オーバーロード~悪魔王の帰還~   作:hi・mazin

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三十一話目 こぼれ話

【好き、嫌い】

 

 

ナザリック地下大墳墓 第九階層に存在する食事用ホールでサイファーは向かいに座り食事をしているアインズに重々しく口を開く

 

「・・・アインズさん。はっきり言います、俺は人間種のことが嫌いです」

 

「サイファーさん・・・」

 

サイファーの言葉にアインズは困惑気味に彼の名を口にする、何か言おうとしたがそれよりも早く彼が言葉を続ける

 

「カルネ村を襲い、戦士長を殺そうとし、初めての冒険者仲間を殺され、シャルティアを洗脳したかもしれない奴ら、王都で好き勝手しセバスを嵌め様とした奴ら。俺はこの世界に来て改めてそう思いました。やはり人間種はユグドラシルの頃からロクなもんじゃなかった」

 

「サイファーさん。しかし。」

 

皿の上の料理を手に持ったフォークで分別しながらサイファーはさらに声を低くして続ける

 

「分かってますよ。人間の中にも良い人がいる事くらい。だからはっきりと言います、俺は人間という種は嫌いだが個としての人間は好きです。これだけは分かってくださいアインズさん」

 

皿の中の料理を二分割し終え、サイファーは再び食事を再開する、その姿にあきれながらアインズは口を開く

 

「ミックスベジタブルの人参も残さす食べなさいって話からなんでそんな話になるんですか?はっきり言いますけど、全く誤魔化せてませんからね」

 

その言葉にサイファーはビクッと身体を振るわせて今度は開き直った様に大声でアインズに宣言した

 

「俺はミックスベジタブルという種は好きだけど、人参という個は嫌いだ!」

 

「ほかの者に示しがつかないだろうが! いいから食べなさい!」

 

この世界に来て幾日も経過し遂に嫌いなものができてしまったサイファーであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【良い香り】

 

 

 

ナザリック地下大墳墓最下層たる第十階層のアインズの自室の寝室に二つの人影があった。一人はこのナザリックの最高責任者でありこの部屋の主人であるアインズ、そしてその友である悪魔王サイファー

彼は友人に促されるままにベッドに顔を埋め匂いを嗅ぐように息をし始める

 

「くんかくんかくんかくんか・・・ふぅ」

 

ものすごい勢いで匂いを嗅いでいたサイファーは満足したように立ち上がった

 

「・・・ホントに甘くていい匂いがする。」

 

「ね、俺の言った通りでしょう」

 

サイファーとの何気ない日常会話からアインズは自室のベッドから良い匂いがすると言ったらサイファーはしないと言ってきたので彼のベッドを匂ってきたが何の匂いもしなかったため、今度は自分の番という訳である

 

 

「・・・なんでなんじゃ!? ギルド長は寝室までお高級品なの!? 俺のベッドは無臭なのに、なんでモモンガの旦那だけこんな良い匂いがするの!? 」

 

その結果がこれである

 

「話を聞いた時はまさかと思いましたけど。やっぱり俺のベッドだけだったんですね。」

 

納得がいかないサイファーはもう一度ベッドに近づき、もう一度匂いを軽く嗅ぎ始める

 

「こんなサービス誰にやってもらったんです?俺もやってほしい。しかしホントに良い匂いだよ、これ。でも、なんなんだろうこの匂い? 花いや果実・・・でもないし、ハーブ系・・・いや、そんな感じじゃぁないし」

 

何度嗅いでも該当する匂いはでてこず、頭を捻るサイファー。アインズもその隣に屈みこみ匂いを嗅ぎ始める

 

「やっぱりサイファーさんでも分からないですか。ホント何の匂いなんだろう?」

 

正体さえ分かれば自分の服にも少し付けても良い思うアインズであったが、どうやら無理そうである

 

「アインズさん、まだ時間ありますか?」

 

「ん? まだ大丈夫ですけど、どうかしましたか」

 

「いや、時間があるなら俺の部屋で香水系のアイテムを調べてみようかと思って」

 

「俺も少し気にはなってますし良いですよ」

 

「善は急げです、早速向かいましょう」

 

二人はサイファーの部屋に向かうべく寝室を後にし廊下への扉を開いたらバッタリとアルベドと鉢合わせしてしまいぶつかりそうになってしまった

 

「おっと、すまないアルベド」

 

「いえ、私の方こそ不注意でありました」

 

「アルベドよ。何か急ぎの用事か?」

 

「アインズ様もご一緒でしたか。いえ、火急の用と言う訳ではありませんが定期報告の書類をお持ちいたしました」

 

「そうか。しかし、私は今からサイファーさんの部屋で少し調べたい事がある。そうだな、その書類は部屋の机の上に置いておいてくれ」

 

「畏まりました。それでは、いってらっしゃいませアインズ様」

 

「うむ」

 

「あれ? 俺は」

 

アルベドとの話もそこそこにし、二人はサイファーの部屋に向かい歩き始める

 

「いや、だから俺は!?」

 

アルベドとの話もそこそこにし、二人はサイファーの部屋に向かい歩き始める

 

 

「・・・アインズ様はサイファー様の部屋に向かわれた、と言う事はしばらくはお戻りにはならないはず。くふふふ」

 

アルベドは嬉しそうにアインズの部屋に入っていき何時もの日課を済ませ、何も知らない二人は香水系のアイデムを片っ端から調べが一向に成果が出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【もしもの世界】

 

 

 

運命の日の午前零時、ナザリック地下大墳墓から最後の一人がログアウトし玉座の間に静寂が訪れる。その静寂は永遠に続くかと思うくらい何の音もしなかった

しかし、数分もしないうちに女性のすすり泣く声が静寂を破った

 

「う、うううう。モモンガ様・・・なぜ・・・なぜ・なのです」

 

そう言いながら泣き声の主であるアルベドはモモンガがいた玉座に崩れ落ちるように縋りつく

その様子をモモンガの供として玉座の間まで来たセバスは何とも言えない表情でただ眺めていた

アルベドに何か声を掛けた方が良いとは思うが全くというほど身体も頭も働かなかった

頭にあるのはこの状況が嘘であってほしいと言う願望しかなかった

プレアデスの中からもアルベドに触発され涙を流す者も出てきている。セバスはその者たちを諫める事もせずただ棒立ちで見てることしか出来なかった

最早このナザリックには四十一人いた至高の御方は誰も存在せず空っぽである、そうあれと創られた自分たちは見捨てられてしまったのか、そんな思いが頭の中を巡り自分も崩れ落ちそうになった

もう終わりか。そんな感情がセバスの精神を蝕み始めた時、鈍い音を立てながら扉が開き始める

 

 

「いや~遅れた遅れた。モモンガの旦那お久しぶりっす・・・て、あれ?」

 

散々寄り道をして玉座の間まで来たが、ちょっと来ない間にえらく雰囲気が変わっていた。まず、部屋のBGMが女性のすすり泣く声に変更されているし、プレアデスとセバスが配置されているし、アルベドが玉座の横に立っている設定のはずが玉座にへばりつく様に泣いているポーズに代わっていた

 

「ちょっと来ないうちにえらい雰囲気が変わったな。そんな事よりモモンガさんがいないな?何処行ったんだろ」

 

腕を組んで考えているとセバス・チャンがこちらに視線を向けわなわなと震えていた、ホントにこんな機能あったっけ

 

「サ、サイファー様であらせられますか?」

 

「うぉ!! びっくりした!! 急に話しかけんなよ」

 

うはぁぁぁ喋った~何の機能!? こんなのなかったよ~

 

「も、申し訳ございません!」

 

そう言ってセバスが物凄い勢いで跪き謝罪の言葉を繰り返し始める。正直言ってここまでやられたら逆にたっちさんに申訳がない

 

「いや、もういいよ、ホントいいから。ただ今までセバスが俺に話しかけた事が無かったから、ちょっとびっくりしただけだから」

 

「お心遣いいただきありがとうございます。しかしお隠れになった筈のサイファー様がなぜここに」

 

「お隠れって、何その偉い人みたいな扱い。いやモモンガさんに戻って来るように言われたから戻ってきたけど、何かまずかった?」

 

「とんでも御座いません! 我ら一同サイファー様のお帰りを大変嬉しく思っております」

 

セバスの言葉に一緒にいたプレアデスも歓喜の声を上げ始める。しかし、玉座の近くにいるアルベドだけは虚ろな瞳で玉座から離れようとしなかった

 

「ははは・・・取り敢えず状況の確認をしたいから全階層守護者達をここに集めてくれる、あ、第四、第八階層守護者は除外でお願い」

 

「畏まりました、しばしお待ちを」

 

そう言い残しセバスとプレアデスは部屋から退室していきアルベドと二人っきりになってしまった。

多少気まずいがなぜ泣いているかを聞かなくては話が進まないだろう、そう思い意を決したサイファーはアルベドの下に歩みを進める

 

「アルベド。なんで泣いてるの、良かったら訳を聞かせてもらえないかな? 俺でよければ力になるよ」

 

セリフを噛まないようにできる限りゆっくり話しかけアルベドの反応を待った・・・

 

「モモンガ様が・・・私に愛する事をお許しになられたのに・・・居なくなって・・・」

 

瞳に力は無かったがポツリポツリと訳を話し始めた、しかし聞けば聞くほどどうしようもなかった

しかしアルベドにそんな設定あったけな? モモンガさんが追加設定したとか・・・いや、あの人がそんな勝手な事する訳がないし、タブラさんの言うギャップ萌えが関係しているのかな?

 

「あ~、その~、し、失恋は辛いよね。俺も何度も経験したことがあるし辛いよね、その・・ドンマイ」

 

「う、うううう・・・ありがとうございます」

 

精一杯やったがこのざまである。気のきいたセリフの一つも出てこなかった

ほどほど困り果てていると扉が開く音が聞こえナザリックの主要NPCが全員集まってきた

 

「助かっ・・・いや、よく来てくれた。皆変わりはないか?」

 

 

何故か自意識を持って動くNPC達からの報告を聞き大体の状況が呑み込めてきた・・・様な気がする

というか、超やばい、今謀反を起こされたら確実にヤられる。一人二人なら問題ないがダメージカウンター型の俺は個人戦にはめっぽう強いが一対多数戦はかなり不利である、というかアウラとその仲魔達だけで超やばい

取り敢えず忠誠心があるかどうかは確認が必要だな

 

「さっきも話した通り、俺はナザリックの為の資金集めのせいで長い事留守にしてただけで、みんなを蔑ろにしてたわけじゃないからね。それでみんなは俺の事どう思ってる、もしくは創造主からなんて聞いているの?」

 

その言葉に守護者達はサイファーの前で跪きながら各々口を開き始める

 

「では、最初は私から言わせてくんなまし。 サイファー様は誠実で皆から信頼厚い御方であり、ペロロンチーノ様はよく、くそドM野郎だから会うたびに唾でも吐きかけると超喜ぶってよく仰ってました。あ、今からでも吐きかけた方がよろしいでありんすか?」

 

「は? いやいやいや。結構です(クソペロロンチーノ!! 攻撃をカウンターするためにもっとぶってくれと敵に言ってたけど性癖はまともだよ)」

 

「次ハ私ダナ。サイファー様ハ類稀ナル力デアラユル攻撃ヲ跳ネ返ス事ガ出来ル強者デアリ、武人健御雷様曰クたっち・みー様ノ次ハオ前ヲ一撃デ仕留メテヤルト良ク言ッテオラレマシタ」

 

「ひ!?(冗談じゃねぇよ良くクエストに誘ってくれると思ったら俺をそんな目で見てたのかよ)」

 

「じゃあ次はあたしだね。サイファー様は誰にでも優しくできる御方です。あとぶくぶく茶釜様はイジると反応が超おもしろいって言ってました」

 

「あ、あの、サ、サイン会の時の顔が超受けたとも言ってました」

 

「ふぁ!!(あの時の事まだネタにする気かよ!!)」

 

「おっと、次は私ですね。サイファー様は一瞬の判断に優れ場の流れを読む事が出来る御方だと考えます。この流れで言いますと、私の創造者であらせられるウルベルト様は『悪魔王』が定着した時が一番笑ったと仰ってました」

 

「やっぱり知っててやってたのかよ!」

 

「「私共一同、サイファー様に忠誠を誓います」」

 

これは忠誠心があると言う事で良いのだろうかと今は居ない友を思い浮かべ大声で叫んでしまった

 

「ホントお前ら創造主にそっくりすぎんだろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【昔話風カルネ村】

 

 

 

ある日突然この村に赤ん坊が里子としてやってきました。その赤ん坊は子供のいない若い夫婦に引き取られ、それはそれは大切に育てられていました

しかし、最近困った事が起こったのです。それは赤ん坊のご飯となる母乳をだす近所に住む乳母から乳が出なくなってしまったのです

これには夫婦も困り果て、新しい村長に相談に行きました

しかし新しい村長もまだ若く、出産経験もないためどうする事も出来ませんでした

その時ばかりは夫婦は薬師のヘタレ男を大変恨みました

そこに一人の赤毛のメイドさんが現れました

そのメイドさんに事情を話すと軽い感じで返事をしたかと思うとどこかに行ってしまい待てども待てども帰ってきませんでした

新しい村長は此処に居ても仕方がないので一度家に帰ることを提案しました

それもそうだと夫婦は家に向かいます、その途中で薬師のヘタレに出会い母親は意気地なしと罵り、それを聞いてしまい慌てて父親は一生懸命気のせいだとか空耳だと誤魔化しました

父親は母親の手を引き慌てて家に戻りました。すると玄関先に小さい風呂敷が置いてあるのを見つけました

不思議に思った父親は村長に報告するべきだと主張しますが母親は抱いていた赤ん坊を父親に預けると風呂敷の包みを勝手に開け始めました

風呂敷を開けるとなんと中にはミルクが入った哺乳瓶が一つ入っていました

赤ん坊のご飯が入っていたのは良いのですがこの量では到底足りません

父親は落ちていたものだから危ないと主張しますが母親は赤ん坊を父親から取り上げ股間を蹴りあげました

痛みにうずくまる父親をしり目に母親は赤ん坊に哺乳瓶を吸わせました

そしたらどうでしょう

赤ん坊がどんなに吸っても中身は減らずどんどん湧き出してくるではありませんか

母親はたいそう喜びお腹一杯になりスヤスヤと眠り始めた娘と家に入っていき何とか回復した父親もよろよろと家に入っていきました

その様子を見ていた赤毛のメイドさんはその事を主人の友人に報告しましたところ、なんとお褒めの言葉を頂けましたとさ

めでたしめでたし

 

 

 

 

 

 

 




今回はネタとして考えたけど使いどころが思いつかなかった話です

でも次からは帝国に行きたいと思います

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