十勇士   作:妖狐

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出雲が見える丘に立つ才蔵達……


出雲大社には、禍々しい黒い雲が広がっていた。


「うへー、あそこだけ違う夜って感じだぁ」

「あそこに桜華が……」

「……桜華」

「なぁ、才蔵と同じ里の出身の……半蔵って奴は?」

「さぁな。

情報だと、半蔵は仲間を連れて逃げたって話だ」

「情けねぇ……」

「でも代わりに、二人ほどいるらしいわ」

「一人は千草。もう一人は分からん」

「……」

「千草は俺が相手する。

才蔵、お前は桜華だけを見ろ。いいな?」

「百も承知だ」

「俺等は出雲に入り次第、別ルートで行く」

「頼む」

「そんじゃあ、行くか」

「あぁ(待ってろ……桜華)」


決戦

「?」

 

 

何かの気配に気付いた伊佐那美は、後ろを振り返った。そこにいたのは才蔵だった。

 

 

「桜華……」

 

「……才蔵」

 

「迎えに来た……

 

帰るぞ、桜華!」

 

「才蔵!」

 

 

手を差し伸ばしてきた才蔵に桜華は、涙を流して飛び付いた。

 

 

「……才蔵!

 

才蔵……」

 

「桜華」

 

「ありがとう……本当にありがとう!

 

 

 

 

わざわざ、殺しに行かなくて済んだ」

 

「!!」

 

 

伊佐那美の手から技が放たれ、技に当たる寸前に才蔵は、すぐに彼女から離れた。

 

 

「お主は邪魔だ!

 

全ての準備を整え、これからこの世を面白可笑しく、滅ぼそうという時に……

 

お主は絶対に邪魔になる!!お主がいなければ、何の枷も無い!!

妾は命あるもの、全てを殺して闇へ還す!!至福の時が訪れるのだ!!

 

 

桜華……そんな女はもういない。

 

この世を絶望の淵に落とすのだ」

 

 

地面から噴き出す闇……そこから、顔を布で覆ったくノ一達と、伊佐那美の傍にいた千草と男が現れた。

 

 

「来るぞ!」

 

「お主等が亡き者になれば……

 

 

この女も、少しは静かになるだろう」

 

 

鳴らした指を合図に、くノ一達は一斉に才蔵達を襲い掛かった。迫ってくる彼女達に、佐助は水を放ちそれに続いて甚八は雷を放った。彼に続いて、自身に襲ってきたくノ一を十蔵は銃弾を放ち倒し、くノ一の大群に鎌之介は氷柱と共に氷と風の連携技を放った。

 

清海達に迫り来る、くノ一達の動きを六郎は草で封じ、動けなくなった彼女達に、清海と伊佐道は土で囲い袋の鼠となった所に、六助は爆薬を撒きそして火を放った。土壁の向こうから、爆発と共に黒い煙が上がった。

 

 

「忌まわしい勇士達だ!!

 

 

 

だが……此奴に勝てるかな?」

 

「?」

 

 

才蔵達の前に、弓矢を構えた千草と大太刀を振り上げた男が突如として姿を現した。

 

矢を避ける才蔵と佐助だが、次の瞬間地震と共に地割れが起きた。

 

 

「アッハッハッハッハ!!

 

勇士達であろうと、所詮は人の子!

 

 

我が息子、素戔嗚尊に敵うわけが無い」

 

「だったらその姉貴の、天照大神の力には敵うって言うのか!?」

 

 

素戔嗚尊の背後にいた鎌之介は、鎖鎌の鎖を勢い良く回し竜巻を起こした。竜巻をもろに受けた素戔嗚尊は、飛ばされた勢いで、木の幹に体をぶつけた。

 

 

「!?」

 

「ハッハァ!!

 

倉の兄貴から、俺等一族のことはしっかり聞いてんだよ!!」

 

「己ぇ!!」

 

「この男は、某達が相手する!」

 

「鎌之介!最大威力の竜巻起こせ!」

 

「応よ!」

 

 

鎖を勢い良く振り回し、風起こすと巨大な竜巻を作り出し、それを素戔嗚尊に向かって放った。放たれた竜巻に、甚八は雷を放ち雷は竜巻を覆った。

 

 

「食らえ!!

 

由利式合体風術!!雷竜巻!!」

 

 

放たれた竜巻に、素戔嗚尊は巻き込まれた。

 

 

「へっ!どんなもんだ!」

 

「それはどうかな?」

 

 

不敵に笑う伊佐那美……その時、竜巻が真っ二つに切られ中から、炎を纏った素戔嗚尊が姿を現した。

 

 

「?!」

 

「消え……ろ!!」

 

 

鎌之介目掛けて、素戔嗚尊は大太刀を振り下ろした。当たる寸前、甚八は彼の前へ立ち槍で受け止め、動きが止まった素戔嗚尊に向けて、十蔵は銃弾を放った。

 

 

「甚八!鎌之介!平気か!?」

 

「何とかな!」

 

「問題無しだ!」

 

 

素戔嗚尊に目を向ける鎌之介達に向けて、見えぬ所で千草は彼等目掛けて矢を放った。だが、届く手前で佐助と氷柱に阻止された。

 

 

「貴様の相手は、俺等だ」

 

「……」

 

 

佐助の目に映る、笑顔を向けた千草。

 

 

(……千草)

 

「佐助、来るわよ!」

 

 

氷柱の声に、佐助はすぐ武器を構えた。千草は弓と矢を手に、佐助達に襲い掛かった。

 

 

彼等が二人を相手しいると、突如あのくノ一達が迫ってきた。襲われる寸前、六郎達は彼等の前に立ち彼女達の動きを封じた。

 

 

彼等の戦いを見る伊佐那美……

 

 

「……何故、そうまでしてこの子を助けたい?」

 

「……大事な仲間だからだ」

 

「仲間?

 

 

フ……フフ……アッハッハッハ!!

 

 

笑わせるな!!」

 

 

才蔵に向けて、伊佐那美は技を放った。彼はすぐにその攻撃を避け、彼女を睨んだ。

 

 

「何が仲間だ!!

 

この子を孤独にしたのは、誰だ!?たかが、他の子より技術が優れているからという理由で、妾の器となり牢に閉じ込めるのか!?」

 

「……お前」

 

「まぁ、この子を孤独に浸らせてくれたおかげで、妾はこの子に取り憑くことが出来た……」

 

 

沸々と伊佐那美の周りから、黒いオーラが出て来た。

 

 

「妾は伊佐那美……この世を闇に返すために、蘇った!!」


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