十勇士 作:妖狐
数分後……
襖を開ける氷柱。彼女の後に着替えた桜華が出て来た。
「……氷柱」
「?」
「お前の服は、露出度高過ぎだ!!」
「はぁ?!どこがよ」
「空きすぎた胸と脚!!それに腹と腕!!
この格好すんなら、忍かつ16過ぎてからだ!!」
「いいじゃない!可愛いんだから」
「可愛いで済まそうとするな!!
桜華、後で仕立屋……って、桜華?」
傍にいたはずの桜華は、いつの間にか才蔵達の前から姿を消していた。
台所へ来た桜華……中を覗くと、辺りを見回しそして去って行った。それからしばらくして、才蔵と氷柱が台所へ着き、中を覗きながら侍女達に声を掛けた。
「おい!ここにさっき、女来なかったか?」
「女の子?さぁ」
「どこ行ったんだ……」
「まさか、城の外に」
「才蔵!!」
突如大声で呼ばれ、才蔵はすぐに呼ばれた方に向かった。
呼ばれた方に行くと、六郎と隣を歩いていた真助と彼の腕を掴む桜華の姿があった。
「才蔵!!この者は何者ですか?!」
「いや、桜華だよ!氷柱の変なセンスの服を着せられた桜華だよ!」
「変なセンスとは何よ!!」
「なぁ、お握り作って」
「おや、余程気に入ったようですね」
「なぁ、お握り」
「分かりました。
あとで作ってあげます。けどその前に、才蔵」
「?」
「早くこの服をどうにかしなさい。
忍でもない女が、ここまで肌を晒す必要はありません」
「だってよ、氷柱」
「……フン!」
「さぁ、仕立屋に行って服を仕立てて貰いなさい。
お握りはその間に作りますから」
「……」
「だってさ。
桜華、ついて来い」
先に行く才蔵に、桜華は真助の方を振り向きながらも、彼の後をついて行った。二人の後を、氷柱もついて行った。
「随分と子供好きなんですね」
「あれ?言ってませんでしたか?
昔いたんですよ……娘が一人」
「……」
「まぁ、もういませんけどね」
城下町を歩く才蔵達……才蔵の服を掴みながら、桜華は辺りを警戒していた。
「警戒してるみたいね」
「徳川に狙われてるって話だ」
「徳川?何で?」
「さぁな」
しばらくして才蔵達は、仕立屋に着いた。桜華は仕立屋の中にある着物の生地を物珍しそうに眺めていた。
「このガキに合う服を作ってくれ」
「構わないけど……
才蔵、もしかしてこっち好み?」
「違ぇよ!!昨日保護したガキを、俺が面倒見てんだ!」
「あら、そうなの。
仕立てるけど、何か注文はある?作る服に」
「なるべく動きやすい格好で頼む。けど、露出度は控えめにな。
それから、髪の毛隠せるようにフードを」
「は~い。
それじゃあお嬢ちゃん、寸法測るからちょっときて」
仕立屋の亭主は、桜華を奥へと連れて行った。
「あの亭主の性格、どうにかならねぇのか?」
「あらいいじゃない。男なのに女の気持ちが分かるなんて」
「喋り方も気色悪いし」
「そう言うこと言わないの」
「お待たせ~!
寸法測ったから、出来上がり次第お城にお知らせするわね!」
「分かった」
「あ!そうそう、大事なことを聞き忘れたわ!
服の色、どうする?」
「そうだなぁ……
桜華、好きな色あるか?」
「色?」
「何か好きな色無いかしら?」
「……藍色」
「あ~ら、随分と綺麗な色を選ぶのね!
分かったわ!その色を中心に作るわね!」
「頼む。支払いは城のツケで」
「は~い!」
仕立屋を出た才蔵達は、茶屋で一休みしていた。
「いい服が出来そうでよかったわね」
「まぁな」
茶を飲む才蔵……ふと桜華の方を見ると、彼女はずっと後ろに目をやっており、それに気付いた才蔵は同じ方向に目を向けた。
「……才蔵」
「……
桜華、靴屋行くぞ」
「靴?」
「その高いヒールの靴じゃ、走りづれぇだろ?」
「服決まってからの方がいいんじゃない?
それより、髪留め買ってあげなさいよ」
そう言いながら、氷柱は才蔵に目で合図すると彼は頷き桜華を連れて行った。
「さてと……お仕事と行きますか」
冷酷な目付きになり、氷柱は手から氷の刃を作った。
雑貨屋へ来た才蔵と桜華……
「髪留め?別に構わないが……
なんだい?ついに氷柱に告白」
「んなわけねぇだろ!!
このガキにだ」
「あらそう。
確かに、買ってやった方がいいね。この子が着けてるこの髪留めの紐……相当昔のだよ。数年以上は変えてないね」
「何で分かるんだ?」
「所々切れて、結び繋いでるって感じだもの。
それにもう滲んでるけど、これ元は赤よ。汚れて赤茶色になってるけど」
「さすがプロ」
「で、どうする?
服の色に合わせてもいいし、同じ色でもいいし」
「だとさ、桜華」
「……いい」
「え?」
「別にいい。
この髪留めで」
「けど」
「いい!」
強く答えると、桜華は店を出て行った。
「桜華!!
ったく」
「余程気に入ってるか、あるいは誰かの形見か」
「形見?」
「どっかの誰かさんが、死んだ者の髪留めを剣の束に巻いてるみたいに、あの子も形見を手放したくないんだよ」
「……」
町を走る桜華……角へ曲がった時だった。
「!!」
目の前に現れる黒装束の忍……逃げようと、後ろへ下がった瞬間、背後から何者かに手を拘束され、手で口を塞がれた。
「やっと捕まえたか……」
「ったく、面倒なガキだ」
「……痛!!」
桜華は脚を上げ、前にいる忍に蹴りを入れ、空いていた腕で自分を拘束する忍に、肘鉄を食らわせた。痛みで忍の手が緩み、その隙を狙い桜華は走り出した。
路地裏から出て来た桜華は、首に巻いていた襟巻きを口に巻き、待ちを駆けていった。
後ろを気にしながら走っていた桜華は、曲がった際何かにぶつかり尻を突いた。顔を上げると、そこにいたのは氷柱だった。
「桜華、どう…?!」
気配に気付いた氷柱は、前の建物で身を潜める輩を睨んだ。桜華は振り返り、息を調えながら印を結んだ。
すると身を潜めていた忍がいたと思われる場所から、水が流れてきた。水に気付いた民は、建物の隙間を覗いた。
民は悲鳴を上げながら、尻を突いた。氷柱は桜華の手を引き覗きに行った。
「!?」
水に濡れた二体の溺死死体……
それを見た瞬間、桜華は頭を抑えながら氷柱から離れ駆け出した。
「桜華!!
待って!桜華!!桜華!!」
氷柱の叫ぶ声が桜華の頭の中で次第に、別の声へと変わった。
『桜華!!早く逃げて!!
振り向いては駄目!!逃げて!!逃げて!!』
目から涙を流しながら、桜華は走り続けた。
才:雑談コーナー!
猿:何?何かあるの?話題。
才:何だよ猿。機嫌悪いな?
猿:俺今回、出てねぇの!!
才:あっそ。可哀想に。
猿:他人事みたいに言うな!!
氷:いちいち対応しないの。体持たないわよ。
猿:っ……
狐:やあやあ、やってるね~
才:お、狐!
猿:おい狐!!お前、桜華の過去が分かると言っときながら、何だ!!あの終わり方は?!
狐:私、前回「かもね」って言ったよ。つーか佐助、首苦しいから離そうか?
猿:チッ!
才:それより、桜華は何者なんだ?
氷:そうよ!いい加減、書きなさいよ!
狐:あのね、そう言うけど……
こっちの身にもなってよ!!書くの大変なんだから!
猿:知るか!!お前の仕事だろ!
狐:いいもん!仕事放棄して
才:するな!!
猿:するな!!
氷:読者の皆ーさん、また次回お目にかかりましょう!