十勇士   作:妖狐

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子供の名

子供を背負い、町を歩く才蔵……

 

 

「ったく、女のくせして何で男物の着物着てんだよ!?」

 

「……だって」

 

「(速い心臓の鼓動……乱れた息。

 

そして、未だに震える手……

 

 

誰かに追われてる……)?何か食ってくか」

 

 

茶屋の前でベンチに座り、団子を食べる才蔵。子供はベンチの上で体育座りし、出された団子を食べようとはしなかった。

 

 

「何だ?食べないのか?」

 

「……」

 

「(食べてる余裕もない…か)?」

「?」

 

 

何かの気配を感じた才蔵は、何気に辺りを目で見回した。

建物の間に潜む影……才蔵は茶を口にしながら、子供を見た。気配を感じ取っているのか、子供は腰に挿していた刀の束を握りながら、辺りを警戒していた。

 

 

「こんな所で油を売ってたのか?!」

 

 

警戒する才蔵の前に、猿飛佐助が降り立ち彼を睨みながら腕を組んだ。

 

 

「何だ、猿か」

 

「何だとは何だ!何だとは!」

 

「上田の森は異常なし。これでいいんだろ?」

 

「そういう問題じゃ……?

 

才蔵、この子供は?」

 

「山賊で襲われてた所を助けた。

 

そいつ、脚に怪我してるから城に連れて帰って手当てしようかと」

 

「お前のお人好しは、相変わらずだな」

 

「いいじゃねぇか。

 

それより……」

 

 

鋭い目付きで、才蔵は建物の間に潜む影に目をやった。佐助は何かを悟ったのか頷き、どこかへと消えた。

 

 

「あいつは猿飛佐助。

 

俺の仲間だから、安心しな」

 

「……」

 

「さてと、城に行くか」

 

「……あ」

 

 

子供が何かを言い掛けた時、才蔵は子供の口に黙るように指を当てた。辺りを見ながら子供を背負うと、一目散に駆け出した。その後を潜んでいた者達は、一斉に彼の後を追い駆けようと飛び出した。

 

だが次の瞬間、彼等の頭上に何かが張られそれに引っ掛かり地面に尻を突いた。

 

 

「不届き者。上田に入ったからには、生きては返さぬ」

 

 

佐助は大きな山犬を二頭連れ、彼等の前に立った。

 

 

城に着いた才蔵……遅れて、佐助が山犬を連れて戻ってきた。

 

 

「お!猿!」

 

「怪しい輩は、全員排除したが……何を狙って」

 

「さぁな。

 

ほら、脚出せ」

 

 

縁側に座らせた子供の脚の手当を才蔵はやり始めた。

 

 

子供は、才蔵に手当てされている間、ずっと辺りを警戒するかのように目を動かしていた。長い袖から少しだけ見えていた手は少し震えているように、佐助の目には見えた。

 

すると、佐助の傍にいた山犬は子供に歩み寄った。子供は寄ってきた山犬に、恐る恐る手を出した。山犬は鼻を動かしにおいを嗅ぎ、そして子供が差し出した手に擦り寄った。

 

 

「珍しい。山犬が俺以外の人に懐くなんて」

 

 

「おぉ、帰ってたか!」

 

 

声が聞こえ、佐助はこちらへ来る者に頭を下げた。才蔵は動かしていた手を止め、そちらに目をやった。

 

着流しに身を包み、手に煙管を持った男……そして、その隣に袴に身を包み、髪を結った男。

 

 

「幸村」

 

「才蔵!いい加減」

「よいよい六郎。

 

こいつに何度言っても同じ事。時間の無駄だ」

 

「……」

 

「?才蔵、その童(わっぱ)は?」

 

「山賊に襲われて、怪我してたから傷の手当てを」

 

 

傷の手当てを終えたのか、才蔵は余った包帯を手に持ちながら、立ち上がった。子供は縁側かは降りるが、すぐに足がふらつき、倒れかけた。倒れかけた子供の腕を、才蔵は掴み立たせた。

 

 

「……

 

六郎。部屋を一室用意しろ」

 

「御意」

 

「幸村様、なぜ?」

 

「こんな小さな子供が、夜の森を歩いてみろ。

 

一発で山賊達の餌食だぞ。それから佐助、お主儂に何か伝えることが有るのではないのか」

 

「あ、はい!」

 

 

幸村の元へ駆け寄る佐助は、先程のことを話した。才蔵は子供を縁側に座らせた。

 

 

「というわけだ。

 

今晩はここに泊まってけ」

 

「……でも」

 

「何強がってんだ!

 

真面に歩くことも出来ねぇくせして」

 

「……」

 

「あ、そういえば名前まだだったな。

 

何て名前なんだ?」

 

「名前?」

 

「そう名前」

 

「……覚えてない」

 

「え?」

 

「でも、字だけなら覚えてる。

 

読み方は覚えてないけど」

 

 

子供は傍に落ちていた木の枝を持ち、地面に字を書いた。

 

地面に書かれた字、それは……『桜華』

 

 

「おうか……」

 

「おうか?」

 

「読み方はそんな感じだ」

 

 

「あら?綺麗な字」

 

 

槍を持ち、長い焦げ茶色の髪を結い、露出度の高い服を着た女性が膝に手を当てながら屈み、その字を見ていた。

 

 

「氷柱(ツララ)」

 

「おうかって読むのかしら?」

 

「多分な」

 

「私はこの子に聞いてるの。才蔵には聞いてないわ」

 

「へいへい」

 

 

「氷柱ぁ!!

 

悪いがその子供を、風呂に入れくれ!」

 

「ハーイ。

 

というわけだから、桜華行きましょう」

 

 

氷柱に手を引かれ、桜華は風呂場へと行った。




才:雑談コーナー!

猿:で?何話すんだ?

才:新しいキャラ出たんだ!紹介しねぇと。
まず一人目は、我等の殿・真田幸村。

幸:どーも。

才:二人目は、殿の小姑!海野六郎。

六:才蔵、少しは口の利き方をどうにかしなさい。

才:三人目は、穴山氷柱!

氷:どうも!

狐:お、やってるね~才蔵。

才:狐!

幸:おー!お主か!狐というのは。

狐:本名は妖狐だけどね。

猿:おい狐!お前、子供の正体分かるとか前回言ってたが、分かったのは名前だけじゃないか!

狐:そんな早く知ってどうすんの?これ、小説だよ?

才:そうだぞ、猿!

猿:汚れた伊賀に言われても無意味だ。

才:ンだと!!

氷:止めなさい!!二人共!!

六:あの馬鹿共、どうします?幸村様。

幸:ほっておけ。

狐:読者の皆さん、また次回お会いしましょう!

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