十勇士   作:妖狐

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突然、何かが爆発した。上田の民は、店や家から飛び出し、上田城を見た。


「城に煙が!」

「襲撃か?」

「す、すぐに家の中に入ろう!」


誰かが言った言葉に、皆店を閉じ家の中へと急いで入った。その中、傘を差した真助は上田城を見上げ、何かを察して足を急いだ。


生きていた者

爆発に驚いた桜華は、顔を上げ牢の窓を見上げた。怯える彼女を宥めるかのようにして、レオンは頬を舐めた。レオンの方に向いた桜華は、レオンの頭を撫でもう一度窓を見上げた。

 

 

武器を手に才蔵達は、外へ出た。城の塀に降り立つ五つ影。

 

 

「半蔵!?」

 

「いやいや、お久し振りですねぇ……上田の皆さん」

 

「死んでなかったのか?!」

 

「そう簡単に死ねませんから。

 

さぁ、話はここまでにして……

 

 

光坂桜華を、渡して貰いましょうか?」

 

「!!」

 

「渡さないというのなら、あなた方にはここで死んで貰います」

 

 

そう言うと、半蔵は指を鳴らし合図を送った。傍にいた四人は一斉に佐助達に襲い掛かった。

 

 

「幸村様と大助様は、城の中へ!」

 

「六郎、二人を頼んだ!」

 

「御意!」

 

「何だ?!こいつ等は!」

 

「伊賀異形五人衆」

 

「?!」

 

「才蔵は聞いたことあるでしょ?

 

伊賀の忍なら」

 

「何だ?!その五人衆とは!?」

 

「神速、剛力、幻惑、妖術、冷酷……

 

 

五つの忍技を極めた忍衆だ……そして、忍を抹殺する忍とも言われている」

 

「?!」

 

「そういうことです!」

 

 

そう言いながら、半蔵は才蔵に襲い掛かった。各々の戦いを、城の屋根からあの黒いマントを身に纏った女性が見下ろしていた。

 

同じようにして、光坂の子供達も見張り台からその様子を見ていた。

 

 

「やっぱり来た……」

 

「だから、早く私達に渡せばいいものを」

 

「話の分かる殿だと思ったが……

 

やはり、どこの殿も一緒だな」

 

 

レオンの頭を撫でる桜華……閉じていた目をゆっくりと開け、意を決意したかのようにして刀を手に立ち上がった。レオンは首を振り、起き上がり先に歩き出した。

 

 

戦う才蔵達……その時、敵の技が幸村達の元へと飛んできた。技を六郎が防ぎ難を逃れたが、その技の中から敵が姿を現し、武器を手に六郎を切り裂いた。

 

 

「六郎!!」

 

「テッメェ!!

 

相手は俺だろ!!風術鎌鼬!」

 

 

鎌之介が放った風を、敵は持っていた鎖を回し防いだ。

幸村は羽織っていた羽織で、六郎の傷口から出る血を抑えた。

 

 

「六郎さん!」

 

「ほら、桜華を渡せばもう仲間は傷付きませんよ?」

 

「誰が渡すか!!」

 

「なら、もう一人刺しますか」

 

 

指を鳴らす半蔵……その時、氷柱と戦っていたくノ一が、跳び上がり手から氷の刃を作り出すと、それを大助達目掛けて放った。大助は幸村達の前に立ち、刀を出し構えたがその束を握る手は震えていた。

 

 

「大助!!」

「幸村様!!」

 

 

迫り来る氷の刃……駄目だと思い、大助は頑なに目を瞑った。

 

 

“パリーン”

 

 

氷が割れる音に、大助はゆっくりと目を開けた。刀を手に三人の前に立つ桜華。

 

 

「桜華……」

 

「おぉ。本人の登場ですか」

 

 

傷付いた六郎を見る桜華……戦いの手を止める才蔵達を彼女は見回した。彼等の体に出来た傷を、桜華は目にしながら半蔵を睨んだ。

 

 

「私だけを狙えばいいのに」

 

 

桜華を見つめる子供達……面を着け、彼等は見張り台から飛び降りた。

 

 

(桜華……やっと、見つけた)

 

 

屋根の上に乗っていた女性は、立ち上がりゆっくりと屋根から降りて行った。

 

 

桜華の前に降り立つ三人の子供。

 

 

「お前、あの時の」

 

「あらあら……全員お揃いのようね?」

 

「?!」

 

 

屋根から降り立つ女性……半蔵達は、武器をしまい後ろへ下がった。三人の子供は武器を構え彼女を睨み、才蔵は剣を持ちながら桜華の元へ行った。

 

 

「そんなに構えなくてもいいわよ。

 

私はあなた達と同じ者なんだから」

 

「その声……」

 

「まさか……こんな事って」

 

「四年振りね。

 

陸丸、椿、優之介」

 

「な、何故あなたが……

 

四年前に、死んだはず」

 

「死んだわよ。この体の元の持ち主は」

 

「?!」

 

「さぁ、お喋りはここまで。

 

私は桜華に用があるの」

 

 

そう言うと、女性は桜華の方に目を向け声を掛けながら手を差し出した。

 

 

「さぁ、桜華。行きましょう」

 

「……」

 

 

怯えた目で自身を見つめる桜華に、女性は音もなく近寄り、彼女の頬に手を当てた。

 

 

(いつの間に?!)

 

「……記憶を封じられているのね。

 

あの女、死に際に余計なことをしてくれたわね」

 

「……」

 

「桜華に触れるな!!」

 

 

鎖鎌を手に、鎌之介は攻撃した。すると女性は、手から風を出し彼を吹き飛ばした。

 

 

「鎌之介!!」

 

 

才蔵の声と共に、桜華の周りが突然暗くなった。桜華は戸惑い辺りを見回した。

 

 

「大丈夫。少し邪魔者を消しただけ」

 

「……」

 

「さぁ……記憶を戻してあげましょう。

 

そして、私達と来なさい。桜華」

 

 

桜華の額に指を当てる女性の目が、赤く光り出した。

 

 

「何だ?!この黒い玉は!?」

 

 

桜華と女性がいた場所に、突如黒い玉が現れ二人を包んだ。清海と伊佐道は鉄棍棒を振り上げ、黒い玉を強く叩いた。だが玉はビクともせず、攻撃を吸収した。

 

 

「無闇に攻撃するな!!中に桜華がいるんだぞ!!」

 

「し、しかし」

 

 

「アァァアアアア!!」

 

 

黒い玉の中から、桜華の叫び声が響き渡った。すると黒い玉は晴れ、中から腕に傷を負った女性と、頭を手で抑え息を切らし血の付いた刀を構える桜華が向かい合っていた。

 

 

「今すぐ私の前から消えろ!!化け物!!

 

光坂流水術五月雨!!」

 

 

降っていた雨を自身の手に集め、その雨水で女性に攻撃した。女性はその攻撃を飛び避け後ろへ下がった。彼女の前に、半蔵達は立ち武器を構えた。

 

 

「桜華!!」

 

 

桜華の姿に、鎌之介は呼び叫びながら彼女に駆け寄った。だが桜華は、駆け寄ってきた鎌之介に向かって刀を振り下ろした。斬られる寸前に、佐助が前に立ち刀を防いだ。

 

桜華は二人を、才蔵達を、優之介達を、そして半蔵達を順々に睨んでいった。その時突然、頭に激痛が走り桜華は頭を手で抑えながら、その場に膝着いた。

 

頭に蘇る記憶……それを断ち切るようにして、桜華は刀を振り下ろし風を起こした。風は女性に当たり、彼女が被っていた黒いマントを外した。

 

 

「?!」

 

「まさか!?そんな!!」

 

 

真っ白な長い髪を靡かせ、赤い目を光らせる女性。その彼女の姿に、六助と幸村は驚き目を疑っていた。

 

 

「封じていた記憶に、戸惑っているのね……」

 

「な、何故お主が!!

 

四年前に死んだんじゃ」

 

「同じ質問するのね……

 

確かに死んだ……この者はね」

 

「?!」

 

「私の名は久久能智神。

 

この者の体を借りて、この地へ来た。伊佐那美を蘇らせるために」

 

「伊佐那美?」

 

「確か、闇の女神」

 

「そう……その器が桜華なの。

 

だから、迎えに来たの。さぁ桜華、一緒に行きましょう」

 

 

桜華に近付き、手を差し伸ばす女性。その手を彼女は刀を振り攻撃し、そして勢い良く女性の空いた胸に向かって振り下ろした。胸から血を出し、ふらつき立つ女性の目に、桜華の胸元に黒く光る勾玉が目に入った。

 

 

「まだそれを持っていたの……」

 

「……」

 

「まぁ……今回は見逃してあげる。

 

また迎えるに来るわ……桜華」

 

 

敵の一人が煙を放った。辺りが煙に包まれる中、半蔵達は姿を消した。




才:記憶が蘇ったぞ!!どうなるんだ!?

狐:待って、落ち着いて。

猿:あの女性は何者なんだ!?

狐:いや、もう分かるでしょう?誰だか……

氷:今後の展開はどうなるの?

狐:う~ん……どうしようか。

鎌:考えろよ!!

狐:そんじゃあ、読者の皆さんまた次回!

鎌:オイ!!
才:オイ!!
猿:オイ!!

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