「皆、集合ー」
練習後、メンバー全員にある提案をするため、声をかける。昨晩、憂とどうなったかって?すいません。ごめんなさい。恐かったです。朝食を作り終える頃には、機嫌が直ったからよかったけど。ちなみに、唯は何事もなかったように今日も元気だ。
……昨晩はただ寝ぼけていただけなのだろうか。
「どうかしたんですか?」
「皆に提案がある」
律に言った後、皆の顔色をうかがう。少し緊張しているようだ。
「今度の土曜日、ライブやらないか?」
「…………」
皆、ぽかーんとしている。ど、どうした?
「…………か?」
「澪、どうした?」
「ほ、ほ、本当にライブできるんですか!!?」
「あ、ああ……」
まだ詳しい事は何も話していないんだが。いや、喜んでくれて何よりだけど。
他のメンバーもいつの間にか、満面の笑みを浮かべてはしゃぎだした。
「まあ、8月に大会があるらしいから、それまでに最低週1でライブをやっていけたら、と思ってるんだけど、皆はどう思う?」
「…………」
皆ぽかんとしている。またか。
「…………か」
「梓、どうした?」
「ほ、ほ、本当にライブを毎週やれるんですか!!?」
「あ、ああ……」
とりあえずキリがないので、さっさと本題に入ろう。
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大会の話を聞いて、さわ子さんに連絡したところ、可愛子ぶって謝られた(あまり嬉しくない)。そして、放課後ティータイムのこれまでのライブ経験を聞いたところ、文化祭などの学校行事とライブハウス1回だけ、との事なので、ライブをもっと経験させてあげたい、と思い、今回このような提案をしてみた。
放課後ティータイムが本気でプロを目指しているかどうかはともかく、せっかく大会に出るなら、できるだけの事はやっておいた方がいい。ただの思い出作りよりは。
「今回は、知り合いに頼んでライブハウスのイベントのオープニングアクトをさせてもらえる事になった。社会人バンドのイベントだけど、前座ならって事で」
「オープニングアクトだって、何かかっこいいね~」
唯よ。俺も後で言い直したが、前座の事だぞ。
「毎週ライブハウスで、ということですか?」
「いや、そういうわけじゃない。場合によっては、学校の施設を使わせてもらう。だが可能な限りイベントに皆をねじ込む」
「おお……」
「学校で行事以外の時にライブをやるっていいですね」
「楽しみ~」
「どうやらやる気はあるみたいでよかった。土曜日は大丈夫?」
「「「「「はい!!」」」」」
気持ちいい返事が返ってくる。
「江崎さん、ありがとうございます!」
「あ、ああ、どういたしまして……」
澪に両手を握られる。次いで、律が肩を組んでくる。あっという間に皆にくっつかれた。しかし……
「むぅ~」
唯はむっとした顔でケーキを頬張っていた。しかも俺の分を……。