ROCK-ON!   作:ローリング・ビートル

15 / 46
PARADISE CITY

「皆、集合ー」

 

 練習後、メンバー全員にある提案をするため、声をかける。昨晩、憂とどうなったかって?すいません。ごめんなさい。恐かったです。朝食を作り終える頃には、機嫌が直ったからよかったけど。ちなみに、唯は何事もなかったように今日も元気だ。

 ……昨晩はただ寝ぼけていただけなのだろうか。

 

「どうかしたんですか?」

「皆に提案がある」

 

 律に言った後、皆の顔色をうかがう。少し緊張しているようだ。

 

「今度の土曜日、ライブやらないか?」

「…………」

 

 皆、ぽかーんとしている。ど、どうした?

 

「…………か?」

「澪、どうした?」

「ほ、ほ、本当にライブできるんですか!!?」

「あ、ああ……」

 

 まだ詳しい事は何も話していないんだが。いや、喜んでくれて何よりだけど。

 他のメンバーもいつの間にか、満面の笑みを浮かべてはしゃぎだした。

 

「まあ、8月に大会があるらしいから、それまでに最低週1でライブをやっていけたら、と思ってるんだけど、皆はどう思う?」

「…………」

 

 皆ぽかんとしている。またか。

 

「…………か」

「梓、どうした?」

「ほ、ほ、本当にライブを毎週やれるんですか!!?」

「あ、ああ……」

 

 とりあえずキリがないので、さっさと本題に入ろう。

 

 *******

 

 大会の話を聞いて、さわ子さんに連絡したところ、可愛子ぶって謝られた(あまり嬉しくない)。そして、放課後ティータイムのこれまでのライブ経験を聞いたところ、文化祭などの学校行事とライブハウス1回だけ、との事なので、ライブをもっと経験させてあげたい、と思い、今回このような提案をしてみた。

 放課後ティータイムが本気でプロを目指しているかどうかはともかく、せっかく大会に出るなら、できるだけの事はやっておいた方がいい。ただの思い出作りよりは。

 

「今回は、知り合いに頼んでライブハウスのイベントのオープニングアクトをさせてもらえる事になった。社会人バンドのイベントだけど、前座ならって事で」

「オープニングアクトだって、何かかっこいいね~」

 

 唯よ。俺も後で言い直したが、前座の事だぞ。

 

「毎週ライブハウスで、ということですか?」

「いや、そういうわけじゃない。場合によっては、学校の施設を使わせてもらう。だが可能な限りイベントに皆をねじ込む」

「おお……」

「学校で行事以外の時にライブをやるっていいですね」

「楽しみ~」

「どうやらやる気はあるみたいでよかった。土曜日は大丈夫?」

「「「「「はい!!」」」」」

 

 気持ちいい返事が返ってくる。

 

「江崎さん、ありがとうございます!」

「あ、ああ、どういたしまして……」

 

 澪に両手を握られる。次いで、律が肩を組んでくる。あっという間に皆にくっつかれた。しかし……

 

「むぅ~」

 

 唯はむっとした顔でケーキを頬張っていた。しかも俺の分を……。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。