赤鬼転生記~異世界召喚・呼び出された赤鬼は聖剣と魔剣を持っていない~   作:コントラス

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第三十六鬼

 ゴブリン討伐の日の翌日。宏壱はメアと一緒に宿屋で借りた部屋で、ぼーっとしていた。

 ゴザムが治療しきれなかった傷は既に完治していて、動くことに支障はない。

 が、精神的に疲労が溜まっていたのか、一気に力が抜けて動く気力が失せていた。

 

 

「「……」」

 

 

 床に胡座を掻いて座り、ベッドに背中を預ける宏壱の膝の上に座るメア。2人には会話もなかった。

 外の喧騒が部屋に響く中、ただただぼーっとしている。

 

 

「……なぁ、メア」

 

「……ん……?」

 

 

 静かな呼び掛けだ。声に張りがなく、気のこもっていない。

 小首を傾げるメアの頭に顎を乗せる。特に嫌がる素振りはない。

 

 

「ステータス、出せるか?」

 

 

 ただの思い付きで暇潰しだ。色々と発展した世界ではあるが、テレビの類いはない。娯楽というものであれば、元の世界の方が多いことはたしかだ。

 要はメアのステータスを見て時間を潰そうというのである。

 

 

「⋯⋯んー⋯⋯?」

 

「あー、そうか、考えたことないか。自分の能力が数値化できるなんて⋯⋯」

 

 

 メアは元々魔物だ。魔物はステータスの存在を知らない、と断言はできないが、多くの魔物はステータスを知らないだろう。

 それはメアも同じことで、今まで宏壱が確認をしなかったことも原因である。

 

 

「えっとな、ちょっと待てよ」

 

 

 と告げて、宏壱は胸の前、メアの顔の前に右手を持ってきて、ステータスと念じる。

 すると、メアの眼前にステータスのウィンドウが出現する。

 

 ◇◆◇

 

 Lv:75 名前:コウイチ・ヤマグチ(♂)

 

 年齢:16

 

 種族:人族

 

 HP:2316

 

 MP:1548

 

 SP:1264

 

 STR:1859

 

 DEF:1702(+1000)

 

 INT:945

 

 AGL:1813(+200)

 

 DEX:886

 

 MND:1565(+1000)

 

 LUK:724

 

 ◇◆◇

 

 現在の宏壱のステータスだ。クイーンアント戦から幾つかの戦闘を経て、彼のレベルは上昇し、それに伴って数値も上がった。

 ただ、それほど大きな上昇にはならなかった。

 アント自体から得られる経験値は実は多くない。クイーンアント発生が発覚したとき、宏壱が倒したアントと宏壱自身のレベル差は30を超えていた。

 それほどの差があれば、いくら得られる経験値が少ないといっても大きくレベルアップできるものだ。

 

 しかし、今の宏壱のレベルではアントから得られる経験値は微々たるものとなってしまい、レベルアップも見込めない。

 

 

「と、まぁこんな感じのやつだ。ただステータスと念じるだけでいい。出せるか?」

 

「⋯⋯ん⋯⋯」

 

 

 宏壱の問いにメアがこくんと頷く。やったことはないが、なんとなくできる気がした。

 

 

「⋯⋯すてーたす⋯⋯」

 

 

 メアは宏壱の真似をしてステータスウィンドウを呼び出す。出現したステータスは宏壱が出していたものと重なり、非常に見辛くなった。

 

 

「⋯⋯消した方がいいな」

 

 

 目頭を押さえた宏壱が、ステータスを消した。

 

 

「⋯⋯どれどれ? は⋯⋯ぁ?」

 

 

 メアのステータスを改めて覗いた宏壱の口から間の抜けた声が漏れる。いや、それはもう声とは呼べず、ただの息だ。

 

 ◇◆◇

 

 Lv:43 名前:メア(♀)

 

 年齢:不明

 

 種族:不明

 

 HP:21861

 

 MP:11974

 

 SP:15939

 

 STR:9549

 

 DEF:9512

 

 INT:8905

 

 AGL:9748

 

 DEX:811

 

 MND:11434

 

 LUK:1536

 

 ◇◆◇

 

 メアのステータスは異常と言っていい。レベルに比べて、数値がバグを起こしている。

 

 

(どう、なってるんだ? 俺の予想だとメアはレベル500はあるはずだ。それが43? 低すぎる。元がメガベアーなんだぞ⋯⋯ん? 元が⋯⋯?)

 

 

 宏壱は思考の終着点に辿り着いた。

 

 

「⋯⋯メガベアーからメアになったからか? レベルがリセットされて1からやり直した? いや、それにしたってこの数値はないだろ。勝てる気がしないんだが⋯⋯。まさか、メガベアーだったときのステータスを引き継いでレベルアップしたから爆発的に伸びた? その線が濃厚、か?」

 

 

 と、当りを付ける。しかし、いくら考えても推測の域を出ない。宏壱は早々に思考を放棄して視線を下、スキル以下に下げる。

 

 

「【ベアクロー】【咆哮】【ウィンドボール】⋯⋯それに“門を開く鍵”ね」

 

 

 スキル、魔法を読み上げ、最後に称号を見る。他にも“魔物だった者”や“死して還った者”と幾つか称号はあるのだが、一際宏壱の目を引いたのはそれだった。

 

 

「あの女がメアをゲートって呼んでたのと関係あんのかねぇ? まぁ、なるようになるか」

 

 

 暇潰しにはなったが、先の見えない謎が増えただけのような気もする。

 

 

「考えても答えはでない。流れに身を任せてれば行き着く。ということで、のんびりだ」

 

「⋯⋯のんびり⋯⋯」

 

 

 宏壱の態度からステータスウィンドウがもう必要ないことを察したメアは、ウィンドウを消して宏壱に背中を預けた。

 

 それから一日、宏壱とメアは食事時と用を足す時、風呂に入る以外ぼーっとしていた。




前回の宏壱のステータス

Lv:68 名前:コウイチ・ヤマグチ(♂)

 年齢:16

 種族:人族

 HP:1861

 MP:1074

 SP:939

 STR:1540(+158)

 DEF:1512(+2000)

 INT:905

 AGL:1748(+200)

 DEX:811

 MND:1434(+2000)

 LUK:693

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