ハイスクール・フリート-近代艦   作:たむろする猫

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プロローグ

『私ね....ブルーマーメイドに.....

成れ無くなっちゃった』

 

そう言った彼女の表情(かお)

哀しそうで悔しそうで苦しそうだった(痛々しくて見ていられなかった)

 

 

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ーそう言えば、あの日もこんな夕焼けだったなー

ー私達の都合なんて御構い無しに空は綺麗だー

 

ふと自分達の置かれている状況を忘れそうになった明乃は、苦笑いして足元で煮干しを頬張るはれかぜの大艦長(マスコット)の猫、五十六の頭を撫でる。

 

「のんきだね〜五十六〜」

「なう」

 

現在はれかぜは、さるしま以下の艦艇から逃走し鳥島沖へ向かい原速にて航行中である。決してのんびりとした状況ではない筈なのだが、人間共の事情など知ったことかと、のんきそうな五十六を見ていると思わず頰が緩みそうになる。

 

「ここに居たか、艦長」

「美波ちゃん」

 

そんな明乃に背後から声を掛けたのは制服の上から白衣を纏った小柄な少女、衛生長の鏑木美波だ。

 

「一応一年生達のカウンセリングは終わったぞ」

 

一年生達へのカウンセリング、それが普段自分の城(医務室)に籠っている美波が態々明乃を探し歩きまわって居た理由である。

彼女は、先の戦闘が終了し戦闘配置の解除が行われたすぐ後に、医務室を訪れた明乃によってカウンセリングを依頼され、専門で無いとブツブツ文句を言いながらも各部署を回っていた。

 

「うん、お疲れ様美波ちゃん。皆んなの様子はどうだった?」

「深刻な状態になっているのはいなかった。艦橋の見張り員と操舵者は少し恐怖状態が強かったが......まあ、同配置の上級生のおかげか何とか大丈夫ではあった」

「そっか」

 

明乃としては、正直シェルショックとまでは言わないが、恐怖で使い物にならなくなっている子が居ても可笑しくは無いと思って居たが、完全に問題無いとまでは行かないものの、一年生の大半が使い物になら無くなる様な状態に成らず、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「美波ちゃん自身は?大丈夫?」

「私は大丈夫だ」

 

それじゃあと少し前かがみになりそう問いかけた明乃に、表情を動かさずに美波は答える。

 

「ホントに?無理してない?怖かったら我慢しなくても良いんだよ?」

「子供扱いしてくれるな、私は大学生だぞ」

 

美波のそんな答えに明乃は苦笑いになる。

確かに、眼前の少女は大学生で学歴だけで言えば自分よりも上ではあるが、それはあくまで飛び級の結果だ。大学生を卒業していようが、その年齢に対して精神が成熟していようが、それでも彼女がまだ12歳である事に変わりは無い。

 

「子供だよ、12歳なんてまだまだ子供」

「むぅ」

 

いい子いい子とでも言いたげな動きで頭を撫でると、拗ねた様な顔をする美波に明乃も思わず笑みをこぼす。

 

「艦長も....まだ子供だろう」

 

だから背負い過ぎなくてもいいんじゃ無いのか

 

予想外のその言葉に一瞬動きが止まる。

 

「そう、だね。うん、私もまだまだ子供だよ。けど、そんな私よりも美波ちゃんはもっと子供なんだから、怖い時は怖いって言って良いんだよ?」

 

誤魔化す様なそんな明乃の言葉と、どこか哀しそうなその表情に反論すべきか、子供扱いに再び文句を言うべきか、悩んでいる美波と哀しそうな表情のまま美波を撫でる明乃の下に

 

「大変です!艦長!!はれかぜが!私達が反乱したって!!」

 

幸子の悲鳴が降り注いだ

 

 

 

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『こちら横須賀女子海洋学校』

 

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『教員艦〈さるしま〉』

 

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『我攻撃を受く、繰り返す我攻撃を受く』

 

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『攻撃をしたのは教導艦〈はれかぜ〉』

 

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『繰り返す、攻撃を行ったのは〈はれかぜ〉』




歳の差5歳。
学年で言えば普通小学校でしか同時に通わない

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