十勇士 作:妖狐
硝子の割れる音……その音に、目を瞑っていた桜華と真助は、目を開け互いを見合うと同じ方向に目を向けた。
「!!お前」
割れた硝子が舞い散る中、真っ白な髪を靡かせた女性がいた。
「また会えたわね……桜華」
地面へ降り立つ女性……彼女の姿に、真助は目を疑った。
「……ま、まさか…蓮」
「アイツは母さんじゃない!!」
「?!」
「彰三、言ったわよね?
桜華を殺しちゃ駄目って……」
「……」
「まぁいいわ。
殺してないようだから」
見てきた彼女に、桜華は鋭い目付きで睨み地面に転がっていた刀の束を握った。
「そんなに警戒しなくてもいいじゃない。
いずれは貴方と私は一緒になるんだから」
「なるわけないでしょ!!」
「フフフ……
真助……貴方にお願いがあるの」
「お願い?……!」
腹を貫く硝子棒……真介は訳が分からないまま、口から血を吐き出した。
「父さん!!」
「真さん!!」
「真助さん!!」
「あなたは邪魔なの。
桜華が伊佐那美になるには」
腹を抑えながら、真助は口から出る血を手で抑えた。そんな彼の姿を見た桜華は、刀を握って立ち上がった。
「あら?母親の私を殺すの?」
「母親でも何でもない!!
母さんは……母さんはもう!!」
「本当にそうかしら?」
「?!」
「あなたが見たのは、蓮華が流した血だけ……もし、あの時生きていたら?」
「そんなはずない!!
生きてたら、母さんは私を……」
「そう……あの時、あの子は息はあった。
だから、乗っ取るのは楽だったわ。燃え尽きそうな命だったから、何の抵抗も無く」
「まさか……蓮華さんの体を」
不敵な笑みを浮かべる女性……彼女はゆっくりと降り立ちそして、二人の前に立ち手を差し伸べた。
「行くよ、桜華」
その声は、蓮華の声だった……桜華と真助は、驚きの顔を隠せなかった。
「風術大旋風!!」
「氷術燕の舞!!」
氷の刃が、強い風に乗って飛び女性と彰三に攻撃した。
女性は、手に持っていた扇でその攻撃を振り払います、後ろへ下がった。
「話し中悪いが、俺達を忘れるんじゃねぇ!」
「チッ!」
その時、彰三は指を鳴らした。すると桜華の立つ地面に硝子の床が現れ、さらに周りに硝子の壁が作られ彼女を閉じ込めた。
「木術木の葉隠れ!!」
「桜華!!」
「渡すか!!風術大旋風!!」
舞う木の葉を追い払い、地面に落ちた桜華に氷柱は氷を張り覆った。
「これで奪えないでしょ?」
「小癪な!!」
「晶術針千本!!」
空中から硝子の針が、雨のように降り注いだ。氷柱は氷の屋根を張り、攻撃を防いだ。その間に、桜華は硝子を叩き割り外へ出ると、刀を手に無防備になっていた女性に向かって振り下ろした。
肩から腹まで切られた女性は、血を吹き出しながらその場に座り込んだ。
「頭!!」
「己ぇ!!桜華!!」
「甲賀流隼斬り!!」
「伊賀流水溶斬!!」
何かの技を出そうとした彰三に、復活した佐助と才蔵は各々の攻撃を彼に食らわせた。
「陸丸!!椿」
優之介の掛け声に、二人は土と風の技を出した。次の瞬間、辺り一面に砂が舞い上がり嵐を起こした。敵の目を眩ました優之介達は、才蔵達を誘導しながらその場を去った。
嵐が止み、辺りが見えるようになった……女性は舌打ちをしながら、傷口を手で抑えた。
「逃げられたか……」
「まぁ、また会う機会はある……帰るぞ、彰三」
そう言うと、女性は木の葉を舞い上がらせ彰三と共に姿を消した。
森の中……木に凭り掛かり座る真助を、桜華は手当てしていた。木の上で里を見ていた鎌之介は、木から降り佐助達を手当てする氷柱の元へ行った。
「あいつ等の気配無くなった。もう大丈夫だろ!」
「なら良いわ」
「痛っ!!」
「我慢しなさい、男でしょ!」
「男でも我慢できない痛みはある!
痛っ!!」
「痛そうだな?才蔵も佐助も」
「お前は黙ってろ!!」
「そういや、真さんは?」
「桜華が手当てしてる」
「そうか……?」
真助が座る木の後ろに生い茂る茂みから、二頭の狼が姿を現した。二頭は真助を見ると、尻尾を振りながら彼に擦り寄った。寄ってきた二頭の頭を、真助は微笑みながら撫でた。
「全員無事だし、才蔵達の手当て終わったら帰ろうぜ!」
「アンタに言われなくてもそのつもりよ!
はい、終わり」
才蔵達の手当てを終えた氷柱は、軽く二人の背中を叩いた。痛かったのか、二人は悲痛な声を上げながら、その場に倒れた。
その横で手当てを終えた真助は、地面に置いていた羽織を肩に掛けながら、桜華から悪しき魂を受け取った。
「これが、あの人の家に……
桜華」
「?」
「これは、僕が預かっときます」
「え?」
「あの人達のことです。
また、君達を襲う可能性があります。特に桜華……君は、彼等にとって必要不可欠な存在。これを盗られ、さらに君まで盗られては、話になりません」
「だったら真さん、俺等の誰かが持ってた方が」
「先程の戦いを経験しましたでしょう……
彰三も伊佐那美も、遙かに僕等を超えています。現に桜華を奪われかけました」
「……」
「まぁ、本音は……
父親らしいことをしたい僕の我が儘です」
そう言いながら、真助は桜華の頭に手を乗せ笑みを見せた。
「……桜華は良いよな。
父ちゃんが生きてんだから」
「陸丸……」
「生きてるかなって、思ったけど……やっぱり、あの時と変わらない焼け野原。
桜華をいじめてたから、罰が当たったんだ……きっと」
「……」
「父ちゃんに、また会いたいなぁ……」
「……確かに、君達の親御さんはもうこの世にはいません。
ですが、その分逞しく成長しているではありませんか。
陸丸」
「?」
「昔の君は、臆病者。自分が危ないと思ったら、すぐに逃げていたのに……今回は逃げずに戦っていたではありませんか」
「……」
「椿もですよ。
昔は無鉄砲に突っ走っては、怪我をしていたのに……
今回はしっかりと考えて、行動していました」
「……」
「貴方もですよ、優之介。
命を賭けて、娘を……桜華を守ろうとしてくれました」
「当たり前です……だって」
何かを言い掛けた優之介だったが、顔を上げた途端桜華と目が合い、思わず逸らしそっぽを向いた。
「君等の親御さんが、今の君等を見たら言いますよ……
『自慢の子供』だと」
誇らしく見せる真助の顔を見た途端、陸丸達の目から涙が流れた。彼等はすぐに涙を腕で拭ったが、流れる勢いが収まらなかった。
「何泣いてんだが」
「そう言わない。
ずっと我慢してたんでしょ。里が壊されて親が殺されて……絶望の淵の中、身を隠して必死に生きてきたんだから。泣く暇なんか、なかったんでしょ」
「そういうもんか?」
「テメェだって拾われた頃は、泣きまくってたじゃねぇか」
「な!余計なこと言うな!!」
「確かに、才蔵がいないだけでビービー泣いてたもんな」
「うるせぇ!!馬鹿佐助!」
「誰が馬鹿だ!!」
「ハイハイ!喧嘩は止めなさい!
子供の前よ!」
狐:皆ぁ!久し振りぃ!!
才:うわぁ!!狐が戻ってきた!!
猿:今まで何をやっていた!?
才:お前、一部の奴等から失踪したって言われてたんだぞ。
狐:色々あったんだよ。
まぁ、また更新始めるから、許して♡
猿:気色悪いわ!そのマーク!
狐:うわーん!!佐助がいじめたー!!
才:オイ猿、狐をいじめるな。
猿:お前等ぁ!!
狐:また次回!
うわっ!佐助、才蔵と喧嘩……って、狭いんだから追いかけっこするな!!
猿:待ちやがれ!!才蔵!
才:捕まえてみろ!御山の大将!