モモンガさん、世界征服しないってよ   作:用具 操十雄

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内容がそんなに濃くないので二話投稿しました。


領内視察

王都に戻る二人を見送ったアインズは、執務室に戻りアルベドと話をしていた。

デミウルゴスとパンドラの姿は、久しく見当たらなかった。

「領内視察に行こうと思うのだが。」

「はい、私は空いております。」

「王都に戻る二人に、護衛のシャドウ・デーモンをつけてくれ」

「護衛は手配済みでございます。私も支度を致します。」

「武装は必要ない。まずはカルネ村に行くぞ。」

「はい、アインズ様。」

 

 

 

カルネ村はあれから順調に発展を続け、周辺のナザリック支配地域と友好的な関係を構築している。

 正門前に転移後、様子を窺っていると声が聞こえた。

 

「アインズ様!お久しぶりです!」

ありのまま死の支配者(オーバーロード)だったのだが、すぐにアインズだと気づいたらしい。

デスナイトやゴブリンと仲良く暮らす彼らが、今更アンデッド一体で驚くことは無かった。

 

「……エンリ……エンリ・エモットだったな」

「名前を覚えて頂きありがとうございます! 今、城門を開けますので少々お待ちください!」

 

デスナイトが城門を開き、エンリがこちらに走ってくる。

「あ……綺麗……な人……アインズ様、隣の美しい方は王妃様でしょうか?」

初めてアルベドの素顔を見たエンリは、ごく自然に彼女の琴線に触れた。

 

「くふ、くふふ。」

「……護衛のアルベドだ」

金色の目と向日葵の髪飾りを光らせ、怪しく笑うアルベドには触れない。

 

 

「その髪飾り、可愛らしいですね。」

「くふふふふ……失礼。エンリ、名前を覚えておくわね」

「はい!ありがとうございます。」

 見下している人間種にも拘らず、アルベドの中で評価が上がった。

 

「……行くぞ、アルベド」

嬉しそうな彼女に構うことは無かった。

公衆の面前で押し倒されたら堪ったものではない。

アルベドは一人で引き剥がせないのだ。

 

 

「あのー……本日、ヤト様は」

「あいつは王都にいるが、会いたかったか?」

歩きながら談笑するアインズに、からかう響きが混じっていた。

 

「わ、私ではないんです。家に泊まっている林檎が好きな女の子が、まともにお礼を言っていないので会いたがっていました。」

「王都から誘拐してきた孤児か。」

「はい、そうです。あの娘のお兄ちゃんはひょうたん湖に行ったので、寂しいんだと思います。ヤト様のお嫁さんか妾になるって聞かなくて。」

年端のいかぬ少女に、誰が入れ知恵したのかと気になった。

 

「…………ヤトは結婚したのだが。」

「ええええ!?」

カルネ村はヤトが王都での殺戮後、貴族の報復を警戒して一時的な封鎖をしていた。

 必然的に旅人や冒険者は村を訪れず、情報の回りが鈍い。

 

エンリの驚きを見る限り、ヤトが王国貴族と婚礼した事はおろか、魔導国になった事さえ気付いてないのではないかと思う。

心配は後回しにして、エンリに村の案内を頼んだ。

 

カルネ村内では順調に畑を耕し続け、その面積を広げ続けている。

城壁の位置はその都度移動され、歪な高低差があった。

「ここはルルイエか……」

(しらふ)で呟いた声は、誰にも聞かれなかった。

 

 

デスナイトが、フランベルジュで畑を耕している。

「無理に城壁の内部で開墾する必要ないのではないか?」

「みんな王国の貴族に畑を取られるーって言うんです。ふふっ、心配し過ぎですよね。村長(デスナイト)さんが守ってくれるから、大丈夫だと思うんですけど。」

明るい太陽の下で、エンリは笑った。

 

ゴブリンが少年少女を含む村人たちと、土に塗れて農作業に従事していた。

楽な仕事ではないのだが、畑の近くでは笑い声が絶えなかった。

休憩時間なのか、人間とゴブリンの子供が一緒に遊んでいる。

種族を超えて、共に遊んでいる子供達が微笑ましかった。

「平和だな。」

「皆さまのおかげです。」

「アインズ様、今後は全ての領地で見られる光景になるかと思われますわ。」

「そうだな……」

 

 

「以前に法国の人が偵察に来ました。」

「……なに?」

「大丈夫です。お父さん達がデスナイトさんと追い払ってくれました。」

「……そうか」

ツッコミ箇所が多かったが、エンリの明るい笑顔に押し切られた。

 

 

エンリに案内されて村内を視察したが、アインズに気付いた村人達は全てが跪き、手を上げて通過する後ろを付き従うので、まるで大名行列だ。

気楽な領内視察をする予定が、仰々しい行列に代わり重苦しくなってきていた。

重たい肩を軽くするため、付き従う村人を広場に集めて、魔導国の説明を行った。

 

 

「そういうわけで国王と話を付け、今はアインズ・ウール・ゴウン魔導国へ変わったのだ。」

ヤトの虐殺は黙っていた。

 

「アインズ様、カルネ村は皆様の支配下に入ったのでしょうか。」

顔を上げた農作業で鍛えた逞しい男性が、跪きながら尋ねる。

 

「う、うむ。そういう事になる。」

「ありがとうございます!村の名前を変えてもよろしいですか?」

「それは構わんが、どんな名に変えるつもりだ?」

「カルネ・アインズ・ウール・ゴウンです。」

「……」

 

沈黙で応えたアインズに代わり、アルベドが村人を煽る。

「栄光あるナザリックのために、忠義を尽くしなさい。貴方たちは崇高なる神の庇護下に入ったのよ。称えなさい、主たるアインズ様の御名を。」

丁寧に煽られた村人達は、喜々としてアインズの名を称えていた。

 

「アインズ・ウール・ゴウン魔導王万歳!」

集まった村人達は拳を上げて、新たな王を崇拝する。

 

まぁわかりやすいからいいか。仲間がきたらすぐに気が付く………本当にいいのか?俺、間違ってない?

 

この日から、カルネ村はカルネ・AOG(アインズ・ウール・ゴウン)に変わる。

 

 

 

「ふむ……試作品としては質が高いな」

濃い紫色の液体が入った小瓶を揺らす。

ポーション製作所となっている、バレアレ家の邸宅で彼らの報告を受けていた。

 

「感謝していますぞ、アインズ様。」

老女リィジー・バレアレは怪しい笑みを浮かべた。

研究だけに打ち込める現在の環境に、彼女はとても感謝をしていた。

「よい、気にする必要はない。これからも研究を続けるがいい。」

 

「時にンフィーレア、エンリとの仲はどうだ?」

「はっはい!進んでいません。」

隣で畏まって座っていた彼は、肩を落とした。

「……そうか」

 

恋愛相談には乗れないからな、ヤトに話してみるか。ンフィーレアはナザリックのポーション制作を担う存在だからな。

 

「頑張れよ、領内の人間が幸せでなければ、私が統治する意味が無いからな。」

「ありがとうございます、アインズ様。」

アルベド並みに報われていないンフィーレアを一瞥し、次の調査に移った。

 

 

その後、食料自給率、交易状況などを細かく調査を行う。

食料備蓄が少ない報告に関して、援助を約束し次の領内へ向かった。

 

アインズが村を出たあと、やる気という劇薬を過剰に投与された彼らは、今まで以上に農作業と交易に励む事になる。

 

一人だけ失恋の苦痛により、一晩中泣き続けた少女がいたが、村の発展からすると大した問題ではなかった。

蛇に失恋した林檎が好きな少女は、エンリの妹ネムに慰められながら、狭いベッドに二人で眠った。

 

 

「農地拡大……か。アンデッドを使った広大な農場は、カルネ村で試験的に行うとしよう。次は蜥蜴人(リザードマン)の集落だな」

「はい、アインズ様。」

 

 

 

「ラキュース、上手くいくかな?」

「大丈夫ですよ。あの方はとても美しいのですから。」

 王都執務室で休憩中の二人は、悪戯の成功を願う子供のようだった。

 

 

 

 

蜥蜴人(リザードマン)集落へ転移した二人を、周囲にいた者が出迎えてくれた。

茅葺き屋根の邸宅から、族長のシャースーリューが出てくる。

「これはアインズ様、お久しゅうございます。」

「うむ、魚の養殖と各地の交易状況を教――」

話は伝言(メッセージ)にて遮られた。

 

《アインズ様》

 

《ナーベラルか、どうしたのだ?》

 

《宿に蒼の薔薇が訪れ、モモン様に会いたいと申しております。》

 

《……お引き取り頂け》

 

《かなりしつこいのですが》

 

《……逃げて姿を隠し、帰るのを待て。今は私も手が離せん》

 

《畏まりました。》

 

 

「まったく仕方のない奴だ、何か考えなければいかん……あぁすまんな、族長。では養殖場を見せてくれ」

「はい、こちらです」

一行はひょうたん湖に向かった。

 

 

「第三世代まで進んでいるのか。」

「はい、生け簀は現在3つですが、増やすことを検討しております。非常に順調です。」

「そうだな、この分なら魚を売って保存可能な食料を備蓄する事も容易だろう。」

「アウラ様がお時間のある時に、ご協力を頂いてるおかげです。」

 

え?そうなの?俺、そんな命令したっけ?

 

「う、うむ。流石はアウラだ。」

 

解せない内心は、誰にも悟られなかった。

 

「足の生えた魚は生まれるか?」

「え? えー……いえ、そのような奇種は確認できません」

「そうか……やはり海に問題があるのか」

顎に指をあてて悩んでいると、遠くから他の族長がこちらに歩いてくる。

 

「アインズ様、どうも久しぶりじゃねえですか。」

 少し敬語を勉強したゼンベルと、知性の高いリザードマンが跪く。

 

「お会いできて光栄です。隣の方は王妃様でございますか?」

「くふふふ……」

 

再び怪しく笑うアルベドには触れないでおいた。

 

「護衛のアルベドだ。」

 

彼女が露骨に肩を落としたが、何も言及しなかった。

 

「両名、元気だったか?」

「運動不足で体がなまっちまってやすぜ!」

 

ゼンベルは両腕を振り回していた。

 

「平和なのは良い事です。もうじき食料も軌道に乗り、備蓄食料の数量を心配するだけでよくなるでしょう。」

 

振り回されるゼンベルの腕を、横に一歩動いて避けたリザードマンが、詳しい説明をしてくれた。

 

「そうか、生け簀の数を増やして我々に供給する分も作れるか?」

「すぐに可能です。カルネ村からの助っ人がおりますので、すぐに取り掛かりましょう。」

「よろしく頼む。白いリザードマンとシャースーリュー弟はどうした?」

 

アルビノのリザードマンはコレクションとしての一品であり、動向が気になっていた。

 

「二人は結婚し子を成し、家で安静にしております。聞くところによると母親似だとか」

 

爬虫類の蜥蜴人(リザードマン)は多産生物とは違い、一匹しか生まれなかった。

 

「どこもかしこも続くものだな……」

「アインズ様、おめでたいことは続くものですわ。」

「アルベド……結婚させろと言っているのか?」

「いえ、私のような者がアインズ様と結ばれるなど、許されません」

 

悲観的に言いながら微笑むアルベドが、裏に何かありそうで怖かった。

彼女はここ最近、以前と比較して大人しい。

 

アインズが警戒するほどに。

 

「……う……いや、そんな」

「私は、アインズ様への愛慕とともに滅びる所存です。」

「……」

「……」

重たいことを言って微笑むアルベドに何も言えない。

沈黙に気まずくなりゼンベルに話しかけた。

 

 

「ゼンベル、魔導国の軍事強化を検証したい。王都へ向かいヤトという私の友人に会ってくれ。」

「そりゃ構いやせんが、何をするんですかい?」

「冒険者をやるのだ。依頼内容であれば好きに暴れて構わん。必要であれば部下を連れて行ってもよい。」

「よろしいんですかい?」

「ああ、ヤトにレベルアップ……強くしてもらえ。リザードマンがどれほど強くなるかの実験だと思え」

「そういうことなら喜んでいきやすぜ!」

 

うおー!と両腕を高く上げるゼンベルは、御子の誕生を妄想する蟲王(ヴァーミンロード)に似ていた。

他と比べて血の気の多い彼は、大人しい生活では暴れ足りなかった。

 

「飲み食いは向こうで出来るから食料を持っていく必要はないが、あまり食い過ぎるなよ?」

「……気をつけやす」

その点だけが、一抹の不安だった。

食料自給率まで、まだ手を付けていないのだ。

ゼンベルはとても残念そうだ。

 

 

リザードマン集落では、初めからこちらが目的だった。

評議国で見た武装したエルフ、ドワーフ、ゴブリンなどの亜人が、冒険者プレートをぶら下げていた。

 

 

魚の養殖が芳しくなかった場合、森の蛇に食料を分けて貰えばよい。

一通りの状況を把握した二人は、トブの大森林を省略してナザリックへ帰還した。

 

「さて、戻ってスケルトンを農業に従事させる準備をしよう。ヤトにも連絡をしておかねば。」

 

 

 

ナザリック執務室にて一通りの情報精査を行なった。

 一段落付き、アルベドの様子をそれとなく窺う。

 

「アルベド、すまなかったな。内務を疎かにしてまで付き従い、感謝している。」

「勿体なきお言葉でございます。」

「お前にも何か報いてやらねばならないな。何か希望はあるか?」

一通り見回って今後の展開を想像するアインズの機嫌はよかった。

一日デートくらいは付き合ってやろうかと、想定した提案だった。

彼女の愛を軽く見ていた。

 

 

「ではお話を伺ってもよろしいでしょうか。」

「なんだ、そんな事でいいのか。今でも構わんぞ。」

「アインズ様。太陽神に恋をした海神の娘は、報われることなく九日間涙を流し続けました。」

「うん?」

何の話かわからず、不思議そうに聞き返す。

 

「それでも太陽を見上げながら、報われぬ恋心を忘れない娘は、愛しい者を見続けるために、向日葵の花になったと言われています。」

「……」

 

冷静沈着なアインズにも、彼女の言いたい事が伝わる。

愛の告白をするつもりなのだろうと。

 

何も答えないアインズの足元に跪き、“完全なる狂騒”を取り出す。

 

パーン!

 

「うえっほう!待て待て何だこれは!何てことするんだ、アルベド!」

アインズの頭には、色とりどりの紙片が乗っている。

今一つ、深刻さに欠けた。

 

 

「アインズ様……私の愛するアインズ様。私はどのような罰でも受けます、ですが今はそのまま私の話をお聞き下さい」

 

ええー!?俺テンパってる!テンパってるよ!安定の精神沈静化はどうした!

 

あたふたして髑髏に手を当て、落ち着きなく顔を動かす。

アルベドは動揺する君主に微笑ましい内心を抑え、そのまま言葉を続ける。

アイテムの効果は事前に説明があり、彼が激しく動揺している事は把握していた。

 

 

「慈悲深きアインズ様。御身に報いるのは一つしかありません。御慈悲を頂く事でございます。」

 

御慈悲ってアレか!?アレがアレでアレができないよ!

 

アインズの動揺は鈴木悟のものであったが、必死に口を閉ざす彼の心は外に漏れていない。

両手を口に当てて頭を震わせ、アルベドに素の声を聞かれまいと必死だった。

全てを把握した上で行動する彼女に、何の効果も無かった。

 

「愛せよと命じられた私が報われていないという事は、女として魅力がなかったのですね。」

 

あーくそっ可愛いな!俺がアンデッドでなければ即!即堕ちちゃうよ!落ちるじゃなく堕ちるの方!だけど美人だななんて言うとまた抱き着かれるし。

 

「ならば私は、アインズ様に愛されないこの体を捨て、愛しい御方を見つめる向日葵の花になりましょう。」

「……え?」

動揺して軽いことを考えていた思考が止まった。

悪い方向へ進んでいると勘づく。

 

「アインズ様……いえ、我らの為に最後までナザリックに残って下さったモモンガ様。御身のお気に召さない私など、ナザリックに必要ありませんわ」

悲しく微笑むアルベドの目尻には、涙が流れ始めていた。

 

「愛しい御方に付けて頂いた、この向日葵の髪飾りを私だと思って、御所持下さい。」

アルベドは髪飾りを机に置き、ゆっくりと執務室を出て行こうとする。

 

「あ……あの、いや……待て、アルベド!」

必要以上に大きな声だった。

 

 どうすればいいんだ。実戦使用してないし、恋愛経験ないよ! どうやって止めればいいんだ。止めないと悪いことが起きるよな? 

 

 

顔を向けずに立ち止まった彼女の肩は震えていた。

喜びか悲しみかなど、アインズからすれば考えるまでもない。

ヤトが見たとしても、考えるまでも無い。

 

アインズは悲しくて泣いていると判断したが、ヤトが見れば肩が震えるほど喜んでいると判断しただろう。

どちらだったのか、彼女にしかわからない。

 

「すまない……私のせいだ。お前の設定を、タブラさんが創造したお前の心を捻じ曲げてしまった。元に戻すために」

「お止めください!」

執務室の外まで聞こえる大きな悲鳴だった。

 

振りむいた彼女は、輝く金色の目で睨んでいた。

「私から……愛する自由を奪わないで下さい」

 

 ああーアンデッドなのにー堕ちるー……アルベドって可愛いな。人間だったら優しくしてあげ、してほしいのか? わー何言ってんだ! 

 

「優しくしてほしいのですか?」

 

声が漏れてたよ!

 

「モモンガ様……ご用命とあらば、即座にそう致します」

 

くそ、蛇公(ヤト)が余計な事言うから変に意識するだろ。

 

「愛されたいのはアインズさんじゃないッスか?」と小馬鹿にしていた大蛇を思い出した。

 

「ゴホン! いや……すまない、アルベド。アンデッドでなければ」

「何の問題がございましょうか。愛するために人生を費やす事こそが、私の理想でございます。」

胸に片手を当て、一歩前に踏み出した。

 

「あのーアンデッドだと色々と体が――」

既に支配者の声色ではない。

この場を乗り切ろうと必死になっている彼の声は、鈴木悟としてのそれなのだ。

自分でも何を言ってるか、把握していたのか怪しかった。

 

「愛する人が何であろうと、ご寵愛が得られるなら、他に何もいりませんわ。」

顔に両手を当てて虚ろに微笑むアルベドは、動揺しているアインズ(サトル)に誤魔化せなかった。

 アルベドはこれまでの情報を基に、聡明な叡智を総動員しているのだ。

対してアインズ(サトル)は、美人だなーと呑気に考えていた。

 

「アルベド……」

事前に執務室周辺に人払いがされている。

第三者がいれば、妙な雰囲気にはならなかっただろう。

 

「ラキュースはヤトノカミ様を愛し、お二人は婚礼を行いました。種族の違いなど何の障害にもなりえません。いえ、障害が大きければ、より一層深くなるのではないでしょうか。」

アインズ(サトル)の頭に浮かんだ仲睦まじい二人が、自分とアルベドに置き換えられる。

 

「あ……ある……」

何かを言おうとするアインズ(サトル)に、ダメ押しで畳みかける。

アルベドは三つ指をついて平伏した。

 

「モモンガ様、たとえ御身が人間であったとしても……たとえ御身が子を成せないとしても……我らの為に最後まで残って下さったモモンガ様への愛は、揺るがぬ不変のものです」

「あ……うん……」

 

「モモンガ様は私が唯一愛する御方、私の人生、運命、全てです。ですが、モモンガ様が私をお嫌いなのであれば、私を殺して下さい。」

「なんだと?」

「いっそ愛するあなたの手で」

「ふざけるな!」

直情的な怒りで即答する。

 

「二度とそんな事を言うな!お前は私が愛するものだ!」

“皆と同様に”の部分が、都合よく抜け落ちていた。

アルベドの策は成功した。

 

彼女が愛の告白と取ったのも無理はない。

「モモンガ様……ありがとうございます……」

「え?」

 飛び込んでくるアルベドにより、沸騰した怒りは瞬間冷却された。

本気で縋りつくアルベドは、腕力の問題でアインズ(サトル)には引き剥がせない。

 

「モモンガ様……モモンガ様……」

「あ……はい」

顔を肋骨に埋めて名前を呼び続ける彼女に、それ以上何も言えない。

 

 もう結婚しちゃおうかな……蛇公(ヤト)も現地人と結婚したし。俺も29歳だからな。骨だけど。人間に化けられたら、また変わるのかな。

 

 

ペロロンチーノが頭の中で、「おめでとう!」と拍手をしていた。

隣でブレイン・イーターが笑い転げている。

 

ペロロンチーノさんだったら、ナザリックハーレム計画とか作りそうだよ。しかも主人公が俺で。この体でハーレムも何もないと思うんだけど。

 

“完全なる狂騒”の効果が切れるまで、アルベドとアインズ(サトル)はそのままだった。

 

アインズ(支配者)に戻ったアインズ(サトル)は、この日以降彼女に対する当たりが緩くなる。

彼の残された人間の残滓(性欲値18%)が、アルベドに傾きつつあると、誰も気づかなかった。

 

 

後日、上手く行きました?と迂闊に聞いてくるヤトにより全てを察し、彼を踏みつけながらこの事を思い出しては、何度も精神の沈静化を続けた。

足の下で悶える蛇神は、ラキュースが来るまで死の支配者に踏みつけられていた。

 

 

 

 

 




イビルアイの好感度→16(無下にされたわけではなく、イベント発生中)
現在好感度27、残り2回
対応指示《1逃げる 2追い払う 3一緒に依頼へ 4戦う》1d4→1

アルベドの憎悪値減少→13 憎悪値が0になりました。ここで一旦区切られます。
意識する仲間→偶数ペロロンチーノ 奇数タブラ・スマラグディナ→18

林檎が好きな少女はここで退場。
将来有望な赤毛の少女でしたが、オリキャラ増設は禁止です。



補足
原題:中間管理職の恋路(パッとしないので没)

Qアルベドの告白が誰かに似ている?
そうでしょうね、入れ知恵したどこぞの嫁がいます。

Q北欧神話がモデルのユグドラシルなのに、アルベドがギリシャ神話を知ってんのはおかしい?
蛇らしき生物が何か言ったのではないでしょうか。

Q完全なる狂騒を、支配者に向けて躊躇いなく使う?
別の至高の41人がいれば、その者から命じられて使うでしょう。
自分の愛が報われれば、アインズのためになると教えられれば躊躇いません。
愛は都合のいいものです。盲目の愛は、洗脳と何も変わりません(今後も有効)。


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