十勇士   作:妖狐

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『才蔵!聞いて聞いて!

私、やっと仕える主を見つけたんだよ!』


あいつは嬉しそうに言った……

あいつは俺の憧れであり、そして……


『才…蔵……

心から……信頼でき……る人……を見つけ……て』


出雲大社

「!」

 

 

社の後ろ側に来ていた才蔵は、我に返り頭を振りながら歩き出した。

 

 

社へ戻ると、十蔵が腕を組み浮かない顔をしていた。

 

 

「どうしたんだ?筧さん」

 

「神社の森の方も見たんだが、何も無くてな……そっちは?」

 

「生憎何にも……

 

それにしても、何でここだけ燃やされなかったんだ?」

 

「人目の着かないところだ。見逃したのだろう」

 

「半蔵に限って、そんなヘマは……」

 

 

「社の中から、面白い物見つけたぜ」

 

 

中から出て来た甚八は、手に書物と一枚の紙を持ちながら言った。

 

 

「何だ?この本」

 

「中読んでみたが、神だの魂だの……結構面白いことが書いてた」

 

「帰って、城で調べてみるか」

 

「だな。

 

あれ?甚八、その紙は?」

 

「あぁ。そうだ……

 

面白いもんが描かれてるぜ」

 

 

そう言いながら、甚八は才蔵に紙を渡した。受け取った才蔵は紙を広げ見た。

 

 

「……?!」

 

 

描かれていたもの……それは、幼い桜華であろう少女を真ん中に二人の男女が描かれていた。

 

 

「これ……桜華?」

 

「髪の長さからして、描かれてのはおそらく四・五年前」

 

「だとしたら、桜華は本当に光坂一族の唯一の生き残り?」

 

「俺はあのガキより、左にいる男が気になる」

 

「男?

 

 

?!こ、この人」

 

 

袴に身を包み桜華の頭に手を乗せしゃがむ男の姿が、真助とソックリだった。

 

 

「やっぱり、真助の野郎に見えるだろ?」

 

「しかし、真助とは言い切れぬ……」

 

「いや、真さんだ!

 

ここ、よく見てみろ」

 

 

桜華の頭に乗せていた手に、古い傷跡が残されていた。

 

 

「昔真さん、戦中に仲間を守るために手に深い傷を負ったって聞いたことがある」

 

「それが本当なら……

 

桜華は真助の子供?!」

 

 

才蔵は絵をもう一度見た。描かれていた桜華は笑っており、その隣に母親であろう女が一緒に笑い彼女の手を握っていた。そして桜華を挟み左には微笑んだ父親であろう真助によく似た男がしゃがんでいた。

 

 

「……筧さん、俺少し出雲大社に行ってくる」

 

「出雲?何故」

 

「神に詳しい知り合いがいるんだよ。

 

城で調べるより、直接詳しい野郎に聞いた方が早いだろう」

 

「それはそうだが」

 

「桜華の事、頼んだぞ」

 

 

書物を手に、才蔵はその場から立ち去った。

 

 

「才蔵!

 

全く、勝手な男だ」

 

「まぁ、気楽に待とうぜ……?」

 

 

甚八はふと、才蔵から受け取った紙を見た。描かれていた桜華と両親……その母親の顔を見た甚八の脳裏にある映像が流れた。

 

若い頃、船で移動していた甚八……その時、海から流れてくる一人の少女を見つけ、彼は船から飛び込み少女を助け海岸へ運んだ。

 

運んでくると、海岸にいた女性と海へ入ったのかびしょ濡れの男性が駆け寄ってきた。

 

 

(……まさか、あの時の)

 

 

 

出雲へ来た才蔵……彼の姿を見た一人の女性が駆け寄り飛び付いてきた。

 

 

「久し振りじゃない!才蔵!!」

 

「引っ付くな!!

 

仮にもお前、巫女だろ!!」

 

「何よう!踊り巫女だって、男に甘えたいのよ!」

 

 

「阿国、何をしているのです?」

 

 

大社から神主が出て来て、才蔵に抱き着いている阿国に話し掛けながら歩み寄ってきた。

 

 

「神主様!」

 

「阿国、舞の練習の時間です。

 

姐さん達に教えて貰いなさい」

 

「はーい!

 

じゃあね!才蔵」

 

 

神主に言われ、阿国は大社の中へと戻った。

 

 

「お久しぶりですね。才蔵」

 

「……話があってきた」

 

「話?」

 

「この本に書かれてる、内容を教えて欲しい。詳しく」

 

 

本を差し出しながら、才蔵は神主に頼んだ。神主は彼から受け取り中身を読んだ。

 

 

「……」

 

「あの……どういう意味ですか?」

 

「……

 

この書物をどこで?」

 

「すぐそこの……里」

 

「里?

 

 

あの、光坂一族の」

 

「あぁ……」

 

「……この一族は、闇を抑える一族です」

 

「闇を抑える?」

 

「この本に書かれている神の名に、聞き覚えのある名が書かれてました。

 

伊佐那美命(イザナミノミコト)」

 

「い、伊佐那美命?」

 

「闇の女神です。

 

この神を抑えるために、四つの神魂が造られてこの国を保っています」

 

「……」

 

「四つの神魂は、選ばれた子供に託しているようですね。この一族は」

 

「託した?……!」

 

 

才蔵は思い出した……桜華の首から下げていた青色の勾玉を。

 

 

「話はもうよろしいですか?」

 

「あ、あぁ。大丈夫だ」

 

「それはそうと、お二人はお元気で?」

 

「多分な。

 

今は若君の護衛で一緒に」

 

「……そうですか」

 

「じゃあな」

 

 

神主から書物を受け取った才蔵は、振り返りその場を去った。

 

 

夕方……才蔵は里へ戻ってきた。

 

 

(すっかり日が暮れちまったなぁ……)

 

 

神社へ辿り着くと、甚八は煙草を吸いながら横になり、彼の傍にレオンの咽を撫でる桜華がいた。才蔵に気付いたのか、桜華は手を止め彼の姿を見ると一目散に駆け寄り抱き着いた。

 

そんな彼女の様子に気付いた甚八は、起き上がり煙草を口から離した。

 

 

「戻ったか」

 

「まぁな……

 

あれ?筧さんは?」

 

「船に戻ってる。

 

俺も戻ろうとしたが、こいつが才蔵が来るまで戻らないって聞かねぇから」

 

「そうか……」

 

「……才蔵」

 

「?」

 

「あそこの神社、見覚えある」

 

「?!」

 

 

桜華は神社へと向かい、その後を才蔵と甚八はついて行った。




狐:何か、色々立て込んでるみたいだから、今回はキャラ紹介しますねー。

ではどうぞ↓


名前:山本真助(ヤマモトシンスケ)
年齢:不明
使用武器:刀(まだあるかも……)
容姿:黒髪に青い瞳。右手の甲に深い傷痕がある。
服装:普段は着流しを着ているが、信幸の傍にいる時は袴を着用。煙管を愛用している。

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