4月1日、17:00ー三宅島沖
「対水上レーダーに感あり!」
その報告にはれかぜの艦内の緊張感は一気に高まる。
「目標80°、艦影2!速力凡そ42ノットで接近!」
「目標は中型漁船クラス!登録船舶ビーコン応答無し!」
海上保安法には個人所有や商用船舶、船舶の規模を問わず全ての船舶に課せられた届け出の義務が明記されている。
届け出のあった船舶は海上安全整備局による検査の後、登録船舶である事の証明となる発信機が配布されそれの設置が義務付けられている。
【登録船舶ビーコン】とはその発信機の事であり、それの反応が無いと言うことは無登録であるかもしくは設置の義務を怠っていると判断できる。
勿論それらの行為は勿論違法で
「接近中の船舶を不審船と認定....警戒行動始め」
「不審船に対し警告を開始せよ!」
CICからの情報を元に艦長である明乃が接近中の船舶を不審船と認定し、それに合わせて副長であるましろによって、不審船に対する警告を行う様に命令が下る。
警告は数段階に別れており、まず初めに音声による警告が行われる。
『こちらは横須賀女子海洋学校航洋艦はれかぜ、接近中の船舶に通告します。ただちに停船こちらの指示に従いなさい。繰り返します、だちに停船しこちらの指示に従いなさい』
最初に日本語による警告が行われ、続いて英語中国語それから使用されている言語圏が一番多いスペイン語による警告が行われる。
しかし、それらに対して不審船は2隻共反応を示さない。
「不審船2隻共になおも接近!」
「警告射撃を許可します!」
「警告射撃用意!」
警告に対して反応を見せず尚も接近してくる不審船に対して、明乃は警告射撃を行う様に命令する。
と、ここで少し脇道にそれるが【航洋艦はれかぜ】について話しておこう。はれかぜは【かげろう型航洋艦】の12番艦だ。
このかげろう型とは“史実”で言うところの【はつゆき型護衛艦】である。“本来の世界線”や“この世界線”では航空機が存在せず主兵装たるミサイル兵器は魚雷へと置き代わっている為、このかげろう型航洋艦に搭載されている兵器も、其々ミサイルと同じ様な役割を持った魚雷へと置き代わっている。
そこに加えブルーマーメイドの艦船では、今回の様な不審船や海賊と言った比較的小さな目標との交戦も頻繁にとまでは言わないものの、全く無いと言う訳では無い為に艦橋横のウィングと両舷共に2カ所づつ、計6門のブローニングM2重機関銃が備え付けられている。
警告射撃に使用されるのはこのM2で、命令を受けた航海員がウィングにあるM2に取り付き射撃の用意を始める。
「1番機銃警告射撃用意よし!」
「警告射撃始め!」
そうして警告射撃が行われるがそれでもやはり不審船2隻は、反転もせず警告に従うつもりも無い様だ。それよりもむしろ
「不審船より発砲炎!!」
ウィングから見張りを行っていた野間マチコが叫ぶ。さて、ここでもう一度脇道にそれよう。
以前から“本来の世界線”だけてなく“この世界線”でも航空機は存在しない、そしてミサイルも存在しないと何度か繰り返していると思う。がしかし、かと言ってどちらの世界線にも空を飛ぶモノが全く存在しない訳では無い。
熱気球や空気よりも軽い気体を使用した飛行船は存在しているのだ。そして飛行では無く一時的な飛翔を行う【噴進魚雷】と言う兵器がある。
飛行と飛翔の違いは曖昧なものだが、ここでは前者を一定の時間以上を
噴進魚雷とは燃料を燃焼させ噴射にて一時的に空中を進み、その後着水し水中を進むと言った魚雷である。
では以上の事を踏まえて何が言いたいのかと言うと、噴射で短時間飛ぶ兵器は噴進魚雷だけでは無いと言う事で。
長距離での誘導能力は愚かそもそも目視範囲外まで飛ばせ無いものの、短距離てま有れば空をすっ飛んでくるロケットランチャーの様な兵器は存在するという事だ。
「左弦後部に被弾!!」
「被害報告!!」
「損害軽微!」
『機関室にて負傷者1名!』
「医療班は直ちに機関室へ!」
ー被弾
とは言え所詮は人間一人によって携行できる程度の兵器であり、大型の軍艦であるはれかぜに対して致命的な損傷を与える事など不可能だ、精々衝撃で転けた機関要員が捻挫程度の軽い負傷を負っただけである。
「艦長、二段階に渡る警告を無視、並び本艦に対する攻撃.....不審船は明確な敵対意識を持っている者と思われます」
明乃はましろからの意見具申に対してうなづくと
「海上保安第8条に基づき、不審船2隻を海賊船と認定!本艦はこれを迎撃します!臨検部隊用意!左弦機関銃前門攻撃始め!!」
そう力強く命令した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「17:40、訓練終了しました。なお機関科、伊勢負傷」
「.....10分遅れか」
幸子の報告にましろは時計を見ながら呟いた。
不審船に対する対処の訓練、それがはれかぜが先程まで行っていた
実際には不審船2隻は存在してい無いし、被弾もしてい無いので負傷者も存在し無い。
「まぁ、初めての1年生がいる中で10分遅れなら十分だよ」
「しかし.....」
どれだけ頑張ろうと初めての訓練では入学したて1年生が上級生の足を引っ張ってしまうのは、想定通りの事で仕方の無い事である。
最も
そんなましろをチラリと一瞥すると明乃はさてとと言いながら立ち上がる。
「艦長?」
「副長、暫く艦橋を預けます。ココちゃん一緒に来て」
「了解です」
「了解しました。ですが何方へ?」
「流石にこれ以上待たせる訳にはいかないでしょ?」
それじゃ宜しくね、と幸子を伴い艦橋を出て行く明乃を見送ってから、漸く自分達の艦が部外者であるメーカーの人間を乗せていた事を思い出したましろであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
はれかぜの訓練が終わったのとほぼ同時刻、はれかぜに先行する形で航行するこんごうでも訓練終了の報告がなされていた。
はれかぜの訓練と殆ど変わらない為、内容に関しては省くが一つ特筆するならば10分遅れであったはれかぜと違い、こんごうは僅か3分遅れであった事だろうか。
その殆どが去年度から減りはしたものの増えては居ない3年生と違い、2年生は元々同じ艦に乗っていた生徒だけなら未だしも、ほぼ各艦から集まったばかりの中でこの時間と言うのは、流石は優秀クラスと言ったところか。
「樫本さん左前方貨物船、注意して」
「了解しました!」
そんな感じで訓練が終わったから少し緩みかけていた艦橋の空気を、もえかの命令が引き締める。
操舵輪を握っていた航海科2年生の生徒は操舵輪をしっかりと握り直し、ウィングの見張り員達は艦長に見張り員の様な事をさせた事に慌てて双眼鏡を覗く。
と、その時
「艦長!主砲が!?」
「どうしたの?」
唐突に艦橋前方にある主砲が動き出しそして、
ーDam!!Dam!!Dam!!ー
貨物船に対して三発の12.7cm砲弾が吐き出された。
訓練部分は「ジパング」より。
最初はミサイルを魚雷に置き換えて行おうかと思ったんですが、どっちかと言うとブルマーなら“敵艦”との
ちなみに演習参加艦艇はそれぞれ少しづつ違う航路にて、集合海域である西之島新島沖を目指しています。多分原作でもそうだったんじゃ無いかなと。リンちゃんが航路間違えたとか言ってたし、艦隊を組んでの移動なら間違え様が無いですよね?序でに機関停止した晴風を置いていく事も無いでしょうし。