「「「「「合宿だ~!」」」」」
合宿所、もとい琴吹家の別荘を前に放課後ティータイムは気合い(?)を入れていた。澪と梓はやや照れ気味で、残り4人は思いっきり飛び跳ねて、かなり楽しみにしていた事が窺える。
ゴールデンウィーク。俺達は音楽合宿に来ていた。正直言えば、ここでもティータイムやらかすんじゃないかという不安はあるが、まあ……ちょっとだけならいい、かな?それ以上に問題は……
「本当に俺も来てよかったのか?」
一番の疑問を口にする。
女子高生6人に男1人。この悪すぎるバランスが何とも……。別に間違いが起こるとは思っちゃいないけど。
「もちろんだよ!」
唯が肩に手を置いてくる。
「コーチが何を言ってるんですか?」
「保護者役も必要だしな!」
「江崎さんなら、色んな意味で安心ですからね」
「い、色んなってなんですか?」
憂がクスクス笑いながら、隣に並んできた。
「さ、早く中に入りましょう!」
背中をそっと押され、俺は心を決めた。
*******
「すごい……」
別荘内のスタジオにて、俺はかなり頬が緩んでいた。
とにかく機材の質が高い。話は聞いていたが想像以上だ。
何ならこの機材で次のライブをやりたいくらい。
こ、こ、これは……あの憧れのプレーヤーのシグネチャーモデル……。後でたっぷり弾かせてもらおう。
「どしたの?江崎さん」
「唯。とにかくギターを繋げ。機材を弄れ。こんないいアンプ中々お目にかかれないぞ」
「な、なんかいつもとテンションが違いますね」
平沢姉妹が少し引き気味になっているが、今は気にしてなんかいられない。この感動はいずれわかってもらえるだろう。
「よし、いきなりだが皆で合わせよう!」
「え~ティータイムは~?」
「さ、律もはやく!」
「は、は~い」
律は渋々といった感じだが、まあ合わせている内にノってくるだろう。
そこでいきなり澪から両手を掴まれた。その目は微かに潤んでいる。
「ど、どうした?」
「ありがとうございます!そうですよね!これが軽音部の合宿ですよね!」
澪のこのリアクションからして、おそらく過去の合宿は……うん、考えないでおこう。
俺は彼女の手をしっかり握り返す。ひんやりとした感触に、不思議と緊張はしなかった。
「その通りだ。演奏しまくるぞ!」
「むっ」
「むむっ」
後ろから何か歪なオーラを感じたが、多分気のせいだろう。きっとそうだ。
「あらあら~」
「江崎さん、気づいていないふりしてますね」
こうして放課後ティータイムの合宿が、ゆるく賑やかに始まった。