八幡の武偵生活   作:NowHunt

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総武高校編③ 閑話―初日を終えて―

 転校初日も終わり、帰りに晩飯の買い物してから帰宅する。綺麗なマンションに帰るという行為がどうも違和感が拭えない。建物のどこかに穴が空いていた方が心安らぐとか終わってんなぁ。

 建物どころか部屋中が銃痕だらけだったこともあるんですよ。どこかの巫女さんがM60とかいう化け物ぶっ放したり、どこかの狙撃手が扉をC4でぶっ壊したり……。

 

「お帰りなさい」

 

 あ、後者の女……じゃなくてレキが出迎えてくれた。なぜか武偵高の制服だ。そういや、それ私服だったな。昨日も坂田さんたちと話し終えたあともそうだったし、レキ用のスウェット注文しておくか。常にスカートだと心臓に悪い。主に俺の理性の。

 

「ただいま」

「荷物冷蔵庫に入れておきます」

「おう、冷凍はないから全部冷蔵庫でいいから。野菜もそっちに突っ込んどいて。どうせすぐ使うし」

「はい。先にシャワー浴びておいてください」

「おう」

 

 ……レキのこのセリフ、なんかエロい。

 

 と、シャワーを浴び終え、晩飯を作る。

 

 確かにレキより料理はできるが、そんなできるわけでもない。実家にいるときは両親は共働きで料理する機会はあったが、小町が進んでやってくれた。遠山との寮生活では基本交代で作っていたけど、手が凝っている料理を作るわけでもない。基本火が通れば食えるスタイルだ。

 遠山も遠山で似たようなもんだ。たまに前者の女……星伽さんが弁当を作ってくれたのはありがたく頂戴しております。

 

「レシピさえあればどうにか形になると思うんだけどなぁ」

 

 ぼやきながら野菜と肉を炒める。手の凝ったもん食いたいならわざわざ作らずとも外食の方が案外安くつくからなぁ。金かかるって言ってもこれでもそれなりに稼ぎはある。さすがに毎日はキツいが、たまになら大丈夫だ。

 

「できたぞー。運ぶの手伝って」

「分かりました」

 

 ちゃちゃっと作ってレキと食卓を囲む。

 

「レキの方はクラスどうだった?」

「クラスの方々は女性ばかりでしたが、好意的に話しかけてくれる方もいて問題なく過ごせたと思います。それと美術部の方に誘われたので明日体験入部という形で見学へ行きます」

「いいじゃねーか。コンクールとかあるならいいとこまでイケるんじゃないか?」

「そうでしょうか?」

「絵上手だしな。素直にスゴいと思うわ」

「そ、そうですか」

 

 若干顔を赤らめたレキは咳払いをしながら話題を少しずらす。

 

「八幡さんはどうでした?」

「俺もそこまでレキとは変わらないな。クラスの中心人物みたいな奴らが間を取ってくれて可もなく不可もなくってところだ」

「なるほど。ところで、しばらくどう捜査を進めますか?」

「校長からもお願いされてるし、表立って捜査はしない。まぁ、学校で怪しい場所にアタリ付ける程度か」

「分かりました。……それで、どこか怪しい場所というのはどこだと思いますか? 私はまだ学校全域確認できていませんので」

「今のところさっぱり。同じクラスの奴に学校案内はしてもらったが、どうもピンとこない。特別棟ってわりと無人な校舎があったが、あれ一つ一つ調べるのは手がかかりそうだしな」

 

 奉仕部へ行くのに3階にある渡り廊下を使ったから、特別棟の1階や2階は何があるのか分からない。由比ヶ浜もそこは重点的に案内せず、空き教室が多いと言っていた。

 

 というよりそもそもの話だ。

 

「昨日坂田さんや蘭豹と話したが、今回の俺たちの捜査について事件の結末はざっと分類しておよそ3つある」

「3つですか」

 

 レキは分かっているかもしれないが、一旦口にする。

 

「まず1つ目、取引現場は別だが、銃やヤクそのものが学校に保管されている。2つ目、学校が大元の取引現場に使われている。そして3つ目、総武高校で起きている事件を指示している大元の犯人がここにいる。他にもこの候補のうちどれかを組み合わせたりと考えられるが、だいたいはこの3つになる。……まぁ、外部にいる犯人がここの誰かを脅してるとか細かい可能性を言い出したらキリがないが。ただこれは3つ目とくっ付けて考えることはできるか」

「私もそう思います。八幡さんの言う組み合わせも充分考えられるでしょう。例えばですが、候補1と候補2が取引現場として繋がっていたり、候補1と候補3が合わさっていたり、可能性で言えばありと言えるでしょうね」

「だな。で、この場合において犯人を絞るとなると、学校に怪しまれることなく手引きできる人物――――教師か生徒、学校にいる事務員などだろう。つまり、学校内で活動しても違和感のない人物。ちなみにこれは外部の犯人に脅されている場合含めての話だ。……もしくは全く学校とは関係のない人物が学校のマスターキーとかを持っている場合か」

「しかし、後者の線は薄いのでは? わざわざバレる可能性のある学校に忍び込んで取引するメリットはないように感じます」

 

 ……それもそうだな。学校の周りも住宅街だし、それなら人の寄り付かない場所を選ぶか。

 

「つーか、取引つったって、誰と誰がしているんだ? 今回俺らが追っている犯人のグループが武器を売っている側なのか買っている側なのかも分からないんじゃ、推理のやりようがない」

 

 愚痴をこぼすと、何かを思い出したかのようにもう晩飯を食べ終わったレキが封筒を持ってくる。

 

「そういえば、これを。警察からです」

「ちょっと待って。もうちょいで食べれるから」

 

 急いで食べてから封筒を開く。下校時間はバラバラだったし、レキの方が早く帰っていたから、俺が帰ってくる頃にはもう受け取っていたのだろう。

 

「あれ、レキ、開けてないのか? 別に見て大丈夫なのに」

「私より八幡さんが見る方が効果的でしょう」

「そうかぁ? お前の方が武偵歴長いだろ」

「確かに私は八幡さんよりこの世界に長くいます。戦闘経験でも私が上かもしれません」

 

 しれませんじゃなくて上だよ、Sランク様。

 

「ですが、推理の方はしたことがほとんどないです。長年の戦闘経験などから生まれる勘や経験則はありますが、それは些か論理的ではありません。推理という観点では私の知る限り、八幡さんは優れていると思います」

「そう? レキが言うほど、そんな推理したことないけど」

 

 そんな会話をしながら封筒の中身を取り出す。まぁ資料だよな。何か進展があったらしい。とりあえず読むか。

 

 ――――――――

 ――――――

 ――――

 ――

 

 ゴロツキからどうにか色々情報引っ張り出したり、別の現場からも情報が分かったらしい。

 

 まず昨日話していたゴロツキを雇ったのはヤクザの『石動組』とのこと。

 

 ……訊いたことないな。鏡高組なら東京にいるヤクザとして知ってはいる。最近どうも組長が死んでからゴタゴタしているらしい。しかし、このヤクザはどうも記憶にない組織だ。

 資料によると――かつて千葉から神奈川にかけてシマを持っていたが、こちらも5年前に組長が病死したのを皮切りにかなり弱体化して、全盛期に比べれば随分小さくなったらしい。

 

 ここ数年でめっきり名前を訊かなくなりもう潰れたものだと警察も思っていたみたいだ。

 

「そうじゃなくてひっそりと水面下で活動してるってわけか……」

 

 で、どうやら今回は石動組が武器やヤクを購入しているとのこと。つまり、武器商人はまた別にいるわけだ。俺たちが捜査するのは石動組の方。ヤクザなら組員の情報は豊富にありそうな気がするが、長らく活動してやないなら警察も把握しきれてないのだろう。資料に書かれているのは新しい組長と幹部数人程度だ。

 

 ……武器商人はまだ判明してないらしいので警察に任すとしよう。なんか言いようもないほどの嫌な予感がするし。

 

 レキにも資料を見せて改めて考える。

 

「この資料を見て私は候補1の線はなくなったと思います。今回の犯人が武器を売っている側なら、もしかしたら学校に隠し持っているかもしれませんが……買っている側なら、危険を侵して学校に保管するメリットはないでしょう」

「同感だ。ヤクザの本拠地があるなら、そっちに隠せばいいし他にもバレないような場所はそこら中にあるだろう。そうなると候補2だが……そもそも学校を取引現場にするメリットって何だ?」

 

 適当に思い付くのが広いという点。しかし、広いだけで言うなら、別に学校に拘る必要はない。確かに校庭や体育館とか面積はあるが、別にヤクザならもっと広い場所くらい抑えられるだろう。いくら弱まっていると言ってもだ。

 秘匿性……もないな。むしろ学校とか秘匿もクソもない。これが山の上に建っている学校や山に囲まれている学校ならともかくだ。街中にある学校では情報が漏洩するリスクが高いように思える。

 他……他は…………生徒を人質に使える? いや、人質とかもしもの手段だ。人質とる=警察や武偵に追いつめられている、だ。この考えもなんか微妙だ。

 

 ダメだ、頭がこんがらがってきた。

 

「はぁ……」

 

 一旦MAXコーヒーを飲んで落ち着く。こういうときは頭に糖分入れるのに限る。

 

 坂田さんは昨日、銃やヤクの入手元を探っていると総武高校に行き着いたと言っていた。あくまで候補地の1つだが。入手元ということは、やはり総武高校に犯人がいるということだ。じゃないと学校を経由するのが無理だろう。というより、学校を経由させる必要はない。

 

 だから……えーっと…………?

 

 どれだけ悩んでも、結局のところ行き着く先はヤクザが学校を使うメリットは何かになる。

 

「別にまだいいか。始まったばかりだし」

 

 どれだけ考えてもまだ証拠も足りないし、学校をろくに捜査していない。その状態で全部推理しろというのが土台無理な話だ。こちとらシャーロックじゃないんだよ。

 そう自分に言い聞かせ台所に移動して食器をささっと洗うことにしよう。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「八幡さん、おはようございます」

「……おはよう」

 

 翌朝、レキに起こされた。起きると目の前にはレキの顔。……色々と心臓に悪いです。

 寝坊したのか? 転校早々それは不味いと思い、時間を確認すると目覚まし30分前だ。まだまだ朝じゃないか……。寝かせてくれ。目覚まし鳴る前に起きるのが大嫌いなんだ俺は。とても勿体ない気がしてならない。誰かこの気持ちを理解してくれ。

 と、まだぼんやりしている寝起きの頭で文句を言いつつ目をこする。

 

 というか、寝室それぞれ別の部屋だよな。プライベートな空間はほしいだろうと、ベッドは別々に置いてあったので、それぞれで寝ることにした。レキは銃の整備など1人でするので余計に必要だ。

 だからといってお互い部屋に入るなというわけでもないが、それでも朝起こしてくるのはなぜか疑問に残る。

 

「どうした?」

「いえ、何となく起こしただけです」

 

 理由ないんかい。

 

「……ならもうちょい寝かせて」

「ダメです」

「ああ、布団引き剥がさないで!」

 

 鬼! 悪魔! ちっひ! 布団返して! 小町にはやられたことあるけど、親にすらやられたことない行為なのに!

 

「朝食を作ってください」

「食パンあるんだし適当に焼きなって」

「それだけだと栄養効率が悪い気がします」

「毎回カロリーメイト食べてる奴が何を言っている」

 

 仕方なく起きた。ううっ、朝は冷える。

 

 ……慣れない環境だからか思いの外疲れが溜まっているな。いや、ずっと住んでいた土地なんだがな。あまり調子が出ない。東京と神奈川には武偵高があるけど、千葉にはないはずなので、気軽に銃の訓練ができる場所もない。どうしても腕は鈍ってしまうだろうな。

 ベッドから降りつつそんなことを思った。

 

 

「そういやさ」

 

 食パンを焼きサラダを適当に作り、朝食を取っている最中に世間話というか疑問を口に出す。

 

「はい」

「お前、名字どうしたの?」

 

 食パンを齧りつつ訊ねる。

 武偵高はアホだから名字なくても突っ込まれないから別にいいとして、一般人がいる学校はそうもいかない。名前だけでは不自然だろう。

 

「最初は比企谷と名乗ろうとしましたが、さすがに迷惑がかかるので止めました」

「英断だな。妹は小町だけで充分すぎる」

「さらっとシスコン発揮しましたね。そういう意味ではないのですが……やはり、その……」

 

 これまた珍しいくらい頬を染めてモゾモゾ話すレキ。

 何となくレキの意図を察知できたが、この予想が当たっていると、ただただ羞恥心に襲われるのは明白なので、こちらも頬が紅くなるような感覚に襲われながらもそっぽを向いてレキの返答を待つ。

 

「ま、まぁ……それは置いといて、続けて?」

「……分かりました。そこで八幡さんがやっていたゲームから三枝としました。しかし、皆さんレキと呼んでいますのであまり変わりはありません」

 

 三枝? 何のゲームだ? イマイチ心当たりがない。何のゲームだろうか。レキは勝手に俺の部屋に入ってわりと俺の私物を漁る傾向にあるので選択肢が多い。それに加えて理子からもゲームを借りているらしい。とはいうが、今回は俺の私物からだろう。レキもそう言っていることだ。

 マイナーなキャラだろうかと頭を捻り記憶を探ろうとする。三枝とは個人的だがあまり聞かない名字だ。そこからなら想像つきそうなものだと思――――あぁ、分かった。あれか、思い出した。あのおしとやかなサブキャラだな。アサシンとの組み合わせ良いよね尊いよね。

 あの組み合わせ大好きだ。

 

 と、答えが分かりスッキリしたので、糖分補給のためにMAXコーヒーに口をつける。

 

「八幡さんは今日はどうする予定ですか?」

「これといって決めてねぇな。昨日はクラスメイトが学校案内してくれたが、特に今日は約束取り付けてないし。時間あれば図書室でも行こうかね。あまり本持ってきてないからな。暇潰しにはちょうどいい」

 

 それに多少は勉強しないとマジでここの授業に追い付けない。国語系列はや暗記科目はどうにかなるが、理数や英語がかなり大変だ。英語だって暗記科目だろうが、覚える範囲が総武高校は広すぎる。

 よく中学の俺はここを受験しようと思ったな。今では考えられない選択肢だ。アホな環境に長い間身を置くと、どうしても自分の中のできるレベルが下がり、更に自分がアホアホになってしまうのだと実感した昨日の授業だった。

 

「私は体験入部があるので、終わり次第連絡しますね」

「おう」

 

 そうして、新たな日常が少しずつ過ぎようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オンラインレオナインエピソードゼロ……最高でしたね
これは土曜日が楽しみだ。LiSAさん初めてのオンラインライブ、というか自分も初めてのオンラインライブ!



それとギャラクシーファイトが面白すぎてヤバい。坂本監督は神か?ファンが何を見たいのか理解しすぎている。
いやまさかレジェンドがもう一度見れるとは思いもしなかった……。そして、タルタロスさん初陣でレジェンド相手は可哀想でしたね。スペースコロナが見れたのも嬉しかったし、レジェンドから解除したらルナになるとか細かい描写も好き
レジェンドって別にコスモスとジャスティスが融合した姿ではないらしいから(宇宙のどこかにいるレジェンドを召喚している解釈がある)、レジェンドとサーガの揃い踏みが見れるかな?って思ったけど……うん、今回ダイナの出演なかったね。ちょっと残念。でもノアならワンチャンある?(早口)

続きがマジで楽しみ。次回は用事でリアタイで見れないのは悲しい……


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