

でもさあ、こーいうのってちょっと触ってみたくならない?だって綺麗じゃん。手に持って覗いてみたい。プリズミプリズムプリズマイリヤ。こんな時でも能天気な俺がアホみたいですね。ちくせう。

 

「失礼しまーす」

 

周囲を見回し、誰もいないと分かった所で、俺は一応詫びを入れてから水晶を拾い上げる。

 

「おー」

 

光を受けて反射する水晶の輝きは、何となくガラスのそれとは違うように思えた。もっとこう、何だろうね。スピリチュアル?な感じがする。こう、魔法のなんちゃらみたいな。俺の願いでも叶えてくれるのかね。無いわー。夢見すぎだわー。

 

「ん?」

 

あれ。

 

この水晶、てっきり日光を反射してるもんかと思ったけど………。

 

これそのものが光ってねーか!?

 

「お、おお!?何だこいつ!?」

 

うおっ、まぶしっ!?急に光度が強くなったぞ!?何の光!?

 

あ、やべ。

 

確か、超強力なフラッシュとかって、下手すると意識持ってかれ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。おーエライ目に遭った。ショックでぶっ倒れたようだが、特に身体に痛みは無い。安心。

 

空が見える………まだ青い。時間は全然経ってないみたいだ。ほっと一息。

 

何だったんだろ、さっきの。どうなったんだ?あの水晶は?

 

「ん?」

 

起き上がろうとして気付いた。胸の上に何かある。大きなお山が二つ。あら素敵、まるで女の子のお胸みたい。青色の薄い布が、申し訳に被さる感じで乗っている。

 

…………………………………。

 

むにゅん

 

「あふん」

 

気持ちよい。むにむにする。これ、自前だわ。何だ自前か。

 

─────────自前?

 

「待て待て待て待て!?」

 

さあ立ち上がれ俺よ、異常事態だ!どういうことだ!?声が女声!女声ですよ奥さん!!

 

跳ね橋のように起き上がった俺は、反射的に股間に手を遣る。

 

ブツが無い。何だと。

 

うわ、これキャミソールじゃねーか!?胸元から腹までバッチリ開いてるじゃないですか!?下は腰布とサンダル…………ベリーダンスか何かでもやるんですかね!?露出高すぎね!?

 

「まさか………」

 

服装が変わってたせいで道端に落っこちてたスマホを拾う。そして自撮り。指でピースは忘れない。

 

うん、いかがわしい写真が撮れました。俺の面影が全く無い、金髪碧眼のツリ目美少女が写ってます。どこのイケナイお店だ。あ、髪飾りにさっきの水晶っぽいの付いてる。大分サイズダウンしてるけど。

 

ひとまず理解完了。女の子になりました。それもとびきり痴女いとびきりの美少女に。

 

「お休みですか?お泊まりですか?そ・れ・と・も♪お持ち帰りですかぁ?」

 

試しに言ってみた。スゲー頭悪い感じがする。あと、俺自分の声なのにときめいた。ヤバイ。

 

一言で言おう、気に入ったと。

 

そこのアナタ、変態って言わない。水が滴るいい女と言ってくれ。いややっぱやめて、ちょっと悲しい。

 

うーん、それはさておきどうしたもんだ。こんな格好じゃ俺が俺だと先生に証明出来ないね。そもそも通報される。

 

どうしたもんか。

 

よし、人生諦めが肝心。女の子として生きていこうそうしよう。

 

あと、頭の中にあるこの触抱聖母(アルミサエル)ってのは一体何だ───────

 

「精霊確認!」

 

「よし、囲みなさい!」

 

ん?

 

何か空飛ぶハイレグ水着のような格好の女性の方々が大量に!?美少女偏差値高くね!?いやそんなことはどうでもいい!!

あれよあれよと言う間に、15人くらいに囲まれてしまった。うおすげぇ、ハイテクハイテク。で、これは何の騒ぎだ?

 

「あの、どちら様?」

 

何か友好的な感じはしないが、取り敢えずコンタクトを─────

 

「攻撃開始!!」

 

「はいィっ!?」

 

一斉に銃口が向けられる。ガトリングガンが、ミサイルが、ゴルフバッグみたいなものが、俺に狙いを付けている。銃でお返事ですか。バッドコミュニケーション。

 

そのゴルフバッグみたいなの、武器なんすね。アニメで見たことある。エネルギー充填なんちゃら%。白ヤギさんたら読まずにファイア。説明書なんて飾りです。武器なんて捨ててかかってこい。無理か。

 

ああ、 これは詰みました。間違いなく。

 

やられる。

 

やられる?やられる。

 

殺られる。

 

いやだ。

 

何でこうなる。

 

───────()()

 

触抱聖母(アルミサエル)

 

()()()()()

 

私は()()()()()()()ってこと。

 

空間が歪む。軋む。

 

やられる前に、ヤればいい。

 

「て、天使!!」

 

「霊力値、急激に増大!」

 

「総員対ショック用意!!急ぎなさい!」

 

何やら皆さん慌ててますけど。あなた方、覚悟して来てる人ですよね?

 

空間から吹き出す霊力の波が、辺りを抉り、削り、侵食する。

 

スーツの女達が吹き飛ぶ。

 

舞い上がった土が、私と敵とを別つカーテンとなる。

 

空間の歪みから現れたのは、20cmはあろうかという、棒状の水晶。

 

「おいで、アルミサエル」

 

それを胸元から体内に()()する。沼に沈み込むように、ずぶずぶ、ずぶずぶ。

 

私の中の何かが切れ、私は身体が崩れていくのを感じる。

 

そう、水になる。

 

()()()()()

 

私の夢は、求めるのは、()()()()()()()()()()だって。

 

「【寵愛(ヤッド)】」

 

水は力を持ち、力は私から次々と飛び出していく。一つ一つが宙をうねり、鎌首をもたげて敵を見据える。

 

「ひっ!?」

 

土煙が晴れる。衝撃波から立ち直り、私を再び見ることになった敵の一人が、息を詰まらせる。

 

それはそうだ。私の背中からは、優に100を越える水の触手が生え、宙を埋め尽くしているのだから。ちょっと怖いだろう。

 

「安心して下さい、怖いのは初めだけ。後は私が天国へ連れていってあげるから」

 

ああ、分かった。

 

()は狂ってたんだ。

 

俺は()()()()()()()()()

 

 

 

「やったあ!!美少女戦闘員酒池肉林!!キマシタワーーーーーーーーー!!」

 

「「「「「ヒイイイイイイイイイイイ!?!?!?!」」」」」

 

 

 

昂る。昂るぞおおお!チョモランマ!俺の愚息は………もういないんだった。ともかく、俺の中のエロスがペガサスファンタジー!!良くわからんけどいい!!

 

恐れ戦けエロ戦闘員共よ!俺こそはPCゲームのノリの使者!男たちの劣情の権化!!我が触手くん達の前に痴態を晒すがいい!!

 

「我が欲望のままに蹂躙せよ!!」

 

悲痛な叫びが木霊する中、触手が一斉に動き出す。そうら逃げろ逃げろ!!捕まったら俺、あいや私が愛でちゃうぞ!!

 

いくぞお前たち!Do くっころ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後メチャクチャこちょこちょした(ヘタレ)。

 

だって無理矢理性的に襲うってスッゴクダメでしょ!?特に戴けるモノ戴いちゃうとかさあ!足腰立たなくなるまでイタズラしてから逃げたけどね!!

 

でも何か後半はイケナイ事してるみたいな反応されてヤバかった。何かがキュンキュンした。ハッ、これが恋!?

 

すっかり蕩けた顔した皆さんを道端に放置するのは気が引けたが………。

 

あー、でも何かいい気分だったなぁ。

 

濡れるッ!!

 

何処がとは言わない!!

 

 

 

 

 

 

日が暮れた。

 

「夕日が綺麗だ………」

 

逃げに逃げて、見かけた公園のブランコでギコギコしていた。既に追手は撒いたようだ。

 

逃げ始めた時点で、俺は触手を消して走った。明らかに身体能力が向上しててびびった。これならオリンピックで世界一を取れるね!ってレベル超えてた。ナニコレ。

 

時刻は五時を回った。誰もいない公園は寂しい。ついさっきまでは、ボール持った小学生の男の子がいたから一緒に遊んであげてたけど、ちゃんと門限守って帰っていった。顔が赤かったのは夕日のせいに違いない。罪な女だ、フッ………。

 

公園に辿り着く前にコンビニで買ってきたおむすびを頬張る。ポカリを煽る。今日の晩飯です。変なのに追っ掛けられたから、食えるときに食わないと。

 

え、どう買ったかって?誰かを使いっぱしりにしたり、強盗してはいないよ?

 

この〈触抱聖母(アルミサエル)〉とやら、自分の身体を水に変える効果らしいのだけど。こいつを利用すれば、好きな姿形に変身出来るっぽい。その名も【整形(マセカー)】。便利。お陰で服をそれっぽく構成して店に行けた。このスケスケ衣装…………霊装って言うの?こいつも俺の一部らしいからちゃんと変化してた。

 

だけどね。常に変身使ってると疲れるのよ、これが。身体に水晶ぶっ刺してても、水になるから元の身体維持する分には全然負担が無いんだけど。だから今は変身を解いてる。

 

あーあ、もっと維持出来るなら、元の身体に戻っても良かったんだが。本来の用途では無いからか、連続使用出来るのはせいぜい半日が限界と見た。ツラい。

 

しかし悲しむことは無い。この力があれば、当面の宿の確保は容易い。

 

他所のお宅に上がり込んで、風呂の水に成り済ませばいいのだ。ついでに美少女の浸かるお湯になりたい。グヘヘヘ、美少女エキス(=汗)抽出だぁ!俺が、俺達が、美少女汁だ!!ハッハァ!!

 

いや、いや違うぞ?目の保養を求めたり心の栄養補給を主にして考えたりはしてないぞ?ホントだぞ?紳士だからな?

 

という訳で、通り掛かった美少女がいたら、お宅にお邪魔してしまおう作戦開始!!

 

 

 

 

-----二時間後-----

 

 

 

…………………………。

 

えー七時です。すっかり暗くなってしまいました。

 

だーれもいない。

 

若い娘がいない。

 

見事に主婦の方々しかいない。

 

お疲れのサラリーマンしかいない。

 

むしろ計算されてんじゃねーのかってくらいいない。

 

しかもスマホの充電切れた。もうやだ。おうちかえる。おうち無い。しねる。

 

もういいや。適当なお宅のお風呂に忍び込んで寝よう。そうしよう。お留守のお宅がいいな。

 

決意完了。目標決定。公園を出た俺は、明かりの点いていないお宅を探す。空き巣の行動。お宅の風呂場、盗みます。

 

おっ、ここ、電気点いてない。インターホン鳴らしてみようか。最悪ダッシュする。

 

ピンポーン

 

……………。誰もいないと見た。

 

レッツゴー。すまないね()()さん。ちょっと民宿させて。無断で。風呂だけでいいから。

 

身体を液状化させて、ドアと床の僅かな隙間から家に潜り込む。ハイクオリティ不法侵入。ディモールト。俺の頭はマンモーニ。

 

さてと。

 

潜入成功。俺が人型に戻る時に、水も全て回収出来るので、濡れた形跡など残らない。証拠など残らないんだよ。フフフ………。

 

さーてお風呂お風呂ー。お風呂場を探しましょう。

 

と言ってもここは一般的なご家庭だけあって、あっさりと見つかった。あら素敵。ちゃんと掃除されててピカピカだね!風呂の蓋を開けてビックリ!素敵なベッド(バスタブ)でヴェリィィナァイスですよぉぉお!!

 

さて、寝ましょうか。再び液状化し、湯船に収まる。万が一誰か帰宅しても水を張ってるように見えるよう、入浴出来る体積に調節して、っと。

 

よし。液状化してるとバスタブでも結構落ち着くぞ。水の(サガ)か?

 

まあいいや。ずっと水晶(アルミサエル)刺してて疲れたし、寝ながら休みましょうそうしましょう。

 

次の夜までさようなら。

 

違うか。

 

まあいいや。誰も聞く人などいないだろうけど、お休み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、俺の運命は決まっていた。

 

風呂の蓋を閉め忘れたことが、俺の全てを決めたんだ。

 

でも。

 

そうしなかったら、俺は救われなかったんだろう。きっと。

 

 

 

 

 

 

物音がして、目が覚めた。半覚醒状態だが。いや、今は水だし、目、無いけどね。

 

誰か帰宅した?ドアの開閉音と、続けて施錠音がする。

 

「全く、面倒ね。士道に説明してる間にもう一体精霊が現れるなんて。しかも変態。懸念要素が増えただけじゃない」

 

おんなのこ?

 

でも。あー、眠い。ほっとこう。今何時だ。分からん。真っ暗だから夜だな。

 

俺は無視して、再び意識を手放そうと努力を始める。

 

羊が一匹、羊が二匹、三匹…………。

 

足音が近付いてくる。

 

羊が十一匹、十二匹、十三匹……………。

 

間近でドアの開く音がした。うん。人影が見える。ちょっとヤバイかも知れないけど、下手に動かない方がいいな。寝よう。

 

「シャワーだけして、もう寝たい…………あら。士道ってば、風呂に蓋も出来なくなったのかしら。あのフライドチキン」

 

羊が二十四匹、二十五匹、羊が…………

 

「予定変更。追い焚きして湯船に浸かりましょう」

 

──────バーニング。

 

「あっつうううううううううううぃ!!」

 

「へぇっ!?」

 

何だ!?アツい!ヤバイ!焼ける!あっ、でも逃げ場がない!燃える!水だから燃えない!ヤバイ!

 

「ハッ、ハッ、アッー!?アーツィ!?アーツ!!アーッェ!!アツゥイ!?」

 

「ひ、ひぃっ!?何この水!?」

 

緊急脱出!自分の身体だけ構成して浴槽からエスケープ!素潜りしていたかのように水の中から勢い良く飛び出す!2ゲット!シンクロナイズドスイミーング!!

 

「風呂の中からコンバンワーー!!」

 

「嫌アッ!!」

 

顔を出した先には、一糸纏わぬ赤い髪の美少女が。あら可愛い、中学生くらいかな?

 

そして、

 

─────そして、凄まじくキレの良い平手が迫っていた。

 

\ヒエ-/

 

「待て話せばわかウッボア!?」

 

女子の伝家の宝刀、直撃。乾いた、しかし聞いただけでも痛くなりそうな程の音を立てて、俺の頭は壁に向かって方向転換。

 

頭を強く打ち付けた俺は、望み通り意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、これだけは忘れない。

 

親指を立て、右手でサムズアップ。

 

「ナイス、ちっぱい……………ごふっ」

 

 

 




自分の趣味を押し出してみようと思いまして。
ためしに書いてみました。
抑えましたとも、色々。
抑えなかったら、変態の妄想がアグレッシブ。
もっとやっていいなら、話は別ですが。

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