八幡の武偵生活   作:NowHunt

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進めば幾つ?

 アメリカでの激闘からざっと5日が経過した。

 

 俺は遠山とレキと別れたあと帰国し、家に帰ったあと戸塚たちにきちんとした治療を受け、ひたすら自宅療養の名目で引きこもっていた。ちなみに『もう少し体は大事にしようね』とお小言を貰った。

 

 実のところ、本音を言えば星伽さんが傷を治せる超能力を使えるとのことで治療を頼みたかった。しかし、どうやらしばらく不在とのことで残念ながらそこは観念した。

 

 しかしまぁ、特に問題ないし別にいいかと納得はした。どうやら神崎の傷跡は治したらしいが、骨のヒビまで治せるかは不明だったし。

 

 とはいえ、ヒビがあるにしろそこまで酷くはなく軽度だったこともあり、5日である程度は動けるようになった。完治……とまではいかないだろうが、まぁほぼ治ったと言ってもいいだろう。元々そこまで酷くなかったのかもしれない。

 

「……何だろう」

 

 しかし、以前と比較してケガの治りが早くなっている気はするが。別にそのくらい気にしなくていいか。不都合ないし。

 

「とりあえずは……」

 

 鈍った体を叩き起こそうと休日の学校へ出向くとしよう。

 

 何だかんだでまだ絶賛冬の真っ最中だ。空も曇っており日が照っておらずなかなかに凍える。新しく新調した膝まで長さのある灰色の防弾用のコートを制服の上から羽織りのんびり歩く。

 

「――――」

 

 ふと何を思ったのか空を見上げる。

 

 雪が降りそうなくらい空の色は重苦しい。わざわざこういう日に出歩くのは億劫だと思う。晴れているなら寒かろうとまだやる気が出るのだが、天候も良くないとこちらのやる気もなかなかに湧かない。それどころか、嫌な予感さえしてくる。嫌どころか不吉な予感、かもしれない。

 

 そう思ってしまうくらい、冬の暗い空というのはどうも気が滅入ってしまう。

 

 

 

 そうして、学校へ着き校門をくぐる。

 

 誰か俺の個人的な訓練に付き合ってくれる人がいればありがたいと思いつつも、実際のところ俺には知り合いがいなさすぎるから1人でのんびりトレーニングでもするかといったところだ。

 

 わざわざ一色や留美に連絡するのもあれだし、予定も知らないわけだ。武偵ならわりと当たり前に行われる後輩をコキ使うという行為はあまり慣れない。これはもう元来の性格だな。正式に依頼するのならともかく、俺の個人的な用事に付き合わせるのは面倒だ。

 

 まぁ、もし体育館にでもいたら、ムリヤリでも少しくらいアイツらの時間を消費してやるか。

 

「……」

 

 なんで、あまり期待せずに硝煙香る体育館へと入る。

 

 そうか。最悪、蘭豹という手もあるにはあるな。休日の日に学校にいるかは分からないのは置いとくとして。しかしまぁ、リハビリから復帰した初戦にしてはハードル高いな。やっぱり蘭豹は止めだ。逆にまた療養生活に戻ってしまう。

 

 と、歩きながら考える。

 

「……お?」

 

 ……ん、中に入ったけど、なんだかやけに騒がしいな。いや、ここは基本的にいつも騒がしくはあるんだけど、それを差し引いても……。

 

「――――」

 

 なんていうか、外から確認した限り1ヶ所にギャラリーが集中している。

 

 ……これはなんか既視感あるな。たしかカナのときと雰囲気が似ている。あぁ、どうしてか頭が痛くなってくる。

 

 嫌な予感はしつつも、それでも、ミーハーではないが少しは気になるので野次馬精神よろしく確認だけしよう。……と、ギャラリーの外周にいるアイツは。

 

「……よう、不知火」

「比企谷君。こんにちは。久しぶりだね?」

「まぁ、ここ最近色々と用があってな」

 

 強襲科の同級生、相変わらずキラキラしたイケメンの不知火がいた。話す相手もいないので話しかけたけど、特に嫌そうな顔もせず答えてくれる。

 

「これ何の騒ぎ? こっからじゃ見えないんだけど」

「そうだね。今行われているのは何て言えばいいのか……道場破り?」

 

 今どき道場破りとは。今日日聞かない言葉だな。

 

「んだそりゃ」

 

 呆れながら聞き返してしまう。

 

「つい1時間前にね、1人の女の子がここに来たんだよ。武偵高校の制服を着てはいるけど、僕は見たことなかったね。そんな子が来たものだから珍しさで注目されてね。それで誰かが話しかけると、どうやら暇潰しに戦いたいから相手になってくれと」

「たしかに道場破りだな。賭ける看板は特になさそうだけども。あるとすれば己の評判とプライドか」

「まぁね。それでいきなり喧嘩をふっかけられたもので、血の気が多いこの人たちと戦っているというわけさ」

 

 まぁ、道場破りしてきた相手もあれだが、そんなホイホイと勝負を受けるこちら側も相当頭悪いと思う。

 

「それで徒手空拳での組み手だけど今のところ5戦ほどやって連戦連勝らしいよ。お相手さん、小柄だけどどうやらかなり強いみたいだ」

「ほーん。マジで腕に自信があるとは、誰だろうな。神奈川辺りから来た奴なんかね。それとも、教師たちの身内筋か?」

「さぁ? 僕もそこまでは分からないね。どうも遠目から見た感じ、日本の人ではなさそうだけど。それで今戦っている相手は……あ、比企谷君も知っている人だよね。火野さんだよ。でも、ここからだと見にくいね」

「火野、はいはいアイツね」

 

 頭悪いけど腕っぷしだけはあるここの生徒に勝ちを積み重ねれるとは、たしかにかなりスゴい。単純な素手の取っ組み合いなら俺でも負けるくらいのレベルがゴロゴロいるというのに。ぶっちゃけ、隣にいる不知火にも勝てるかどうか怪しいまである。

 

 俺は今まで多くの非常識な相手にそれなりにと勝ってきたわけだが、それは俺が向こうからしたら予想外や情報にない手段を使ってきたからこそ勝てたのであって――――そんなのが関係ない、単純な地力、純粋な力比べの真っ向勝負なら、俺は周りにいるコイツらと比べたら経験値が少ない。

 

例えばそれこそ筋力とか。柔軟性とか。

 

 ……あとは射撃技術か。ぶっちゃけ俺、射撃は上手くないしな。20mまでならそこそこ命中率はあるけど、それを越えると当たらなくなってくる。絶対半径はレキに圧倒的なほど劣る。

 

 とまぁ、そういう基礎的な部分から。

 

 ただ負けないことだけなら、元々の眼の良さも相まって得意だが、訓練で勝つとなると攻め手に欠けるというかやはり経験不足は否めない。

 

 別に本番では、ぶっちゃけ何でもありだから幾らでもやりようはあるけど。こっちには初見殺しの超能力もあるし。

 

 不知火も当然、訓練は真面目に参加しているが底は見せないように動いている。そういう奴はかなり強い。人の過去に興味はないが、かなり経験を積んできているのだなと分かる。敵には回したくないな。

 

「……」

 

 そして、今謎の乱入者と戦っているのは火野ライカ。神崎の弟子である間宮あかりの友だちの1人。俺とも多少は交流はある自称異性は苦手女子。

 

 女子で比較するとかなり長身で俺に近い身長の持ち主。身体能力もかなり高かった。たしかCQC――――軍隊や警察が扱う戦闘術が得意だったはず。

 

 たまに稽古をつけること……っていうか流れで戦うこともそれなりにある。

 

「そういや……」

 

 火野で思い出した。アメリカでは火野の親父さんと会話したな。

 

 本人にそのことを伝えるか少し迷ったが、わざわざ先輩から後輩に父親のことを伝えるのも、いきなり家庭のことを話題に出されたら迷惑だろう。例えば、いきなり材木座が小町の話題を興奮気味に始めたらそのふくよかな腹を目一杯殴る自信しかないまである。

 

「それで、対戦相手は?」

「比企谷君、こっちからなら見えるよ」

 

 と、不知火に案内され人混みがまだ少ない場所へ移動する。

 

 ここからならわりと見えるな。おっと、珍しい。火野が圧されている。というより、受けに回っており得意のCQCを発揮できていない。防戦一方だ。相手は火野と比べかなり小柄みたいだが、体格差があるのにここまで圧すとは……。

 

「やっぱり僕には見覚えないね。あの動きは……何だろう、功夫に近いのかな」

 

 どれどれ、俺も対戦相手をじっくり確認するか。えーっと……。

 

 ……………………。

 

 …………。

 

 ……。

 

 げっ。

 

「悪い不知火。俺帰るわ」

「えっ」

 

 不知火の驚愕した声をよそにそそくさとその場を立ち去る。

 

 道場破りが誰なのかは分かった。どうやらまことに不本意ながら件の人物は俺と知り合いだった。しかし、その人物と会うと話がねじれの位置ほど拗れることは容易に理解できる。

 

 ねじれの位置の場合、拗れるというよりそもそも交わることはないのだが。平行線とも違う。平行線なら万が一、どこかが斜めになれば交わるが、ねじれの位置は何もかも軸そのものが違う。万が一も交わる可能性は皆無だろう。

 

 正直な話、どうしてここにいるか問い詰めたい気持ちはあるが、一時の欲求に従って身を破滅に追い込むほど愚かではない。リスクリターンの管理はできている部類だ。

 

 つまり――――

 

 

 君子危うきに何とやらだ。

 

 

「――――あれ、八幡!?」

 

 わりと離れているのに目敏く俺を発見するか。

 

 くそ、見付かった。走るか!

 

「逃がさないよ!」

 

 との叫び声と同時に何か黒い影が視界に映る。

 

「コイツら……」

 

 ……どうやら体育館の入り口にいつか出会った闘犬が3匹配置されている。他の生徒を押し退け俺の行方を阻むように威嚇している。

 

 この程度、強引に突破することはできるが……。

 

「……はぁ」

 

 如何せん目立ちすぎた。さっきまで火野と戦っていたのに火野やギャラリーも一斉に俺の方へ視線を投げかけている。

 

「比企谷君? 知り合いなのかい?」

「悪いな不知火。これ以上はあまり詮索しないでくれ」

 

 ここで一瞬でも足止めを喰らった時点でどうやら俺はゲームオーバーのようだ。不知火には申し訳ないが、とりあえず不知火と離れて渦中へ近付こうとする。

 

「…………何のつもりだ、猛妹」

 

 睨みながら訊ねる。精一杯の抵抗の視線を浮かべて。まぁ、向こうは俺の心情なんて気にせず、笑顔で手を振っているが。

 

 ――――猛妹。

 

 中国のヤクザ組織である藍幇の一員。何だかんだで俺と因縁のある相手だ。長い髪をポニーテールの要領でくくり武偵高の制服を身に纏っている。

 

 ……はぁ。全く、なんでこんな血生臭い場所にいるんだ。

 

 ため息をつきながらギャラリーの間を通って猛妹に近付く。いつもうるさいアホ共が無言で左右に別れ俺に道を譲ってくれたが、それはまるでモーセの十戒のようだった。

 

「んー、暇だったのはたしかよ? 今回はただの慰安旅行。東京まで観光に来て、そういえば八幡ってここ辺りに住んでたなーって思って来ただけ。ホントは会いに行きたかったけど、そもそも住所知らなかったからね。なんか前とは違って引っ越ししていたみたいだし。……会えないと思ってたけど、まさか八幡から来てくれるとはね。これって運命?」

「俺からすればアンが付くな。間違いなく不運だわ」

 

 千葉のときと違って、完全な偶然と言い張るつもりか。いやまぁ、俺が引きこもっていれば出会わず済んだのも事実なので、それもそうかと猛妹の言い分に納得する。あとで諸葛に苦情送ろうそうしよう。

 

「そんなことを言うなんて……八幡酷い!」

 

 可笑しいな。骨のヒビの痛みはないのに今度は頭が痛くなってきた。

 

「あのー……」

 

 と、完全に置いてけぼりの火野が俺に声をかける。

 

「悪いな火野。中断させてしまって。おら猛妹、続きやれ」

「なんで命令口調なの? それはそれで悪くないけど」

 

 いやなんで頬を赤くするのだ……。

 

「いえ、別に大丈夫なんですが。その、ずっと圧されていたし……。えーっと、猛妹さん? って比企谷先輩の知り合いなんですか?」

「否定したいところだけど。ちなみに中国のデカいヤクザだからあまり関わり持つなよ。なんなら逮捕して牢屋に突っ込め」

「うるさいよ。あとその言い方止めて。知り合い云々に関してはめちゃくちゃ関わりあるよ。胸を張って肯定するところだよ」

「張る胸ないだろ。お前は特に」

「――――あ? やるか?」

 

 お、おう……ごめん。

 

 ふと漏らした俺の言葉に猛妹は過敏に反応する……そのドスが利いた声止めて。少しビビったから。

 

「これも4つ子なのが悪いね。そりゃ4人で栄養分けあったら体も胸も小さくもなるね…………くそぅ」

 

 なんかブツブツ言っているし。

 

「……まぁいいね。それで? 八幡はどうしたの?」

 

 切り換えきれてないのか若干顔が赤いまま俺に疑問を投げかける。

 

「病み上がりでしばらく動いてなかったから軽く運動がてらここに来ただけだ」

「ふーん。じゃあ私とやる?」

「ねぇ話訊いてた? 病み上がりでお前とやる奴いな――――ッ」

 

 言葉を遮るように俺の頭に向かってハイキックを繰り出す猛妹。それどちらかと言うと空手に近い動きだろ。柔軟性スゴいな。

 

 と、そんな場違いなことを思いながら、俺は俺で咄嗟に足首を掴む。

 

「……おい」

 

 俺はある気まずさを感じつつ視線を逸らしながら抗議の声を上げる。

 

「いいじゃん。お互い暇ってことでしょ? ――――それより手、放して。パンツ丸見えなんだけど」

「ならスカート履いてハイキック選択するな」

 

 白ですね。

 

「えっち」

「冤罪だろ」

「その割にはガン見したくせに」

「1秒しか見てない」

「見たじゃん!」

 

 めんどくせぇ……。

 

「よし、八幡のリハビリに付き合うよ。そこのえっと……ライカも手伝って。2人で八幡仕留めるよ!」

「えっ、私も!?」

「えぇ。2人で八幡ボコボコにするよ」

「は、はい……先輩、久しぶりにお願いします!」

「ちょっといきなりお前らはハードル高いんだけど」

 

 と言いつつ即座に腰を落とし構える。言い合いからも臨戦態勢を取っているのはもうこの世界に染まっている証なのか…………。

 

 

 

 

 

 ――――5分後。

 

「……ちょっと八幡。なんで攻撃してこないの」

「というより、よく防げますね」

 

 ひたすら防御に徹していました、はい。

 

 火野と猛妹だと攻撃に高低差があるので捌きにくいったらありゃしない。猛妹の戦闘は変則的、火野の戦闘は正統的、という印象で俺の動きも狂うから大変。

 

 まぁ、今回は互いに武器なしだったのが幸いした。素手なら大分楽だった。それでも、いつも以上にしんどかったけどな!

 

 5分ずっと攻め続け疲れたのに疲労が溜まったのか一息入れるために中断した猛妹は俺に話しかける。それに火野も同意を入れるために動きを止める。

 

「ハァ……くっそ疲れた。こちとら体鈍ってんだよ。捌くのだけで精一杯だわ」

「鈍っててこれですか……やっぱり先輩強いですね」

 

 肩で息をする火野がそう述べてくれる。

 

「八幡、これじゃつまんなーい。もっと本気出してよ」

「現状これが精一杯って言ったろ。お前ら攻撃させてくれる隙間すらなかったっつーの。ていうか、本気出すならそれなりに準備してからやるわ」

 

 あともうちょい人目ない場所なら頑張る。正直なところ、強襲科がいきなり超能力使ったら教師やSSRに何されるか分かったもんじゃない。

 

 それに今日は超能力があまり使えない日だ。ムリなもんはムリ。

 

「それでもスゴいですよ。ハァ、私、これでも何年も訓練してきたのに、自信なくしちゃいそうです……」

 

 男勝りな性格をしている火野が珍しく女子らしい仕草で肩を落とす。

 

「そこに関しては……うん、潜ってきた修羅場の差かな。それはもうどっかの中国ヤクザのせいで大変な思いをしてな。……まぁ、俺は武偵初めてまだ2年経ってないが、こういう純粋な訓練で得られる経験値と、変則的な事態の対応とかはまた別の種類だし」

「……」

 

 そう言いながらチラッと猛妹を睨むがシレッと逸らされた。コイツ……!

 

「あとはあれだ、今回俺は攻めないって決めてたからな。多分攻めようと動いていたら、お前ら相手だとその内どこか隙突かれていたからあまり気にするな」

「は、はい……」

 

 

 

 その後しばらく火野にアドバイス的なのを話してからもう時間とのことで。

 

「今日はありがとうございました。また稽古つけてください」

「ライカ、じゃーねー!」

 

 火野は去っていきギャラリーも各々自身の訓練へと戻る。俺は猛妹に振り向きため息交じりに。

 

「……で、多分話あんだろ。場所変えるか」

「まぁね。話ってほどじゃないけど、世間話、近況報告くらいなら。せっかく会えたことだし」

 

 といっても、猛妹と話すところをあまり他の人には見られたくない。そして、俺たちの部屋の場所を知られるのも可能なら避けたい。

 

 となると、どこか店に入るのも微妙。かといって他に秘匿性のある場所になる。

 

 そういうわけで――――

 

 

「――――で、なんで私の部屋なのかなぁ?」

 

 

 理子の部屋へお邪魔する。

 

「ホーントに邪魔だよ。しかもよりによってまさかの猛妹といるし」

「ジャンヌは留守だったし、お前がちょうどいいかなって。互いに俺らのこと知っている相手だろ」

「いやそうだけど、私も用事ってもんが……ハァ。別にいいや。後回しにできるくらいの内容だし」

「やっほー、理子。よろしくね」

 

 こたつで漫画を読みながらゴロゴロしていたみたいだし、セーフってことにしておいてくれ。

 

「ていうか猛妹はどうしたの? 他のココは?」

「旅行している最中。今私がこうやって別行動で、みんなは新宿に行くって言ってた。あ、でも1人は完全に別行動よ。仕事で」

「まぁ、騒ぎ起こさないならいいけどさぁ。私巻き込まないでよ」

「大丈夫。そんな気はないよ。それに諸葛もいるから安易に問題起こせないね」

「ふーん。アイツがねぇ。あ、ハチハチ、体はもう大丈夫なの?」

「とりあえずは動いても問題なさそう」

「ん? そういえば病み上がりって言ってたね。どしたの、風邪?」

「いや、ちょっとロボットと戦ってケガした」

「なにそれ……」

 

 事実なんだけどな。

 

「って、あー。あれか。さっき武偵高で道場破り云々の噂流れてたけど、これって猛妹のことか」

「そうだな。まさか噂の渦中がこれとはな」

「これとは何よ」

「で、今さらだけど何しに来たの、そこのお二人さんは」

「世間話……かな?」

「あっそ。ていうかレキはどうしたの? これ黙っていていいの、ハチハチ」

「レキは今里帰り。別段報告することでもないが、まぁ雑談がてらまた話しとくよ」

「え、レキいないの。会いたかったのにー」

 

 猛妹ってレキと仲良かった? 会う度レキから暗殺仕掛けているイメージしかないんだけど。果たしてそれは仲が良いと言えるのだろうか、ボブは訝しんだ。…ボブ、グエル、うっ頭が……。

 

「そういや猛妹に訊きたいことあるんだけどさ」

「うん。あ、理子。そのおやつちょうだい」

「はいはい」

「お前らのとこに色金使える奴いるだろ。チビッ子だっけか」

「候のことね。どしたの? まさか……あぁいうのが好みとか?」

「いや、俺その候とやらと会ったことも話したこともないからな? チビとしか情報知らないし。そうじゃなくて、アイツってどこから緋緋色金を持ってきたのかなーって」

「うーん、言っておくけど、あの子、私たちより何倍も長く生きているからそんな細かい記録まで残ってないよ。なに、八幡は緋緋色金の大元がどこにあるのか知りたいの?」

「そういうことだな。んー、これはただの興味本位だけど」

 

 世間話に振る内容ではないと思うが、気になってから訊ねてみた。あと単純にこの3人はそれぞれ色金の関係者だからな。共通の話題でもある。

 

「どしたのハチハチ、緋緋欲しいの?」

「欲しいわけではない。俺もう色金持っているし。……何だかんだあって神崎の色金問題をどうにかしたいと思っていたんだ。まぁ、もう手詰まりというか、できることなさすぎて、あとは遠山に任せるレベルになったけどな」

「ふーん。もし本体の居場所知ったとして、八幡はどうしたいの?」

 

 猛妹の言葉に少し考える。

 

「さぁ? 本体の居場所を知ったところでなぁ、というのはある。本体どうにかしても神崎を守れるわけじゃないし。ここからはもう遠山しか多分解決できないと思う」

「というと? なんでキー君だけなの? ハチハチじゃダメなの?」

「緋緋があぁなった原因に、昔に恋と戦争に魅力を感じたってのがあるらしい。戦争の方は神崎が人を殺すレベルの戦いにならないと乗っ取りはできないらしい。……で、問題は恋。これはもう神崎が遠山にゾッコンレベルだからな。これを解決できるの遠山しかいない」

 

 それに、と付け加えて。

 

「……外的要因でどうにかできるかと思ったが、アメリカに行ってもどうもこれが難しくてな。正直なところ、マジで手詰まりってところだ。まぁなんだ、眠り姫を起こすことができるのは王子様だけだろ」

「……おぉ、ハチハチには似合わないほどロマン溢れるセリフだね」

「喧しい」

 

 自分でもそう思うけどね。

 

「だからまぁ、もうここから先は興味本位なんだよな。色金の出自とかも気になるし、別に誰のためでもなく、ただただ知りたいから調べてるって感じか。暇だし」

「そうは言ってもね八幡。私……ココ姉妹も色金に関してはそこまで詳しくないよ。一応、立ち位置的には傭兵……雇われてはいないけど、そんな感じだから」

 

 と、猛妹は唐突に少しポカンとした表情になって。

 

「ていうか八幡」

「どうした」

「ここにいる私たち以上に色金に詳しいの身近にいるよね」

 

 誰?

 

「ん? 他に知っているのは……レキと神崎に遠山…………あ、星伽さんか。そういや、前に色金について相談持ちかけられたことあるな」

「そうそう。たしかね、星伽は緋緋色金の巫女のような立ち位置らしいよ」

「ほーん。つまり、レキが漓巫女だから、星伽さんは緋巫女ということか?」

「多分この中なら一番詳しいと思うよ。さすがに本体の居場所を知っているかは分からないけどね」

「でも今不在なんだよな。……理子は星伽さんがどこにいるか知ってる?」

「実家じゃないかなぁ? 帰省するって言ってたよ。たしか青森の方」

 

 せんべいをバリバリ食べながら答える理子。

 

 ほう、青森か。距離から考えて普通に行ける距離だ。最近海外行くこと多かったから距離感マヒしているかもしれない。

 

 ……よし。

 

「理子も猛妹もありがと。ちょっと行ってくるわ」

「えっ、行くって青森に? ……ハチハチってそんな自分からアグレッシブに行動する奴だったの?」

 

 さらっと失礼なこと言うなおい。俺もそう思うけど。

 

「普段なら動かないけどな。今回に限っては……漓漓に恩があるから、神崎を救うためのできる限りの可能性は試したいと思うし……さっきも言ったようにあとは興味本位だな」

 

 まぁ、アメリカで俺のできることはもう出尽くしたと思うから遠山任せになるだろう。だから、これはホントにただの興味本位でしかない。奥歯に引っ掛かった何かをただ取りたいだけだ。

 

 それと、ここまで来たら結末も気になるからな。せめて、少しは現場の近くにいよう。……とりあえず星伽さんの実家がどこなのか調べないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近、誰に見せるわけでもないラブコメ小説を書いている。まだ一割もいいとこのスローペースだけどね

それはそれとして、早く暖かくなってほしい。ツーリングになかなか行けないの辛い。寒いの大変

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