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視界に映ったのは、葬式の様子だった。
祭壇には多くの花に囲まれた二枚の写真、男と女が一人ずつ映っていた。
ー交通事故だそうよー
ー残された子達も可哀想にー
話していたおばさん達の視線の先、泣きじゃくる女の子と、それを慰める男の子がいた。
ー○○、○は○ー
ー○○○、○じ○○ぶ○○ー
何を言ってるかが聞こえない。それに、所々がぼやけてきている。
何故だろう。彼らのもとへ足は勝手に動いた。
近づきながらも、世界はだんだんと薄れて真っ白な世界が表れ始める。
すべてが真っ白に染まる前になんとか二人のもとへたどり着いた。
そこで聞いたのは少女の声。悲しみと心の底から望んでいることが声から伝わってきた。
ーお兄ちゃん、○○を独りにしないでー
顔も見えない女の子の言葉を最後に、すべては白に変わった。
Rside
『クシャトリャ、サイレント・ゼフィルス帰投。整備班は第二ハンガーへ』
固定アームが機体を捉えたのを確認し、機体から降りる。
待機形態には戻さない。整備するためだ。
「だけど、驚いたよ。Mが来るとは思わなかった。しかも、不完全のゼフィルスで」
「それはこちらのセリフだ。任務から帰ってくれば、お前とTがIS学園に向かったと聞いて、他二人を連れて追いかけたんだからな」
「任務だからしょうがない。…あそこまでやるとは思わなかったけど」
Mと話ながら、一つの部屋に入る。
すると、正面から何かが抱きついてきた。
「待ってました、R様!」
「あぁ、ただいまだ、K」
抱きついてきた青髪の少女『K』。
フランスから奪ったアビスの操縦者だ。
「……R様、M様、お疲れ様でした」
「ありがとうA」
飲み物を渡してきたのはガイアの操縦者、『A』。金髪ショートの少女だ。
「…Tはどうした」
「Tなら第三ハンガーです。カオスの調整で呼ばれてましたから」
Mの問いに答えたA。Kはいまだに離れない。
「少し話が聞きたかったのだがな」
「なら、第三ハンガーに行きましょうか。ちょうど行かなきゃ行けないと思ってたし」
Kを引き剥がして、Mとともに部屋を出て第三ハンガーに向かう。
「第三ハンガーに何のようだ?」
「機体回収。クシャトリャが当分使えなさそうだから、しばらくはエピオンかシナンジュかなぁ、と。あ、そうそう!目標出来たよ」
「目標?」
怪訝な顔で此方を見る。
「ほら、Mは織斑千冬を倒したいんでしょ」
「まぁ、そうだな」
「私もそういうの決まったから」
「ほぅ、なんだ?」
あまりそういうことが無かったからか、興味があるようで聞いてくる。
「それはね…」
結人side
「ふぅ…」
襲撃事件の翌日。俺は保健室にいた。また気を失って一晩寝てたようだ。
なんか、どこぞのラノベの主人公みたいに事件終わるたびここに運ばれるのが習慣化しそうな気配が…。
「目が覚めてたのね。調子はどう?」
ドアを開けて瑠璃が入ってきた。
「あんま、良くないな」
「そう」
パイプ椅子を引き寄せ、座る。
「今回のことだけど、被害は大きいようで小さいわ」
「どういうことだ?」
「まず、怪我人は更識簪とあなた。他はいてもかすり傷程度の軽症、あなたは重度の筋肉痛」
簪が襲われて怪我したのは聞いてた。本人も自室に戻ってるみたいだし。
「あとは、織斑一夏の白式、セシリア・オルコットのブルーティアーズ、凰鈴音の甲龍がそれぞれダメージレベルC。甲龍は転校してきたばかりで予備パーツがあったけど、他二人は無かったため暫くの間は闘えないわね」
レベルC、結構重症だな。と、考えて思い出した。
「ユニコーンはどうなんだ?結構手酷くやられてたけど」
「自己修復完了済み。武装も予備でなんとかなるわ」
「…えっ、直ってるの?」
速いのはいいんだが、速すぎないか?まだ、あの後から約12時間しか経ってないぞ。それとも、それぐらいが普通なのか?
「あと、動けるようになったら連絡して。生徒会長がお呼びよ」
「はっ?」
「今回のことで話があるそうよ。私もセットで」
生徒会長、簪さんの姉…。
「良かったじゃない。思ったよりも早く事が進みそうで」
「…まだ、わからないよ。ってか、前から疑問だったんだけど、口調違くないか?」
具体的には、クラス対抗戦あたりから。
「あぁ、それね。あー、あーと」
喉の調子を確かめるような動作をし始めた。
「これでどう?結人」
「ごめん。わからない」
いや、声が変わったわけじゃないし。
「まぁ、簡単にいうとシリアスな雰囲気になると少し口調変わるのよ、私。癖になっちゃってるみたいだし」
「なにそれ」
要するに、少し固い口調のときはシリアスで他は普通ってことか。
「ともかく、伝えたいことはそれだけ。それじゃあお大事に」
「おう」
そう言って出て行った。
筋肉痛で動きたくない俺が取る行動は
「寝るか」
瑠璃side
結人に伝えたいこと伝えた日の夜。自室で今回のことを纏めていた。
まず、本来来る予定だったゴーレムだが、日本海でジャンクとなって見つかった。コアは持ってかれた模様。
次に、襲撃者。アリーナ内での映像を織斑先生から見せて貰えたし、シルエットは見覚えがある。
まず、確認出来たのは三機。『カオス』『ガイア』『アビス』。これらはデュノア社製の第三世代機。奪われたけど。
実際にカオスと戦って分かったことは、あれはMA形態にはなれない。
ガンダムSEED DESTINYに出てくるこれらの三機はそれぞれ変形が出来た。
しかし、ISとなると厳しいのだろう。人の体に纏ってるようなものだし。
強さは代表候補と渡りあえるレベル。
次にアリーナ。『クシャトリャ』に『サイレント・ゼフィルス』。ゼフィルスは、先日イギリスで未完成の段階で奪われたらしい。この機体があることから、恐らくではあるが組織も予測ついた。
だが、クシャトリャはわからない。どこの国も作った記録は、その国の最深部や裏側を調べても出てこなかった。
コアが消えた、盗まれた記録がチラホラあるためオリジナルで作った可能性もある。
もしくは、唯一情報を閲覧出来ない
そこまで書いて、手を止める。今回のことで、戦いに備える必要があると分かった。色々と準備しなくては。
「まずは、母さんに私のラズリフレームを送って貰わないと」
ついでに、人が作ったブルーラインを勝手にロシアに送ってたことへの文句もセットで。
すぐさま母へのメールを送った。
結人side
一晩寝たらほぼ完治した。思えば、この回復力がパラメータ強化のおかげなのかもしれない。
瑠璃に連れられ、生徒会室へ。
中に入ると、三人の人物がいた。
一人はクラスメイトの布仏本音。もう一人は彼女にどこか似た人。上級生だろう。
そして、最後の一人。近くで見るのは初めてだが、髪の毛から簪さんの姉と分かる。
更識楯無。学園最強の生徒会長。
「はじめまして、かな?橘結人君」
「そうですね、更識先輩」
「まぁ、座って」
ソファーに座る。すると、カップが出された。紅茶らしい。
「ありがとうございます。えっと…」
「布仏虚です。妹がお世話になってます」
「こちらこそ」
紅茶を飲む。…おいしい。
「さて、今日ここに呼んだのは一昨日の件についてよ」
「はい」
「今回のことはありがとう。本来なら私か、教師陣がああいったのと、戦うのだけれどちょっとした用事で私は行けなかったのよ」
「用事?」
「秘密よ」
秘密と書かれた扇子を開きながら言ってくる。
扇子…いつ持ったんだ?
「アリーナにおいては教師も介入出来なかったし。逃げ遅れた生徒を守ってくれたようなものよ、あなたは」
「アリーナ入って、すぐに閉鎖されたから急いで向かって適当に撃ったらああなったんですけどね」
「それでもよ。篠之乃さんも生徒が外で襲われたのを助けて貰ったようだし」
「偶然ですよ」
カップを持ちながら、返事をして、生徒会長に視線を向ける瑠璃。
「で、ここに呼んだのはどのようなご用件で?」
「ん、あぁ、そうね。この件に関する御礼よ」
「御礼?」
「そう。さっきも言ったけど今回のことは私達がやるべきことなのよ。だからこそ、解決したあなた達には報酬があっても良いはずよ」
天晴れと書かれた扇子を広げる。
あれ、いつ入れ替えた?
「織斑君、ならびに代表候補の二人は今回での修繕費を学園で出してるわ。それが彼らへの礼」
けど、と前置きして、
「あなた達は機体も直ってるし、怪我もないからどうしていいのか悩んだのよ。で、本人達から聞いた方が手っ取り早いって結論が出たの」
「!」
そうか。瑠璃が言ってたのはこういうことか。
「まぁ、叶えられる範囲で、可能な物だけだけどね。例えば、私の貞操とかはアウトよ」
「興味ないんで要りません」
「即答!?」
言うことは決まってる。それ以外はどうだっていい。
立ち上がり、会長の目の前へ進む。
指を突きつけ、望みを告げた。
「あなたとのISでの一騎打ちを望みます。更識生徒会長」
簪は活動報告で書いた通りにしていきます。
感想、アドバイスがあればお願いします。