十勇士   作:妖狐

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『ここから逃げるなさい』

『母さんはどうするの?』

『囮になってあいつ等の気を引く』

『囮って……嫌だ!!母さんと別れるなんて』

『あなたをあいつ等に渡すわけにはいかない!!

いい!振り向かずに、逃げるのよ!!決してあいつ等の手の届かない所へ!!』


狙われていたもの

神社へ着き、桜華は中へと入った。そして奥へと行くと、地面の一部を踏み込んだ。すると、一枚の板が外れ地下へと続く階段が現れた。

 

 

「こんな社に地下が……」

 

「こっから……逃げた」

 

「え?」

 

 

頭を手で抑え、才蔵の服を握りながら桜華はそう言った。甚八はもう一度、中を見回しそして口を開いた。

 

 

「普通の社じゃねぇみてぇだな」

 

「普通の社じゃないって……」

 

「よく見ろ。

 

窓に格子。ドアは外から鍵を掛けられていた……」

 

「言われてみれば……

 

誰かを、閉じ込めてたのか?」

 

「中にあったあの三人の絵からして……

 

もしかしたら、桜華かもな」

 

 

甚八の言葉に、桜華は怯え才蔵の服を強く握った。

 

 

「おい、本人の前で言うな!」

 

「いいじゃねぇか別に。

 

どうせ記憶なんざねぇんだから」

 

「だからって……」

 

「……」

 

 

その時、背後からクナイが飛び壁に当たった。才蔵はすぐに桜華を後ろへ隠し、剣の束を握りながら振り返った。

 

 

「いや~、驚きましたよ。

 

まさか、こんな所に神社があったとは」

 

 

そこにいたのは、女を連れた半蔵だった。

 

 

「服部……半蔵!!」

 

「さぁて、貰いましょうか?その御嬢さんを」

 

「誰が渡すか!!」

 

「う~ん、困りましたねぇ。

 

大蛇さん、何かいい案でもありますか?」

 

「奪い取ればよろしいのでは?」

 

「やはり、その方法しかありませんか」

 

 

指を鳴らす半蔵……その瞬間、大蛇と名乗る女は袖から蛇を放った。蛇は才蔵の背後へ回り、桜華の脚を伝い首元へ行き首を噛んだ。噛まれた途端、桜華は力無く倒れた。

 

 

「桜華!!」

 

「安心してください。ただ動けなくしただけですわ」

 

「んの野郎!!」

 

「さぁ、勝負と行きますか!

 

その子をかけての。無論勝った方がその子を貰いますがね」

 

「クソ!!」

 

 

剣を抜き、才蔵は半蔵に突進した。半蔵は大剣を盾にし、才蔵の攻撃を防いだ。突進した勢いのまま、二人は外へと出て行った。

 

 

「さぁて、俺はアンタの相手でもするか」

 

「あら?私(ワタクシ)の相手を?」

 

「まぁな。けど俺好みの女じゃねぇんだよな~」

 

「それはお気の毒に」

 

「まぁな」

 

 

煙草の吸殻を地面に落としたと同時に、甚八は槍を出し大蛇に攻撃した。大蛇は蛇を出しその攻撃を防いだ。

 

 

「うへ―。蛇女か。ますます好みじゃねぇわぁ」

 

「あら?でも、体はいい方でしょう?」

 

「まぁな」

 

 

槍を突き出す甚八に、大蛇は蛇で防ぎ腰から寸鉄を出し攻撃した。寸鉄を防いだ甚八は、後ろへ下がった。その先に桜華が横になっており、彼の足がギリギリ当たろうとしていた。

 

 

(ここじゃ狭い!)

 

「場所を変えますか?蛇の筒の中で」

 

「蛇の筒?」

 

 

そう言うと、大蛇は両袖から蛇を出し甚八を蛇の檻へと入れた。

 

 

「この空間にいれば、あの御嬢さんに怪我をさせることはありません。さぁ、思う存分戦いますわよ!」

 

 

寸鉄を振り上げ、大蛇は攻撃を始めた。甚八は槍で防ぎながら彼女に攻撃をしていった。

 

 

その頃、才蔵は外で半蔵と戦っていた。半蔵の大剣を、才蔵はギリギリの所で受け止め、クナイで彼の腹に傷を付けたがそれと同時に、半蔵の剣先が才蔵の頬を掠った。

 

 

「早く決着つかないと、あの御嬢さん怪我しちゃいますよ?」

 

「うるっせぇ!!黙ってろ!!」

 

「オォ!怖い怖い。

 

 

大事なもの久し振りに持って、今度こそ守り抜いて見せるって思ってるんですか?」

 

「!!」

 

「五年前でしたよね?

 

千草(チグサ)が死んだのは」

 

「?!」

 

「自分の傍にいなかったのに、何でそこまでして自分を責めるんですか?才蔵」

 

「……」

 

「ひょっとして、あれですか?

 

上田に忍び込んだ千草を、謝ってアンタが」

「黙れ!!」

 

 

剣を振り下ろす才蔵に、半蔵は大剣で受け止め彼の目を見た。

 

 

「もしかして、あのお嬢さんに千草の面影でも見てるんですか?」

 

「!?」

 

 

一瞬頭に過る桜華の姿と千草の姿……才蔵は剣を下ろし、その場に立ち尽くした。

 

 

一方蛇の中で戦う大蛇と甚八。

 

 

「ホホホ!私の攻撃を、難なく避けるとは……逞しい海賊ですこと」

 

 

寸鉄を構えながら、大蛇は不敵な笑みを浮かべて甚八にそう言った。

 

 

「気色悪い笑い方するなぁ。俺お前のこと好きになれねぇなぁ」

 

「あら、酷い事言うのね。私はあなたの事気に入りましてよ」

 

「嫌な女だ。良い体してるのによぉ」

 

「お褒めの言葉どうも。さぁて、そろそろけりを付けさせてもらいますわ。

 

上から、あまり時間をかけるなと言われておりますので」

 

 

大蛇は袖から巨大な蛇を出した。蟒蛇は鳴き声を上げると、一瞬で甚八を口の中へと入れた。

 

 

「丸飲み完了……?!」

 

 

突如、蟒蛇の体からか電撃が放たれ、蟒蛇はバラバラになり消え、その中から甚八は降り立ち隙を作らず槍を大蛇の腹に刺した。大蛇は口から血を吐きながら、その場に倒れた。

 

 

「悪いな。俺は槍と雷使いの海賊・根津甚八だ。

 

俺の技を知らなかったのが、運の尽きだな」

 

「逞しい海賊……ですこと」

 

 

それを最期に、大蛇は息を引き取った。すると蛇の筒は解け外へと出た。外で桜華の傍にいたレオンは、甚八に擦り寄った。

 

 

「大丈夫だ、レオン」

 

 

ふと桜華を見ると、彼女は寝息を立て気持ちよさそうに眠っていた。

 

 

「(毒の効果か……一応、毒に対する異常は体にはねぇみてぇだな。只眠ってるだけだし)

 

 

さぁて、才蔵が決着つくまで待つとするか」

 

 

 

二つの剣がぶつかり合う音が外に響いた。

 

半蔵は、後ろへ下がると印を結んだ。

 

 

「火術業火球!」

 

 

口から火の玉を無数に出し、才蔵目掛けて放った。才蔵はすぐに避け、ポーチからクナイを取り出し半蔵に投げつけた。彼はすぐに大剣で、クナイを弾き返し降りてくる才蔵に向かって、大剣を振り下ろした。才蔵は間一髪、大剣を避けたが肩に傷を負い、肩を抑えながら半蔵を睨んだ。

 

 

「スゴォ!守れるものがあると、人間急激に成長するんだ!

 

前回は避けられなかった俺の攻撃、よくかわしたね?才蔵君」

 

「君付けるな!!気色悪い!!」

 

「いいじゃないですかぁ。せっかく、伊賀者同士なんですから」

 

「ウザい……お前と一緒の里ってのが、一番ウザい」

 

「え~、そんな事言わないで下さいよ~」

 

「うるさい!!」

 

 

半蔵目掛けて、才蔵は剣を勢いよく振り下ろした。半蔵は難なく避け、大剣を振った。彼の大剣を才蔵は、剣で受け止め印を結んだ。

 

 

「伊賀流水溶斬!!」

 

 

水の纏った剣を振り回した。半蔵はすぐに避けたが、腹に火傷を負い傷を見ながら、才蔵を睨んだ。彼は勢いを止めずさらに印を結び、今度は火の玉を手から出しそれを半蔵に投げつけ弾と共に、自分も突進し剣を振り下ろした。剣は半蔵の体を斬り、彼はそこから血を噴き出し倒れた。

 

 

息を切らしながら、才蔵は倒れた半蔵を見ながら座り込み傷を手で抑えた。

 

 

「な、何とか……勝った」

 

「決着がついた見てぇだな?」

 

「甚八!」

 

 

社から出てきた甚八は、桜華を横に抱えながら才蔵の元へ寄った。才蔵は甚八から桜華を受け取りながら、彼女を心配そうに見た。

 

 

「安心しろ。蛇の毒で眠ってるが、目立った異常はない」

 

「そうか……(良かった)」

 

「しっかし、あの女毒を使うにも程がある……おかげで、手足が痺れてらぁ」

 

「こっちもだ。

 

毒はなかったが、火を使いやがってあの男」

 

「こりゃあ明日、十蔵が来るまでここで寝泊まりするしかねぇな」

 

「だな……?」

 

 

才蔵の腕の中で、桜華はゆっくりと目を覚ました。

 

 

「才……蔵?」

 

「気が付いたか?!」

 

「……!アイツ!」

 

「もう大丈夫だ。

 

倒したよ」

 

「……!

 

怪我……」

 

「大したことねぇよ」

 

「……」

 

「桜華、首に掛けてる勾玉……ちょっと見せてくれねぇか?」

 

「……うん」

 

 

服の下に隠していた勾玉を、桜華は鎖を引っ張り出し才蔵に見せた。

 

 

「……触ってもいいか?」

 

「大丈夫だと思う」

 

 

才蔵は恐る恐る、勾玉に触れた。勾玉は一瞬光ったかのように見えたが、またすぐに光りを失くし普通の勾玉に戻っていた。

 

 

「普通の勾玉にしか、見えねぇな……」

 

「アイツ等、これが狙いだって……」

 

「お前の事も狙ってた……どうなってんだ」

 

「桜華、オメェ何か聞いてねぇのか?その勾玉について」

 

「何も……というより、覚えてない」

 

「……」

 

「思い出そうとすると……頭が痛い。

 

それに……怖い」

 

 

震える手を、桜華は強く握った。

 

 

その時、馬の蹄の音が聞こえ後ろを振り返った。その直後馬は才蔵と甚八の上を跨り、そして才蔵の傍に座っていた桜華を、何者かが奪った。

 

 

「桜華!!痛!」

 

「ほぉ、真田の者か?」

 

「?!テメェは

 

伊達政宗!!」

 

 

政宗の腕で、桜華は逃げようと暴れたが彼は、彼女が暴れない様に手でしっかり抑え込んだ。

 

 

「良く見つけてくれたな?俺の宝を」

 

「宝?」

 

「光坂の娘、この伊達政宗が貰った!!」

 

 

そう言うと、政宗は馬を走らせた。その後を才蔵と甚八は追い駆けようとしたが、毒で体が思うように動かず、代わりにレオンが彼の後を追いかけて行った。

 

 

「頼んだぞ!レオン」

 

「桜華!!桜華!!

 

クソ!!動け!!動け!!俺の体!!クソ…クッソォオ!!」




狐:皆、何か忙しそう……

猿:そうだろうな。

狐:あれ?佐助じゃん。どうしたの?

猿:どうしたって……

狐:……ハハ~ん。さては出番がなくて、寂しくなって出てきたなぁ?

猿:う、うるさい!!大きなお世話だ!!

狐:そう怒鳴らないでよ!

猿:それはそうと、この先どうなるんだ?

狐:だから、バラしちゃ誰も読まなくなるでしょ。

猿:それはそうだが……じゃあ、せめて桜華が何者かくらい教えろ!

狐:いや、説明したじゃん!

桜華は光坂一族の生き残りって!

猿:“かも”としか言ってないだろ!

狐:だって小説だもん。直に分かることだもん。

猿:……

狐:そんなに気になるなら、佐助。

猿:?

狐:コショコショコショ(内緒話)

猿:!!

狐:な?出来たら、全部
猿:出来るか!!そんな恥かしいこと!!

し、死んでもやらんぞ!!

狐:チッ!つまんねぇの。

読者の皆さ~ん、また次回お会いしましょうね~。

猿:絶対やらないからな!!

狐:分かったから、もう。

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