十勇士   作:妖狐

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崖から京都を見下ろす一人の少年……


「京都か……

(桜華……お前がここへ来るとは)」


生き残り

町の中を歩く才蔵達……

 

 

「おー!!鎌之介!見てみて!

 

ほら、凄い刀だよ!」

 

「本当だ!!スゲェ!!」

 

 

長刀が飾られている店に立ち止まり、二人は興奮していた。

 

 

「ったく、本当にガキだな」

 

「そう言うな。

 

いずれは、上田を継ぐ殿だぞ」

 

「未だに佐助の刀で、ビービー泣いてる奴だぜ?」

 

「大助様は、のんびりとしたお方。

 

すぐに強くなりますよ」

 

「へいへい、そうかい」

 

 

「あ!さっきのガキ!」

 

 

その声の方に顔を向けると、そこに見覚えのある二人の男がいた。二人の男に、桜華は才蔵にしがみつきながら後ろに隠れた。

 

 

「え?!その反応かよ!」

 

「当たり前だ!!お前等に襲われてんだから」

 

「あれは殿の命令で」

 

「信用できるか!!

 

清海」

 

「分かった」

 

 

才蔵に言われた清海は伊佐道と共に、店の前にいる大助達の元へと行った。

 

 

「今は刀を抜いちゃイケないから、何も攻撃はしない」

 

「だからさ!さっきの詫びに、茶屋に行こう!もちろん、俺達のおごりで」

 

 

笑いかける男だが、桜華は激しく首を左右に振り才蔵にしがみついた。

 

 

「うへー……スッゲェ警戒されてる」

 

「ま、そうだろうな。

 

伊賀の者と手合わせたかったが、今は刀を出しちゃいけないらしいからな」

 

「そりゃあこっちのセリフだ」

 

「……あ!ねぇ、ちょっと待ってて!!」

 

 

男の一人はそういうとどこかへ行ってしまった。その隙に桜華は、才蔵から離れ逃げ出した。

 

 

「桜華!!」

 

「拙者が追う」

 

「頼んだ!」

 

「ア~ララ、逃げちゃった」

 

「テメェ等のせいだろうが!!」

 

「おいおい、あれは殿の命令で動いただけだ。

 

恨むなら、殿を恨んでほしいよ」

 

「とか言っときながら、桜華に興味があったんだろ?!」

 

「そりゃあね。

 

だって、忍の世界では超有名だったじゃん。光坂一族。

 

 

その生き残りがいるっていうなら、尚更興味がわくよ。どういう子なのかとかね」

 

「んの野郎!!」

 

「いちいち怒らないで。

 

伊賀の忍って、怒りっぽいんだね」

 

「うるせぇ!!」

 

 

「あれ~?さっきのガキは?!」

 

 

紙袋を抱え帰ってきた男は、辺りをキョロキョロと見回しながら才蔵ともう一人の男の間に降り立った。

 

 

「逃げましたよ」

 

「ゲッ!マジかよ!

 

せっかく、アイツの為にお菓子買ってきてやったのに」

 

「言っとくが、桜華は菓子食わねぇぞ」

 

「えぇ?!嘘ぉ!!

 

……勿体無いから、あげるよ。あのチビ達にでもあげて」

 

 

そう言いながら、男は紙袋を才蔵に無理矢理渡した。

 

 

「さ、行きましょう。

 

伊賀の忍さんは、御立腹のようだから」

 

「うるせぇ!!」

 

「じゃあな!」

 

 

笑みを浮かべながら、二人は才蔵の前から立ち去った。

 

 

 

町を走る桜華……息を切らし、路地裏で膝に手を付きながらその場で立ち止まった。その後を追っていた六助は、彼女の後ろで息を切らしながら立ち止った。

 

 

「……?」

 

 

ふと顔を上げた桜華の目に映ったのは、古ぼけた井戸だった。

 

 

「使われなくなった井戸のようだな」

 

「使われてないの?」

 

「ロープが腐っている。それに、所々に草が生えてる。

 

使われなくなってから、もう数年経っているだろう」

 

「三年……」

 

「?」

 

「多分、三年だと思うよ……

 

ここで、よく傷口洗ってたから」

 

「……」

 

 

暴力を受けた桜華は、いつもここの井戸へ来て水で冷やしたり傷口を洗っていた……その事を、桜華は思い出した。

 

 

「……

 

 

才蔵の所に、戻る」

 

「そうだな……アイツも心配している」

 

 

差し伸べてきた六助の手に自身の手を伸ばしながら、彼に寄ろうとした時だった。

 

 

「?!」

 

 

後ろから何者かに腕を掴まれた。桜華はゆっくりと後ろを振り返った。そこにいたのは、目元だけの面を着け、黒く長い髪を耳上で結い、白いフードつきのマントを羽織り、フードを深く被った少年が立っていた。

 

 

「やっと見つけたぞ……桜華」

 

 

 

その頃、茶会の会場では……

 

 

家康のつまらない話を、幸村はあくびをしながら聞いていた。そんな彼に、六郎は扇子を出しそれで頭を思いっ切り叩いた。その様子を見ていた他の大名は、吹き出し堪えるようにして笑った。

 

 

「叩かなくてもよいだろう……」

 

「叩かれたくなければ、キチンとお話を聞きなさい」

 

「……」

 

 

話が終わると、大名達は茶を飲みながら他愛のない話をしだした。

 

 

「そういえば、幸村。

 

お前、聞いたか?」

 

「?何をだ?」

 

「光坂一族の事」

 

「あぁ、四年前に滅んだ一族だろう?それがどうかしたのか?」

 

「生き残りがいるらしい」

 

「?!」

 

「ここ四年の間、各地で目撃情報が相次いでいる。

 

白いマントに身を包み、目に目元だけの面を着けているらしい」

 

「……」

 

「しかも、目撃された者達は皆、子供らしい。

 

十代半ばの」

 

「十代半ば(桜華も、それくらいに匹敵するが……)」

 

「まぁ、生きていようがいまいが、あいつ等が従うのは武田ぐらいだ。

 

 

そうだっただろう?幸村」

 

「……

 

 

まぁ、そうだのぉ」

 

 

ふと蘇る過去……一族は武田はもちろん、武田に関わっていた武家達の命令も聞き入れていた。決して武田だけしたがっていたわけではなかった。




狐:……

才:なぁ狐、頼むから機嫌直してくれよ!この通りだ!

狐:……

大:何か、機嫌損ねた時の桜華みたい……

才:おい猿!何とかしろ!

もとあと言えば、お前のせいなんだぞ!

猿:俺は無実だ!!

氷:素直に謝りなさいよ。

甚:往生際が悪いぞ。

猿:何でそうなるんだ!!

才:お前のせいで、雑談コーナーが出来ないんだぞ!!

六:前回は、人物紹介だけして終わりましたからね。
誰にも相談しないで……

才:あーあ。誰かさんのせいで、狐が勝手な行動をし始めた。

猿:……

氷:時間をあげるから、どうにかしなさい。

猿:何で俺なんだ……

鎌:そりゃあそうだ。

お前のせいなんだから。

猿:だから、俺は無実だ!!

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