オーバーロード~悪魔王の帰還~   作:hi・mazin

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十二話目 お仕事準備中

 

 

冒険者。それはユグドラシルと同じ未知を探求する者達・・・ではない、言葉を濁さずハッキリというなら対モンスター用の傭兵であり組合の依頼をこなしモンスター退治や遺跡の探索などを行い報酬をもらう存在、未知への探索など夢のまた夢である。そんな事を思いながらアインズは冒険者組合にあるクエストボード(サイファー命名)の前で横にいるサイファーに話しかける

 

「冒険者・・・か、予想以上に夢のない仕事だな・・・」

 

「まあまあ、いっそ冒険者になったとは考えずにモンハン的なハンターになったと考えれば少しはマシじゃないですか」

 

「・・・そうですね」

 

「そうですよ、それより問題は文字が読めないのにどうやってクエストを選ぶかですよ」

 

そう言ってサイファーは目の前のボードに張り付けてある羊皮紙を指さした

 

見渡す限り沢山の羊皮紙があるがどれもこれも見知らぬ字で書かれており文字が読めない

この世界の法則の一環か何かにより言葉は翻訳され現地の人間と言葉を交わす事は出来るが文字までは訳してくれなかった

冒険者の登録の時は受付嬢がすべてやってくれたが冒険者になったらそうゆうサービスは無しらしい・・・

アインズの持っている文字解読のアイテムはセバスに渡したままで手元にない、隣にいるサイファーは物持ちが悪く必要無いと思った物はすぐ捨てるため期待は出来ない、しかもアインズと違いもったいない精神も低くかすり傷でもエリクサーを使う様なやつである・・・つまりは自分と同じく役に立たない・・・頼みの綱はアルベドだがナザリックの支配者である自らが「文字が読めないから読んで」など恥ずかし行動はとれない

 

(くそ、万事休すか、サイファーさんも黙ってないで何時もみたいに空気を読まずにアルベドに「字が読めないけどアルベド分かる?」とか聞けよ)

 

文字に対する対策をすっかり失念していたアインズはそんな理不尽な事を考えていたが意を決して一枚の羊皮紙を掴む・・・どうか成功しますようにと心の中で数回神に祈りながら

 

 

 

 

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「サイファー様、アインズ様は何をしておられるのでしょうか?」

 

「おそらくだけど・・・二人の話から推測するに仕事へのクレーム・・・かな」

 

少し離れたカウンターで受付嬢と揉めるアインズ、結構な強気の発言で周りにいる同業者の皆さんから敵意に満ちた視線が集まる・・・傍から・・・いや、自分達から見ても仕事のクレームにしか聞こえなかったがアルベドの手前少しオブラードに包んでぼかしたが間違いなくクレーマーだ

 

別に簡単な仕事でも俺は全然かまわないが・・・むしろ最初はチュートリアル的な子供の使いみたいな仕事でも全然OKなのだがアインズはチュートリアルはスキップするタイプのようだ

 

若干引気味で話を聞いていたらアインズがこちらを急に指をさしてきた

 

「後ろにいる私の連れ、サイファーは第三位階魔法の使い手だ」

 

いきなり何言ってんの!?

 

アインズの言葉に周りの視線がサイファーに集中する、そして周りの敵意も徐々に薄まりざわつき始める

 

「そして私もアルも当然サイファーの強さに匹敵するだけの戦士。我々であればその程度の仕事など容易いものだ」

 

堂々と宣言するアインズ、その姿は自信に溢れており正に強者の佇まいである

 

 

「上手いもんだな、さすがは我らのリーダー俺らの評価を上げつつ仕事もゲット、良いことずくめだな、アル」

 

「はい、さすがは私の愛しいお方。このような掃き溜めの中でも輝いておられます」

 

「掃き溜めっておい」

 

アルベドの毒舌にツッコミを入れていると、どうやらアインズの方も終わったらしく受付嬢は立ち上がりアインズは手を上げ自分達を呼んでるようだ・・・いよいよ冒険者デビューか、そう思いアインズのもとに向かうと別の男の声が掛かる

 

「それなら私達の仕事を手伝いませんか?」

 

「アン?」

 

「漏れてる、心の声が漏れてるよ」

 

アインズの脇に肘でツッコミを入れつつ声の主に視線を向ける・・・そこには四人組の冒険者がおり・・・どうやらプレートの色からして先輩のようだが俺達の様なペーペーに何の様なんだろう

 

「モモンさん。どうやら先輩達が仕事のイロハを教えてくれるイベントみたいですよ、受けますか?」

 

せっかく誘導が上手くいったのに余計な茶々を入れやがって、と内心愚痴をこぼしていたがサイファーの言う通りこの世界での冒険はアインズ達も初めてであり常識のすり合わせの事も考え最初は先輩方から教わるのも悪くない、うまくいけばこの地での人脈作りの第一歩に繋がるかもしれない

 

「先輩方からのせっかくのお誘いですし、一緒にやらせていただきましょう。しかし一体どんな仕事なのか聞かせていただけますか?」

 

「ええ、もちろん。今部屋を用意してもらいますからそこで話をしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

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サイファー達が案内されたのは会議室の様な部屋であり、中央に木のテーブルが置かれ、その周りを囲むように椅子が置かれている。先輩ら四人組は部屋の奥側の椅子に座り、サイファー達は指示に従い椅子にすわる

・・・当然アインズの隣にはアルベドが腰を下ろす。

 

4人の冒険者はチーム名を『漆黒の剣』と言い、金髪碧眼の戦士風の男がリーダーのペテル・モーク。皮鎧を纏った金髪の痩せ男の野伏ルクルット・ボルブ。最年少と思われる魔法詠唱者ニニャ。最後に髭を生やした森司祭ダイン・ウッドワンダー

 

自己紹介の途中に話が脱線し『生まれながらの異能/タレント』の話になりこの街で一番の有名人のンフィーレア・バレアレという薬師の少年はどんなアイテムも使用制限なく使えるという。その話が出たとき隣の二人の空気が若干下がった気がする、おそらくアインズはそのタレントをどうにかして手に入れナザリックの強化に使えないか考え、アルベドは危険人物と判断し人知れず処分する算段でも立てているのだろう。しかし俺個人としてはそんなタレントは欲しくない、一ゲーマーとして制限なしプレイより制限がある中で如何にプレイするか考えて遊ぶほうが好きだからである

 

「では次は私達の番ですね。こちらのアル。奥にいるのが魔法詠唱者のサイファー。そして私がモモンです。よろしくお願いします」

 

アインズの紹介に合わせてサイファーも頭を下げる。横目で隣を見るとアルベドもしっかり頭を下げていた・・・ホントにしっかりしてるなこの子、アインズさんも物珍しそうに見てるし

 

「仕事の話に移りたいのですが、実のところ仕事というわけでもないんです」

 

「それは・・・」

 

訝しげに話を聞いてみたらなんてことは無い、街の外にいるモンスターを狩りまくりドロップアイテムをゲットする・・・いわゆるフリーミッションというやつだ、しかも報酬は分割という割の良さ

 

「・・・そんなわけですが協力をお願いします」

 

「こちらも問題はありません。協力させていただきたい。それでなんですが共に仕事を行うのですし、顔をお見せしておきましょう」

 

そういってアインズはヘルムを外し顔を露わにする・・・といっても幻術で作られた偽物の顔だがリアルのアインズの顔に似ているらしい

 

「南方の方にモモンさんのような顔立ちが一般的な国があると聞いたことがありますが・・・そちらからですか」

 

「ええ、かなり遠い所から来たんですよ」

 

意外とおっさんだな。失礼ですよ、おっさんなんて・・

 

3人のヒソヒソ話にアインズは心にダメージを負った、サイファーは笑いをこらえている

 

「では私も」

 

アインズに続きアルベドもヘルムに手をかけるが脱ぐ訳ではなくヘルムの側面にあるスイッチを押す。その瞬間顔の部分だけがパカッと開いた。いわゆるフェイスオープンってやつだ、此処に来る前にナザリックの鍛冶師に特注で作ってもらったものである

 

アルベドの顔が露わになるとアインズの時のような苦い言葉ではなく、ただただ純粋な好意の声が上がる、その様子を見ていたアインズはさらに苦いものが体にシミわたってくる・・・

 

「じゃ、最後に私も・・・」

 

そう言ってサイファーは仮面を外す。マジックアイテムにより一時的に肌の色が人間っぽくなった顔を皆にさらしたが・・・

 

「アルさんって凄い綺麗な方ですね」

 

「うむ、正に絶世の美女であるな」

 

「惚れました! 一目惚れです! 付き合ってください」

 

「おい、ルクルット」

 

「ごめんなさい。私にはモモンさんが全てなの」

 

「い、いや違いますよ、皆さんそんな目で見ないでくれ」

 

「わかりました。ではお友達から始めて下さい」

 

「どうしましょうモモンさん」

 

「・・・・お友達くらいならいいんじゃないか」

 

「仲間が御迷惑を」

 

「いえ、かまいませんよ」

 

誰も見ていなかった・・・あまりの無視っぷりにワザとじゃないかと疑いフードも剥ぎ取り角の生えた素顔をさらしたが・・・・アルべドの美貌に視線が集まったまま固定されおり見向きもされなかった

 

思い出すなぁ『流れ星の指輪/シューティングスター』を当てた時の事を・・・実は指輪をギルドのメンバーの中で一番に当てたのはこの俺なんだよなぁ。当たった時は物凄く嬉しくてその場にいたメンバー全員に自慢しようとしたんだけど、すぐさまやまいこ先生が一発で当ててみんなそっちに集中しておもいっきし蚊帳の外にされたっけなぁ。

しかも茶釜の姐さんは俺が当てた事に気づいているのに気づかないふりしているし

モモンガさんはやまいこ先生ばかり見ていたし

 

そんな事を思い出しながらサイファーはいそいそとフードを被り直し仮面を装着した

 

「あっ!」

 

仮面を付け終わると同時にペテルが声を発し、仮面を付け終わったサイファーを見て皆が察したようだ

そして先ほどの騒ぎが嘘のようにその場に静寂が訪れた

 

「では、お互いに自己紹介も終わった事ですし、準備が済み次第出立しましょうか」

 

沈黙の中サイファーの妙に明るい声が響く、皆が何か声を掛けようとしてくれたが手を振り断った・・・

そっとしておいて

 

「え、ええ。こちらの準備は既に出来ておりますので、モモンさん達の準備が整いましたら行きましょう」

 

こうして俺達は立ち上がり、部屋を後にした。食料の代金を少し負担しましょうか・・・とか、荷物は持って上げますいや持たせてください・・・とか、すみませんサイファーさまとか・・・心なしか皆が優しい。

今日は良い冒険日和になりそうだ。

 

 


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