「「「いただきます!」」」
平沢さんの家に到着して、程なくして、食事の準備ができた。俺も手伝おうとしたけど、姉妹揃って、座っててくださいね、と言われたので、大人しく二人の姿を眺めていた。
どうやら普段から、妹の方が食事、というか家事を全てこなしているようだ。何故かというと、姉が何かやろうとする度に、妹は、危なくない・誰でもできる作業を割り振っていた。この子……できるな。
「うま……」
思わず感想がこぼれる。なんだこのハンバーグ、店を開けるんじゃないか!
「あ、ありがとうございます!……嬉しいな」
妹さんは照れながら礼を言ってくる。
「私もがんばってお皿ならべたよ~」
「小さい頃から料理してるの?」
「あ、はい。小学生の時から、お母さんの見よう見まねで……」
「ねえねえ、私もがんばってご飯盛ったよ~」
「へえ、偉いね」
「いえ、そんな……」
「……フンス!」
突然ハンバーグが1つ奪われた。あれ、怒ってる?
「あ、お姉ちゃん!もー、何やってるの?」
「ふ~んだ……憂ばっかり誉めて」
最後の方はボソボソいうだけで聞こえなかった。
そんな様子に妹さんは頬を膨らませた。
「アイスあげないよ」
「む~」
妹さんの脅しで、俺の皿にのっけてくる。
……つけ合わせのジャガイモを。
「もー、お姉ちゃん!」
「な、何かごめん。平沢さん」
俺の言葉に2人が、ピクッと反応する。
「江崎さん」
「はい」
平沢さん(姉)がイタズラっぽく笑いながら、こちらに顔を寄せてくる。
「唯って呼んでください」
「え?」
「だって平沢さんじゃどっちかわからないよ」
「じゃあ、唯……さん」
「呼び捨てでいいよ~」
「……唯」
平沢さん(姉)……じゃなくて唯はうんうんと頷く。
「じゃあ江崎さんにはこれを進呈しよう~」
そう言いながら、ハンバーグを戻してくる。よかった。
「あ、あの!私も憂って呼んでください!」
「あ、ああ……憂」
「はいっ!」
そんなこんなで賑やかに夕食の時間が過ぎていった。
*******
「ごちそうさま」
「お粗末さまです」
食べ終えると、憂は手早く皆の食器を片づけた。本当にできた子だ。片や……
「おいしかった~」
ソファで寝転がる唯……まじか。
「江崎さん」
いつの間にか憂が隣にいた。
「ギー子の件、すいませんでした。ほら、お姉ちゃんも」
「憂が謝る必要はないし、唯ももう謝ってくれたよ。何よりあの日は俺の演奏が悪かった。てか、憂もギー子って呼ぶんだ…」
このまま浸透してしまうのだろうか。何とか阻止せねば。
「ギー太とギー子で夫婦みたい♪」
「あわわわわ!」
憂の言葉に唯が反応して慌て出す。
「い、いやいや、なんで?」
ひとりごとを言いながらおもむろにギターを弾き始めた唯に、俺と憂は首を傾げた。