十勇士 作:妖狐
ゆっくりと目を開ける才蔵達……
「……!?」
周りは暗闇に包まれていた……自分達がいる場所にだけ、光が射していた。
「……どうなってんだ」
「何で、俺等の所だけ……」
「才蔵さん達の周りにだけ、結界を張りました」
座り込んでいた優之介は、息を切らしながら才蔵達に話した。
「憎い……」
「?」
闇の渦と共に、頭を抑えた伊佐那美が才蔵達の前に現れた。彼女の傍へ素戔嗚尊と千草は駆け寄り、彼等に向けて武器を構えた。
「闇に引きずり込んでも尚、妾に抵抗するのか!!桜華!!」
「そ、そこにいるのか!?」
「正確には目の前にだ!」
「戻ってこい、桜華!!
上田で幸村と大助が、お前の帰りを待ってんだ!!」
「黙れ!!
!?な、何だ?」
一瞬、桜華の姿へと変わる伊佐那美……次の瞬間、彼女は千草が持っていた矢を奪い、それを心臓近くに刺した。
すると、刺した箇所から闇の波動が一気に広がった。その波動に、素戔嗚尊は飲み込まれ、ギリギリで千草は回避した。
「ホホホホホホ!!ようやく…眠りに着いた!
これでもう、この体は妾のもの!!」
「あの野郎!!」
「鎌之介!無闇に突っ込むな!」
「桜華を返せ!!」
闇のオーラを放ち、鎌之介の攻撃を難なく避けていく伊佐那美。彼に続いて、甚八、佐助、氷柱、清海、伊佐道、六助、そして十蔵と、次々に各々の技で彼女に、攻撃をした。
そんな中、優之介達は互いの顔を見て頷くと、手を合わせた。すると、彼等の足下に太極図の陣が浮かび上がった。
その陣に向かって、椿は風と草の技を、陸丸は土と金の技を、優之介は火と氷の技を放った。
すると、陣は光り出し辺りの闇を吹き払った。そしてその陣に反応するかのようにして、大社の地面に描かれた太極図が光り出し、黄泉への扉が地下から出て来た。
「あれって……」
「まさか……」
「黄泉への扉?」
「お主等ぁ!!」
「これ以上、貴様の好きにはさせない!!」
「我等光坂は、この地に蘇った伊佐那美を、再び黄泉へ返す!」
「この命尽きようとも!!」
その言葉と思いに反応し、黒かった勾玉は光を取り戻したかのように、赤、黄色、緑色の光を放ち、閉められていた黄泉の扉の鍵穴へ嵌まった。才蔵が持っていた悪しき魂にも、光が灯り穴へと嵌まった。
だが、桜華の勾玉……奇魂だけは、光を取り戻していなかった。
「あと一つ、嵌まらなければ扉は開きはしない!!
だが、その持ち主は深い眠りについている……残念だったな!!勇者よ!」
「……!
甚八!猿!テメェ等の技を勾玉に当てろ!」
「!?」
「早くしろ!」
才蔵の方に向いた二人は、すぐに水と雷の技を放った。
技は勾玉に当たった……すると、微かに光が蘇り出しそして、強烈な光を放った。
「この光!」
「桜華の奴が!」
「ば、馬鹿な!
桜華はもう!」
勾玉は才蔵の手から離れると、彼の周りを一回りしそして鍵穴へと嵌まった。
全ての鍵が揃った時、黄泉の扉が開いた……そこから闇に染まった触手が出て来た。触手は千草と伊佐那美に絡み、中へと引きずり込んだ。
「あああああ!!黄泉に引き込まれる!!
己!!己!!覚えておれよ!!妾はまた必ず!!」
扉が閉じる直前、才蔵は刀を手に黄泉の中へと飛び込んだ。
「才蔵!」
おや?珍しい客人ですね。
お久し振りです。
あなたが来るとは……何か御用が?
えぇ、まぁ。
私に出来ることがありましたら、力になりますよ。
アンタの力を借りたい。良いかな?
いいですよ。さて、どんな願いですか?