仮想現実が現実になって、NPCが意志を持ち行動し、自分自身がゲームのキャラクターになった・・・なんて言われて、はいそうですか、と納得できる人間は少ない。
普通はそんな無茶苦茶な、そんな理不尽なことがあるわけが無い、と否定するのが一般的だろ。
しかしこの状況はどうだ・・・
朝? 起きたらサービス終了と共に無くなったナザリック地下大墳墓が健在であり、いなかったはずのギルド長が目の前にいて、ゲームで遊んでいた時と同じ口調で起こしてくれた、
と思ったら、仰々しい言葉使いでNPCを黙らせ傅かせた、その後両手を広げ宣言した。
「皆、よく聞け、我が友サイファーの帰還である」
短い言葉だが、この場にいる全員が感動に打ち震えている。
その光景をただ呆然と見ていたら、頭の中で感覚的な何かがコールしており、何かが繋がりそうな感じだが・・・敢えて無視した。
非通知着信やメールを確認して良い事があるだろうか?
いや、無い、例え頭中に感じるこの不思議なコールが煩わしくも、誰からか分からない今、応じるのは得策ではない。
応じた瞬間何かしらの理由で料金を請求される恐れがある、だから俺は無視する!
モモンガの旦那はNPCにまだ演説をしている、聞いていると、ナザリックの安全面がどうだか、皆の忠義と行動力は素晴らしいなど様々だ。
NPCはモモンガの旦那の(長い)話に涙を堪える者もいる。
俺は足を少し開き、手は後ろの話を聞く姿勢で聞いていたが・・・
モモンガさんは何故か、此方をチラチラ見ながら恨めしそうな視線を向けている。
(なんでそんな目で俺を見るんだろう?)
遅刻ギリギリだったから?
玉座で居眠りしていたから?
考えても分からない、取りあえず話が終わるまでまとう、コールはまだ頭で鳴っている感覚がある。
モモンガは焦っていた、いや、現在進行形で焦っている。
(なぜ、サイファーさんに『伝言/メッセージ』が繋がらないんだ)
当初の予定ではサイファーの帰還を宣言し、『伝言/メッセージ』でサイファーさんと情報を共有し合い、自分が補佐しながら皆に挨拶して解散、自分の自室で詳しく話をするつもりだったが、まったく繋がらず、予定がくるい、繋がるまで長話をする羽目になり、多少怒りを覚え始めたころ、ある考えが浮かんだ。
(まさか・・・『伝言/メッセージ』のやり方が分からないのか?)
ここはゲームではない、現実なのだから。
「では、サイファーさんから皆に一言お願いします。」
結局、代案が考え付かず近づいて小さい声で知らせるという方法を取ることにした
「え?」
いきなり話を振られ少し動揺しているとモモンガさんが隣まで来て、本当に小さい声で・・・
「さっきから『伝言/メッセージ』を送っているでしょ?、ちゃんとでてくださいよ。」
「あれ、モモンガさんからの『伝言/メッセージ』だったのか、てっきり架空請求系のヤバいやつかと」
「異世界(仮)であるわけないでしょう・・・」
謎のコールの正体は『伝言/メッセージ』だったようだが、この魔法はこんな感じだったかな。
言い終わるとモモンガはサイファーの横に並び、前に出るように指示する。
『でも、NPC相手に何話したらいいんですか?』
早速、『伝言/メッセージ』を使用しモモンガに助けを求めた。
『まずは帰ってきた事を宣言してください、あ、でもNPCは皆忠義心が物凄いですから、なるべく頂点に立つ者ぽい話し方でお願いします』
正直、え~なにそれ~と思ったが周りの熱気がそれを許しそうにない。
まぁ、何とかなるだろ。
深くは考えずに前に進む、何が正解か分からないが始めよう、そう思い言葉をだした
まずは当たり障り無いとこから。
(それがいいですよ、サイファーさん)
「長い事留守にしていたが、この度ギルド長モモンガさんより招集が掛かり戻ってきた。」
サイファーの言葉に嘘はないなぜなら
(まぁ最後だか一緒に過ごそうってギルドのメンバー全員にメールを送ったし間違いではないよな)
「今思えば、此度の招集はナザリック地下大墳墓を異変から守るためだったのだろう」
中々うまいこと言うなぁ、モモンガは少し感心して話を聞いていた。
周りからは誰と知れずナザリックを守るべく、人知れず戦力を集めていたモモンガに対し感歎の声が上がっていた
「まだ話したいことはあるが、今はやるべきこと集中しよう。」
偉ぶるのは初めてだからボロがでそうだしね
「何か質問はあるかね?」
無い事はないなと、皆を見渡していたら、以外にも六階層の守護者の1人、闇妖精のマーレ・ベロ・フィオーラがオドオドしながら手を上げていた。
「言ってみたまえ、マーレ君」
緊張をほぐす為少し口調を柔らかくして質問を許可した
「え、えっと、サイファー様はナザリック地下大墳墓を離れて何をしていらしたんですか?」
「何をか・・・」
少し考え込んでいるとモモンガさんから『伝言/メッセージ』が届いた。
『あまり変なことは言わず、それっぽいことを言って下さい。』
『なかなか丸投げしてきますね。』
『もう少し早く『伝言/メッセージ』が繋がれば色々相談出来たんですけどね』
少し棘のある言い方だが一回コールを無視したたのはサイファーであり非はこちらにあった。
『じゃぁリアルの仕事をそれっぽく言ってあやふやにしてみますんで』
『了解です』
サイファーはリアルの仕事の事を思い出したが・・・これはやばい
会社の命令で日本各地を回り社会に借金がある者から財産を担保代わりに預かるという名の搾取を繰り返すだけの毎日・・・こんなのを話したらモモンガさんからも引かれてしまう
「・・・つまらないことさ・・・本当にね・・・」
話を振っといたくせにまったく答えになっていなかったが引かれるよりましだ
「ご、ごめんなさい、つまらない事を聞きました。」
演技がきいたのかマーレはまたオドオドしながら謝ってきた。
ごめんねマーレ君、全部俺が悪いのに気を使わせちゃって
「マーレよ、謝る必要はないぞ、サイファーさんが何をしていたかは皆が知りたいことだ」
すかさずフォローを入れるモモンガさん。お願い仕事のことは知りたがらないで
「他に話が無ければこれで解散とする、皆、与えられた仕事に戻るのだ。」
よし、終わった
「では、行きましょうかサイファーさん」
「ええ、そうですね」
何処に向かうかは見当がつかないが、取りあえず移動し始めたモモンガさんの後ろをついて行けば大丈夫だろう。
玉座の間から移動しながらある事を思い出した。
「そうだ、一つお願いがあります。」
「いきなり何ですか、まぁ出来る事ならいいですけど」
「何かやる前に朝ごはんを貰えないでしょうか」
笑顔でお腹をさする悪魔をモモンガは微笑ましく思う。
「良いですよ、帰ってきた記念に盛大にしますか?」
「いいね~二人で派手にやっちゃいますか」
二人は笑いながら食事の話で盛り上がっていたが・・・記念、盛大、派手、などの言葉を人前でするべきではないと、このあと後悔する羽目になる。
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十階層 玉座の間
二人が部屋から出ても、しばらくの間誰も頭を上げずにいたが各々立ち上がり、誰とも無く口を開いた
「ほ、ホントに異変が起きてたね、お姉ちゃん」
「いや、異変じゃないよ、すごいことだよ」
お姉ちゃんと言われた闇妖精のアウラ・ベラ・フィオーラは興奮気味に声をだしていた。
「まさか至高の方の一人がこのナザリックに帰還されていたなんてね」
「しかし、一体、何時の間にナザリックに御帰還されておりんしたのでしょう」
吸血鬼の真祖・シャルティアがあまり正しくない言葉で疑問を口にした。
「ムウ、今マデマッタク気配ヲ感ジナカッタ」
ライトブルーの甲殻の蟲王のコキュートスも何時から居たかは分からないらしい。
「確かに、気配は感じなかったが、大体の時間は予想はできますね」
赤いスーツに身を包ん悪魔の男、デミウルゴスが答える
「一体、いつでありんすか」
「恐らく、我々がアウラとマーレの守護する六階層に集まった時だろう、あの時間はアルベドも玉座から離れていたし、その後モモンガ様の命で私と共に動いていて玉座には帰ってないからね」
「確かにそうね、色々動いて、ここには帰ってないわ、でも、よりにもよって玉座で御就寝されてたなんて」
皆が口を開く前にアルベドは号令をだした。
「モモンガ様の御命令のとうり、皆職務に戻りましょう、あと、セバス」
「分かっております、サイファー様の歓迎はモモンガ様のご要望どうり、盛大にさせていただきますので、一部業務を変更し、一般メイド、プレアデスで対応させていただきます」
「お願いするわね、では職務に戻りましょう」
偉大なる創造主のため行動を開始した。
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九階層モモンガ自室に二人は帰ってきたサイファーは凹んでいた。
モモンガいわく
① ここはユグドラシルではなく異世界である
② NPCはAⅠではなく自分の意志で動いている
③ 忠誠心は多分MAXである
④ 強制終了が出来ず、GMコールも聞かない、である
「マジですか・・・あぁ~」
「すみません、俺が最後だからって誘わなければ、こんなことに巻き込まないで済んだのに」
うなだれるサイファーを慰めようとして、自分自身が光まくっていたが、当の本人は・・・
「俺のPCデータがががっががっが・・・貯金がががががが」
「思ったより大丈夫みたいですね」
「あ、分かりました、もとの世界に対する執着はその程度ですから気にしないでくださいよ」
モモンガさんも同じでしょう?そんな事を聞いてみた。
「まぁ、そうですけど、えらく落ち着いていますね、不安とかないんですか、これからの事とか」
「なんで?、一人ではないし、二人もいるんですよ、大丈夫ですよ、 NPCも意思があるんでしょ、みんなが丹精込めて創り上げた奴らもきっと、頼りに・・・なりますよ」
ハハっと一瞬目を泳がせた
「ちょっと、なんで言葉に詰まったんですか、あと視線も泳いでいたし」
モモンガが詰め寄るとサイファーは気まずそうに
「いや、丹精込めてって言ったら、皆の顔が浮かんで少し不安感が襲ってきて」
その言葉にモモンガは皆の顔と性格、こだわりを思い出し、流れるハズのない汗が流れる感覚がした。
ペロロンチーノの性格、性癖が詰まった第1~3階層守護者、シャルティア
武人建御雷のこだわりが詰まった第5階層守護者、コキュートス
ぶくぶく茶釜の創り上げた第6階層守護者、男装美少女アウラと女装男の娘マーレ
ウルベルトの悪の思想を体現している第7階層守護者、デミウルゴス
そして タブラ・スマラグディナが設定した守護者統括、アルベド
まだ領域守護者、セバス、プレアデス、一般メイドなど、かなりの個性的なメンバーが勢ぞろいしている。
アルベド・・・そうだ、設定を変えてしまった事をサイファーさんに言ったほうがいいのだろうか、この人なら怒ったり呆れれたりはしないだろうが言う事に後ろ髪を引かれる。
「あの、サイ・・・」
アルベドの事を話そうと口を開き掛けたがそれにかぶせる様にサイファーが言葉をだした
「それより、俺達の朝ごはんまだでしょうかね? いい加減腹減ってたまらないんだけど」
そういえば玉座の間から帰ってきて結構な時間二人で話していたが誰かがくる気配がない
「モモンガの旦那、メイドって、どうやって呼んだらいいんですか? 流石に大声で呼ぶのは違いますよね」
「え? どうやってって、俺もそんな経験ないから分かりませんよ」
「なんで知らないんですか、ギルド長でしょう」
「それ関係無いでしょう、こちとらリアルは一般人だったんですから」
「こっちだって一般人ですよ、メイドへの指示の仕方なんて知らないよ」
なんだかんだ言い合いをしていたら扉をノックする音が聞こえた。
「お、来たみたいですよモモンガさん」
一般人である事を言い合う不思議な会話を終わらせ、モモンガは入室を許可した。
「失礼します、サイファー様の御食事をお持ちしました」
お、やっと来たなとサイファーはいそいそと席につき、モモンガを席に手招きし、モモンガもそれに応じ席に着いた。
蓋をされた朝食であろうモノが乗った台車を押しながらメイドが部屋に入ってきたが・・・1台ではなく2台、3台、4台、5台と続いてきたので二人は顔を見合わせた。
メイド達は全く無駄のない動きで机の上に料理を並べ始めたが・・・量が半端ない上に豪華絢爛であった。
その量と豪華さに圧倒され言葉につまり、ご苦労と一言が精いっぱいだった
メイド達は作業を終えると机の側に綺麗に並んでたたずんだ、きっと俺らの命令に何時でも対応できる様にしているのだろう、ホワイトブリム先生の書いている漫画で見た事がある。
「こんな豪華な食事どうやって食べたらいいんだ・・・想像がつかん」
助けを求めるようにモモンガに視線を向けたが・・・
「あ、俺は食事不要の特性がありますから、御1人でどうぞ」
表情は読めにくいが、食事ができない事の残念さ、マナーが分からないから助かった、と二つの感情が何とか読み取れた、まずい、このままではマナーも分からず一人で食事する羽目になり、下手すれば横で見ているメイド達に笑われる恐れがある、何とかこの骸骨の魔王を巻き込まないと・・・恥をかくのが俺一人になってしまう。
「いやいや、不要であって不能ではないからイケるんじゃないの」
望みをかけて聞いてみたが、何重にも策を考えるギルド長に予想済みであったらしい
「残念ですが骨の間から全部こぼれてしまって無理なんですよ」
何がなんでも豪華な食事を取らないようにするモモンガ、確かにナザリックの支配者がマナー知らずと思われるのは得策ではないかもしれない、だがサイファーも一人では恥をかきたくなかったため、何とかモモンガに食事をとらす方法を模索し、ある可能性に行きついた。
「そうです、仕方がありませんね」
「はい、仕方がありません」
勝ちを確信したモモンガをしり目に、サイファーは左手の指に装着した指輪を掲げた
そのアイテムに並々ならぬ因縁があるモモンガは驚愕した
「それは『流れ星の指輪/シューティングスター』それをどうするつもりですか!」
サイファーは『流れ星の指輪/シューティングスター』をかかげながら席を立ちあがった。
「こうするんですよ、モ・モ・ン・ガ・さ・ん! 指輪よ!我が願いを叶えてみせよ!」
次の瞬間、サイファーを中心に美しい光を放つ魔法陣が現れた、その光景に唖然とするモモンガは声を出さずにはいられなかった。
「そんな超レアアイテムを使って何をするつもりですか!!」
指輪を使った張本人はその言葉に答えず願いを叫んだ
「モモンガを漫画の骸骨みたいに飲食可能にせよ!」
指輪が一層強く輝いた、が願いが叶う前に突然魔法陣が砕けてしまった、驚愕した表情でサイファーは叫んだ。
「なぜだ、指輪は間違いなく発動したのに」
ゲームとは違いその万能性は飛躍的に向上していたのが感覚的にはっきり感じられた・・・なのに何かに阻まれた様に阻止された、超位魔法に匹敵する力があるはずなのに・・・
モモンガは呆れた顔でサイファーに言葉を掛けた。
「なに言ってんですか、俺は世界級<<ワールド>>アイテムを所持しているんですよ、超位魔法での仕様変更なんて無駄ですよ」
まったく、貴重なアイテムを無駄づかいしてと、ブツブツ文句を言っていると、目の座ったサイファーがモモンガににじり寄った
「脱げ」
え、何言ってるのこの人は、モモンガが反論するより先にサイファーが飛びかかってきた
「ええから服(世界級アイテム)を脱がんかい、ワレ~」
「え? ちょっ! む、無理やりはやめて~」
「ちょっとだけ、ちょっとだけだから 痛くしないから俺に任せて」
モモンガを床に押し倒し馬乗りになったサイファーは胸元に手を入れ始めた
その場に控えていたメイドなど気にせずにじゃれある二人、サイファーがモモンガを押し倒したという話はすぐにナザリック全域に広がり、守護者統括がサイファー様が良いなら、私も良い筈とモモンガに対して思いを募らせるのであった。
30分後・・・半裸の状態のモモンガはしぶしぶアイテムを外し、サイファーは嬉々と指輪の力を使いモモンガを飲食可能にした。
「これで言い訳は効きませんよ、モモンガさん、さぁ、美味しそうな朝食を『二人』で
いただきましょう」
「・・・・はい・・・」
マナーは分からなかったが、あまりマナーを気にし過ぎても仕方ないと、二人はなるべく丁寧に朝食を開始した、メイド達からの失笑は聞こえなかったため二人は安堵したが・・・昼食、夕食でかなりの苦戦を強いられたが、二人で話しながら食事がしたいと理由をつけてメイドを外に待機させることで事なきをえた。
サイファー「あと一回何に使おうかな~♪」もぐもぐ
モモンガ「食事は美味しいけど・・・食べたのは何処にいくのだろう」もぐもぐ
骸骨がどうやって食べてるかは某海賊漫画の骸骨を参照してください。