十勇士 作:妖狐
「た、助かりました」
「こちらこそ、遅れてすまん。
桜華、これを」
六助は腰に挿していた桜華の刀を、彼女に渡した。
「助っ人か!?」
「こいつも殺れ!!」
再びクナイを出す忍達だが、六助は懐から玉を出し投げた。すると玉から、黒い煙が上がり煙に怯んでいる忍達目掛けて印を結び技を放った。
「火術業火球!」
口から放った火の玉は、煙に反応し爆発を起こした。忍達はその爆発に次々巻き込まれていき、勢いが収まった頃には跡形もなく消えていた。
「桜華!!幸村!!」
間もなくして、才蔵達が到着した。鎌之介に抱えられていた大助は、下ろされると一目散に幸村の元へ駆け寄った。彼に続いて、才蔵達も幸村の元へ駆け寄った。
「無事だったか」
「あぁ。六助のおかげで何とか」
「父上、早くここから離れよう!」
「分かった分かった。そう慌てるな」
震える声で、大助は訴えた。訴えてくる彼を、幸村は宥めた。
「けど、こっから離れようにも至る所に、徳川の部下がわんさかいるぞ」
「それは困ったのぉ」
「それなら心配入らぬ」
「え?」
「今頃、拙者が仕掛けた罠に掛かっているだろう」
「罠?」
その時、森の奥から爆発音と馬の鳴き声と人の悲鳴が、響き渡った。
「か、掛かったな……」
「スゲェ……」
「この川を伝って歩けば、湖に着く」
「それじゃあ行くか」
幸村を先頭に、一校は歩き出した。
森の中を歩く才蔵達……すると、森が濃霧に包まれてきた。大助は怯えた様子で幸村の袖を強く掴み、桜華は辺りを警戒しながら、腰に挿していた刀の束を握った。彼女と同じ様に、才蔵達も武器を構え辺りを警戒した。
「馬にも乗らず、どこに向かってんだ?
真田幸村!!」
霧の中から出て来たのは、二人の忍を連れた政宗だった。
「伊達政宗!!」
彼の姿を見た才蔵は、すぐに桜華を自身に寄せた。
「先日はどうも!」
「わざわざ、礼を言いに参ったのか?」
「とぼけた野郎だな。
追っ手だよ!!テメェ等の……
つうのは建前で、恥かかされたまま黙ってたんじゃ男がすたる!!
持ってかれたもの(桜華)は取り返す」
「何も知らずに手を出しおって……愚かな男よ。
この宝、お前ごときの手には余る。
しかも、もともとうちのもんだ。盗人猛々しいな、政宗」
「……の野郎!!」
キレた政宗の声と共に、後ろで控えていた綱元と小十郎が武器に手をかざした。
その時、綱元と小十朗に武器を握らせまいと、才蔵はクナイを投げつけた。
「こいつ等には、指一本触れさせねぇよ!」
「……
デケェ口叩きやがって……
捻り潰すまで!!」
掛け声と共に、小十郎と綱元の後ろから多数の兵団が現れた。それに驚いた才蔵達は後ろへ引き、武器に手をかざし構えた。
「多勢に無勢だのう」
「言ったろ?どうにも何ねぇって」
迫りくる兵団……駆けていた幸村達は森を抜け、湖へと着いた。そこへ敵を追い払ってきた才蔵達が着き、彼等に駆け寄った。
「退がれ!!まだ来るぞ!!」
「これ以上退がれないよー!!」
(どうする?!もう後はねぇ!!)
「これほどの頭数で来るとはのう……
兼続が泥鰌と揶揄しておったが、あながち外れてはおらんな。
肝が小さい」
ニヤつく幸村……
その表情に政宗はキレた。
「真田、幸村!!」
“ドーン”
突然空から降ってきた砲弾……
弾は兵団の中心部に落ち、爆発した。
「ギャア!!」
(砲弾!?
まさか!!)
何かに気付いたのか、才蔵は琵琶湖の浅瀬へ入り、何かを探した。するとそこへ一隻の船が上陸した。
「オメェ等、無事か!!?」
船の先端に足を乗せる甚八は、そう叫びながら見下ろした。
「甚八!!」
「た、助かったー!」
その時茂みから忍集が、姿を現し桜華の腕にロープを絡ませた。ロープが巻き付き引っ張られ掛けた桜華は、足に力を入れ堪え、才蔵は彼女を抱きクナイでその縄を切ろうとした。
すると、船の上からレオンが降り立ちロープを切り裂いた。レオンは咆哮を上げ、忍達を睨み付けた。
忍達は怯み、その隙を狙い才蔵は最後の煙玉を投げ煙幕を起こした。湖に煙が上がる中、才蔵達は甚八の船へと乗りその場を立ち去った。
立ち去っていく船を、政宗は崖の上から悔しそうに眺めていた。
船の上で、息を切らす才蔵達……
息を切らす彼等に、船員は水が入ったコップを渡していった。
「ふー。危機一髪だった」
「相当追い込まれてたな」
「甚八、助かったわい」
「けど、何で?」
「銃の仕入れだよ。
仕入れして、その帰りだったんだ」
「妙に騒がしい音が聞こえて見たら、政宗に襲われているお主等がいた」
そう言いながら、十蔵は水が入ったコップを才蔵に渡した。
「まぁ、次の岸に着くのは明日。
今日一晩は休め」
「言われなくとも、休むわ」
「走り続けて、疲れたぁ……」
鎌之介は大の字に寝ながら、そう言った。そんな彼を無視するかのようにレオンは、踏み付け座り込んでいた桜華に擦り寄った。
「こ、この馬鹿猫が……
人のことを踏み付けやがって!!」
飛び起きた鎌之介は、レオンの首輪を掴み引っ張った。レオンは首を振りながら暴れ、鎌之介は振られるがままに首輪から手を離すまいと必死だった。
「船の上で暴れるな!!」
「首輪から手を離せ!!鎌之介!」
振り回される鎌之介……堪えきれず手を離し飛ばされ、その飛ばされた勢いのまま、座っていた桜華と激突した。ぶつかった勢いで、桜華は後頭部を床に強打した。
「桜華!!」
「何やってんだ!鎌之介!!」
暴れるレオンを甚八が抑え、床に倒れている桜華と鎌之介の元へ、才蔵と十蔵は駆け寄った。
鎌之介は、鼻を打ったのか顔を押さえながら起き上がり、桜華は後頭部を抑えながら起き上がった。
その時、桜華の脳裏にある映像が流れた。
夜の森を駆ける自分……足を踏み外し、崖から落ちた。
「桜華!!」
「!」
才蔵に呼ばれ、ハッと我に返った桜華は才蔵の方に顔を向けた。
「頭、大丈夫か?」
「……思い出した」
「?」
「森の中、走ってた……
そしたら、足踏み外して……崖から落ちた」
「崖から……?
桜華、ちょっと頭触るぞ」
そう言いながら、才蔵は桜華の後ろへ回り髪の毛を退かしながら後頭部を見た。
後頭部には、先程出来た痣と何かで切ったのか、古い傷痕があった。その傷痕を見ていた才蔵に、六郎は傷を見ながら話した。
「古い傷痕みたいですね」
「崖から落ちた時出来たとすれば……」
「この傷が原因で、記憶を無くした」
「……」
傷痕を見つめる才蔵……
その中、鎌之介は桜華にぶつかったことを謝っていた。
才:何だ!!傷痕って!!
狐:始まって早々、何?
才:あの傷痕に何かあるのか?!狐!!
狐:さぁ、どうだろう……
才:気になるから、教えろぉ!!
狐:いやいや!無理だから!
てか、記憶無くした原因が分かっただけでもんいいじゃん!
才:気になるわー!!
狐:……?
才蔵、お前少し酒臭いけど……
才:さっき甚八と、酒飲んだ!
狐:(あ~……
だから、今回こんなぐいぐい来るんだ)
才:教えろぉ!!狐ぇぇ!!
狐:ギャー!!殺されるぅ!!
氷:氷術獄氷棺!!
猿:また次回だ。