オーバーロード~悪魔王の帰還~   作:hi・mazin

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三十二話目 謎の墳墓探索 ~人材確保編~

 

 

 

バハルス帝国国土のやや西部に位置する帝都アーウィンタールは中央に鮮血帝との異名を持つ皇帝が皇城を置き大学院、魔法学院、各種行政機関がが存在するまさに帝国の心臓部ともいえる都市である

更には鮮血帝の行った大改革により大発展を遂げている最中であり、物資、人材、治安、どれを取っても最高の帝都である

そんな帝都の一角で田舎者のごとくキョロキョロと視線を動かし物珍しそうに周囲を見渡す者がいた

 

「はへ~。かなりの都会だとは聞いていたけど、あの古臭い王都とは比べ物にならんな。俺らが帝国に鞍替えしないか心配してる組合長の気持ちが分かる気がするわ」

 

アインズのやや後方を歩くサイファーはおのぼりさん状態で周りを見渡している、そんな友人の姿を見て今までデミウルゴスの計画を否定しきれずついピリピリしていた自分が少し恥ずかしくなってくる

 

「なんて言うか・・・本当にマイペースな悪魔だな、俺がこんなにも真剣にナザリックの事で悩んでるのに。一人で悩んでるのがバカみたいじゃないか」

 

アインズは肺の無い身体だが大きく深呼吸し感情を落ち着かせ始めた、心に残っている不快感をわずかに残る程度まで落ち着かせサイファーに習う様に街の風景に視線を向ける

 

「確かに、街には活気があり、歩く人々の瞳は明るいし、皆、希望に満ちていますね・・・って」

 

振り返れば後ろを歩いていたはずの友人の姿は影も形も無くなっていた

 

「え? いない。」

 

急いで周囲を見渡してみたが見知らぬ人ばかりでサイファーの姿は確認が取れず、逆に周りの人間から注目されてしまった

 

「嘘だろ、良い大人の癖に迷子になるなんて・・・まぁ良いか、『伝言/メッセージ』を使えばすぐに見つかるだろう」

 

そう軽く考えたアインズはサイファーは一時放置し先に紹介された宿に向かう事にし歩き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都の道路はほぼ全ての道路がレンガや石に覆われており、周辺国家に比べ格段に交通の便が良く、また道路と歩道が区切られており歩行者の安全まで考えられ、おまけに多くの騎士が警邏し周囲の安全に目を配っているなど多数に渡るほど治安強化がなされている

 

「あれ? ちょっと大通りから外れたら道が分かんなくなっちゃた」

 

しかし、中央道から外れた脇道はどこの国でも迷いやすいものなのである

 

「まいったな。完全に迷子になってしまった・・・まぁ、いいか。いざとなったら捜索系アイテムもあるし、アインズさんに直接『伝言/メッセージ』を使うって手段もあるし」

 

そう軽く考えたサイファーは中央道に戻るべく来た道を引き返し始めた・・・が数mも歩かないうちに近くの路地から男のものと思われる口汚い罵声が聞こえてくる

 

「はぁ、いくら治安の良い帝都といっても人通りの少ない路地裏はどこもこんなものか」

 

さして興味も持てなかったので無視しようと考え、そそくさとその道を通り過ぎようとしたが

 

「おい、おっさん。ここは今取り込んでんだよその道を行きな」

 

案の定見張りをしていた不良少年に絡まれてしまった

 

「この俺が・・・おっさん・・だと・・はは」

 

思っていたより若い十代中ぐらいの不良少年におっさん呼ばわれしたサイファーは不快な態度に対する怒りを感じるよりも先に衝撃を受けた

 

「そうだよおっさん。痛い目にあいたくないならこの事は忘れて向こうに行きな」

 

別の少年からもおっさん呼ばわりである。

さすがにここまで絡まれては大人として見過ごすわけにはいかないと感じたサイファーはこの不良少年達に正義の鉄槌を下すことにした・・・もちろんおっさん呼ばわりされムカついたからではない、サイファーの中に眠る正義の心が不良少年達を更生させるべきだと燃えだしたためである。本当なんです、信じてください

 

「誰がおっさんだ!! このクソガキがぁぁぁぁぁ!!」

 

とりあえず左右の手で別々の不良少年の胸ぐらを掴み目についた近くの塀に叩きつけた

 

「ぐぎゃぁ!!」

 

「げえぇ!!」

 

愉快な声を出しながら二人は揃って気絶し、サイファーはついでに残りも片付けようと路地に入って行く。そしたら四人くらいの不良少年が眼帯をした少年とおとなしそうな少女に詰め寄っている最中だったらしく、驚いた様子でこちらに視線を向けていた

 

「な、何モンだてめぇ!!」

 

予想外の事に焦ったのかセリフを少し噛んだ不良少年、しかしサイファーはそんな事もお構いなしに不良少年に名乗りながら突っ込んでいく

 

「通りすがりのアダマンタイト級冒険者のお兄さんだ! 覚えておけ!!」

 

 

ボカ!

 

バキ!

 

ドカ!

 

グキ!

 

チーン!

 

 

「す、すみませんでした~~!!」

 

ありきたりなセリフを吐きながら不良少年達は一目散に逃げだしていき、思う存分怒りを発散・・・もとい正義の鉄槌を下したサイファーは幾分か気分がすっきりしたため絡まれていた二人の安否を確認する

 

「君たち、もう大丈夫だよ。怪我はないかい」

 

すっきりしたためか何時も以上に爽やかな笑顔を向けると眼帯をした少年が落ち着きを取り戻し口を開いた

 

「危ないとこを助けてもらいありがとうございます。えっと俺はジエット、こっちはネメルと言います」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

二人はそう言って何度も頭を下げて感謝の言葉を述べており、その態度はサイファーの興味を引くには十分すぎるものだった

 

「そういえばさっきアダマンタイト級冒険者って言ってましたけど、あれマジなんですか?」

 

疑い半分、興味半分といった感じに質問してきたので証拠を見せてあげる事にした

 

「もちろん。ほれ、これが証拠だよ」

 

そう言って首に掛けているプレートを外しジエット君に持たせてあげた

 

「うおぉぉぉ!! マジだ、本物のアダマンタイトのプレートだ。しかも『漆黒』のサイファー・・・さま?」

 

「は、早く返したほうがいいよジエット、もしもの事があったら大変だよ」

 

「お、おう。 あ、ありがとうございました」

 

ガチガチに緊張した態度でプレートを返され、再び首に掛け直したサイファーは内心とても気分がよく、ますます二人のに好感が持ててきた

 

 

「なに、気にすることはない。ところで相談なんだが・・・中央道ってどう行ったら戻れるか教えて貰えないだろうか」

 

サイファーの少し情けないセリフは二人の笑いのツボに入ったらしくしばらく声を出して笑われてしまい、当の本人も二人の笑いに触発されて笑い出してしまった

 

「ははは、サイファー様って・・・」

 

「様はよしてくれよジエット君、俺の事は好きに呼んでくれ。あ、もちろん敬語も無しで構わないから君の好きに話してくれ」

 

「わかり・・・いや、わかったよサイファーさん、中央道はこっちの道が近道だから付いて来てくれ」

 

「ジエット、ちょっといい?」

 

「ん。どうしたネメル?」

 

「私、家の用事があるからもう戻らないといけないんだけど」

 

「ああ、そうか。じゃあ仕方がないな、サイファーさんは俺が責任もって連れて行くから安心しな」

 

「うんお願いね。サイファー様、今日は助けていただいて本当にありがとうございました。この御恩は一生忘れません」

 

そう言いきるとネメルは深々と頭を下げて感謝の意を示した

 

「気にするな、また何か困った事が起こったら何時でも相談しに来いよ出来るだけ手を貸してやるよ」

 

「本当にありがとうございます。それでは失礼します。 ジエット、サイファー様に迷惑かけちゃダメよ」

 

「分かってるよ。ネメルも気を付けて帰れよ」

 

二人の何ともいえない距離感にサイファーは何故か優しい気持ちになり、これからも気に掛けて上げようと心に誓うのであった

 

 

 

 

 

 

 

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「・・・てな事がありましてね。なかなか良い奴なんでアインズさんも良かったら気にしてやってくださいよ」

 

無事にアインズと合流出来たサイファーは帝国最高級の宿のラウンジバーで今まであった事を多少面白おかしく脚色しアインズに話して聞かせていた

 

「なるほど、しかしサイファーさん、いくら貴方が気に入ったかと言ってもそうやすやすと彼をナザリックの庇護下には置けませんよ、庇護下に置くのなら何かしらナザリックに利益を与える存在でなくてはなりません」

 

彼には何かあるんですか。と、口では言っていないがアインズの態度はまさにそれであった

 

「もちろんありますよ、彼の『タレント』はなかなか強力なものですよ」

 

「へぇ、そんなに強力なモノなんですか」

 

「ええ、彼は眼帯の下の目は如何なる幻術も看破し真実を見ることが出来るんですよ。アインズさんも彼の前で下手に兜を取ると正体がばれちゃうかも知れませんね」

 

先ほどまでの和やかな雰囲気が一変するほどにアインズは低い声で目の前の友人に問いかける

 

「・・・それは第何位階まで幻術を無効化するんですか」

 

アインズの雰囲気に吞まれることなくサイファーは来る途中に試した実験結果を口にする

 

「彼からその話が出た時、試しに手持ちの中で一番強力な幻術系のアイテムを使用しましたが彼は何の苦も無く看破しました。恐らく第十位階でも楽勝だと思いますよ」

 

その時サイファーが使用したアイテムは第九位階の魔法に相当する戦線撤退用の幻術魔法を込めた物である、しかし彼はアイテムを使い姿を眩ませたはずのサイファーから視線を外すことなく目で追っていた

 

「厄介なタレントだな。サイファーさん彼は・・・」

 

「安心してくださいアインズさん。別に殺さなくても彼を懐柔する手段はいくらでもありますから」

 

「・・・その懐柔方法は確実なんですか?」

 

「もちろんですよ。彼はさっき話した通りいろいろな苦労をしょい込んでいるんですよ。病気の母親、嫌味な貴族のボンボンに迫られている同級生の女の子、行方知れずのお嬢様、あ、そうそう、将来の事とかでも悩んでるらしいですよ、結構恩義を感じる性格みたいですのでそれらの悩みを解決してあげれば此方に協力してくれると思いますよ」

 

「・・・わかりました。この件に関してはサイファーさんに一任します。聞いてみればなかなかのレアタレントみたいだし、利用できればいろいろ役立ちそうだな。ですがくれぐれもナザリックに対し不利益が降りかからないようにしてください」

 

「お任せてください。必ずや彼をこちら側に引き入れ、そのタレントをナザリックの為に生かして御覧にいれましょう」

 

将来有望な若者の入社がほぼ内定した瞬間である

 

 


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