十勇士   作:妖狐

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「幸村、一つ文句言っていいか?」

「ん?何だ?」

「何で、桜華を連れてくんだよ!!しかも、本人の返事も聞かずに!!」


晴れた空の下……山中を、馬に乗り移動していた才蔵は、前を歩いていた幸村に怒鳴った。


話は今朝に遡る。


『京都?』


才蔵のお握りを食べていた桜華は、幸村の言葉を繰り返しながら彼の方を見た。


『そうだ。

才蔵とお主、儂と六郎、そして大助と清海……この六人で行く』

『何で俺は行けねぇんだよ!!』

『黙ってろ!!』


後ろで騒ぐ鎌之介を、甚八は抑えながら怒鳴った。


『どうだ?行くか?』

『嫌だ』

『っ……若』

『さ、才蔵がおるのだぞ?』

『嫌だ。

都嫌い』

『何だ?京都に行ったことあるのか?』

『一年間、そこで隠れて住んでた。

だから、嫌い』


ふと蘇る記憶……大人から暴力を受け、傷だらけの体を井戸の水で洗い手当てした。


『ふぅー。そうか、困ったのぉ』

『変わりに、鎌之介』

『お!俺行けるか?!』

『だから、行けねぇんだよ!お前は!』


才蔵のお握りを食べ終えた桜華は、才蔵からお茶を受け取りそれを飲んだ。

すると、桜華は持っていた湯飲みを落とし力無く倒れ、そのまま眠ってしまった。


『いやー、凄い効き目だ』

『流石、甲賀の忍ですね』

『な、何煎れたんだ?このお茶に』

『佐助が作った睡眠薬。

ほれ、桜華を抱えて早く出発するぞ』

『幸村!!』


いざ、京都へ

不機嫌な顔を浮かべながら、才蔵の馬の上で蹲る桜華。

 

 

「桜華、そろそろ機嫌直してよー!

 

父上のやったことは、オイラが詫びるからさ」

 

「……」

 

 

大助の言葉に、桜華は顔をそっぽに向けた。そんな彼女に、才蔵は苦笑いを浮かべ大助は先に歩いている幸村の方へ馬を行かせた。

 

 

「父上、桜華相当機嫌悪いよ」

 

「困ったのぉ……」

 

「だから、無理に連れて行くのは止しましょうと、先に言いましたよね?」

 

「……」

 

「六郎の忠告を聞かなかったんですか?!」

 

「……空が青いのぉ」

 

「父上!!」

「幸村様!!」

 

 

才蔵の馬の上で蹲っていた桜華は、何かの気配に気付いたのか顔を上げ、森の方を見た。

 

 

「桜華、どうかしたか?」

 

「……何か居る」

 

「?!」

 

 

その言葉に、才蔵は森の方に目を向けた。森の中から聞こえてくる草を踏む音……

 

 

(足音からして、一人……

 

気付いてるのは、俺と桜華の二人だけか)

 

「才蔵……」

 

「今は気にするな。

 

相手も、攻撃する気配がない」

 

「……」

 

 

町へ着いた才蔵達……

 

外の席で桜華と才蔵は座り、お昼を注文した。そんな彼等の様子を離れた蕎麦屋から、何者かが見張っていた。

 

 

『異端の子だ』

 

「?」

 

 

お昼を食べていた時、その声が桜華の耳に響き箸を休め歩く人を見た。

 

 

『異端の子だ』

 

『赤き瞳だ』

 

『早く出て行け!!

 

この異端が!!』

 

 

器を置きながら、桜華は腹部を抑えた。

 

 

「桜華、どうした?」

 

「……何でもない」

 

 

食べ終えた才蔵達は、再び馬を歩かせた。桜華は才蔵の馬の上で、馬に登ってきた鼬の群れと遊んでいた。

 

 

「ようやく、機嫌直ったみたいだね!」

 

「……」

 

「桜華!」

 

「まだ機嫌は直ってないみてぇだな」

 

「どうするおつもりですか?幸村様」

 

「……どうしようのぉ(ここまで機嫌が悪くなるとは……)」

 

 

『蓮華!機嫌直せよ!』

 

『知らない。もう弁丸のことなんか』

 

『蓮華ぁ!』

 

 

ふと思い出す過去……木の上で不機嫌な顔を浮かべる蓮華。

 

 

(そっくりだわ……あの機嫌の損ね方)

 

 

その時、爆弾が着いたクナイが地面へ突き刺さり地面を爆破した。馬は驚き暴れ出し、才蔵達は馬を落ち着かせようと手綱を引いた。

 

 

「な、何だ?!」

 

「桜華!大助の馬に移れ!

 

才蔵!」

 

 

馬を落ち着かせた才蔵は、ポーチからクナイを取り出し放ってきた方に向けて投げた。茂みに潜んでいた輩は、クナイを弾き飛ばし、幸村達の前に姿を現した。

 

覆面をし、殺気に満ちた目で桜華を見つめる輩。その輩の目を見た瞬間、桜華は怯えだした。

 

 

「……ほー。

 

やっぱあの時のガキか」

 

「……」

 

「テメェ何者だ!!」

 

「売人……とでも言っとくか」

 

「売人?」

 

「戦や口減らしで捨てられた子供を保護して、その子供を殿方に売るんだ。

 

そこにいるガキは数年前に見つけて、高値で売ろうと思ったんだけど……どうにも手の着けられねぇほどの実力者で!」

 

 

一瞬で才蔵を投げ倒すと、桜華に歩み寄った。

 

 

「さぁ、来て」

 

 

そう言い掛けたが、輩は口から血を出すとそのまま倒れた。すると茂みから音が聞こえ、幸村達はすぐに茂みの方に目を向けた。

 

 

「桜華!無事か?!」

 

 

出て来たのは、鎖鎌を持った鎌之介と鉄棍棒を持った伊佐道、そして笠を被った六助だった。

 

 

「お前等!!」

 

「危なかった!才蔵!

 

これで一つ貸しな!」

 

「知るか!!

 

つーか、何でお前等がいんだよ!!」

 

「このオッサンが、出たんだ!それでついて行ったんだ!」

 

「僕は二人を連れ戻そうとして」

 

 

二人が向ける方にいた六助は、輩の後ろ首に突き刺さっていた小太刀を抜いた。

 

抜くと鞘にしまい、前に浅い息をする桜華の前にしゃがみ、彼女の顔に付いた血を拭き取った。

 

 

「お前か。ずっとついてきてたのは」

 

「やはり気付いていたか」

 

「先に気付いたのは、桜華だけどな」

 

 

六助を見つめる桜華……彼女の顔は強張っていた。

 

 

(違う……

 

こいつ等の気配じゃない。まだ、いる……まだ)

 

 

桜華はゆっくりと、林の方に目を向けた。林には何かがいる気配はなく、静まり返っていた。

 

 

「どうする幸村?

 

この馬鹿と伊佐道達」

 

「城に帰って貰いたいが……」

 

「絶対嫌だ!!俺も京都に行く!!」

 

「拙者は桜華に就くだけだ」

 

「って、言ってるけど……どうする?」

 

「やはりその返事か……

 

仕方ない。儂と才蔵の言う事を訊くというのであれば、着いてきても良い」

 

「イヤッホー!!」

 

 

跳び上がりながら、鎌之介は大喜びした。

 

 

「さ、行くぞ」

 

「鎌之介はオイラの馬に乗って!」

 

「応よ!」

 

「伊佐道と六助は清海と共に、徒歩でお願いします」

 

「分かりました」

「御意」

 

「桜華、行くぞ!」

 

 

才蔵に呼ばれ、桜華は林を気にしつつ馬に乗った。各々の馬に乗り出発した。




才:雑談コーナー!

桜華を連れて、京都に行くことになったけど……お荷物が一人増えた。

鎌:何だよ!!その言い方は!!

狐:皆~。お久し振り~。

全:狐!

狐:前回ごめんね。出られなくて。

六:何をされていたんです?

狐:ちょっとドタバタがあってねぇ。

それで。

才:へ~。てっきり、学校が忙しいのかと思った。

狐:もちろん学校は忙しいよ。

それよりも大変なことが起きたんだよ……

才:何だ?

狐:それがねぇ
猿:お前の私生活なんざ、興味ない!!

狐:佐助に酷いこと言われたので、次回からこのコーナー無しにします。

全:え?!

狐:文句は佐助に行って下さい。

猿:ま、待て!俺は。
全:佐助ぇ!!
才:猿ぅ!!

狐:読者の皆さん、またね!

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