十勇士   作:妖狐

40 / 65
“パリーン”


硝子の割れる音……その音に、目を瞑っていた桜華と真助は、目を開け互いを見合うと同じ方向に目を向けた。


「!!お前」


割れた硝子が舞い散る中、真っ白な髪を靡かせた女性がいた。


「また会えたわね……桜華」


安息の場所

地面へ降り立つ女性……彼女の姿に、真助は目を疑った。

 

 

「……ま、まさか…蓮」

「アイツは母さんじゃない!!」

 

「?!」

 

「彰三、言ったわよね?

 

桜華を殺しちゃ駄目って……」

 

「……」

 

「まぁいいわ。

 

殺してないようだから」

 

 

見てきた彼女に、桜華は鋭い目付きで睨み地面に転がっていた刀の束を握った。

 

 

「そんなに警戒しなくてもいいじゃない。

 

いずれは貴方と私は一緒になるんだから」

 

「なるわけないでしょ!!」

 

「フフフ……

 

真助……貴方にお願いがあるの」

 

「お願い?……!」

 

 

腹を貫く硝子棒……真介は訳が分からないまま、口から血を吐き出した。

 

 

「父さん!!」

「真さん!!」

「真助さん!!」

 

「あなたは邪魔なの。

 

桜華が伊佐那美になるには」

 

 

腹を抑えながら、真助は口から出る血を手で抑えた。そんな彼の姿を見た桜華は、刀を握って立ち上がった。

 

 

「あら?母親の私を殺すの?」

 

「母親でも何でもない!!

 

母さんは……母さんはもう!!」

 

「本当にそうかしら?」

 

「?!」

 

「あなたが見たのは、蓮華が流した血だけ……もし、あの時生きていたら?」

 

「そんなはずない!!

 

生きてたら、母さんは私を……」

 

「そう……あの時、あの子は息はあった。

 

だから、乗っ取るのは楽だったわ。燃え尽きそうな命だったから、何の抵抗も無く」

 

「まさか……蓮華さんの体を」

 

 

不敵な笑みを浮かべる女性……彼女はゆっくりと降り立ちそして、二人の前に立ち手を差し伸べた。

 

 

「行くよ、桜華」

 

 

その声は、蓮華の声だった……桜華と真助は、驚きの顔を隠せなかった。

 

 

「風術大旋風!!」

「氷術燕の舞!!」

 

 

氷の刃が、強い風に乗って飛び女性と彰三に攻撃した。

女性は、手に持っていた扇でその攻撃を振り払います、後ろへ下がった。

 

 

「話し中悪いが、俺達を忘れるんじゃねぇ!」

 

「チッ!」

 

 

その時、彰三は指を鳴らした。すると桜華の立つ地面に硝子の床が現れ、さらに周りに硝子の壁が作られ彼女を閉じ込めた。

 

 

「木術木の葉隠れ!!」

 

「桜華!!」

 

「渡すか!!風術大旋風!!」

 

 

舞う木の葉を追い払い、地面に落ちた桜華に氷柱は氷を張り覆った。

 

 

「これで奪えないでしょ?」

 

「小癪な!!」

 

「晶術針千本!!」

 

 

空中から硝子の針が、雨のように降り注いだ。氷柱は氷の屋根を張り、攻撃を防いだ。その間に、桜華は硝子を叩き割り外へ出ると、刀を手に無防備になっていた女性に向かって振り下ろした。

 

肩から腹まで切られた女性は、血を吹き出しながらその場に座り込んだ。

 

 

「頭!!」

 

「己ぇ!!桜華!!」

 

「甲賀流隼斬り!!」

「伊賀流水溶斬!!」

 

 

何かの技を出そうとした彰三に、復活した佐助と才蔵は各々の攻撃を彼に食らわせた。

 

 

「陸丸!!椿」

 

 

優之介の掛け声に、二人は土と風の技を出した。次の瞬間、辺り一面に砂が舞い上がり嵐を起こした。敵の目を眩ました優之介達は、才蔵達を誘導しながらその場を去った。

 

 

嵐が止み、辺りが見えるようになった……女性は舌打ちをしながら、傷口を手で抑えた。

 

 

「逃げられたか……」

 

「まぁ、また会う機会はある……帰るぞ、彰三」

 

 

そう言うと、女性は木の葉を舞い上がらせ彰三と共に姿を消した。

 

 

 

森の中……木に凭り掛かり座る真助を、桜華は手当てしていた。木の上で里を見ていた鎌之介は、木から降り佐助達を手当てする氷柱の元へ行った。

 

 

「あいつ等の気配無くなった。もう大丈夫だろ!」

 

「なら良いわ」

 

「痛っ!!」

 

「我慢しなさい、男でしょ!」

 

「男でも我慢できない痛みはある!

 

痛っ!!」

 

「痛そうだな?才蔵も佐助も」

 

「お前は黙ってろ!!」

 

「そういや、真さんは?」

 

「桜華が手当てしてる」

 

「そうか……?」

 

 

真助が座る木の後ろに生い茂る茂みから、二頭の狼が姿を現した。二頭は真助を見ると、尻尾を振りながら彼に擦り寄った。寄ってきた二頭の頭を、真助は微笑みながら撫でた。

 

 

「全員無事だし、才蔵達の手当て終わったら帰ろうぜ!」

 

「アンタに言われなくてもそのつもりよ!

 

はい、終わり」

 

 

才蔵達の手当てを終えた氷柱は、軽く二人の背中を叩いた。痛かったのか、二人は悲痛な声を上げながら、その場に倒れた。

 

その横で手当てを終えた真助は、地面に置いていた羽織を肩に掛けながら、桜華から悪しき魂を受け取った。

 

 

「これが、あの人の家に……

 

桜華」

 

「?」

 

「これは、僕が預かっときます」

 

「え?」

 

「あの人達のことです。

 

また、君達を襲う可能性があります。特に桜華……君は、彼等にとって必要不可欠な存在。これを盗られ、さらに君まで盗られては、話になりません」

 

「だったら真さん、俺等の誰かが持ってた方が」

 

「先程の戦いを経験しましたでしょう……

 

彰三も伊佐那美も、遙かに僕等を超えています。現に桜華を奪われかけました」

 

「……」

 

「まぁ、本音は……

 

父親らしいことをしたい僕の我が儘です」

 

 

そう言いながら、真助は桜華の頭に手を乗せ笑みを見せた。

 

 

「……桜華は良いよな。

 

父ちゃんが生きてんだから」

 

「陸丸……」

 

「生きてるかなって、思ったけど……やっぱり、あの時と変わらない焼け野原。

 

桜華をいじめてたから、罰が当たったんだ……きっと」

 

「……」

 

「父ちゃんに、また会いたいなぁ……」

 

「……確かに、君達の親御さんはもうこの世にはいません。

 

ですが、その分逞しく成長しているではありませんか。

 

陸丸」

 

「?」

 

「昔の君は、臆病者。自分が危ないと思ったら、すぐに逃げていたのに……今回は逃げずに戦っていたではありませんか」

 

「……」

 

「椿もですよ。

 

昔は無鉄砲に突っ走っては、怪我をしていたのに……

 

今回はしっかりと考えて、行動していました」

 

「……」

 

「貴方もですよ、優之介。

 

命を賭けて、娘を……桜華を守ろうとしてくれました」

 

「当たり前です……だって」

 

 

何かを言い掛けた優之介だったが、顔を上げた途端桜華と目が合い、思わず逸らしそっぽを向いた。

 

 

「君等の親御さんが、今の君等を見たら言いますよ……

 

 

『自慢の子供』だと」

 

 

誇らしく見せる真助の顔を見た途端、陸丸達の目から涙が流れた。彼等はすぐに涙を腕で拭ったが、流れる勢いが収まらなかった。

 

 

「何泣いてんだが」

 

「そう言わない。

 

ずっと我慢してたんでしょ。里が壊されて親が殺されて……絶望の淵の中、身を隠して必死に生きてきたんだから。泣く暇なんか、なかったんでしょ」

 

「そういうもんか?」

 

「テメェだって拾われた頃は、泣きまくってたじゃねぇか」

 

「な!余計なこと言うな!!」

 

「確かに、才蔵がいないだけでビービー泣いてたもんな」

 

「うるせぇ!!馬鹿佐助!」

 

「誰が馬鹿だ!!」

 

「ハイハイ!喧嘩は止めなさい!

 

子供の前よ!」




狐:皆ぁ!久し振りぃ!!

才:うわぁ!!狐が戻ってきた!!

猿:今まで何をやっていた!?

才:お前、一部の奴等から失踪したって言われてたんだぞ。

狐:色々あったんだよ。

まぁ、また更新始めるから、許して♡

猿:気色悪いわ!そのマーク!

狐:うわーん!!佐助がいじめたー!!

才:オイ猿、狐をいじめるな。

猿:お前等ぁ!!

狐:また次回!

うわっ!佐助、才蔵と喧嘩……って、狭いんだから追いかけっこするな!!

猿:待ちやがれ!!才蔵!

才:捕まえてみろ!御山の大将!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。