十勇士 作:妖狐
桜華の前に立つ才蔵……
「助っ人の登場ですか?」
男が話している中、才蔵は振り向きしゃがみながら、桜華の縄をクナイで切った。解かれた桜華は、怯えきった顔で才蔵を見上げた。そんな彼女の頭に才蔵は手を乗せた。
「今後、俺の傍から離れるな」
「……」
「あ~あ、せっかく手には入るかと思ったのに~。
アンタ等二人が、邪魔したせいで時間食ったじゃないですか」
「だったら、子供は回収できなかったと主に報告すればいいだろうが!!
って、その言い方……テメェ、まさか」
何かに気付いた才蔵は、男の顔に向けてクナイを放った。男はクナイを避けることなく当たり、覆面を外した。
「やっぱり……テメェか」
「は、服部半蔵!?」
「どうも~。
お久し振りですー。真田の皆さん」
「何でお前が?!」
「徳川にいるんじゃ」
「それがねぇ。随分前にヘマして、解雇されちゃったんですよー」
「ちょっと待て!
数日前に、筧さんが行ったはずだ!お前の所に」
「えぇ。来ましたよ。
だって、解雇されたのその数日後ですもん」
「……」
「四年前の行動が、どっかで徳川の旦那にバレちゃいましてね。それで解雇」
「四年前の行動って……」
「そこにいるガキを、連れて行こうとしたんです。今の主の元へ……
ところが、そのガキの住む村の者は頑として彼女を渡そうとしなかったものでねぇ。
仕方なく、殺っちゃったんですよ」
「?!」
半蔵の言葉が響いたのか、桜華の脳裏にある記憶が蘇った。
焼かれる人達……火の海になった村。自分を後ろに隠し、半蔵に刀を向ける女……
『逃げて!!ここから!!早く!!』
「嫌……嫌…」
「本当、記憶無くしたみたいですね~。
まぁ、その方が捕まえやすいか」
才蔵の足の間に自身の足を踏み込ませ、大剣を振り下ろした。才蔵は剣を抜き、振り下ろしてきた大剣を受け止めた。
「何だよ~。血の飛沫、見られると思ったのに~」
「ガキの前で、そんなの見せられるわけねぇだろ!!」
「あれ?二度と持たないんじゃなかったんですか?」
「!」
「覚えてますよね?五年前の事」
「うるせぇ!!」
大剣を振り払い、才蔵は攻めだした。桜華から半蔵が離れたのを見た真助は、口から血を出しながら起き上がった。
「やれ…やれ……
この年にもなって……まだ…刺される……とは」
「腹を刺されても尚、動けるとは。
さすが元武田」
「少々……黙って…貰いましょうか?
腹の傷を……庇いながら戦うのは…大変なん…ですよ?」
刀を握りながら、真助は男を睨んだ。男は跳び上がり、落ちる勢いのまま槍を突いた。突いてきた槍を、真助は刀で受け止め防いだ。
半蔵とやり合う才蔵……
半蔵はクナイを取り出し、才蔵に投げ付けた。才蔵はクナイを避けたが、その背後に半蔵は立ち大剣を振り下ろした。
「才蔵!!」
背中から血を出し、才蔵は蹌踉けた。桜華は立ち上がり彼の元へ駆け寄ろうとした。
「桜華!!来るな!!」
才蔵に怒鳴られ、桜華は立ち止まった。半蔵はニヤけながら、桜華に話した。
「アンタが一緒に、俺等と来れば誰も殺しはしませんよ?」
「え……」
「アンタが素直に、俺等の言う事聞けば、誰も傷付けないし、もう手を引きます。
どうします?」
「……」
「こいつの話を聞くな!!
桜華!!そいつ等の所行ったって、何にも解決しねぇ!!」
「うるさい男だ」
「!」
大剣を振る半蔵……その攻撃を受けた才蔵は、腹から血を出しながら桜華の前に倒れた。才蔵の体から出た血が、桜華の顔に付いた。
「才蔵?」
「……」
「才蔵……才蔵。
?」
生暖かい何かが自身の手に触れ、桜華は恐る恐る手を見た。ベットリと付いた血……
「……嫌……
嫌だ……才蔵……才蔵!!」
「悲痛な声……いいですねぇ。
さぁ、一緒に来て貰いましょうか?」
桜華の手を掴む半蔵だったが、その直後地面から木の根が生え彼を攻撃した。
「!!」
立ち上がる桜華……彼女の胸元は黒い光を放っており、腰に挿していた鞘から刀を抜き取りながらスッと顔を上げた。
「これ以上……お前等の好き勝手にはさせない!!」
「凄ぇ殺気」
桜華は手から火の玉を出し、半蔵に放った。彼はすぐに避け大剣を振り下ろした。桜華はその大剣を、刀で振り払い空いた半蔵の腹に、雷を放った。
(何だ?!コイツ、昔と違う!!)
半蔵の足の間に自身の足を踏み込ませ、桜華は刀を振った。半蔵は腹を切られながらも、クナイで彼女の肩を刺そうとした。だが彼の腕に、木の根が刺さりその攻撃を食い止めた。半蔵が怯んだ隙を狙い、桜華が彼を刺そうとした時だった。
“バーン”
どこからか飛んできた弾が、半蔵の腕に当たった。彼の血を浴びた桜華は、動きを止め彼から離れ座り込んだ。
「危ない……」
「ギリギリセーフだな」
城を見下ろせる丘に、煙草を口に銜え双眼鏡で城を見る男と火縄銃を手にする男がいた。
氷:ちょっと!新キャラ登場なんて話、聞いてないわよ!!
狐:いやいや。タイトル読んで。『十勇士』。
これ、真田十勇士の話だから。
氷:……
猿:段々とシリアスな小説になってるぞ。
狐:てかさ~。ここ、雑談コーナーだよ。
何で本編の話、しなきゃいけないの~?
猿:そ、それは……
狐:もとあと言えば、佐助が続きがどうとか言うから、このコーナー雑談じゃなくて、小説の説明と進み具合のコーナーになってんじゃん。
猿:……
氷:そういえば、前回は才蔵の紹介してたわね。今回は誰を紹介するの?
狐:よし!氷柱を紹介する!
氷:やったー!
狐:それではどうぞ↓
名前:穴山氷柱(アナヤマツララ)
年齢:19歳
使用武器:槍
容姿:長い焦げ茶色の髪を耳上で結っている。目の色は黒。
服装:腹出しの青い袖の長い服を着て、下に白いショートパンツを穿いている。脚には膝上まである青い線の入った白いレックウォーマー付け、ヒールの高いショートブーツを履いている。