ROCK-ON!   作:ローリング・ビートル

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Under Control

「はぁ……間に合ってよかったね」

「ああ……まあ、これでまたライブ経験が積める。しっかりやろう」

「はいっ」

 

 帰り道。平沢姉妹と歩きながら急遽決まったライブに思いを馳せていると、自然と口数も多くなる。自分がライブをやるわけではないのだが。

 我ながら少しはコーチらしくなってきたということだろうか。

 

「あ、あのっ!」

「?」

 

 憂がいきなり大きめの声を出したので振り返ると、彼女は言いづらそうにTシャツの裾を握りしめていた。

 隣にいる唯もキョトンと首を傾げている。

 

「憂、どしたの?」

「あの、私……今回ソロで出演してみていいかな?」

「…………」

「え……」

 

 正直予想はしていた。

 憂としては、こちらのほうが気を遣わないで済む。それと、多分だが彼女はもう気づいてる。

 その方が自分の実力が発揮できることに。

 あとは唯の反応が気になるが、妹を溺愛しているだけに、この決断は……

 

「憂、応援する!」

「「え?」」

 

 唯の言葉に、俺だけではなく憂もポカンとしていた。

 だが、そんなリアクションなどお構いなしに、唯は憂の肩をガシッと掴んだ。

 

「憂がそうしたいなら応援するよ!お姉ちゃん離れはとっても寂しいけど、憂がやりたいって言ってるんだもん!」

「お姉ちゃん……ありがとう!私、頑張るね!」

 

 よかった。どうやら丸く収まったようだ。

 そこでほっとしてしまったせいか、俺も自然と口を開いていた。

 

「ていうか、唯は日常で憂離れできてなさすぎだろ」

「っ!江崎さん!?」

「あははっ、いいんです。お姉ちゃんのお世話は私が好きでやってるんですから」

「憂!?」

「じゃあ、しょうがないな」

「江崎さん!?」

「ですね」

「憂!?」

 

 帰り道はいつもより少しだけ賑やかになった。

 

 *******

 

 夕食後、片付けを手伝っていると(唯はごろ寝中)、憂が何か思い立ったように口を開いた。

 

「あ、そうだ江崎さん。今日はお風呂に入っていきませんか?」

「お風呂?……」

 

 いきなりの提案に、いつかの事件を思い出す……。

 

「も、もうっ、そのことは忘れてください!江崎さんのエッチ!」

「いやいや、何も思い出してなんかないよ」

「顔が真っ赤です」

「…………」

 

 いや、だって……ねえ?忘れるのもったいないじゃん?

 

 *******

 

 勧められるままに湯船に遣っていると、疲れがやわらいでいくのを感じる。アパートだとシャワーですませてばかりだからなぁ。

 すると、誰かが脱衣所に入ってくる音が聞こえた。 

 

「あの、入ってもいいですか?」

「…………えっ?」

 


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