帝国ニュース 第 9728 号 書き起こし
このたび、空技廠は海軍ご自慢の新型多目的水上機を開発いたしました。
この瑞雲多目的水上機は、本来の偵察という目的の他にも、爆撃・着弾観測といった艦隊支援諸任務の他、航空戦斗といった任務を遂行するべく、欲張りに欲張った贅沢な性能を有しているのであります。
最高速度は脅威の448キロメートル毎時。翼内には二十粍機銃を二挺と戦闘機もびっくりの重武装を施し、後部には十三粍旋回機銃と九七式艦攻顔負けの火力。更に爆弾に至っては二五番まで搭載可能と九九式艦爆を完膚なきまでに叩きのめし、零式水偵はもはや立つ瀬がありません。
この超万能機に、水上機を運用する艦娘たちはご満悦のご様子。さっそく、試験飛行と相成りました。
「おお、よく飛ぶなあ!」
「これは良い、良い機体ですよ!」
年相応にはしゃぐのは戦艦日向と工作艦明石。はしゃいでるのは娘たちだけではありません。搭乗員達も手を振って歓喜の舞を踊ります。
試験の結果は上々。瑞雲は数多の人間の夢を乗せ、横須賀の高空へと舞い上がっていったのであります。
艦娘は満面の笑み。乗務員もこれで楽になると大喜び。笑ってられないのは海軍上層部。
巨額の費用をかけて増産した旧式兵器はすべて過去のものに。現場からは機体を更新してくれの大合唱。どんなに工廠が急いでも増産が間に合いません。
そして機体を更新しなければならないのは戦斗機も一緒。前線では未だ海軍ご自慢のオンボロ戦斗機零戦二一型が闊歩するありさま。戦斗機の更新は戦場の趨勢を大きく左右するためおろそかにできません。
南方は優先的に良い機体が割り当てられます。戦闘の一時終結宣言がなされてなおも、ガダルカナルには時たま敵怪異の敵機が襲来。油断した際には飛行場をぼこぼこにされるなど、厳しい様子。ブルドーザーがなければ飛行場運営もままなりません。
今日も飛行場には敵機が襲来。おっとあぶない。爆弾の破片が頬をかすめていきました。
この状況に、海軍はやっとその重すぎる腰を浮かしガダルカナルには新型の戦斗機が納入されました。これぞ海軍ご自慢の次期主力戦闘機紫電改。本来の次期主力戦闘機たる烈風は日本のどこかに捨てられてしまいました。
少し離れたラバウルからは様々な改造を施した魑魅魍魎が空を闊歩します。三十粍の機銃を備え付けた零戦はもはや零戦と呼ぶにはふさわしくない強大な火力をもって敵を打ち砕きます。
さらには現場の改造で上方向に撃つ機関銃や二人乗りの改造を施した零戦まで現れる始末。これではどちらが怪物かわかりません。
南方ではこのバケモノ達が怪異から世界を守っております。
所変わって北方の諸島。こちらは戦局がひと段落をした所為か、送られる機体はお古ばかり。
旧式の零戦に九六式とお話になりません。こちらもこの絶望的な状況をどうにかしようと、整備兵は九六式戦斗機に二十粍の大砲を備え付けました。
攻撃機は依然として陸軍の九七式の重爆撃機と言い張る機体がその大半を占め、新型機は一〇〇式がいればいい方とまるで時間が止まってしまったかのような状態。これではいざというときに対抗できません。
そんな北方にもこのたび新型機が受領されました。陸軍ご自慢の万能戦斗機、一式戦斗機隼であります。その両翼には二十五番をぶら下げ船も沈められます。しかしながら機銃はたったの7.7粍。これでは何も倒せません。現場の兵はがっかり。ちょっと強い爆撃機を受け取ったということにしておきましょう。
海軍はこのようにかつての仇敵陸軍の手も借りながら必死に前線の維持に努めておりますが、そうなると心配になるのは詰みあがる軍費。
このたび国鉄では、かさむ軍費の補填を目的として値上げをしたいと言い出しました。
国鉄ではつい先日に値上げはしないと宣言したばかり。電車の様に揺れる発言に乗客は辟易としています。
そんな中でも国鉄は、増収の政策として新しい豪華寝台特急を運転しだしました。
そして瞬く間にお偉方タダ乗り法案が可決され国鉄の努力は水泡と帰すのでした。
全てが無駄足に終わった国鉄はついに定期券の値上げへと踏み込みました。
「えー、現状はですね、あくまでもこちらがわのサービスとして値引きをさせていただいているわけでありまして、こちら側の状況が苦しくなればですね、それはサービスを取りやめざるを得ないと、そういうわけでありましてですね、えーですのでどうにか勤め人階級の方々にはご了承をいただきたいところでございます」
と話すのは鉄道省の大臣。鉄道省はいつの時代も他の省庁のしりぬぐい。やってられないよと幹部がつぶやきました。
オーストラリアの近くでは、先日亜米利加艦隊が敵艦隊と衝突。再戦の機運が高まってまいりました。先の戦斗で壊滅し日米の支援で辛くも敵を退けた欧米各国も、今度は完全なる敵怪異の撃滅に向けて日々その勢力の回復に努めております。
この国は、今日も予算と終わりのない戦いを繰り広げております。
帝国ニュース -終- 製作:毎朝新聞社ニュース
マスコミから見た艦これ