ハイスクール・フリート-近代艦   作:たむろする猫

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「あのっ!宜しいでしょうか!!」

明乃の艦長就任を祝う3年生の輪に外側から声がかけられる、全員の目が一斉に向いたそこに居たのははれかぜ副長である宗谷ましろであった。


3話

「はい、どうぞ」

 

明乃は自分を囲っていた友人達の輪から進み出てましろの前に立つ。彼女の顔を初めて見た明乃であったが、抱いた感想は少なくとも懸念していたような問題を起こす様な子では無く、至って真面目そうな子であるという印象だった。

 

「本年度より航洋艦はれかぜ船務長並び副長を拝命しました!船務科2年宗谷ましろです!」

「本年度より航洋艦はれかぜ艦長を拝命しました、航海科3年岬明乃です。ようこそはれかぜへ」

 

よろしくね?と微笑みながら差し出した明乃の手をましろは真面目な表情のまま、よろしくお願いします!と真面目に答え握り返す。そんな彼女の様子に固くなっちゃってるなーと内心で苦笑する。2年生になって直ぐに副長という大役に就いた事も要因の一つであるだろうが(最もはれかぜには1年生がいる分、こんごうに行く(期待しされていた配置)より幾分かマシだろうが)、明乃には彼女がマニュアル人間である様に見えた。

最もこれは明乃の第一印象のみでのものであり、

彼女がどの様なタイプなのかは実際に接して判断する必要があるだろうとは思う。

ただ取り敢えずは確認はしておくべきだろう

 

「宗谷さん、出航準備が終了してからで良いのでお話しがあります。良いかな?」

「え?あ、はい構いませんが.........」

「良かった。それじゃあそろそろ教官が来られると思うから席に着いて。ほら、皆んなも!」

 

明乃の言葉に全員が慌てて席に着く。と、同時に

 

「はれかぜクラス、全員そろったか?」

 

ドアが開き、薄茶の制服を着た教官が入ってくる。

教室内を見回しつつ教壇に立つと明乃を見て小さくうなづく。

 

「起立!傾注!」

ーザッー

 

明乃の号令に合わせ全員が立ち上がる。

因みに余談ではあるが、起立の号令を聞いて(・・・)立ち上がったのは1年生だけで、2・3年生は教官が明乃を見た時点で既に立ち上がる準備を終わらせ、号令に合わせて(・・・・)立ち上がっている。この辺は慣れの問題である。

 

「指導教官の古庄です。2年生の皆さんは上級生となり下級生へと教える(・・・)事もある立場となりました。3年生の皆さんは遂に最後の年を迎えました、責任ある立場になった人もそうではない人も3年生としての自覚と責任感を持ち航海に臨む様期待しています」

 

2年生、3年生の全員と目を合わせる様に全体を見回しながらそう語る。それを聞く彼女達、特に3年生は万感の思いを胸に前を向いている。今日から2週間の航海をもって始まる最後の年、この1年で自分達の真価が試される訳であるから当然だろう。

 

「そして、1年生の皆さんは今日から高校生となり海洋実習に出る事となります。辛い事もあるでしょうが、穏やかな海は良い船乗りを育てないと言う言葉が有ります。3年生2年生の先輩達からよく学び仲間と助け合い厳しい天候に耐え荒い波を越えた時貴女達は一段と成長している筈です。学年を問わずまた丘に戻った時に立派な船乗りとなった貴女達に会うことを楽しみにしています」

 

そんな彼女の言葉に不安そうな顔の生徒は少ない。3年生はこれまでの2年間から来る自信の表れか真剣な顔だが僅かに笑みを浮かべている様に見えるし、2年生はそんな頼もしい上級生が居る事への安堵か硬い表情になっている者は少ない(・・・)。1年生はこの学校に入学出来たことから来る自信だろう、不安よりも期待の方が大きい様に見える。根拠の無い自信(・・・・・・・)で潰れてしまわなければ良いが。それはその1年生だけでなく眼前の少女達の中どころか、21期生の中でもトップクラスに期待されている少女をも潰してしまいかねないから.....

そんな考えを表情には出さず、古庄は言葉を続ける

 

「それでは艦長、出航の用意を」

「礼っ!!」

 

出航の用意をする様に告げ部屋を出て行く古庄に明乃の号令で礼をする。ガチャリとドアの閉まる音がしてから

 

「直れ!各員持ち場に付き出航用意!!」

ーはいっ!!ー

 

頭を上げた明乃の命令により全員が出航に向けての準備を始める為、自身の持ち場へ向かう為駆け足で一斉に教室から出て行く。

と、そこで明乃は「副長」と声を掛けましろを呼び止める

 

「はい、何でしょう?艦長」

「教官に確認したい事が有るので少し外します。

出航準備の指揮お願いします」

「えっ?いやっあのっ!?」

 

呼び止めようとするましろの声を無視して、明乃は教室から駈け出す。古庄教官が艦内に居る内に捕まえないと。そう思いつつドアをくぐって行くと、丁度ラッタルを下りようとしている後ろ姿を見つけた。

 

「教官!少しだけ宜しいでしょうか!!」

 

 


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