十勇士   作:妖狐

5 / 65
『いたか?!』

『いや、どこにも』

『くそ、どこに行ったんだ』

『焼け死んだんじゃねぇの?』

『死んだら元も子もないぞ!!

アイツはあの方が』


逃げなきゃ……遠くへ。


安らぎの場所

夕暮れ……才蔵は氷柱と共に、上田の森に入り桜華を捜していた。

 

 

「桜華!!どこだ!!」

 

「桜華!!出て着て!!」

 

 

森を駆ける才蔵だったが、彼女はどこにもいなかった。彼等の後に続き、佐助も一緒に捜していた。

 

 

「全く、何で目を離したりするんだ!!」

 

「仕方ねぇだろ!」

 

「仕方なくない!!これだから伊賀の者は」

 

「あ?!」

 

「喧嘩するなら、桜華を見つけてから!!

 

今日中に見つかんなきゃ、ヤバいんだから!」

 

 

“ワオオオオオオ”

 

 

森中に響く、山犬の遠吠え。佐助はその鳴き声を頼りに、どこかへ向かった。彼の後を、才蔵と氷柱は追い駆けた。

 

 

 

奥へと来た佐助……小さな洞穴の傍に、山犬は座っていた。山犬の頭を撫でながら、穴を覗いた。

 

蹲る桜華……体を震えさせながら、桜華はそこに座っていた。

 

 

「猿!見つけ」

「シッ!

 

この穴の中だ。けど、相当怯えてる」

 

「……」

 

 

佐助を退かし、才蔵は穴の中を覗き込んだ。

 

 

「桜華、帰ろう」

 

「…なきゃ」

 

「?」

 

「逃げなきゃ……逃げなきゃ。あいつ等から、逃げなきゃ」

 

 

穴にいる桜華は、髪留めの紐が切れたのか、長い髪が下ろされ彼女はずっと顔を伏せ震えていた。

 

 

「桜華」

「逃げなきゃ」

 

「桜華」

「逃げなきゃ」

 

「桜華!」

 

 

桜華の手を掴み、才蔵は彼女を引きずり出した。桜華は才蔵から離れようと暴れ出した。

 

 

「桜華!落ち着け!!

 

氷柱、頼む!」

 

 

才蔵に言われ、氷柱は冷たい息を桜華に掛けた。彼女は気を失ったかのようにして倒れ、倒れかけた桜華を才蔵は横に抱いた。

 

 

「……余程怖かったのね」

 

「……」

 

「とにかく、城へ戻ろう。

 

幸村様達も、心配していることだし」

 

「そうだな」

 

 

抱えている桜華を抱え直し、才蔵は佐助達と共に城へ戻った。戻る中、桜華の首から掛けていた勾玉の翡翠が、青く光っていた。

 

 

 

『お守り?』

 

『そう。桜華を悪い物から守ってくれるお守り』

 

『綺麗な翡翠』

 

『絶対外しちゃダメよ』

 

『うん!』

 

 

『早く逃げて!!早く!!』

 

 

 

目を覚ます桜華……額に置いてある濡れた手拭いを退かしながら、桜華は起き上がった。部屋には障子に寄り掛かり眠る才蔵の姿があった。

 

 

「……」

 

『ここは安全だ。何も怖いことはねぇよ』

 

 

思い出す才蔵の言葉……ふと下に目を向けると、皿が置いてありそこにお握りが三つ置かれていた。桜華は、お握りを手に掴み頬張った。

 

食べる音で目が覚めた才蔵は、目を擦りながら起きてお握りを食べる桜華を見た。

 

 

「起きたか」

 

「……」

 

「……美味いか?」

 

「……ん」

 

「桜華……お前、何があったんだ?」

 

「……知らない」

 

「え」

 

「覚えてない……

 

ずっと追われて、放浪して逃げてた」

 

「親は?一緒じゃなかったのか?」

 

「知らない」

 

「知らないって……」

 

「ずっと一人だもん……」

 

「……」

 

「ずっと一人で逃げてた……村や町を転々として、逃げてた。元から着てた服は着れなくなって、死んでた山賊から服を剥ぎ取って、それを着た」

 

「(あの男物の着物、山賊から剥ぎ取ったのかよ)

 

そういえば、刀はどうしたんだ?山賊から盗ったのか?」

 

「ううん。元から持ってた」

 

「フ~ン」

 

 

その時、障子が開きそれに驚いた桜華は、才蔵の傍に行った。

 

 

「六郎さん」

 

「目覚めたみたいですね。桜華」

 

「さっきな」

 

「才蔵、幸村様がお呼びです。すぐに着なさい」

 

「分かった。

 

桜華、お前はもうちょい寝てろ」

 

「……うん」

 

 

桜華の頭を軽く叩くと、才蔵は立ち上がり六郎と共に部屋を出て行った。

 

一人になった桜華は、もう一つお握りを口にした。

 

 

『桜華……桜華』

 

「?」

 

『桜華……

 

またお母さんに怒られたんだって?』

 

(誰?)

 

『ほら、お握り。これを食べて機嫌直しなさい』

 

 

自然と涙を流れた。桜華は涙を腕で拭きながら、お握りを見た。

 

 

(私……)

 

 

 

「ハァ?!徳川じゃない!?」

 

 

巻物を読みながら言う幸村に、才蔵は大声を上げた。

 

 

「あぁ。

 

十蔵の調べによると、ここ最近徳川が動いた痕跡が無いんだ。ほれ、お主と同じ伊賀の出身の服部半蔵がいるだろ?あ奴からも情報を得たんだが」

 

(よく情報を得られたな……つーか、本当にあってんのか?)

 

「最近は、どうやって儂等真田を滅ぼそうか考えているらしい」

 

「そんな情報いらねぇって、半蔵に言っとけ!!

 

 

……そうなると、桜華は誰に追われてんだ?」

 

「そこなんだよ。誰に追われているのやら……

 

彼女から、何か聞いたか?」

 

「何も。聞いたと言えば、ずっと一人で逃げてきたってくらいだ」

 

「逃げてきた…か」

 

「幸村、徳川の事少し頭に入れといた方が良いぜ。

 

あの狸は、自分は動かないけど部下に動かすことがあるから」

 

「そうだのぉ……まぁ、考えておく」

 

「そんじゃ、部屋戻って寝るわ」

 

「才蔵、桜華の事頼んだぞ」

 

「……ヘイヘイ」

 

 

襖を閉め、才蔵は部屋を出て行った。

 

 

六郎は幸村に茶を出しながら、口を開いた。

 

 

「本当にいいんですか?才蔵で」

 

「あぁ。

 

アイツは少し、大事なものを持たせた方が良い」

 

「……」

 

「いつまでも過去に縛られちゃ、前に進めはしない……そうだろ?六郎」

 

「そうですね……」

 

 

桜華の部屋へ戻ってきた才蔵……桜華は、部屋の隅に蹲っていた。

 

 

(また……)

 

『ずっと一人で逃げてた……』

 

(……無理もないか。

 

怖いんだもんな)

 

 

蹲る桜華の隣に座った才蔵は、掛布団を包むように彼女に掛け自分にも掛けた。桜華は体勢を崩し、才蔵に寄り掛かる様にして倒れた。そんな彼女の頭を才蔵は撫でた。その時、一瞬だけ彼女の姿が別の女性へと変わった。青い髪を一つ三つ編みに結い、自身に寄り掛かりえ笑う女性。

 

 

(……似てるな…アイツに)

 

 

縁側を歩く佐助……ふと、桜華の部屋を覗いた。

 

 

壁に寄り掛かり眠る才蔵。彼の隣で彼にしがみ付き眠る桜華。

 

そんな二人の姿を見た佐助は、鼻で笑いその場を去って行った。




狐:……あれ?雑談コーナーは?やってないの?

猿:今回、話す事何かあるのか?

狐:う~ん……
あれ?そういえば、才蔵は?

猿:アイツなら今、桜華と一緒だ。

狐:あ~、そういえば。

猿:で?いつになったら、桜華の過去が明かされるんだよ!

狐:もうちょいしたらな。

猿:このコーナー、そろそろ終わりにした方が良いんじゃないのか?

狐:う~ん……考えとく。
そうだ!次から、お前等の紹介するか!

猿:紹介?

狐:うん!服とか使用武器とか!

猿:それはいいかもな。

氷:その前に、才蔵の過去もなんか気になるんですけど!

猿:そうだ!才蔵に何があったんだ!!

狐:それではまた、次回をお楽しみに~

氷:おい!!
猿:おい!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。