彼の冒険はここから始まる・・・かも
12年前、DMMO-RPG「ユグドラシル」というゲームが発売された。
そのゲームは一言で言えば「物凄く自由なゲーム」である。
基本職+上級職の数は2000を超え、外装だって18禁に触れなければどんな姿も思いのま
まであり、別売りのクリエイトツールが有れば更に自分好みに仕上げる事ができる。
まさに最高のゲームである。
・・・最高のゲームであった。
しかし・・・今日、そのユグドラシルというゲームはサービスを終了する。
理由は簡単である、12年という歳月が過ぎれば大多数のプレイヤーに飽きられるも当然だ。プレイヤーの過疎化に、新しいゲームの台頭、運営の管理の限界。
どんなものにも終わりが来る。一部のプレイヤーの嘆きと共に、12年の歴史に幕を閉じることになった。
「サイファー」と名乗る異形種の男もギルド長からの誘いに応じ久しぶりにログインしたのである。
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「ここに来るのも1年振りくらいかな?」
そう独り言のように呟き、一人の悪魔がリスポーン地点に設定しているギルド内の自室を見渡していた。
自分専用に割り振られた部屋であるが・・・あるのは大きなベッドに姿見の鏡、あとはクローゼットの3点のみのデフォルト状態である
部屋に何もない理由は単純に使う必要がないからである。ここにリスポーンし、すぐに円卓の間、もしくはギルメンとの集合場所に向かいクエストに参加する、装備の変更は部屋のクローゼットを使用しなくても携帯端末を使えば何処でも変更可能であるため、わざわざ戻って着替えたりする必要もない、
故に部屋の家具は初期配置のままほっぽっているのだ。
(さて、メールを見て集まったメンバーはどこかな?)
何もない自室だが妙に懐かしみを感じながら、急ぎ気味に行動を開始した、何しろログインするのが遅く結構いい時間帯になってしまったのである。
コンソールを開きギルメンの現在地をマップ上に表示したが。
(十階層の玉座にモモンガの旦那が一人か・・・みんな最後まで遊んで行かなかったの
か? 出張先からわざわざ戻ってきたのに、ちょっと残念で寂しいな)
遅れてきた自分が今更何を言うかと思いコンソールを閉じる
玉座にいるであろうモモンの下に向かうため自室から移動するため歩を進めたが、ふと鏡にアバターの姿が映った。
銀で縁取られた、シンプルな紺色のローブ姿に、青い肌に、赤い髪、左右のこめかみからは金色の大きな角が生えているイケメン顔の青年である
典型的な人型の悪魔の姿がそこにはあった。
(典型的であまり個性がないアバターだけど、周りのメンバーが濃すぎて逆に目立つという謎の現象がよく起こっていたな。)
だが外見や装備の性能は他のメンバーに負けてるかもしれないが中身(スキル+隠し玉な意味)は負けてない自信がある。
そんな事を考えながら鏡の前で自分がカッコイイと思うポーズを決める。
サイファーは羞恥心が刺激されたがついつい別のポーズも試していく
何度も試したがやはりこのアバターは素晴らしい。
ポージングに満足し、次に装備品も変えてみようかとコンソールを開いたが、こんなことをやってる場合ではないと気づき画面を閉じる
「・・・さて、モモンガの旦那に会いに行きますか、かなり遅い時間だけど最後の時まで居るって言って誤魔化そうっと」
そう、軽い気持ちで自室からモモンガのもとに移動し始めた。
この時、サイファーはある事を失念していた・・・昔の思い出に浸りながら鏡で遊んでいたためサービス終了時間ギリギリにログインしたことを・・・
・・・そしてもう〇時を過ぎていることに・・・
だがそれを注意出来るものは此処にはおらず、ただ、静かに新たな時が刻まれてゆくだけであった
悪魔王サイファー、無事異世界転移成功
ちゃんとナザリックに帰還してるからタイトルサギではない。
こんな感じにゆっくりと進んでいきます。
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