「外でライブか……」
「昔コンテストに出てた時の事思い出すわね」
さわ子さんとしみじみ呟いていると、唯が「フンス!フンス!」と気合いをいれていた。
「よしっ!じゃあ明日やろうよ、みんな!」
「「無理」」
「え~~?」
「いや、さすがに許可取れないだろうし……」
「機材運ぶのめんどくさそうだし……」
「え~~~!?ていうか、さわちゃん先生本音ダダ漏れだよ!?」
「だってほら……義昭君にすべて運んでもらうのはかわいそうじゃない」
「なんで俺が一人で運ぶの前提なんですか……まあ、さわ子さんの話はさておき、さすがにバンドでってなると難しいだろうな」
「むぅ……ケチ」
「いや、俺のせいではなくて……」
「まあまあ、お姉ちゃん」
「そもそも江崎さんのせいじゃないだろ」
「でも、屋外でライブって楽しそうねえ」
「あーあ、こう都合よくライブイベントが開催されないかな、わぷっ!」
律の顔に風に流されて飛んできたチラシが当たる。思わず吹き出してしまいそうになるくらい、上手く顔に被さっていた。
「な、何だよもー…………おおっ!イベントあるじゃん!」
「は?」
「どうしたの?」
いきなり騒ぎだした律に首を傾げると、彼女はチラシを広げ、こちらに見せてきた。
「ええと、高校生限定のライブイベント、出演者募集……マジか」
「神がかってるわね」
チラシの内容を見るかぎり、どうやら大会とかではなく、学生向けにライブの場を提供する為のイベントのようだ。
どっちにしろありがたい。実戦経験は多ければ多いほどいい。
「これも私の普段の行いの賜物だな!皆、私に感謝しろ!」
「絶対に違うと思うぞ」
「何をーー!」
「でもすごいですよ!こんな偶然あるんですね」
「りっちゃんすごいわ。ドラマの世界みたい」
皆がやたらはしゃぐのを見ながら、控えめな拍手を送っていると、平沢姉妹が静かなのに気づいた。
目を向けると、二人はチラシを見てぶつぶつ何事か呟いていた。
「わぁ……奇跡だよぉ。楽しみだよぉ。帰ったら練習しっかりやらなきゃ」
「これ、ソロでも参加できるのかな?あ、大丈夫みたい……よし、頑張ろう」
こりゃあかなり気合い入ってるな。最近練習も調子いいし、どんなライブになるか楽しみだ……って、ん?
「これ、応募の締め切り今日までだ……」
「ええっ!?」
「は、はやくしないと!」
「すぐに電話するわ!」
唐突に降ってきた幸運に少しドタバタしたが、こうして放課後ティータイムは無事にイベント出演が決まった。