十勇士 作:妖狐
『桜華を外に出してはならん!』
『桜華は闇を持った子だ』
『桜華を閉じ込めておけ!』
皆……殺してやる。
爆発は、上田の町にまで響いた。城にいた才蔵達は森の方に目を向け、佐助は木の上からその爆発を目の辺りにした。
やがて爆発は収まった……
山賊は跡形もなく消え去り、凹んだ地面に桜華は座り込んでいた。
傍で大助を守るようにして、鎌之介は彼に覆い被さり倒れていた。爆発が収まったのを確認した彼は、ゆっくりと起き上がり辺りを見回した。
凹んだ地面に座り込む桜華……周りの木々は山賊と同様に跡形もなく消えていた。
「スッゲぇ……!
桜華!」
凹んでいる地面に座り込む桜華の元へ、鎌之介は駆け寄った。息を切らしていた桜華は、力無く地面に倒れた。駆け寄った鎌之介は、彼女の体を揺らしながら呼び叫んだ。
「桜華!!桜華!!
おい!桜華!!」
「鎌之介!」
森から佐助が駆け付けた。
「佐助!」
「さっきの爆発は?!」
「わ、分かんねぇ。突然桜華が苦しみだして、叫んだら……」
「爆発が起きた……」
倒れている桜華を佐助は、抱き上げ横に抱いた。
「鎌之介は大助様を頼む。
俺は先に、桜華を連れて城に戻ってる」
「わ、分かった!」
桜華を連れて、佐助は先に城へと戻った。彼の後を、茂みに隠れていたレオンは追い駆けていった。鎌之介は気を失っている大助を背負い、城へと向かった。
「佐助!!」
城へ戻ってきた佐助の元へ、才蔵達は駆け寄った。
「何が……!!桜華!!」
「今は気を失っている。
けど、熱がある」
「!?」
「才蔵、お前は俺と一緒に桜華の治療に当たれ」
「あ、あぁ」
「氷柱、お前も来てくれ」
「分かったわ」
部屋へ来た才蔵は、すぐに布団を敷き佐助から桜華を受け取り寝かせた。桜華は息を切らしながら、苦しんでいた。
「何があったんだ、佐助」
「桜華の治療を終えたら、全て話す。
まぁ、詳しい事は鎌之介達に聞くんだな」
「お喋りはいいから、早く治療を……!!こ、これ」
服を脱がせようと、裾を上げると体の一部が黒い痣で覆われていた。
「何だ、これ……」
「あの爆発と関係が?」
「……とにかく治療を」
数分後……部屋から出る三人。するとそこへ、レオンが庭へ入り縁側を飛び乗ると、部屋の前で寝そべり大あくびした。
「ここにいましたか」
「六郎……」
「すぐに幸村様の所へ」
六郎に連れられ、三人は幸村の部屋へと急いだ。
部屋へ来ると、中で鎌之介が懸命に桜華のことを話していた。
「だから、突然桜華の奴が苦しみだして!
そしたら、あの爆発が起きたんだ!」
「わ、分かったからそう近くに来るな」
自分に詰め寄り話す鎌之介に、幸村は彼を手に持っていた扇子で防いていた。そんな鎌之介を甚八は、襟を掴み上げ幸村から引き離した。
「大人しく座って、説明しろ」
「鎌之介!!桜華に何しやがった?!」
入ってきた才蔵は、鎌之介の襟を掴み上げながら怒鳴った。
「何もしてねぇよ!!
滝壺で大助と遊んで休んでたら、山賊が現れたんだ!
その山賊を倒そうと、桜華の奴が刀抜いたんだ。そしたらいきなりアイツ、苦しみだしたんだ!!頭抑えて!」
(頭を抑えて……)
「そんで爆発が起きた」
「あ、あぁ。
収まって、アイツの所に行ったら」
「倒れてた……」
「うん」
「……あの爆発は、一体」
「……まさか」
「?何か知っているのか?清海」
「兄上、あれは」
「いや……そうとも言い切れぬ」
「……」
「何なんだ?」
「拙僧達がまだ出雲にいた頃、神主様から聞いたことがあります。
この国は、四つの魂に守られていると」
「四つの魂?」
「あぁ。
一つ目は荒魂(アラミタマ)。
二つ目は和魂(ニギミタマ)。
三つ目は幸魂(サキミタマ)。
四つ目は奇魂(クシミタマ)と。
中でも、奇魂は闇を抑える力があります」
「闇?」
「今はお前達が思っている闇として、考えればいい」
「その四つの魂のどれかを、桜華は持ってる……
そういうことか?」
「闇を力が放たれた時、あの様な爆発が起きると……」
「神主様から聞きました」
「それが本当なら……」
「桜華は、その闇の力を使ったって事か?」
「そこまでは保証できない……」
「……」
才蔵達が幸村の部屋にいた頃、桜華は起き上がり部屋の隅で頭を抑えて蹲っていた。
頭に蘇る記憶……木の柵の中に閉じ込められている自分。その中から、必死に何かを叫びながら格子の間から手を伸ばしていた。
『憎いだろ?人が』
(知らない……こんな記憶。
こんな記憶、覚えてない!!)
どこからか聞こえる声を聞かぬように、頭を抑えていた手で耳を塞いだ。
話が終わり、才蔵は急いで桜華の部屋へ行った。中に入ると、体を震えさせながら部屋の隅で蹲っている桜華を目にした。
「桜華……」
隅にいる桜華を、抱き上げ布団に寝かせた。寝かされた桜華の手は、未だに震えていた。才蔵はそんな彼女の手を握りながら、隣で横になった。
狐:何か、皆忙しそうだからキャラ紹介するねー。
ではどうぞ↓
名前:筧十蔵(カケイジュウゾウ)
年齢:32歳
使用武器:火縄銃
容姿:焦げ茶色の髪を耳上で結っている。目の色は茶色。
服装:襟付きの半袖に長ズボンを穿き、草履を履いている。手首には青い腕輪をしている。