しばらくしてから全員集合し、出発することになったわけだが、律はニヤニヤ笑いながら、こちらを肘でつんつん小突いてきた。
「江崎さん、ツイてますね~。休日に女子高生5人とデートなんて。このこの~」
「ああ、多分前世でたっぷり徳を積んだか、日頃の行いがいいからだろうな」
律の軽口に、それらしい返しをしていると、澪がやたらと手をわたわたさせていた。
「ちょっ、デ、デデ、デートとか!わ、私達はそんなんじゃっ!」
「…………」
「あ~、こういう奴なんで、今さらなんですが察してやってください」
うん、知ってた。
「うふふ、やっぱり澪ちゃんは可愛いわね~」
「まったくもう、律先輩が紛らわしい言い方するからですよ」
「あはは、りっちゃんおもしろ~い。江崎さん、これデートなんですか?」
「ふふっ、澪さん顔真っ赤ですね。江崎さん、これデートなんですか?」
「…………」
何だろう、左右からやんわりとプレッシャーかけられた気がしたんだが……いや、気のせいだろうな。多分もう夏だからだろう。
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「わぁ……いい場所ですね。結構人も多いし」
駅二つ分離れた場所にあるその公園は、そこそこ人も多く、賑やかな場所だった。おそらく春は花見客で賑わうのだろう。
あまりに綺麗な緑を見ていると、何だか深呼吸したくなってきた。
憂は目を輝かせているし、唯もやたらとはしゃいでいる。
「ここでお茶しようよ、ムギちゃん!」
「え~と、今日は持ってきてないから、ごめんね~」
「いや、ムギは謝らなくていい。唯が無茶振りしただけだ」
「確かにいいな。てか、梓よくこんな場所知ってたな」
「昔はここでジャズバンドのイベントとかやってて、ウチの家族も出てたんですよ。今はなくなっちゃったんですけど」
「なるほど……」
「じゃあ、私達もジャズやってみようよ!」
「思いつきで言うな。あと今日ここに来た理由を忘れるな」
「まあ、でも聴いてみてハマったらいいんじゃないか?演奏も難しいけど、慣れてきたら楽しいし」
「えっ、ジャズも演奏できるんですか?」
「さすがにバンド組むほどじゃないけど」
「でも、すごいですよ。何なら今度ウチでセッションしませんか?お父さん達喜ぶと思います」
「マジか。行ってみようかな」
やっぱり色んな人とセッションするの楽しいからな。
最近、ギターを弾くのが、高校時代のように楽しくなった気がする。多分理由は……
「「…………」」
何やら視線を感じるが、これもまあ気のせい……ですよね?